「新人だから遠慮」はNG。代理店が活躍するためには、あなたの情報が必要だ【新人さんのためのマーケティング講座 Season2 vol.13】

📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

Season1では、マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識までを体系的に解説しました。Season2は、配属されてしばらく経ち、実務をこなしながらさまざまな「壁」にぶつかり始めた方に向けて、より実践的なテーマを掘り下げていきます。

まだSeason1を読んでいない方は、まずそちらからどうぞ。▶ 新人さんのためのマーケティング講座 Season 1【全14回まとめ】 ——マーケティングの基礎知識を徹底解説!

月に一度の代理店との定例会議。
レポート資料が画面に映し出されます。

「今月のインプレッション数は前月比105%でした」
「CTRはやや低下傾向ですが、業界平均と比較すると……」
「最新のアルゴリズム変更により、推奨される入札戦略は……」

専門用語が飛び交い、グラフと数字が次々と流れていく。
あなたは頷きながらメモを取り、最後に「ありがとうございます、引き続きよろしくお願いします」と言って会議を終える。

ちょっと待ってください。
これで「マーケティングをやっている」と思っていませんか。

本記事では、広告代理店との関係を見直し、マーケターとして何をすべきかを考えます。
英語学習サービスを例に、具体的に見ていきましょう。

代理店は「広告運用」のプロである

最初に明確にしておきたいことがあります。
広告代理店は広告運用のプロフェッショナルです。

Google広告の最新アップデート、Meta広告のアルゴリズム変更、TikTokの新しい広告フォーマット。
こうした媒体の動向を常に追いかけ、入札戦略を最適化し、クリエイティブの配信効率を高める。
これが彼らの専門領域です。

そして重要なのは、代理店は「広告運用を任されている」という認識で仕事をしているということです。
広告運用の成果を最大化することで、クライアントに価値を提供しようとしている。
これは当然のことです。

問題は、ここから生まれます。

代理店は広告運用の成果を最大化しようとしている。
しかし、あなたの会社が追いかけている目標は「広告運用の成果」ではなく「事業の成果」ですよね。
この2つは、必ずしも一致しません。

たとえば、こんなことが起きていませんか。

あなたは英語学習サービスのマーケターだとします。
代理店に広告運用を任せていて、レポートは「順調」と言っている。
CTRは改善、CPAも下がっている。
しかし、事業全体で見ると売上が伸びていない。なぜか。

原因はいくつか考えられます。

  • 広告で獲得した「無料体験」の申込者が、有料会員に転換していない
  • 有料会員になっても1ヶ月で退会する人が多い
  • そもそも「英語学習に本気ではない人」ばかりを集めている

これらは、広告運用だけを見ていてはわからない問題です。
そして、代理店に伝えていなければ、代理店も気づけない問題です。

全体戦略を代理店に伝えているか

ここで問いたいのは、あなたは代理店に「全体戦略」を伝えていますか、ということです。

Season1のvol.7で学んだマーケティングファネルを思い出してください。
認知→興味・関心→比較・検討→購買。そして購買後の継続・紹介・発信。

広告はファネルの各段階で使えます。
認知段階ではディスプレイ広告や動画広告、興味・関心段階ではリターゲティング、比較・検討段階ではリスティング広告、といった具合に。

代理店は、このファネルのどこを強化すべきか、判断材料を持っていますか。

たとえば、こんな情報を共有しているでしょうか。

  • 「今、ファネルのボトルネックは"無料体験→有料会員"の転換率にある。集客は十分できているが、体験後に契約に至らない人が多い」
  • 「継続率を分析したら、"TOEICスコアアップ目的"の人より"仕事で英語が必要になった人"の方が継続率が高いことがわかった。この層の獲得を優先したい」
  • 「来月から新しいコースを始める。訴求も変わるので、広告のメッセージも合わせて変えたい」

こうした全体戦略の情報がなければ、代理店は「広告単体の最適化」しかできません
CTRを上げる、CPAを下げる。それ自体は正しい努力ですが、事業全体の成果につながるかどうかは別の話です。

