ちょっとした奇跡 : Cafe Restaurant LaVet

ひばりヶ丘駅から歩いてちょっとのところにあるCafe Restaurant LaVet （カフェレストラン ラベット）さん、正直言って人には教えたくない。でもお客さんが来なくてつぶれても困る。というわけで仕方なくみなさんに教えて差し上げます。

こちら、カウンターにテーブル3卓という本当に小さなおしゃれなお店です。いわゆる「カフェごはん」のようなものを出す、そういったお店のように一見見受けられます。
でも「カフェごはんを出すようなお店」というのは実は婉曲表現で、ようするにおしゃれではあるけれども、あまり本格的なものは望めないお店かな、というのが私の最初の印象でした。

ですが、これが大間違い。予想をはるかに上回る、フレンチをベースにした本格的な料理が次から次へと出てくるのでした。
まずはちょい飲みセットを注文してみてください。このセット、アルコール１杯に前菜が３種ついてくるというお得なもので、しかも「ちょい飲みセット」という言葉から連想されるうすっぺらさは一切ない、素晴らしいものなのでした。

前菜は８つの中から選ぶことができ、私はヒューガルテンに燻製ポテトサラダ、ケークサレ、アオダイとコロダイのカルパッチョを注文することにしました。
この３種、どれも味の輪郭が明確で、特にカルパッチョなどは、私、素敵なものを頼んでしまった、こんな素敵なものを頼んでしまった私、実はえらいのでは？と錯覚するくらいのおいしさ、これだけで十分満足できるものでした。

でもこれで満足していたら、もったいない。まだまだおいしいものがたくさん出てくるのです。次にあらわれたのが季節野菜のフリット。このフリットがまた絶品で、ポロ葱、白ゴーヤ、茄子、人参、沖縄産ジャンボオクラをスィートチリソースとクリームチーズにつけて頂くというものです。ポロ葱や白ゴーヤなど、初めて口にしたのですが、これがさくっとおいしく、ビールにも合い、さらに初めて食べた野菜がこんなにおいしいという喜びもあって、忘れられないひとしなになりました。こちらのお店は野菜をおいしくたべてほしいというコンセプトをお持ちなのだそうで、そのコンセプトにたがわぬお料理でした。

野菜の次はアッシパルマンティエ。初めて聞いた名前ですが、フランスのお料理だそうで、牛肉をマッシュポテトとたっぷりチーズで覆ったグラタンのようなものです。これが先ほどの季節野菜のフリットと打って変わり、口の中でおいしさが暴れまわる感じのひとしなでした。牛肉は食感がコンビーフのようで、繊維にそって口の中でほどけ、それにマッシュポテトと溶けたチーズがあいまって、まるで子どもが初めてハンバーグを食べた時のような原初的な喜びが舌を襲うのです。

こちらのお店がすごいのは、味のバリエーションが豊富であるということ。次に新さんまのテリーヌをお願いしたのですが、こちら、新さんまの新鮮さをそのまま味わえるお料理で、テリーヌでありながらとても手の込んだお刺身のようにも思えます。さんまの味わいをしっかり生かしつつ、それでいてちっとも生臭くない、絶妙なバランスを保ったテリーヌでした。

続いてはトリップのフレンチ風もつ煮込み。トリップは、イタリアではトリッパ。つまりハチノスのもつ煮込みです。トリッパはトマトで煮込んだものが多いですが、このトリッパはそうではなく、ハチノスのうまみをしみじみあじわうお料理でした。

トリュフポテトフライをおつまみにお酒を飲みながら、次なるお料理は豚肉のキャベツボールです。小さなキャベツの中には豚肉とチーズが入っていて、それに添えられたキャビアをつけて頂くのです。キャベツの中からチーズがとろ～っと出てくるその瞬間たるや！これぞ目のごちそうです。豚肉とキャベツというごくありふれた食材が、なんでここまで味わい深くおいしくなるんだろう。まるみのある味なのに刺激的なお料理です。

普段だったらこれだけ食べたらもうのどを通らないはず。ですが、こちらは何を食べてもおいしいので、ついついあともう少しとさらに頼んでしまいます。
この期に及んでサーモンのレアカツを注文してしまいました。サーモンというとお刺身のように薄く切られたものを想像しがちですが、これはそうではなく、ごろっとしたブロック！それを油で揚げるのですが、レアカツの名の通り、表面だけからっと揚げて、中は新鮮なままのサーモン、それにタルタルソースをつけて頂くのです。お食事も終盤を迎えているのにもかかわらず、まったく胃もたれもせず、ぺろっと頂いてしまいました。

そして最後に3種のチーズのトマトパスタ。こちら生パスタなので、もちもちしていて食感が素晴らしく、見た目はシンプルなのに、食べ飽きない、そんなパスタでした。

もう食べに食べました！そして実に充実して、心から満たされました。今回、４人でお邪魔したのですが、これだけ食べて飲んで、一人6000円弱というお値段でした。このレベルでこのお値段なんて、ちょっと信じられません。だから人には教えたくないのです。教えたくないのですが、それでもこのおいしさを誰かに話さずにはいられない、そんなお店でした。とにかく驚くほどの名店です。ちょっとした奇跡に遭遇しました。