豊洲おさかな図鑑-今日も寿司大に行ってきました

寿司ネタについて歴史、文化、科学の観点から語る

(22)フランスを救った東北の真牡蠣 ウグイスガイ目イタボガキ科マガキ属

「殻を10個開けたら7個はダメっていう感じです」

今年は広島など瀬戸内海産のマガキ(真牡蠣)が壊滅的だ。

「生の魚介をそんなに食べてこなかったヨーロッパ人もカキはよく食べるでしょう」

「大好き」

「昔、フランスの養殖カキが絶滅しかかって、宮城県の稚貝を送って助けたそうですよ。だから、今でもフランスの養殖カキは日本のマガキがかなりの割合をしめるんだって。ヨーロッパとは種類が違うはずなんだけど」

「ヨーロッパのは小さいカキですよね」

「でも、岩ガキは大きいけど、マガキは小さくない?」

「目の前にあるの、それマガキだよ」

「結構な大きさですね」

◆今日の22貫

三重タイ、東京湾エボダイ、鯖、北海道ボタンエビ、塩釜赤身漬け、北海道松皮カレイ、エンガワ、沖縄メカジキ、銚子金目鯛昆布〆、函館イワシ、熊本こはだ、山口煮アワビ、青森平目、淡路島さより、三重青柳、江戸前春子鯛昆布〆、クロムツ、鹿島煮ハマグリ、三重鰆、東京湾太刀魚、車えび、北海道うに

◆そのほか
お通し 三重〆鯖

茨城クロムツ、岩手生カキポン酢、北海道北寄貝

卵焼き、中落ち巻き

◆今日の酒

手取川純米、亜麻猫新政

 

(21)初サバ サバ目(またはスズキ目)サバ科サバ属

サバ(鯖)は、イワシ、アジと並ぶ大衆魚の代名詞。ただし、近年は漁獲量が減っている。今年は特に近年になく希少だ。
それほど好きなネタでもないのに、ないとなると食べたくなる。このところようやく目にするようになった。今年初めてのサバだ。
サバ科はマグロ属、カツオ属など外洋を旅する大型の魚も含むが、サバ科サバ属自体は沿岸の魚だ。日本近海では、マサバとゴマサバが取れる。これにノルウェーなどから輸入されるタイセイヨウサバを合わせた3種が知られている。味は秋のマサバが最高だ。一年中品質が安定しているゴマサバはマサバの味が落ちる季節に重宝される。
サバは「あたる」というイメージがある。なぜあたるのか。原因は3種類ある。
一つはサバの身に対するアレルギー。これは体質の問題なので、どんなに新鮮なサバでもあたる。
もう一つの「ヒスタミン中毒」。ヒスタミンは花粉症などと関連するアレルギー症状を起こす物質。サバの血合いにはアミノ酸ヒスチジン」が多く含まれる。サバの死後、これが微生物(ヒスタミン産生菌)の作用でヒスタミンに変わる。
マグロやカツオもヒスチジンが多く、これらでも中毒は起きる。可食部100gあたりで比べると、マサバのヒスチジン含有量860mgに対して、クロマグロやカツオ(春獲り)は2500mgと3倍近い。だが、ヒスチジンが多い赤身の回遊魚の中でも、小型の青魚にあたりやすいイメージがある。「大きい魚は内臓を取り除き、ブロック化するのできれいに管理しやすい。サバ、イワシなどの方が細菌が活動しやすい可能性がある」という。サバは身がやわらかく、水っぽいことも細菌に有利らしい。
低温に保てばヒスタミンはつくられない。水分を取って身を引き締める「酢じめ」も、酸が細菌の繁殖を抑える効果が期待される。ヒスタミンは熱に強く、できてしまうと加熱調理しても防げない。
なお、ヒスタミンはかつてうまみ成分の一つとされたが、最近はうまみとは関係ないらしいとも言われている。
もう一つの原因は、アニサキスなどの寄生虫によるもの。こちらは一番の対策は加熱だ。サバが生きている間は内臓にいることが多いとされ、死んでから身に移るので、内臓にいるうちの取れたてはあたりにくいといわれる。