逆に、全体戦略を共有すれば、代理店は「事業成果に貢献する広告運用」を考えられるようになります。

「この層を優先するなら、ターゲティングをこう変えましょう」
「LPの訴求が変わるなら、広告のクリエイティブもこう調整しましょう」

代理店の知見が、全体戦略に沿った形で活きるようになるのです。

代理店に「顧客のこと」を伝えているか

全体戦略と並んで重要なのが、顧客理解の共有です。

代理店が提案してくる施策は、多くの場合、業界の平均値に基づいています。

「英語学習サービスでは、Before/Afterの訴求が効果的です」
「"3ヶ月でTOEIC○○点アップ"のような具体的な数字が響きます」

どれも間違ってはいません。
しかし、あなたの会社の顧客が「平均的な英語学習者」である保証はどこにもありません。

ここで問いたいのは、あなたは代理店に顧客のことをどれだけ伝えていますか、ということです。

たとえば、こんな情報を共有していますか。

  • 「無料体験に来る人の多くは、"英語を話せるようになりたい"というより"英語の勉強法がわからなくて困っている"」
  • 「体験後に契約した人の共通点は、"独学で挫折した経験がある"こと」
  • 「継続率が高い人は、"仕事で英語が必要"という明確な理由がある人」
  • 「意外にも、英語初心者より中級者の方がLTVが高い」

こうした情報があれば、代理店の提案の質は変わります。
「業界のベストプラクティス」ではなく、「御社の顧客に合った施策」を一緒に考えられるようになるからです。

良いブリーフが良い広告をつくる

代理店に広告制作を依頼するとき、どんな情報を渡していますか。
その要件書を「ブリーフ」と呼びます。

ブリーフの質が、広告の質を決めます。
具体的に比較してみましょう。

✕ 曖昧なブリーフの例

「ターゲット:20代〜40代のビジネスパーソン、英語学習に関心あり。訴求:科学的なメソッドで効率よく学べる。目的:無料体験の申込獲得」

◯ 具体的なブリーフの例

「ターゲット:35歳前後の会社員。過去に英会話スクールや独学で英語を勉強したが、続かなかった経験がある。"また挫折するんじゃないか"という不安を抱えている。訴求:なぜ続かなかったのかを分析し、あなたに合った学習法を提案する。競合との違い:"頑張れ"ではなく"なぜできないかを一緒に考える"というスタンス」

前者からは、どこにでもある英語学習サービスの広告しか生まれません。
後者からは、「これは自分のことだ」と思ってもらえる広告が生まれます。

この具体性を出せるのは、日々顧客と向き合っているあなただけです。

無料体験に来た人が何に困っていたか、契約した人が決め手として挙げたこと、継続できている人の共通点。
こうした「生の情報」を代理店に共有することが、協業の第一歩です。

「お任せ」から「協業」へ

ここまでの話を整理しましょう。

代理店は「広告運用」の専門家です。
広告運用の成果を最大化することで価値を出そうとしている。
これは正しい姿勢であり、その知見は尊重すべきです。

一方で、あなたが追いかけているのは「事業の成果」です。
広告運用はその手段のひとつ。

だからこそ、全体戦略や他の施策で何が起きているのかを代理店に伝え、ずれがあればすり合わせをする。
これがマーケターの仕事です。

定例会議での振る舞いを見直してみてください。

✕「お任せ」モードの対応

代理店「CTRが低下しています。クリエイティブを差し替えましょう」
あなた「わかりました。お願いします」

◯「協業」モードの対応

代理店「CTRが低下しています。クリエイティブを差し替えましょう」
あなた「ありがとうございます。ちなみに、最近の無料体験のデータを見ていたら、"仕事で英語が必要になった人"の有料転換率が高いことがわかったんです。今後はこの層の獲得を優先したいと考えています。"TOEICスコアアップ"訴求より、"ビジネスで使える英語"訴求の方向でクリエイティブを考えていただけますか」

