なぜあの人は上司の“本音”を引き出せる?信頼を得る人の「共感」の技術

職場で仕事をしていると、「あの人だけ上司からぶっちゃけ話を聞いている」「自分には当たり障りのないことしか言ってもらえないのに……」と感じる場面はありませんか? 同じチームに属する部下なのに、どうしてそんな差が生まれるのでしょうか。

じつは、上司が「本音」を話してくれるかどうかは、共感力ラポール(相手との心理的な信頼関係)が大きく影響しているのです。

どんなに仕事ができる人でも、相手の気持ちを十分に理解できていなかったり、距離があるままだったりすると、上司としては本音を打ち明ける気になれないもの。反対に、そこをうまく築いている人は、要領よく甘えているようにも見えず、自然に上司の “ぶっちゃけ話” を引き出しています。

本記事では、「上司がなぜ本音を言わないのか」「どうすれば上司のリアルな悩みや考えを引き出せるのか」を、共感の技術ラポールを軸に解説します。

あなたも今日から意識を少し変えるだけで、これまで分からなかった上司の本音が見えてくるかもしれません。

なぜ上司は“本音”をなかなか明かさないのか

上司が部下に心の内を語らないのは、決して部下を冷遇したいわけではありません。単純に「言う必要がない」「言ってもメリットがない」「リスクがある」という心理が働いているからです。具体的には以下のような要因が考えられます。

リスク回避

上司には守るべき情報もあり、むやみに本音を開示すれば、組織の秘密や戦略が外部に漏れるかもしれません。また、部下がうっかり口外するリスクを考えると、「話すのが怖い」と思うのも当然。

相手が理解してくれなさそう

上司の立場や苦労をわかっていない部下に弱音を見せるのは不安。表面的な理解しかされないなら、話すだけ損だと思ってしまうことがある。

防衛本能

「弱い部分を見せると部下からの信頼を失うのでは?」と考える上司は少なくありません。リーダーとしての立場を守るために、素直に悩みを打ち明けるハードルが高いのです。

距離感がつかめない

そもそも部下と雑談する機会が少なく、距離があるままだと、どこまで話していいかわからない。挨拶や業務連絡だけの関係にとどまっていれば当然、深い話はしないでしょう。

話してもメリットがない

「相談したところで解決策が出るわけでもないし……」と思われてしまえば、わざわざ本音を口にする意味がありません。

こうした要因を考えると、「上司から本音を引き出せる人」は、上司にとって “リスクが低く、理解してくれそうで、相談するとメリットがありそうだ” という安心感を与えているわけです。つまり、共感の技術ラポールの存在が、上司を安心させているのです。

ラポールと共感が“本音トーク”を生むカギ

ラポール(rapport)は、相手とのあいだに生まれる心理的な安心感や信頼関係のこと。上司が「この人なら大丈夫」と感じる状態にならなければ、本音はなかなか出てこないでしょう。そこで活躍するのが共感的コミュニケーションです。

◇ ラポールがあると何が変わるのか

  • 上司が「話した内容を否定や批判で返されず、むしろ理解してくれそうだ」と思う
  • 相手(部下)が情報を悪用しない、相手を傷つけないと確信できる
  • 心理的安全性が高まることで、リスクの高い話題(悩みや裏事情など)も口にしやすくなる

上司の本音を引き出す“共感の技術”ステップ

上司との対話を深める3つの重要なテクニックを解説します。

アクティブリスニング、共感フレーズ、そして雑談とミラーリングを組み合わせることで、自然な形で上司との信頼関係を築いていけます。各テクニックには具体的な例を添えていますので、明日からすぐに実践できるはずです。

アクティブリスニング——本気で耳を傾ける

上司の話を聞くとき、意外と「適当に相槌を打ち、頭では別のことを考えている」パターンが多いもの。しかし、アクティブリスニング(積極的傾聴)を実践すると、相手は「この部下は本気で聞いてるな」と感づき、より詳しい話をしたくなる。

具体例:
  • オウム返し:上司が「最近、時間が足りなくて……」と言ったら、「時間が足りないんですね」と繰り返す
  • 表情や姿勢:適度にうなずき、目を合わせすぎず合わせなさすぎず、リラックスした姿勢

短い共感フレーズを添える

例:
  • 「なるほど、それは大変ですよね」
  • 「わかります、◯◯部との調整は面倒そうですしね」

こうしたフレーズがあるだけで、上司は「自分の状況を理解してくれる人がいる」と安心し、本音を話すハードルが下がる。ポイントは具体性——ただ「大変ですね」ではなく「◯◯部との折衝はストレスですよね」と言うほうがリアリティが増す。

