
「今日もやることが山積みなのに、なかなか集中できない...」
「大事な会議でうまく発言できず、後悔ばかり...」
「同じようなミスを繰り返してしまう...」
こんな職場での悩みを抱えていませんか?
実は、これらの問題を簡単に解決できる方法があります。それは「独り言」です。
「独り言なんて恥ずかしい」と思うかもしれませんが、テニス界のレジェンド、ラファエル・ナダル選手も試合中に独り言を活用しています。
「落ち着け」「このポイントを取れ」「集中しろ」
観客には聞き取れないその静かな言葉こそ、ナダル選手の強さを支える秘密のひとつ。多くの専門家がその効果を分析しています。
独り言は一般のビジネスパーソンにとっても非常に有用です。集中力アップからミス防止、メンタルコントロールまで、その効果とビジネスシーンでの活用方法をご紹介しましょう。
「独り言」で集中力が高まる
独り言をつぶやくことで、タスクの順序と進捗を把握でき、集中力が高まります。
トルコの大学でスポーツ科学を専門とするVeysel Temel氏によれば、ナダル選手の独り言が「ハイリスクな試合における集中力を維持し、精神面をコントロール」することで「成功に大きく貢献」していると言います。*1
独り言は、心理学用語で「セルフトーク」や「プライベートスピーチ」と呼ばれています。マンチェスター大学の心理学教師ソール・マクラウド氏は、セルフトークを心理学的に「行動を自己制御するために言語を用いること」と定義し、3つの効果を挙げています。
- 注意を集中する
- 行動の計画と順序付け
- 進捗状況の監視 *2
たとえば、仕事を始める前に「今日は13時から会議があるから、午前中に資料を作成し、メールの返信も済ませておこう」といったように独り言を言うイメージ。これによってタスクを整理し優先順位を決めながら、集中力を高めることができます。
【独り言の効用①】
- タスクの順序と進捗を把握できるため、集中力が高まる

「独り言」で行動の計画とフィードバックができる
独り言には、行動の順番を整理し、実行する効果があります。
認知心理学教授のロバート・N・クラフト氏は、独り言によって「特定の動作を順序立てて理解するだけでなく、連続する動作間の移行もスムーズ」になると述べています。*3
事務処理のやり方や取引先までの道順といった「決まった動作」は、独り言を唱えながら進めると覚えやすくなるのです。
それだけでなく、独り言は「フィードバック、建設的な批判、強化」にもつながると言うクラフト氏。*3
パソコンで文字を打ち間違えたとき、思わず「違う」「間違えた」と言ってしまった経験はありませんか? この独り言こそ、ミスを発見し修正するきっかけ。
独り言を言いながら仕事をすると、正しい順序でスムーズに作業を進められるうえ、ミスの早期発見や、自分の行動に対してフィードバックもできるのです。
【独り言の効用②】
- ミスを早期発見できる
- 自分の行動に対してフィードバックできる

「独り言」で心が整う
プレゼンや商談の前といった緊張する場面、仕事でミスをして落ち込みそうなときにも独り言は役立ちます。
前出のクラフト氏は、ストレス状況下での独り言の効果について、次のように述べています。
気まずい社交や期待外れの学業成績など、イライラさせられる状況の後では、その後に自分自身に声を出して話すことで、後悔を克服し、自己批判をより効果的に減らすことができます。*3
プレゼンがうまくいかなかったとしても、「事例の説明がうまくいかなかった。次はもっと詳しく調べておこう」と独り言を言うイメージです。すると、クヨクヨと落ち込むことなく、次の行動指針を立てられます。
さらにクラフト氏は「代名詞『あなた』、あるいはもっと良いのはファーストネームを使って声に出して自分に話しかけると、自己を遠ざけることができ、思考、感情、行動をコントロールする能力が向上」すると言います。*3
まるで他人に話しかけるように「あなた/きみ/名前」を使って独り言を言うことで、自分を客観視できるのです。
【独り言の効用③】
- 代名詞「あなた/きみ/名前」を使って自分に語りかけることで、自分を客観視できる

ビジネスシーンにおける活用術
独り言を活用する前に、ふたつのルールを押さえておきましょう。
まず、職場で独り言を言うのは気が引けるという人も多いでしょう。しかし、心の中でつぶやくだけでも大丈夫です。
次に、多くの人はつい「めんどくさい」「疲れた」のように、ネガティブな独り言が多くなりがち。メンタルトレーニングコーチの大儀見浩介氏は「ポジティブなセルフトークを意識して使っていくこと」を強調しています。*4
「大丈夫」「いける」といった短い言葉でもいいので、ポジティブな内容の独り言を意識して使ってみましょう。
仕事中の独り言のポイント
- 心の中でつぶやくだけで大丈夫
- 「大丈夫」「いける」などポジティブな内容を意識して
上記を踏まえて、ビジネスシーンでの独り言の例をご紹介します。
1. タスク開始のスイッチとなる
仕事を始める前や重要なタスクに着手する直前、独り言を取り入れると集中力アップにつながります。
🗣️「えっと、今日は資料作成とチームミーティング、それから案件Aか……。よし、重要なやつから片づけちゃおう」
🗣️「○○(自分の名前)、午前中よく頑張ったな〜。さて、午後はプレゼン準備に集中するか!」」
2. 優先順位をつけられる
優先順位をつければ、1日のタスクを整理したり、目の前の作業を効率よく進めることができます。
- 1日のタスク整理
🗣️「今日はまず案件Aを進めて……上司に報告もしないとな。案件Bの修正もあるし、案件Cの見積もりも出さないと。全部片づいたらメール処理までやっちゃおう、よし」
- 資料作成中
🗣️「○○(自分の名前)、まずは内容の正確さに集中して大枠をガッと作っちゃおう。デザインは後回しでいいや……うん」
- プレゼン内容の整理
🗣️「とりあえず、自己紹介→課題→提案の順で進めよう。時間配分は……3分、10分、5分ってところかな」
3. 自分を励ますことができる
前出の大儀見氏は、気持ちを切り替えたいときは「繰り返し」も有効だと言います。*4
代名詞「あなた/きみ/名前」も取り入れながら、心が落ち着くまで言い聞かせるイメージで独り言を使ってみてください。
- 商談前の緊張
🗣️「〇〇(自分の名前)は十分に準備してきた。大丈夫、大丈夫!」
- 会議でうまく発言できなかった
🗣️「うわ……恥かいたかも。でも、〇〇(自分の名前)、今回はただ根拠が足りなかっただけだよ。次はちゃんとデータを用意して会議に臨もう」
【職場で役立つ独り言】
- タスク開始のスイッチを入れるために
- 優先順位を把握するために
- 自分を励ますために

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ナダル選手をはじめ、アスリートからビジネスリーダーに至るまで、世界の第一線で活躍する人が実践している「独り言」。あなたもぜひ今日から取り入れて、職場での自分を整えるのに役立ててください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 Veysel Temel (2025),The Power of Inner Dialogue: The Impact of Self-Talk Techniques on Athlete Performance, Arch Clin Exp Orthop, Vol. 9, No.1, pp.001-003.
*2 Simply Psychology|Vygotsky’s Theory of Cognitive Development
*3 Psychology Today|7 Reasons to Talk to Yourself Out Loud
*4 ウェッジオンライン|「つぶやき」が強いビジネスマンをつくる
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。