
帰宅したら勉強しなければ——と思って昨日問題集も取り寄せたのに、気づいたらそのままソファで寝てしまっていた。スマートフォンの通知で起きたら、すでに就寝時間。
「……また、今日も勉強できなかった。いまから取り組むのも面倒くさいなぁ」
夜は仕事の疲れ、朝はギリギリまで寝ていたい……多くのビジネスパーソンが「平日の勉強は面倒」と感じているのではないでしょうか。
「自分は意志力が弱いから」「面倒くさがりな性格だから……」と自分を責めているのなら、ちょっと考えてみてください。面倒くさいと感じる原因は、勉強のハードルが高すぎるからではありませんか?
同じ面倒くさがりでも、「勉強で結果を出せる人」と「出せない人」がいます。面倒くさがりだからこそ身につけられる、効率的な勉強法をご紹介しましょう。
面倒くさがりなのに勉強できる人は「短時間集中」を繰り返している
- 「面倒くさがりで勉強できない人」:「勉強時間を確保しなくては」と思っている
- 「面倒くさがりなのに勉強できる人」:長時間の勉強より「短い時間の集中」を繰り返している
勉強におけるスキマ時間の大切さは、多くのビジネスパーソンが知っていることでしょう。実際に優秀な人は「スキマ時間」を有効活用して、勉強の成果をあげています。
その一例が、ハーバード大学卒のヴァイオリニスト、廣津留すみれ氏。同氏はインタビューで次のようにコメントしています。
5分あればスマホでメールも返せるし、スペイン語学習のノルマもこなせるし、明日のディナー場所の候補も探せる。短い時間単位でできることを意識することで、すきま時間も有効活用できるし、時間制限があることで集中力もアップします。*1
これは脳科学的にも理にかなっています。「集中力は15分程度しか持続しない」——と語るのは、脳科学の専門家であり公立諏訪東京理科大学の特任教授・篠原菊紀氏。篠原氏によれば、2時間集中できたと思っても「実際には15分集中して1回途切れ、再び15分集中して……という波を繰り返している」だけとのこと。
とはいえ、集中が持続しないことが悪いわけではありません。篠原氏によれば、集中力が途切れてぼんやりするとき、脳内では「デフォルト・モード・ネットワーク」の状態になるのだそうです。この状態は「自分の中にある体験や情報の記憶を引き出し、『ひらめき』が生まれ」るのに役立つのだそう。*2
つまり「15分の勉強」→「ぼーっとする」→「15分の勉強」を繰り返せば、インプットされた情報が頭のなかで整理され、「さっき勉強したものは過去のあの体験のことだ」とひらめきが生まれる可能性があるのです。
たとえば、通勤時間だけではなく以下のスキマ時間も利用できるでしょう。
- コーヒーをドリップしている時間
- 資料画像をダウンロードしている時間
- バスタブに湯をはるまでの時間
「今度まとまった時間ができたら」ではなく、「今日の15分」から始めてみませんか?

面倒くさがりなのに勉強できる人は「簡単な勉強法」を取り入れている
- 「面倒くさがりで勉強できない人」:参考書や問題集に取り組むことだけが勉強だと思っている
- 「面倒くさがりなのに勉強できる人」:「動画」「SNS」「オーディオブック」を取り入れている
SNSや動画視聴、WEB記事の閲覧は、勉強の誘惑とされています。しかし、考えを変えればこれらの行為こそ、もっともハードルの低い勉強になりうるのです。
スタンフォード大学のBJ・フォッグ教授は著書、『Tiny Habits』のなかで永続的な行動変容を促す要素を3つ挙げています。
- 動機:やる気・意欲
- 能力:行動をとる難易度
- きっかけ:行動するためのきっかけとなるもの *3
上記の3つがそろえば、習慣化ができるのです。
たとえば「3分間の英語動画を見る」は簡単なので取り組みやすいもの。一方「250ページの文法書を3日で読み通す」は難易度が高く、取りかかる気になりません。行動を変えるには「やる気を高める」よりも「難易度を下げる」ことが重要なのです。
さらに「スマートフォン」は毎日触るため「きっかけ」として最適。「スマホを開いたらまず学習動画を見る」と決めれば、抵抗なく続けられます。ほかにも以下の活用例があります。
- SNS:XやInstagramなどのSNSで専門家のアカウントをフォロー。SNSを開くたび、TLに最新の情報、学習リソースをえることができる
- 生成AI(ChatGPTなど):読書のアウトプット(感想・要約など)、英会話の短いロールプレイをする
「参考書を開くのは面倒」と感じるなら、いつも触るスマートフォンから始めてみてはいかがでしょうか。

