
「勉強のやる気が出ない」「不安や焦りで集中力が続かない」など、さまざまなプレッシャーが引き金となり、勉強がはかどらないという経験はありませんか?
「プレッシャー」というと勉強のはかどりを邪魔する悪いもののように感じますが、実はそうとも限りません。プレッシャーとの向き合い方を工夫し、プレッシャーをいい形で利用できれば、勉強をはかどらせることができるのです。
今回の記事では、プレッシャーをいい形で利用して勉強をはかどらせる方法をご紹介します。
- やらないほうがいい「悪いプレッシャー」のかけ方①
- やらないほうがいい「悪いプレッシャー」のかけ方②
- できたら最強「いいプレッシャー」のかけ方①
- できたら最強「いいプレッシャー」のかけ方②
- 「悪いプレッシャー」のはずし方
やらないほうがいい「悪いプレッシャー」のかけ方①
受け身の姿勢で行う勉強は「悪いプレッシャー」となっている可能性があります。
脳科学者の茂木健一郎氏によると、「脳の活動は抑制や制約により停滞する」そうです*1。ここでいう制約はあくまで、「他者からの制約」です。
たとえば上司から資格を取るように言われたけど、学びたい分野の資格ではないためやる気が出ない……というように「言われたからやる」という状況はまさに「他者からの制約」で、自分にとって「悪いプレッシャー」です。
さらに同氏は「他者からの制約」について、このようにも述べています。
一度「やらされている」と受け身に感じてしまうと、脳が抑制されて前頭葉を中心とする「やる気の回路」がなかなか働かなくなるということが、脳科学でも証明されているのです。
たとえば筆者が以前勤めていた会社は、社員の資格取得を強く推奨していました。そして筆者にも「この資格は必ず取るように」とのお達しがありましたが、ちょうどそのタイミングは異動の時期。新しい業務を覚えることで精一杯で気持ちにゆとりがない上に、筆者の苦手分野でもあり、どうしても勉強に身が入りませんでした。
まさにこの状況は「言われたからやる」という受け身の状態で、「やる気の回路」が働かなくなっていたように思います。このような受け身な姿勢での勉強が「悪いプレッシャー」となり、やる気を邪魔しているかもしれません。

やらないほうがいい「悪いプレッシャー」のかけ方②
不安を抱えることは、自分に悪いプレッシャーをかけることになります。なぜなら、不安は勉強で使う脳の領域を奪うからです。
脳科学者の篠原菊紀氏は、「やる気や不安が記憶にも密接な関係がある」と述べています*2。その理由について、同氏は以下のように述べています。
プレッシャーが脳のメモである、ワーキングメモリの容量を食ってしまい、考える能力が低下したからだと考えられています。
ワーキングメモリについて同氏は、以下のように説明します。
ワーキングメモリは短期記憶の一種で、記憶や情報を一時的に保持して組み合わせて答えを出していく機能のことです。
つまり私たちはこの脳のワーキングメモリに、会話や思考、計算や英単語などちょっとした情報を一時的に置き、コミュニケーションをとったり仕事や勉強をしたりしているのです。
たとえば「試験に落ちたらどうしよう……」という不安や、「優秀な周りと比べて焦る」「勉強の成果が出ない」というプレッシャーや焦りで頭がいっぱいになり、勉強に集中できない人もいるかもしれません。
この「頭がいっぱい」な状態は、不安や焦りでワーキングメモリの容量が減ってしまっている状態なのです。ワーキングメモリの容量が減った分、勉強で使える脳の領域も減ってしまいます。そうすると集中力や理解力も低下してしまい、勉強にブレーキがかかってしまうのです。
そのため、不安を抱えると自分に悪いプレッシャーをかけることになるといえます。

