
「今年も、やりたいことが思ったより進まなかったな……」
年末、手帳やカレンダーを見返して、ため息をついている方も多いでしょう。
「時間はあったはずなのに、なぜかできなかった」。
その原因は、あなたが「時間の管理」に失敗したからではありません。
脳のエネルギーである「認知資源」の管理が、赤字になっていただけなのです。
私たちはよく「時間の使い方」を振り返りますが、それ以上に重要なのが「エネルギーの配分」です。
お金に限りがあるように、脳の体力にも『予算』があります。
心理学ではこれを『認知資源』と呼びます。
私たちの意思決定や集中力を支えるこの「認知資源」もまた「思考の通貨」と言える存在です。
お金と同様、この通貨も有限です。
1年の終わりに、時間の管理(タイムマネジメント)の反省だけでなく、「思考の通貨」の決算(棚卸し)をしてみませんか?
- 「認知資源」とは何か? 時間管理よりも重要な「脳のエネルギー」の正体
- 【今年の振り返り】あなたの資源は「消費・浪費・投資」のどこに消えた?
- マネジメント術①:認知資源の節約術:スマホと決断を減らして「脳の固定費」を下げる
- マネジメント術②:「If-thenプランニング」で行動を自動化する=「自動積立」
- 来年は「思考の通貨」を賢く使う投資家になろう
- よくある質問(FAQ)
「認知資源」とは何か? 時間管理よりも重要な「脳のエネルギー」の正体
まず、監査対象である「認知資源」を定義します。
認知心理学を専門とする東京未来大学の岩﨑智史氏は、次のように説明しています。
- 注意や思考、判断を行なうためのエネルギーのこと
- 認知資源は有限で、使えば使うほど減る
- 休息や睡眠をとると回復する *1
仕事で企画書を書くのも、SNSで友人の投稿に「いいね」をするのも、今日のランチを決めるのも、すべてこの「思考の通貨」を支払って行われています。
なぜ「時間管理」だけではうまくいかないのか?
「時間は平等」と言われますが、「認知資源」は平等ではありません。
その人の使い方次第で、残高は大きく変動します。
- 決断疲れにより、脳のウィルパワーが枯渇している
- マルチタスクにより、注意力が分散している
- 認知資源の残高がゼロ(エネルギー破産)になっている
財布の中身(認知資源)が空っぽになると、いくら時間が余っていても、人は集中力を失い、判断力が鈍ります。
いわば「エネルギー破産」の状態です。
これでは、やりたいことに着手できないのも無理はありません。
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【今年の振り返り】あなたの資源は「消費・浪費・投資」のどこに消えた?

それでは、今年1年のあなたの行動を、お金の管理と同じ「消費・浪費・投資」の3つの区分で監査してみましょう。
あなたの2025年のエネルギーは、どこに多く流れていましたか?
1. 認知資源の「消費」(生活に必要な固定費)
内容:日々のルーティンワーク、家事、最低限のメール返信など。
状態:生きていくために支払わなければならない「必要経費」。
ここはゼロにはできませんが、効率化でコストを下げることは可能です。
2. 認知資源の「浪費」(使途不明金)
内容:
- 目的もなくダラダラと見続けたSNSやショート動画
- 「やらなきゃ」と思いながら着手できずに悩む時間
- マルチタスクによる注意力の分散
- ネガティブな感情の反芻(ぐるぐる思考)
状態:何のリターンも生まない出費。
もし今年、「忙しい割に何も残っていない」と感じるなら、この「浪費」の割合が過半数を占めていた恐れがあります。
3. 認知資源の「投資」(資産形成と複利効果)
内容:
- 資格勉強やスキルアップのための学習
- 新しい趣味や創作活動への没頭
- 来年の計画を立てる時間、読書
状態:ここが最も重要です。
支払ったエネルギーが、将来の自分を助ける「資産」になる使い方です。
たとえば、スキルを習得すれば、来年は同じ作業を「より少ない認知資源」で処理できるようになります。
これは、投資のリターンが「複利」で効いてくることを意味します。
振り返ってみると、「浪費」に多くの通貨を支払い、「投資」に回す予算が残っていなかった……というのが、多くの人の現状ではないでしょうか。
マネジメント術①:認知資源の節約術:スマホと決断を減らして「脳の固定費」を下げる