◆今日の会話

板前「ネギトロ、ネギ抜きですね」

「だから、ネギトロのネギは葱じゃないから」

店長「あおらないの。話長くなるから。何回やってるの、そのやりとり」

板前「ネギトロと手前がブロックです。歯ごたえが全然違いますよ」

改めてネギトロとか言うからネギが入っているのかと、思わずネギを探してしまった。

ブロック(手前)&ネギトロ巻き

◆今日の28貫
真鯛マツカワカレイ、エンガワ、サワラ、岩手〆鯖、鯵、メジマグロ、平目、カワハギ、煮アワビ、岩手エボダイ、生北寄貝、青森平目、山形ブリ、金目鯛昆布〆、淡路島サヨリ、天草小肌、車海老塩、赤貝、鹿児島カンパチ腹、銚子メカジキ、東京湾カスゴダイ、アオリイカ青森、島根ヤリイカゲソ、アン肝、茨城スミクイウオ、穴子、ウニ

肝大サービスカワハギ

◆そのほか
お通し カンパチ
北寄貝炙り、カワハギ

卵焼き、中落ち巻きネギトロ&ブロック

岩手の〆鯖



◆今日の酒
純米吟醸寒紅梅、純米吟醸山本ピュアブラック

 

(20)やっと会えた海のピラニア 鮍 フグ目カワハギ科カワハギ属

「今日カワハギあるんだ」
「ありますよオ。今日入ったんです」
「でもメニューに書いてなかったよね」
「わからなかったの。7時に入ったから」

「写真撮りました?」
「忘れてた。カワハギに会えた喜びでいろんなものが飛んじゃった」

フグの仲間だけど平べったい菱形の魚。初めて食べたのは博多のランチの定食だった。そのころは東日本ではほとんど見かけなかった。江戸前でもよく目にするようになったが、ここ1年ぐらい全くない。
冬、産卵に備えて栄養をため込む。ブリなどと違い、脂肪がほとんどない。ためる場所は肝臓だ。大きくなった肝を乗せ、煮切りしょうゆを塗って食べる。大昔、大阪で「怪しげな店はフグと称してカワハギを使っている」という都市伝説を聞いたことがあるが、個人的にはフグよりうまいと思う。4大好きな寿司ネタの中でも一番。
大きくても30センチほどだが、見かけによらず凶暴な肉食性。つめ切りのような頑丈な歯を持つ。釣り針にかからず餌だけ食いちぎるので、餌取り名人の異名がある。大好物はエチゼンクラゲ。コラーゲンというたんぱく質の塊だから、筋肉質のカワハギにはもってこいだ。
のとじま臨海公園水族館(石川県)で能登のカワハギ漁の話を聞いたことがある。直径3~4メートルのかご状の網の真ん中に、エチゼンクラゲをつるす。網を沈めるとカワハギやウマヅラハギが集まってくる。エチゼンクラゲにくっついて回遊するカワハギの稚魚もいるという。食べられる家に住んでいるようなものだ。 「水族館でも弱ったエチゼンクラゲをカワハギの水槽に餌として入れたことがあるが、カワハギが群がり、周りにボールができ、クラゲが見えなくなった」
エチゼンクラゲは2メートルにもなる。人間が10メートルの大ダコにかみつくようなもの。まるで海のピラニアだ。エチゼンクラゲに刺された魚はぼろぼろになるので、普通の漁では網にかかるのを嫌がる。皮が硬いカワハギは刺されても平気らしい。この皮が簡単にはがせることが名前の由来。漢字では皮剥とも書く。ハゲと呼ぶ地域もある。
漁師の嫌われ者、エチゼンクラゲをおいしいカワハギの養殖に利用できないものだろうか。


◆今日の31貫
北海道イワシ、富津の真鯛、徳島鯵、山口煮アワビ、三重サワラ2種、平目、東京湾エボダイ、鹿児島カンパチ、北海道ボタンエビ、メカジキ、青柳、メジマグロ、東京湾春子タイ、東京湾蛸、北海道松皮カレイ、エンガワ、島根ヤリイカ(ゲソ、エンペラー耳、身)、徳島鯵、北海道生ニシン、サヨリ、金目鯛昆布〆、北海道アン肝、赤貝、宮城県かます、こはだ、車えび、スミクイウオ茨城、うに

◆そのほか
お通し メカジキの血合い
岩手赤崎牡蠣、サヨリ皮、焼きハマグリ




卵焼き、中落ち巻き

◆今日の酒
長野明鏡止水、日高見初しぼり霞酒、会津中将



 

番外 箱寿司が下克上されたのは地方出身者に化けた都民のせい 「大阪寿司」は東京土着民にしか通じない江戸の方言(14)

