
ビジネスパーソンの1日のうち、意外なほど多くの時間が「メール業務」に使われています。長く課題とされている生産性向上のために各企業はさまざまな施策を進めていますが、ひとりのビジネスパーソンとしてはメールにかける時間の短縮も欠かせないテーマでしょう。そこでアドバイスをお願いしたのは、ビジネスメール教育の専門家である平野友朗さん。多忙ななかでも効率的にメールをさばく人は、どのような手を打っているのでしょうか。
構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人
【プロフィール】
平野友朗(ひらの・ともあき)
1974年生まれ、北海道出身。一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事。株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役。実践塾シェアクラブ主宰。筑波大学人間学類で認知心理学専攻。広告代理店勤務を経て、独立。ビジネスメール教育の専門家。得意とする分野は、メールコミュニケーションの効率化や時間短縮などの業務改善、ウェブマーケティングの戦略立案やメルマガ・ウェブサイトの改善、メディア戦略を含めたブランド構築や出版プロデュースなど多岐にわたる。メールスキルの向上指導、組織のメールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上などを手がけ、行政機関、企業、学校などへのコンサルティングや講演、研修回数は年間150回を超える。自らのメルマガ「毎日0.1%の成長」では、コミュニケーションやウェブマーケティング、ブランディング、ビジネスモデル構築など幅広い話題を取り上げ、スキルアップに有益な情報を送り続けている。著書は『ずるいメール術』(PHP研究所)、『仕事が速い人はどんなメールを書いているのか』(文響社)など合計38冊。
一般社団法人日本ビジネスメール協会
株式会社アイ・コミュニケーション
労働時間の3割をメールに費やしている
日本のビジネスシーンは、効率化の必要性が叫ばれて久しい状況にあります。DXの導入、ペーパーレス化、会議の簡素化といった取り組みを進めている企業も多いと思いますが、個人レベルでいうとメールにあてる時間の削減も欠かせません。ビジネスパーソンは意外なほど多くの時間をメールに使っているからです。
私が代表理事を務める一般社団法人日本ビジネスメール協会では、毎年、メールに関する調査を行なっています。2024年の調査結果で言うと、ビジネスパーソンが1日に受信するメールは平均47.83通、送信は平均12.27通です。そして、メールを読む時間が1通あたり平均1分27秒、書く時間が1通あたり平均5分57秒。これらをもとに計算すると、1日に2時間22分、8時間労働ならじつに3割近くの時間をメール業務に費やしているのです。
この数字に驚くと同時に、メールに使う時間の削減の必要性を強く感じた人も多いのではないでしょうか。そうするためには、「メールの数自体を減らす」、あるいは読んだり書いたりする「処理時間を減らす」しかありません。

メールの数を減らし、「振り分け設定」で効率的に処理する
まずは、メールの数を減らすことを考えましょう。1日に50通以上もメールが届く人は、そもそも不要なメールを受け取っている可能性が高いと考えられます。
たとえば、名刺交換をしただけで届くメルマガも不要なメールのひとつです。たとえ読むことはほとんどないとしても、件名に目を通したり削除したりすること自体が無駄な作業ですから、そういったメルマガは登録を解除してしまいましょう。
あるいは、「CC」で届くメールのなかにも不要なものはたくさんあります。私の場合で例を挙げましょう。私宛てに取材の依頼がきたとします。私が知りたいのは、「取材が入りそう」「詳細が決まった」という情報だけです。
詳細が決まるまでのプロセスに私をCCで加えられても、私からすれば不要なメールが届き続けるだけですから、社員に対しては「私はCCから抜いてほしい」「仮にCCに入れられてもいっさい見ないよ」と伝えています。CCで届くメールにすべて目を通していると多くの時間を使ってしまうので、このことは社内ルールとして徹底しています。
それでもまだたくさんのメールが届くのなら、次のアクションとしては「振り分け設定」があります。よく見られるのは、「お客様のメールを見逃したくないから」と、お客様からのメールはすべて別フォルダに振り分けるというケースですね。しかし、このやり方は合理的とは言えません。なぜなら、お客様からのメールにも重要でないものもあれば、受信トレイにストレートに届くものにも重要なものもあるため、結局、すべてをチェックするはめになるからです。
私の場合であれば、CCのメールや定期的な状況報告、自動配信システムからの通知メールといったものは「自分で処理する必要がないもの」として別フォルダに分け、受信トレイに届くメールを重要なものとして優先的にチェックしています。通勤中に受信トレイをチェックするなかで、また不要なものがあれば先の別フォルダに振り分け設定をし、会社に着いてから自分で処理すべきものにはフラグを立てるのです。

必要以上に誤字を気にしすぎない
また、読んだり書いたりする「処理時間を減らす」ことについては、まずテンプレートや辞書登録の活用をおすすめします。同じ文言のメールを月に1回以上送るのであれば、テンプレート化してしまえば効率的です。
よく使うフレーズを辞書登録しておけば、入力の手間を大きく減らせます。たとえば、「いつも」を「いつもお世話になっております」に変換できるようにするといった具合です。ほかにも、社名やメールアドレス、「株式会社アイ・コミュニケーションの平野です」といった名乗りなど、頻繁に使ったり入力ミスをしたくなかったりするものは辞書登録しておくのが賢明です。
加えて、タイピングスキル自体を磨いておくことも大切なポイントでしょう。シンプルに入力時間を減らすためです。私の場合、自宅で仕事をするときには音声入力を使っています。でも、会社でぶつぶつとしゃべるのはまわりの迷惑になります。かといって、キーボードに代わる入力デバイスが近いうちに登場するかというと、ちょっと考えにくいところです。おそらく今後もまだしばらくはキーボード入力が主流であり続けるでしょう。
私は一般的なスピードでしゃべるのと同じくらいの速度でタイピングができますが、たとえそこまででなくとも、タイピングの練習をしてそのスピードを上げておくことも必要なのだと思います。
処理時間を減らすという点で言えば、「誤字を気にしすぎない」意識ももっておきましょう。ビジネスメールについては「相手に失礼があってはならない」「丁寧にしよう」という気持ちが先行してしまい、時間をかけて誤字脱字がないかをこまかく確認する人も多いものです。
ところが、私たちの調査によると、誤字があったからといって受け手が不快に感じるケースは多くありません。「受け手として不快に感じるメールの要素」のランキングで言えば、誤字はかなり下位に位置します。日付や金額、数量、商品名といった数字や固有名詞が間違っているのはまずいわけですが、それ以外の部分であればそれほど神経質になる必要はないのです。効率化のため、そして仕事で大きな成果を挙げるためにも、誤字をなくすことより重要なタスクに貴重な時間と労力をあててください。

【平野友朗さん ほかのインタビュー記事はこちら】
メールを見れば「仕事力」がわかる。「CC」の扱い、合っていますか?
失礼なメールに多い “あの表現”。相手の時間を奪わないための「9つの要素」(※近日公開)
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。
