「問い上手」は「聞き上手」 あなたの会話力を爆増させる「問いの技術」

スーツ姿の男性が壁にもたれながら顎に手を当て、考え込むような表情をしている。背景には複数の黒いクエスチョンマークが散りばめられている

オフィスで同僚との会話がふいに途切れる。オンラインミーティングでは相づちを打つばかりで、なかなか盛り上がらない。こんな「会話の壁」を感じたことはありませんか?

じつは、多くのビジネスパーソンが抱えるこの悩みの根底には、「聞く力」だけでなく「問いを返す力」という課題が潜んでいます。

人間関係を豊かにするのは、話術の巧みさではありません。この壁を乗り越えるカギは、「問い返しの技術」にあります。

本記事では、信頼される人が実践している「問い返しの技術」を3つのタイプでご紹介します。ちょっとした返し方の工夫が、深い信頼を築き、会話の質を向上させるのです。

「聞く」だけでなく「問い返す」ことで、信頼が生まれる

まず知っておきたいのは、「聞き上手」と「問い上手」はセットで考えるべきだということです。

・ 聞き上手は「受け止める」力
・ 問い上手は「引き出す」力

人が会話で心を開くのは、共感されたと感じて、さらに「この人と話すと、考えが整理される」と実感したときです。まず共感で安心感をつくる。そして問いで相手の思考を深める。

この両方を使いこなせると、相手は自然と本音や新しい気づきにたどり着けるのです。

スーツ姿の2人の女性が室内で向かい合い、笑顔でハイタッチをしている。

「モヤモヤしてる……」と言われたら?

たとえば、同僚がこう漏らしたとします。

「最近、このプロジェクトなんかモヤモヤする……」

多くの人は、「そうなんだ」「大変だね」と返して終わります。

しかし、そこで一歩踏み込んで「なにが一番モヤモヤしてる?」と問いかけてみてください。

このひとことで、相手の脳内では「自己探索」が始まります。思考や感情を言葉にする過程で、相手は自分のなかにある問題の本質に気づきやすくなるのです。

「なぜそう思う?」と問い返すだけで、相手は自分の思考を整理し、「目的が曖昧だったのかも」と自発的に気づくことがあります。

【研究から】
心理学ではこれを「メタ認知的対話」と呼びます。心理学者ジェームズ・ペネベイカー氏らの研究では、つらい体験や自分の考えを言葉にして書き出すことで、出来事の意味づけが進み、感情の整理やストレス低減につながることが報告されています。*1

「もっと自由に進めたい」と言われたら?

意見が食い違ったとき、つい自分の正しさを主張したくなります。しかし、まずは共感を示し、そのうえで相手の考えを深める問いを返すことで、ポジティブな対話が生まれます。

たとえば、部下が「もっと自由に進めたいんです」と提案してきたら、

「ルールがあるから」と即座に否定するのではなく、「なるほど、そういう考えもあるよね。具体的にどの部分で自由度がほしい?」とかえしてみてください。

重要なのは、同意ではなく共感的理解を示すことです。「そう思ったんだね」「たしかにそう感じる人もいるよね」と問いかけることで、お互いに意見を出しやすくなります。

【研究から】
好意的に受け止めてくれたと感じた場面では、社会的学習を促進するホルモンであるオキシトシンが関与している可能性が指摘されています。*2

「どうすればいいですか?」と聞かれたら?

会話の終盤、つい「こうしたほうがいい」とアドバイスしたくなりませんか?

でも、そこでひと呼吸おいて「じゃあ、どうしたい?」と問い返してみましょう。

優秀なリーダーほど「助言」と「問い」の両方で部下を導きます。アドバイスは一時的な解決策を与えますが、問いは長期的な成長を促します。

相手の「主体性」を引き出すには、未来に焦点を当てた問いかけがポイントです。ぜひ今日から「どうしたい?」「どんな結果を目指したい?」と尋ねてみてください。相手が自分で考え始める変化に気づくことがあります。

【研究から】
心理学者エドワード・デシ氏とリチャード・ライアン氏による自己決定理論では、「人は自分で選んだ行動のほうが、動機が内側から湧き、長く続く」と説明されています。*3

スーツ姿の男性が資料を示しながら女性に説明している。

なぜ問いと共感のセットが効果的なのか

なぜ、「問い」や「共感」はこんなにも力があるのでしょうか。その背景には、脳の仕組みが関係しています。

「理解された」「尊重された」と感じたとき、相手はあなたとの会話を「心地いい体験」として記憶し、信頼感が強化されるのです。

つまり、問いの力とは、感情と脳の両面から相手を「動かす仕組み」でもあるのです。

【研究から】
「理解された」「尊重された」と感じたとき、脳ではドーパミンやオキシトシンが分泌され、快の感情が生まれます。心理学者ダニエル・ゴールマン氏は、これを「社会的知性」と呼びました。彼によると、成功するリーダーは知識量ではなく、「感情を通じて他者を動かす力」で差がつくといいます。*4

人を動かす力は問いの設計にある

本当の「聞き上手」とは「問い上手」のことです。相手の思考を引き出し、感情を整理し、未来への一歩を促す。この「問いの力」を身につけることで、いまよりも会話がぐんと深いものになるでしょう。

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今日の会話で、誰かに「問い」を返してみてください。その瞬間から、あなたのコミュニケーションは確実に変わり始めます。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。

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