今週のお題「こんなバイトをしてました」
中学生くらいのときから働いてお金を稼いでみたいと漠然と思っていた。
決して貧しい家ではなかったのだけど、ときどき機嫌が悪くなった父親が「誰のおかげで学校に行けると思っているんだ」と言う破壊力抜群の言葉を投げかけてくるのが嫌で自分の力で立ってみたいと思っていたということもあるし、単純にお金を稼ぐことがどういうことなのか興味があったということもある。
まぁ簡単に言ってしまえば、背伸びをして大人の階段を登りたかった。
ただ、僕が行っていた高校はバイト禁止だった(入る前には知らなかった)ので、隠れてやるような度胸もない僕が初めてバイトを探し始めたのは大学生になってからだった。
さっきも書いたように決して貧しい家ではなかったので、仕送りが足らないというわけでもなく、ただ経験してみたいというだけでバイト探しをしている僕に世間は厳しく、雑誌を見て応募して履歴書を持って面接をしても普通に落ちた。何件も。
社会勉強としてはよかったのだけど、精神的なダメージは大きくて「合格なら何日までに連絡するから」と言われた日に連絡がないと1日落ちこんだりもしていた。世間は冷たい。
この経験は本当につらいものだったけれど、後の就職活動の時の心の持ちようにはしっかりと活かされ粘り強く活動できたので、本当に人生というのはわからないものだなと思う。
余談だけれど、「合格なら何日までに連絡するから」というのは不合格という意味だと気づいたのは2件目の面接を終えた後で、きっと連絡はないんだろうなと薄々感じつつも、もしかして、と期待して待っていたらやっぱりなかったという経験が「大人の言葉は裏を読まなくてはならない」ということを僕に強く刻み込み、斜に構える性格をさらに助長した気がしている。大人ってずるい。
さて、だいぶ前置きが長くなってしまったけれど、そんな僕もついにバイトを始める日が来る。
家の近所にあったよく行っていた大きめの本屋で、店の窓に「バイト募集」と貼ってあるのが目に入り応募してみたら、簡単な面接だけですぐに合格と言われ次の週末から働くことになった。
なんてあっさり、と拍子抜けしたのをよく覚えているのだけれど、今から考えると時給も安いし重労働で、しかもバイト雑誌に募集を掲載する資金も出せないような状況だったのだろうから、応募すれば誰でも合格だったのだろうと思う。
やっと働けると目を輝かせて臨んだ週末、まともに教えてもらったのはレジのやり方だけで、あとは見て覚えろといわれ、お客さんがいない時に手持ち無沙汰で立っていると怒られるというややブラックさを感じつつも、あらゆることに新鮮さを感じながら仕事をした。
本屋は本を自分たちで注文して販売しているわけではなく、配られた本を売っているだけで売れなくなったら返本するという仕組みもその時に初めて知った。(もちろん注文する場合もあります)
万引き被害がいかに深刻な影響を与えているのかといったことや、世の中には変な人がいてそんな人でもお客として接さなくてはいけない大変さ、どの時間帯にどういった人が時間が空いていて店に来るのか、いろんなことを学ぶことができた。
何に役に立つのかはわからないけれど、とてもいい経験だったと思っている。
大学を卒業してからはそこを離れてしまったので、その本屋には足を運んでいなかった。
卒業の数年後たまたま前を通りかかった時に、当たり前のようにそこにスーパーがあるのを見た。
出版不況の波には逆らえなかったのだろう。
そのスーパーに本屋だったときよりもずっと多くのお客さんが入っているのを目の当たりにした時に、胸がぎゅっとなって寂しく思ったのを覚えている。
年中無休で営業していたので全員で集まれないという理由で飲み会すら開かれないあっさりとした職場だったけれど、それでも自分の人生の1ページとしての思い入れがあった場所だったのだなと気づいた瞬間。
あそこで働いていた人たちは今どうしているかな。
今でもその人たちの顔をしっかり思い出せることに驚いてしまった。