「思考の通貨」の決算が赤字(浪費過多)だったとしても、落ち込む必要はありません。
来年こそは「黒字化」するために、いまここから予算配分を変えればいいのです。
投資原資を作るための第一歩は、節約です。
日本産業カウンセラー協会が挙げる節約術 *2 などを参考に、以下の「浪費カット」を実行してください。
スマホの「常時接続」をやめる
通知が来るたびにスマホを見るのは、財布から小銭をばら撒き続けているのと同じです。
「スマホを見ない」という意志力に頼るのではなく、「物理的に電源を切る」「別室に置く」ことで、浪費の蛇口を元から締めてください。
「決断」の回数を減らす
スティーブ・ジョブズが同じ服を着ていたのは有名な話ですが、「今日何着よう?」「帰ったら何しよう?」という些細な迷いは、意外と高コストな浪費です。
日常の行動をルーティン化(固定費化)し、脳のメモリを重要な判断のために温存しましょう。
マネジメント術②:「If-thenプランニング」で行動を自動化する=「自動積立」

節約で浮いた資源は、意識的に「投資」へ回さなければ、また別の浪費に消えてしまいます。
しかし、「よし、明日から頑張るぞ」という気合い(意志力)に頼ってはいけません。
意志力を使うこと自体が、認知資源を消費するからです。
必要なのは、「思考の自動積立」の仕組みです。
心理学では「If-thenメソッド(イフゼン・メソッド)」と呼ばれる手法が、まさにこれに当たります。
「If-then」は脳の手数料を無料にする
筑波大学の外山美樹教授も推奨するこの方法は、「もしXしたら(If)、Yする(Then)」とあらかじめ決めておくこと。*3
× 悪い例(都度払い):「時間ができたら英語の勉強をする」
→ 「いつやろうか?」「いまやろうか?」と迷うたびに資源(手数料)を払い、結局やらない。
○ いい例(自動積立):「(If) 朝、コーヒーを入れたら、(Then) 参考書を1ページ開く」
:「(If)お風呂から上がったら、(Then)スマホを触る前に手帳を開く」
このように行動をルール化してしまえば、「やるかやらないか」という決断コスト(手数料)をゼロにできます。
最も新鮮な朝一番の認知資源を、迷うことなくダイレクトに「投資」へと配分する。
この仕組みさえ作れば、三日坊主は防げます。
来年は「思考の通貨」を賢く使う投資家になろう
「時間」は誰にでも平等に流れますが、「認知資源」の量はその人の使い方次第で大きく変わります。
今年の決算が「浪費」ばかりだったとしても、気づいたいまが変わり目です。
来年は、自分の脳内にある「思考の通貨」を、なんとなくドブに捨てるのではなく、未来の自分を助けるために「投資」する年にしませんか?
大晦日やお正月、来年の目標を立てる際には、是非「何をやるか(ToDoリスト)」だけでなく、「大事なことに、どれだけ思考の通貨(リソース)を配分するか」という予算計画も、あわせて立ててみてください。
よくある質問(FAQ)
- Q. 認知資源とは何ですか?
- A. 脳が思考や判断を行なうためのエネルギーのことです。体力と同じく有限で、使えば減りますが、睡眠や休息で回復します。お金のように限りがあるため、管理が必要です。
- Q. 時間があるのにやる気が出ないのはなぜですか?
- A. 脳のエネルギー(認知資源)が枯渇しているからです。決断疲れやマルチタスク、SNSのダラダラ見などは脳のエネルギーを浪費し、いざという時の集中力を奪ってしまいます。
- Q. 認知資源を節約するにはどうすればいいですか?
- A. 日常の決断を減らす「ルーティン化」や、やるべき行動を自動化する「If-thenプランニング」が有効です。脳のウィルパワー(意志力)を使わずに動く仕組みを作ることが節約の鍵です。
- Q. If-thenプランニングとは何ですか?
- A.「もしXしたら(If)、Yする(Then)」とあらかじめ決めておく手法です。たとえば「朝コーヒーを入れたら、参考書を1ページ開く」のようにルール化することで、決断のコストをゼロにし、行動を習慣化できます。
*1 Future|認知資源が減ると疲れるという話
*2 働く人の心ラボ|「注意資源」を節約して一日を有意義に過ごす!私たちの注意力や集中力には限りがあるって知ってた?
*3 STUDY HACKER|なぜ人は誘惑に負けるのか? 「明日やればいいか」を防ぐ「if-then」形式の力
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。