
「売上10%アップ」「離職率3%減」――ビジネスの現場では、成果を数字で示すことが求められます。
ところが、実際の会議やプレゼンでせっかくのデータを並べても、「それで?」という反応しか返ってこない……。
あなたにも、そんな経験はありませんか?
数字は確かに嘘をつかない事実ですが、それだけでは人を動かすことはできません。
相手に「なるほど!」「じゃあ、それでやってみよう!」と思わせられるようなあなたなりの解釈こそが、行動を生むトリガーとなるのです。
この記事では、事実に解釈の視点を加えることで「人を動かす力」を高める方法を解説します。
数字を武器に昇進・昇格を目指すビジネスパーソン、部下や上司に成果を報告するマネジャー層にとって必須のスキルです。
なぜ「事実」だけでは人は動かないのか
ビジネスの場では客観的で信頼できるデータが重視されますが、それを示すだけでは相手の行動を変える力にはなりません。
「今期の売り上げは10%伸びました」「このツールを導入すれば、コストを15%抑えられます」と伝えても、「それはすごいね」「それで?」のようなリアクションしか得られない……。
このような状況に思い当たる節があるのなら、「数字の罠」にハマっている可能性があります。
グロービス経営大学院教授の岡重文氏は、人を動かすには「納得と共感を揃えること」が大切だと述べています。*1
たとえば、自分に置き換えて考えてみましょう。
- 業務プロセスの改善が必要だと言われて理解はするけど、変えることで一時的に混乱するかもしれない
- スキルアップが必要なのはわかるけど、タスクが逼迫していて研修会に参加しようとは思えない
- 睡眠時間の確保が大事と言われても、勉強時間を確保できないから夜更かしするしかない
これらはすべて、事実を理解していたとしても、「いま動かなければ!」と心が動かなければ行動につながらないことを示しています。
私たちが本当に伝えるべきなのは「数字そのもの」ではなく「数字が示す意味」――つまり、数字に解釈を加えて初めて相手の心に届き、行動を変える力になるのです。

「だから何?」をセットで伝える
事実をそのまま伝えるだけでは「ふーん」で終わります。
しかし、「だから何?」を添えることで事実は生きた情報に変わるのです。
エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターの三寺雅人氏と戦略プランナーの鈴木大輔氏は、「人を動かす『価値ある事実』」について語るなかで、事実への光の当て方の重要性を指摘しています。*2
(例1)今期の売り上げが10%増加した
事実:「今期の売り上げが10%増加しました」
解釈:「新規顧客の開拓だけでなく、既存顧客のリピート購入が増えた結果です。つまり、顧客満足度が高まり、ブランド信頼が強まっている証拠だと言えます。」
→「お客様に選ばれ続けている証拠」という意味づけを加えることで、数字の価値が高まります。
(例2)コストを15%削減できた
事実:「コストを15%削減できました」
解釈:「単なるコストカットではなく、業務プロセスの改善による時間コスト削減と効率化を実現し、チーム全体の生産性を上げました。その結果、浮いたコストを新規プロジェクトに投資できる余裕が生まれています。」
→解釈を加えることで、「未来への投資を可能にした成果」へと変わります。

解釈を伝える3つのコツ
実際の会議やプレゼンで解釈を加えるには、ちょっとした工夫が必要です。ここではすぐに使える3つのコツを紹介します。
1. 相手目線での価値に置き換える
ビジョナリーパートナーの和仁達也氏は、人に動いてほしければ「相手が自然と動きたくなるような『相手目線の目的・メリット』を言語化」をすることが大切と語ります。*3
- チームメンバーに伝えるなら:「コストを15%削減することで日々の負担が減る・評価につながる」
- 部長に伝えるなら:「部門全体の業績向上や予算裁量の向上」
- 役員に伝えるなら:「会社の利益率改善や市場からの信頼強化」
同じ数字でも、相手によって意味づけを変えることで「自分ごと」として受け止めてもらいやすくなります。
2. 未来の行動に結びつける
「単なる事実の報告」で終わらせず、「次に何をすべきか」という解釈を添えましょう。
(例)
「離職率を3%削減できたのは、働きやすい環境づくりが成果を上げ、優秀な人材の流出を防げた結果です。
今後はさらにキャリア支援や柔軟な働き方を整えることで、定着率を高めながら組織力を底上げしていきましょう。」
具体的な行動提案を加えることで、あなたの分析力・洞察力の評価にもつながります。

3. 感情を動かす言葉を添える
事実の価値を「ストーリー」として伝えることで、人の感情を動かすことができます。
コンサルタント・講師として活動する川原礼子氏は「ストーリーを使うことで、情報は説明から『体験』へと変わ」ると述べています。*4
(例1)チームの成果を報告する場合
「月次レポートの自動化ツール導入により、各メンバーが新規顧客対応に注力でき、売上目標を達成できました。
この成果は、チーム全員の努力が実った証拠です。」
(例2)顧客満足度の向上を報告する場合
「問い合わせ対応プロセスを改善し、返信スピードが半分に短縮。
顧客満足度調査で『対応が迅速で安心できる』という声が増えました。
改善の結果、顧客の安心につながったのです。」
このように、情景が浮かぶストーリーを添えることで、数字が「心に響くメッセージ」へと変わります。

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事実を伝えたうえで解釈も伝える――その小さな工夫が、人を動かす鍵となります。
そしてそれは、あなたの伝える力を高め、キャリアを切り拓く大きな武器となるはずです。
※引用の太字は編集部が施した
*1 東洋経済オンライン|「ロジックだけ」では人を動かせない納得の理由
*2 日経クロストレンド|マーケティングやブランディングの前に、まず「事実」でしょ?
*3 Japan Cash Flow Coach Association.|人が動いてくれない理由は、相手ではなくこちらにあった!自分目線ではなく相手目線でメリットを伝える方法とは?
*4 ダイヤモンド・オンライン|話がヘタな人は「情報だけを伝える」。じゃあ、話がうまい人はどう言う?
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。