できたら最強「いいプレッシャー」のかけ方①
他者からの制約が悪いプレッシャーとなっている人は、「内面化」を実践するといいでしょう。内面化とは、自分が属する集団の価値観を"他人事"としてではなく"自分事"として意識して行動すること*1です。
つまり「やらされている」という意識ではなく、自主的に意識して取り組むということです。
たとえばこれを勉強に置き換えると、「上司の指示だから勉強をする」というだけだと、勉強に対して「他人事」な姿勢といえます。でも、「この資格をどのように活かすか」と考えながら勉強をすることは、勉強に「自分事」として向き合う自主的な姿勢です。
さらに茂木氏は「脳は、『自分の課題だ』と実感したときに初めてやる気を出します」とも述べています*1。
勉強を「自分事」にする方法
業務効率化のためにOAスキルの勉強をしているなら、「作業の自動化ツールを作り、残業を減らそう」など、スキルアップした先の自分をイメージする
「上司の指示で資格をとらなければいけない」などの場合は、「この資格に合格したら休みをとって、旅行しよう」というように、自分にご褒美を用意する
このように、学んだ先のビジョンを明確にし、勉強を「自分事」としてとらえることで、「悪いプレッシャー」を「いいプレッシャー」へと変換できるでしょう。

できたら最強「いいプレッシャー」のかけ方②
他者から受けるプレッシャーは脳の働きを抑制してしまいますが、自分自身にプレッシャーをかける方法は、脳の栄養となると茂木氏は話します。その方法として同氏が実践していることが、「タイムプレッシャー」です*1。
タイムプレッシャーとは、「この時間内でこの仕事をすべて終わらせる」、あるいは「この時間でここまで原稿を書き上げる」など、時間制限を自分の中に設ける手法です。
タイムプレッシャーの実践例
電車から降りるまでの10分間で、参考書を2ページ読もう
出勤前の5分間で、問題を1問だけ解こう
寝る前の15分間で、3つだけ暗記をしよう
タイムプレッシャー下で脳はどのように働くのでしょうか。精神科医の西多昌規氏によると、タイム・プレッシャーには注意力を高める脳内物質・ノルアドレナリンを活発に分泌させる働きがあり、ノルアドレナリンにはやる気を高めるドーパミンの働きを強化する作用があります*3。
このノルアドレナリンとドーパミンの相乗効果によって集中力が高まるそうです。このことからタイムプレッシャーは、集中力ややる気が高まる脳内物質を分泌させる「いいプレッシャー」だとわかります。
筆者も上記を踏まえて「タイムプレッシャー」を実践してみました。筆者は読みたい本がたまっていたので、図書館を利用して「期限までに返さなければいけない」状況を作りました。その結果期限を意識しながら読書でき、集中力も高まり読書効率が上がりました。

「悪いプレッシャー」のはずし方
不安を抱えると自分に悪いプレッシャーをかけることになると前述しましたが、そうはいっても、どうしても不安で思考が支配されてしまうこともあると思います。
たとえば「試験日が近づいてきたけど、本当に受かるだろうか」「同期は合格しているのに、自分だけ落ちるのは恥ずかしい」など。
そういう場合は、勉強の直前に「不安を紙に書き出す」方法がおすすめです。不安と記憶について、アメリカ・シカゴ大学で以下のような実験が行われました*2。
シカゴ大学の実験
大学生20人に数学のテストを2回受けてもらい、1回目には「ベストを尽くすように」と指示し、2回目は「成績優秀者には賞金」「成績が悪ければ連帯責任」とプレッシャーをかける。そして2回目のテストの前には、半分の学生に「試験に関する不安」を書いてもらい、成績の変化を比べる。
その結果プレッシャーをかけられた学生は成績が12%も下がったそうですが、試験前に「試験に関する不安」を書き出した学生は、成績が5%も上がったそうです。
このことについて、篠原氏は以下のように述べています*2。
不安をはき出すとワーキングメモリに空きが生じ、考えやすくなるからだとみられ、これはカウンセラーなどに話をすることで不安が軽減されるカウンセリング効果と同じような効果が働いたのではないかと考えられています。
もし、「こんなに頑張ったのに落ちたらどうしよう」「理解が遅くて自信をなくす」など、不安が頭から離れず勉強に悪影響を及ぼしているなら、勉強の直前にその不安を書き出し、脳の領域を確保しましょう。
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ぜひ今回紹介したプレッシャーとの向き合い方を実践し、みなさんの勉強にお役立てください。
*1 茂木健一郎(2015),『結果を出せる人になる!「すぐやる脳」のつくり方』,学研出版.
*2 東洋経済オンライン|脳科学者が推奨!成績をアップする「簡単工夫」
*3 STUDY HACKER|「勉強に集中できる人」は "この4つ" を自然とできている
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。