この大阪寿司の番外編に対して「押し寿司がうまいと思ったことがない。というか寿司って名乗るのはいかがなものかと」というコメントがあった。好き嫌いは個人の勝手だろうが、押し寿司に寿司を名乗る資格がないかのような言い方はいただけない。かつて、江戸でも寿司といえば箱寿司を代表とする西日本由来の寿司のことであり、江戸時代後期に屋台のファーストフードとして生まれた握り寿司は邪道扱いだった。店で出す王道の寿司ではないからこそわざわざ江戸前寿司と呼んで区別(差別?)しているのだ。

その箱寿司がなぜ江戸前の握り寿司に下克上され、江戸前が全国を支配するに至ったのか。それは、上記コメントのような「東京の常識は日本の常識」だと思い込むような東京の田舎者(首都とはいえ東京も一つの地方)的発想と関係がある。

文化人類学者の石毛直道氏は「別冊サライ大特集鮨」の中で、握り寿司が全国区になり、箱寿司が広まらなかったのは、東京が日本の首府になったことが決定打と語る。

明治になると新政府は政治の中心である東京の文化を「国民文化」にしようとします。言葉も東京の方言が標準語と呼ばれて、あたかも標準語以外は日本語にあらずのような扱われ方をします。日本人の間に根強く残る単一民族思想なども同じですが、国威を発揚し富国強兵を目指していくために国民文化は意図的に作られたものです。

 この政策に箱ずしは大打撃を被る。(中略)明治二十五年になると大阪市内のすし屋は大半が握りずしに変わったとの記録が残っています。たかだか三十年ほどで箱ずしが駆逐されるのは驚くべきことです。握りずしは標準語が広まるように東京の文化として大阪だけでなく全国に出ていったのでしょう。

つまり、上記コメントに見られるような東京の文化こそ王道たる国民文化という誤った思想は明治政府によって意図的に植え付けられたものということだ。

ここで、新たな疑問が生じる。幕府を倒した維新の中心人物や明治政府の要人はほとんどが薩長を始めとする西日本の出身者だ。岩倉具視西園寺公望ら公家が京都出身なのは当然として、伊藤博文木戸孝允(長州)、西郷隆盛大久保利通山縣有朋黒田清隆(薩摩)、板垣退助江藤新平(土佐)、大隈重信(佐賀)など。例外は、官軍に最後まで抵抗して降伏した榎本武揚(江戸)ぐらいだろう。

なぜ彼ら西の藩士たちが江戸を首都に決め、江戸の方言を日本の公用語にしたのだろうか。学校で方言を話した生徒を罰としてさらし者にする方言札は沖縄以外に鹿児島や東北でも使われたというが、政府の要人たちは自分たちにとっての故郷の言葉を弾圧するようなまねをどうしてしたのか。

これについて、おもしろい説を聞いた。

彼らは、東京民(江戸人)が地方出身者に化けているだけ

260年間の江戸時代、大名の妻子は人質として江戸に置かれた。大名は成人して家督を継ぐまで江戸で育つ。大名になってからも参勤交代でたびたび江戸に暮らし、藩の内政や外交も江戸藩邸が中心になることもあった。側近の藩士も江戸で暮らす。幕閣や他藩との交流に用いられる共通語もおそらく江戸弁だ。

松下村塾で志士の思想に影響を与えた吉田松陰も若い頃幕府の平坂学問所で学んでいる。尊皇攘夷思想や開国論も江戸での人脈、交流が育んだものというわけだ。

つまり、彼らにとって、出身藩は戸籍上の本籍地のようなもので、学び、友や人脈を作り、地縁、血縁で結ばれた故郷は精神的にも実質的にも江戸だった。

この仕組みは現在にも当てはまる。

例えば、安倍晋三元首相の祖父である岸信介元首相や安倍寛衆院議員、大叔父の佐藤栄作元首相は山口出身。父の安倍晋太郎外務大臣も生後すぐに山口に移り、大学進学まで住んでいた。しかし、安倍元首相本人や実弟岸信夫防衛大臣、後継の岸信千世衆院議員は東京で生まれ育っている。学歴も安倍元首相は成蹊の小学校~大学、岸親子は慶応の幼稚舎~大学。

国会議員の多くを占める世襲議員は大抵がこのような「地方出身者のふりをした東京都民」なのだ。地方に選挙区という票田を持つこの構造は、平安時代に京都の貴族が地方に領地を持っていた荘園制とも通じる。

 