面倒くさがりなのに勉強できる人は「見返さないノート」をつくっている
- 「まじめなのに勉強の成果が出ない人」:時間をかけてきれいなノートを作ろうとして、結局作れずに終わる
- 「面倒くさがりなのに勉強できる人」「見返さないノート」をつくり、その場で記憶に定着させる
「見返さないなんて、ノートをとる意味があるの?」——そう考える人もいるかもしれませんが、目的が「情報を整理して覚えるため」だけだったら、ノートは「メモ感覚」で使えばいいのです。
『東大大全 すべての受験生が東大を目指せる勉強テクニック』の著者 布施川天馬氏は、「ノートを見返すことはほぼしない」のだそうです。同氏のノートの使い方は——
あくまで書きながら自分が記憶することを目的としているので、自分が理解できなかったことや面白いと思ったことなども、規則性なく書き込んでいる。*4
とのこと。講義内容をそのまま写すのではなく、考えながら脳のなかでまとめた情報を、ノートに落とし込んでいるのです。
重要なのは「考えて整理しながら書く」点です。これは脳のなかで深い処理を行なう行為——「生成効果」の一部にあたります。
カリフォルニア大学バークレー校心理学の名誉教授、アーサー・P・シマムラ博士は「情報を生成するとき(=考えたり、教えたりする)、学習した情報を再活性化し、その情報を既存の知識と結びつける」と述べています。つまり、脳のなかで情報を生成することで、記憶力と理解力が高まる効果が期待できるのです。*5
実際に筆者も「覚えるための見返さないノート」をつくってみました。
取り扱った題材は「認知バイアス」。認知バイアスについては浅い知識があるものの、おぼろげにしか記憶していません。そこであくまで「覚えるため」「整理するため」を目的とし、ノートをとってみました。全体はこちら。

パッと見た印象としては普通のノートと変わりませんが……用語の横に筆者の経験から考えられる具体例を考えながら補足。そして、疑問点も箇条書きに書いてみました。

ズボラな筆者にとって、このノート術の「見返さず、その場で完結させる」ことは大きな魅力。かといって、自己満足に終わるものではなく、たしかな効果を感じました。
- レイアウトや誤字を気にせず書ける
→見返すわけではないため、考えたことをそのままノートに書き出す自由度がある。しかも、色分けする手間もないから楽。 - 具体例・疑問点を考えながら書くので、記憶に残りやすい
→思い出したり自分の経験と概念をつなげたりして、具体例や疑問点を書くため、より能動的に考えられる。ただ「書いて満足」ではなく、その場で記憶に定着しやすい。 - 見返すためではないから、「ノート」にこだわらなくてもいい
→保管しなくてもいいため、ノートでなくてもいい。たとえば、A4のコピー用紙、大きめのメモ用紙に書いてそのまま捨ててもOK。
面倒くさがりだからこそ実践しやすく、しかも効果的なノート術でした。
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面倒くさがりという性格は、「ムダや手間のかかる方法を避ける」戦略が自然にできてしまう大切な資質です。「面倒くさがり=勉強ができない」と感じている人こそ、効率的な勉強法を考えられる能力が埋もれているかもしれません。
*1 AERA DISITAL|ハーバード卒・廣津留すみれのタイムマネジメント術 タスクはすきまの5分に集中してこなす
*2 朝日新聞 Thinkキャンパス|集中力が続くのは15分だけ 脳科学の専門家が教える、勉強を持続させるコツとは
*3 PsychologyToday|Choose the Path of Least Friction to Change Your Behavior
*4 DIAMOND online|東大生は板書しない!? 頭がいい人が授業中にやっていること
*5 PsychologyToday|Lifelong Learning and Active Brains: G is for Generate
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。