この違いが、成果の違いを生みます。

代理店に全体戦略を共有し、代理店の知見を借りながら最適化を図る。
このキャッチボールが回り始めたとき、代理店は「レポートを持ってくる業者」から「一緒に事業成果を追う仲間」に変わります。

新人だからといって、遠慮する必要はありません。
むしろ、遠慮してはいけません。

代理店は広告運用の専門家ですが、あなたの会社の顧客のことは知りません。

無料体験に来た人が何に困っていたか、契約を決めた人が何を評価していたか、継続している人にどんな共通点があるか。
この情報を持っているのは、あなただけです。

あなたが情報を伝えなければ、代理店は「業界の平均値」で動くしかありません。
あなたが情報を伝えれば、代理店は「あなたの会社の顧客」に向けた施策を考えられるようになります。

代理店を動かすのは、あなたの情報なのです。

ずれていれば、すり合わせる

最後に、もうひとつ大事なことをお伝えします。

代理店の提案と、あなたの全体戦略がずれることは当然あります。
代理店は広告運用の最適解を提案してきます。
しかし、それが事業全体の最適解とは限りません。

たとえば、代理店が「CPAを下げるために、"英語 初心者"のキーワードを強化しましょう」と提案してきたとします。

しかし、あなたは継続率のデータから「初心者より中級者の方がLTVが高い」と知っている。
であれば、CPAが多少高くても、中級者を獲得し続ける価値があるかもしれません。

こうしたずれがあったとき、代理店の提案を鵜呑みにするのでもなく、頭ごなしに否定するのでもなく、情報を共有してすり合わせる

「初心者より中級者の方がLTVが高いので、CPAが上がっても中級者向けのキーワードを維持したいんです。その前提で、何か工夫できることはありますか」と。

制約条件を正しく伝えれば、代理店はその中で最適解を考えてくれます。

あなたの仕事は、その制約条件——つまり全体戦略や事業の優先順位——を正しく伝えることです。

「お任せ」でもなく「指示」でもなく「協業」。
この関係を築けたとき、広告運用は事業成果に直結する武器になります。

 

【本記事のまとめ】

1. 代理店は「広告運用」のプロ
広告運用の成果を最大化することで価値を出そうとしている。その知見は尊重すべき。

2. 「広告の成果」と「事業の成果」は別
CTRやCPAが改善しても、事業全体の成果につながるとは限らない。

3. 全体戦略を伝える
ファネルのどこがボトルネックか、どの層を優先するか、他の施策で何が起きているか。

4. 顧客のことを伝える
顧客理解を具体的に言語化して共有することで、広告の精度は上がる。

5. ずれがあれば、すり合わせる
代理店の提案を鵜呑みにするのでもなく、否定するのでもなく、情報を共有して最適解を探る。

よくある質問(FAQ)

代理店に何を伝えればいいですか?

全体戦略(ファネルのどこを強化したいか、どの層を優先するか)と、顧客理解(どんな人が買っているか、なぜ買っているか)の2つです。この情報があれば、代理店は「御社の事業に貢献する広告運用」を考えられるようになります。

代理店の提案と自分の考えがずれたらどうすればいいですか?

鵜呑みにするのでもなく、否定するのでもなく、情報を共有してすり合わせてください。「こういう理由でこの方針にしたいのですが、その前提で何か工夫できますか」と伝えれば、代理店も最適解を考えてくれます。

代理店との定例会議、何を話せばいいですか?

レポートを聞くだけでなく、最近の事業の動向や優先順位の変化を共有してみてください。「来月からこういうキャンペーンを始める」「この層の獲得を強化したい」といった情報があれば、代理店も先回りして提案できるようになります。

▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season2

配属されてしばらく経ち、実務で壁にぶつかり始めた方へ。より実践的なテーマを掘り下げます。

Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

スタディーハッカー 代表取締役社長
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
X→@oka_kgs / Instagram→@oka_ken2010 / 著書(amazon)

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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