(19)カツオが戻ってきた DHA、EPAは初鰹の8、10倍 スズキ目サバ科カツオ属

「今日は何かつまみます?」

「せっかく戻ってきたんだからカツオを。急に寒くなったからあわてて降りてきたんじゃないですかね」

やはり、戻りの方がうまい。

第5回で初鰹は旬のカツオではないことを取り上げた。

カツオは暖かい水温を好み、赤道近くでは1年中産卵しているらしいが、春になると黒潮に乗って日本近海に近づいてくる。この上りカツオのはしりが初鰹だ。

本州をさらに北上したカツオは北の海で脂肪をため込み、秋に降りてくる。これが戻りカツオ。

あっさりの上りと戻りのどっちが好みかは人それぞれだ。一般的には、魚の旬は産卵前の脂の乗った時期をいう。

「江戸時代の人はあっさりした方が好きだったんですかね」

「脂が多いとすぐやけちゃうのもあると思う」

「やけるって、傷むってこと?」

「そう。臭みが出るし、色も変わる。赤身は少しぐらいほっといても大丈夫」

脂の乗った魚が好まれるのは輸送技術や保存技術の発達により鮮度が保たれる今でこそで、昔は大トロなんて捨てていたかもしれない。

食品成分データベース(出典 日本食品標準成分表 八訂 増補2023年)によると、戻りカツオ(秋獲り)は上りカツオ(春獲り)に比べ、可食部100gあたり脂質が12倍、エネルギー(Kcal)も1.4倍だ。

DHA(ドコサヘキサエン酸)は8倍、EPA(エイコサペンタエン酸)は10倍だ。

表の赤で囲った部分は秋獲りの方が30%以上多い成分。青は春獲りの方が30%以上多い成分だ。

ビタミンA(レチノール 4倍)、ビタミンD(2倍以上)、ビオチン(2倍以上)などは秋獲りが多く、ビタミンE(α-トコフェロール 3倍)、ビタミンB1(1.3倍)は春獲りが多い。

勝浦のカツオ。手前が腹の部分

◆今日の会話

サヨリって西では春の魚だけど、こっちでは秋冬なんですよね」

「大きさにもよるけど。寿司屋はカンヌキより片身一貫のほうが扱いやすい」

カンヌキとは太い大型のサヨリのこと。


◆今日の21貫

三重のイシガキダイ、山口カンパチ、イワシ、鱚、淡路島真鯛カマス、長崎ヤリイカ、淡路島サヨリ、北海道生ニシン、ボタンエビ、北海道ブリ、松川カレイのエンガワ、北海道生蛸、松川カレイ、北海道白老の青柳、コハダ、徳島鯵、三重サワラ腹炙り皮引き、車海老ボイル醤油、常磐メダイ、浜中ウニ

◆そのほか
お通し 山口カンパチ

勝浦のかつお刺身、ホタテ貝柱磯辺焼き

卵焼き、塩釜中落ち巻き

◆今日の酒

常山辛口純米、明鏡止水鬼辛純米、福和蔵純米

 

(18)氷見のブリなんて誰も買わねーよ スズキ目アジ科ブリ属

夏が突然終わり、急に冬が来た。
お歳暮や正月の贈答品になる年取り魚といえば東日本では荒巻鮭が常識。西日本ではブリ(鰤)だというのは関西に住んでから知った。漢字の由来も師走が旬だからという説がある。
そして、ブリと言えば、氷見(富山県)のブリが全国に知られる高級ブランド。
富山湾には冬場、北の海で栄養を蓄えたブリが南下してくる。氷見の港は、その漁場からもっとも近く、ブリの水揚げ地として知られるようになった。地の利だけでなく、魚を傷めにくい越中式定置網漁法を古くから使い、魚をすぐに氷水で処理するなどの努力も重ねてきたそうだ。
ただ、名前だけでありがたがるのも、いかがなものか。氷見市の隣の七尾市(石川県)に出張した際、タクシーの運転手が「能登の観光客が旅館で同じ魚が出ているのにわざわざ氷見にブリを食べに行く」とぼやいていた。

「七尾の船も氷見の船もブリを取っている漁場は同じですよ。刺し身で味わってもらうのが一番だから調理法の違いもないし、違うとすればしょうゆぐらい。七尾の漁師も氷見の方が高値がつくから氷見で下ろしてます」。