軽い雑談+ミラーリングで距離を縮める

雑談:
  • 業務の話だけではなく、ちょっとしたプライベートネタや最近のニュースなどを共有する時間をつくる。あいまいな緊張感をほぐし、親近感を育む。
ミラーリング:
  • 相手の声のトーン、話すペース、しぐさなどに自然に合わせるテクニック。強引にまねるのではなく、少し似せる程度が自然。
  • 上司がゆっくり話すタイプなら、こちらも少しスローテンポで対応。相手がテンション高めなら、こちらも多少元気に声を出す。

具体例:共感コミュニケーションで上司の不安を引き出す

たとえば、上司が新企画に対してどこか後ろ向きな態度をとっている場合。部下としては「なぜ乗り気じゃないんだろう?」と疑問に思うものの、そのままでは核心に触れられません。ここで共感的アプローチを試みると、意外と本音が見えてきます。

具体例を見てみましょう。

STEP 1 雑談から入る

  • 「最近どうですか? 新企画の件で忙しそうですね」など軽く促す。
  • 上司が「まあね……」と濁すなら、「やっぱりスケジュールがきついんですか?」と少し掘り下げる。

STEP 2 アクティブリスニング+共感フレーズ

  • 上司が「時間も予算も厳しくてね……」と漏らしたら、「なるほど、時間と予算が厳しいんですね。たしかにそんな状況だと動きづらいですよね」と返す。
  • このとき、上司の目を見ながらうなずき、必要なら「ほかにも何か難しいことありますか?」と続ける。

STEP 3 ラポールを確かめ、さらに踏み込む

  • 上司が「本当はあまりやりたくないんだよね……でも仕方ないし」とボソッと言ったら、ここがチャンス。
  • 「そうなんですね。やりたくないと思う理由、よかったらもう少し聞かせてもらってもいいですか?」と丁寧に尋ねると、上司は「じつは◯◯部からのプレッシャーがあって……」など、本音を吐露し始めるかもしれない。

STEP 4 相手が話してくれたら、すぐに提案やサポートを示す

  • 上司が「こんな問題があって不安」と話したら、「自分がそこをサポートできるかも」「ここを一緒に調整しましょうか?」など、次のアクションを提案。
  • これによって「ただの聞き役」ではなく、“助力してくれる頼もしい部下” として映り、より深い信頼が得られる。

やりがちな失敗:否定から入る、受け流す、先回りしすぎる

否定から入る

「いや、そんなことないですよ」「案外いけますよ」とすぐに反論すると、「この部下は僕の悩みを軽視している」と上司に思われ、そこで会話がストップしがち。

受け流しがち

上司がちょっと悩みを口にしても「へえ、そうなんですか」と流してしまうと、「ああ、この子には真剣に話す必要ないな」と判断される。

先回りしすぎる

  • 相手が話す前に「きっとこうなんでしょ?」と推測で言いすぎると、かえって距離ができる。
  • あくまで相手が語るペースを大事にしたほうが、安心して深い話をしてもらえる。

共感で上司とのラポールを築き、本音を引き出す

なぜ特定の人だけが上司の本音を引き出せるのか。それは「上司が話しても大丈夫と思える、共感ベースの安心関係」を作っているからです。

本音を引き出すための4つのステップ
1
アクティブリスニングで真剣に耳を傾ける
2
短い共感フレーズで相手の悩みに寄り添う
3
雑談やミラーリングでさらに距離を縮め、ラポールを強化する
4
上司が本音を漏らしたらすかさず受けとめ、建設的な提案や協力を申し出る

これらのステップによって、上司はあなたをただの “部下” ではなく「本音を話しても理解してくれる存在」と認識します。そうなれば、次第に微妙な悩みや本音ベースの意図を言ってくれるようになり、あなた自身も仕事を進めるうえで情報が格段に増え、強力な連携が可能となるでしょう。

アピールしたり、追及したりするのではなく、まずは共感を土台にしたコミュニケーションから始める。その落ち着いた姿勢こそが、「あの人は上司の本音を引き出せる」最大の秘訣なのです。

***
さっそく、上司との何気ない雑談やふとした会話で、共感的な相づちや受け止め方を試してみてはいかがでしょうか。たったそれだけで、次に聞ける話の深さが変わってくるかもしれません。

【ライタープロフィール】
大西耕介

「人の行動」に潜む、意外な真実を独自の視点で解き明かすライター。身近な例から社会現象まで、独自の視点で考察し、意外な真実を提示する。趣味は、古い町並みを散策しながら、その土地の歴史や、人々の営みに思いを馳せること。

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