頭のいい人はなぜ「説明がうまい」のか? 「説明下手」を卒業できる2つのスキルとは

ホワイトボードの前でプレゼンをしている男性

「資料は完璧に準備したのに、なぜか伝わらない……」

月曜日の定例会議。あなたは週末返上で資料を作り込み、データも念入りにチェックして臨んだプレゼンテーション。ところが発表を終えた瞬間、会議室に漂うのは重い空気でした。

「で、結局何が言いたいの?」
「説明を聞いても、あなたの伝えたいことがよくわからないな」

上司からの厳しいフィードバックに、心のなかで「また失敗した」と肩を落とす。一方で、同じチームの同僚は資料もシンプルなのにスラスラと話し、聞き手の納得する顔が見える。この歴然とした説明力の差は、一体どこから生まれるのでしょうか?

ここで重要なのは、「説明が下手=能力が低い」わけではないということです。むしろ、説明力は相手との関係性を意識できる知性によって大きく左右されます。
単に知識や論理力が高いだけでは、相手に正しく伝わらないことも多いのです。

本記事では説明上手な人がもつ知性の特徴を解説し、彼らが備えているある能力の高さについて紹介いたします。すぐ実践するための具体例も提案していますので、ご一読ください。

頭がいい人は「説明上手」?

そもそも、「頭のよさ」と「説明上手」には相関があるのでしょうか? まず始めに、ここで触れる「頭のよさ」の前提を整理する必要があります。

『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)の著者、webメディア「Books&Apps」の株式会社ティネクト代表兼コンサルタントの安達裕哉氏は、頭の良さは社会的知性で決まると述べています。

なぜなら、たとえ高い演算能力や思考力があったとしても、それが「他人に伝わらない」のであれば、ビジネスシーンで活かせる知性とは言えないからです。たとえば、複雑な数式を瞬時に解ける能力があっても、その解法を同僚に説明できなければ、チームの問題解決には貢献できません。仮にIQが高かったとしても、"人と共有できる知性"には欠けてしまうのです。

EQ(心の知能)やSQ(社会的知性)が、昨今ビジネスに浸透しつつあるのも、ビジネスパーソンに求められる知性が変わった象徴とも言えます。なかでも安達氏が注目しているのは、心理学者のダニエル・ゴールドマンが提唱したSQ(社会的知性)。これは「他者との関係において高い知性を発揮する能力」を指します。*1

この観点から、安達氏は「頭のいい人」を次のように定義しています。

他者がどう受け取るかの視点を意識し続けることこそが、思考の質を高めるためには必要不可欠なのです。(中略)本書で言う「頭のいい人」とは、「あの人と一緒に働きたい」と思われる人だと言い換えると、理解しやすいと思います。*1

つまり、自分の知識をひけらかすのではなく「相手がどう受け取るのか?」「どう感じるのか?」「どれくらい伝わるのか?」と、他人視点を取り入れながら話すことができる人こそ、現代に求められている頭のいい人と言えるのです。

では、頭がよくて説明上手な人にはどのような特徴があるのでしょうか。次の項目で解説いたします。

パソコンを持って説明している女性

1. 説明上手な人は「言い換え力」が高い

「説明がわかりやすい」とは、単に平易な言葉で話す力ではありません。一度「自分で理解し言い換える」力があるからこそ、相手にわかりやすく伝わるのです。

『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)の著者であり明治大学文学部教授の齋藤孝氏は「説明がわかりやすく感じる頭のいい人」の特徴のひとつとして、言い換える力があると述べています。その理由は明確です。

相手の話を言い換えられるということは、その話を自分のものにできているということ。すなわち理解できているということです。*2

つまり、「言い換えられる=その話を深く理解できている証拠」と言えるのです。逆に言えば、表面的にしか理解していない内容は、自分の言葉で言い換えることはできません。

神経細胞「ミラー・ニューロン」の説明を例に挙げましょう。心理学の研究者である京都大学の佐藤弥氏は、ミラー・ニューロンの概略を専門的に解説しています。こちらを言い換えてみましょう。

📚 専門的な説明

自分が行為を実行するときにも他者が同様の行為をするのを観察するときにも活動するニューロンである。単に行為の視覚特性に反応しているのではなく、行為の意図まで処理していることが示唆されており、他者の行為の意味の理解・意図の理解などとの関与が提案されている。*3

 

🧠 言い換えた説明

ミラーニューロンは自分が行動するときだけではなく、誰かが同じ行動をするときにも反応する神経細胞です。

たとえば、同僚が笑顔で挨拶をすると、あなたも自然と晴れやかな気持ちになります。これは単に笑顔という表情に反応しただけでなく、「笑顔を向けてくれるということは、好意的に思ってくれているのだろう」と相手の意図まで理解できるからです。

このように、ミラーニューロンは「相手の行動の意味や意図を理解する脳のしくみ」と深く関わっています。研究では、意図を理解するための重要な土台としても注目されています。
 

専門的な用語を言い換えるだけではなく、自分なりに解釈した具体例(笑顔で挨拶する)を入れることにより、相手がイメージしやすい説明になったのではないでしょうか。言い換え力を身につければ、あなたの思考力も磨きがかかるでしょう。

男性の頭の上にたくさんの矢印が交差している

2. 説明上手な人は「表現力」が高い

説明において、頭のいい人が発揮するのは独自のセンスです。そのセンスとは、"言葉の表現力"の高さに他なりません。

株式会社櫻井弘話し方研究所の代表取締役社長、櫻井弘氏は「ただ単に相手に『伝える』ではなく、相手に『伝わる』ために必要となるのが『表現』」だと述べています。*4

そのうえで、櫻井氏が提案しているのが「表現の三原則」です。表現の三原則とは、以下のポイントを指します。

 
 

Point1.「わかりやすく」

Point2.「簡潔に」

Point3.「印象深く」*4

上記の3点がそろえば、話に説得力が増すと櫻井氏。ただ、美しい比喩を探すだけではなく、相手に届きやすい言葉で表現し、印象づけるわけですね。

この差を具体的に見てみましょう。

表現力が低い例

「若年層に自社のサービスを認知してもらうために、PRする媒体を変える必要があります」
 

表現の三原則を活用した例

「これまで私たちは‟言葉"で呼びかけていました。
でも、いまの若年層は言葉だけではなく、映像の世界で生きています。
言い換えれば、若年層が惹かれるのは、ひとつのショートムービーなのです。
ですから、私たちのメッセージは言葉から映像に移す必要があります」
 

単に「Web媒体からYouTubeやInstagramに広告予算を移す」と具体的に説明するよりも、「言葉と映像の世界」という対比表現を使うことで、戦略にストーリー性と説得力が生まれます。

日頃から小説やドラマ・映画作品に触れて、創造的な知性を身につけてみてはいかがでしょうか。

***

「言い換え力」は「内容を理解して伝える力」。「表現力」は「その伝え方に創意工夫を加える力」です。この違いを意識すると、それぞれのスキルをバランスよく磨くことができるでしょう。

「説明力」は相手あってこそ発揮される能力です。だからこそ、単なるIQではなく、他者視点の知性が求められます。そして説明力を高めることは、あなたの思考力の向上にもつながります。本記事を参考に、あなたの説明力を磨き、「あの人はとても賢い!」と一目置かれる存在を目指してみてください。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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