店長「氷見のブリはバカにしてるような値段。ここ数年ほんとにひどい。往々にしてドコドコの何々が好きだよみんな。結局は発信力」
似たような話はマグロでもある。一本釣りがテレビ番組で有名になった大間(青森県)のマグロ。対岸の戸井(北海道)は20kmも離れていない。同じ漁場で取っているのだ。寿司屋は仲卸の目利きを信じ、その日一番良いものを仕入れる。客も産地信仰はやめよう。自分の舌を信じるべきだ。

羅臼のブリ

◆今日の会話

「今年はサバはないんですか」

「過去何十年で最悪な不漁。半年ぶりにゴマサバ入れたけど全然。取り引きのある店
置いてあるけど、どう?って聞くと、お客さんいなくなるからやめときなだって。自分で売っといて」

◆今日の24貫

千葉のイシガキダイ、千葉の真鯛、鰯の幼魚、北海道の松川カレイ、三重のサワラ、赤貝、山口のカンパチ、青森平目、松川カレイのエンガワ、東京湾の春子鯛、塩釜生のメカジキ、タチウオ、羅臼のぶり、茨城スミクイウオ、徳島鯵、東京湾鱚、千葉チヌクロダイ、北海道ホッキ貝、銚子キンメダイ、車海老、北海道秋刀魚、石川カマス醤油、塩釜マグロ中トロ、浜中ウニ

鰯の幼魚

塩釜のクロマグロ中トロ


その他

お通し 生蛸



卵焼き
中落ち巻き

◆今日の酒

寒菊電照、寒紅梅三重、今世司black

 

(17)鮭は白身 赤い理由が赤身と違う サケ目サケ科サケ属

友人たちと飲んでいる時、サーモンは白身という話になった。サケマス類一般が白身なのだが、ベニザケなんてピンクというよりもう濃い朱色である。

「マグロとかの赤身とは赤い理由が違うんだ」と言うと、若い医師が「遅筋、速筋のことじゃないの?」。

遅筋、速筋が出てくるのはさすが現役の医者。魚の赤身白身と同じで、人間も短距離走者は白い筋肉が多く、マラソンランナーなどは赤い筋肉が多いという話を寿司大の店長はすぐには信じてくれなかった。今度、医者から説明してもらおうか。

筋肉が赤いのは酸素をため込むミオグロビンというたんぱく質の色だ。ミオグロビンの多い赤い筋肉(遅筋)は持久力がある。有酸素運動が得意なイヌ型に多い。大洋を回遊するマグロやカツオなど泳ぎ続けないと窒息してしまう赤身魚の筋肉だ。

ミオグロビンの少ない白い筋肉(速筋)は瞬発力があるがすぐに疲れてしまう。無酸素運動が得意なネコ型(未来の世界のロボットではない)に多い。

「サケは太平洋を回遊したり、川を遡ったりするのに、持久力がないんですか?」と店長。また、宿題ができてしまった。

さて、サケマス類が赤いのはミオグロビンの色ではなく、アスタキサンチンという色素の色だ。抗酸化作用が強く、体を紫外線などのストレスから守る。富士フイルムの化粧品などに使われている。

藻類などがつくり、それを食べた甲殻類をさらにサケやマスが食べることで、赤くなる。いくらなど魚卵の赤色もこのアスタキサンチンの色だ。ただし、明太子などの濃い赤色は色素を加えている。

アスタキサンチンの入ってない人工の餌で養殖すると、サーモンの身も卵も赤くならない。それを逆手にとって、黄金色のつきみいくらという養殖サクラマスの卵を売っている。ただし、アスタキサンチンがないとサーモンの孵化率が悪くなるという研究結果がある。卵も守られているのだ。

fishfarmsakura.com

天然のサケマス類が食べているオキアミにはアニサキスが寄生していることがあり、そのため、天然のサケマス類は生では食べられなかった。北海道のるいべなど凍らせて食べていた。

養殖のノルウェーサーモン(アトランティックサーモン サケ目サケ科タイセイヨウサケ属)を生で食べられるのは、オキアミを与えず、人工の餌だけで育ているからだ。

◆今日の13貫

鱚、カナダ空輸生大トロ、真鯛、サワラ、スミクイウオ、徳島鯵、北海道ブリ、煮アワビ、オーストラリアメカジキ、マツカワカレイ、ヒラメ、北海道いくら、北海道ウニ

◆そのほか
お通し 岩手のサバ

生かきポン酢、カマス炙り塩すだち、赤貝、赤貝肝、マツカワカレイ刺し身、秋刀魚刺身

卵焼き
巻物

◆今日の酒
ザク、出雲富士秋雲