
会議の前、企画書を書く前、あるいは重要な判断を下す前――。
「頭のなかがモヤモヤして、考えがまとまらない」
「いつも同じ結論にたどり着いてしまう」
このような経験はありませんか? もしかしたらそれは、思考に積もった「ホコリ」が原因かもしれません。ここで言う「思考のホコリ」とは、日々積み重なった余分な情報、矛盾、思い込みなどのことです。
今回ご紹介する「原点回帰ノート」は、このホコリを払ってリセットし、自分の基本的な思考に立ち戻るためのシンプルなノート術です。余分なものを削ぎ落とし、本来の思考――つまり原点に立ち戻ることから、この名前をつけました。
難しいフレームワークも、特別な道具も必要ありません。必要なのは、ノートとペンだけ。
いますぐ始めましょう。
私たちの思考は「ホコリ」であふれてる?
私たちは毎日、膨大な情報に触れています。メール、チャット、会議、報告書、ニュース、SNS……。それらは確かに価値のある情報ですが、すべてが「いま、この瞬間の判断」に必要なわけではありません。さまざまな方向から入ってくる情報が、かえって判断を混乱させることもあるでしょう。
さらに厄介なのが、あらゆる体験から生まれる「思い込み」です。
- 「前回はこうしてうまくいった」
- 「あのときはこれで失敗した」
- 「うちの会社では、こういうやり方が常識だ」
こうした前提は私たちの判断を助けてくれますが、新しい視点を遮る壁にもなりうるのです。経験や知識が豊富であればあるほど、この壁は高く、厚くなっていくでしょう。
だからこそ私たちはときどき、思考のホコリを払う必要があります。

「原点回帰ノート」の書き方
では、どのようにして思考のホコリを払うのか?
ここからは、具体的な方法をご紹介します。3つのステップで説明しましょう。
ステップ1:すべて書き出す
まずは、頭のなかの情報をすべて書き出します。頭の引き出しにあるものを、すべて出してしまうのです。
「脳の学校」代表で医学博士の加藤俊徳氏によれば、頭の整理が苦手な人は、頭のなかの物も出さずに、頭のなかだけで片付けようとするといいます。*1
それは、机の引き出しを整理整頓しようとして、なかの物を出さずに引き出しのなかだけで整理する――「ものすごく片づけにくい方法」をとるようなものです。
だからこそ、書き出すという工程は欠かすことができません。
これは認知科学的にも理にかなった方法です。認知科学の研究では、頭のなかの情報を書き出す――つまり「外在化」は、問題解決タスクにおいて非常に有用な技術だとされています *2。情報が目の前に並べば客観的に眺められるようになり、無駄や矛盾も見えてくるのです。
もちろん、完全にアウトプットすることなどは不可能なので、実際には「すべて書き出すようなつもりで――」といったところです。
書き出す際のポイントは、次の3つです。
- 完璧を目指さないこと
- 整理しようとしないこと
- こんなこと書いても無意味だと判断しないこと
箇条書きでも、文章でも、単語の羅列でも構いません。とにかく、頭のなかにあるものを、ノートに吐き出していきましょう。

ステップ2:不要なものを削る
書き出し終えたら少し時間を置いて、ノートを眺めてみましょう。書き出した内容を俯瞰することで、無駄や矛盾、思い込みなどが見えてくるはずです。
頭のなかにあるときには気づかなかったものが、紙に書き出すことで客観的に見えるようになります。
そうして問題点が見えてきたら、今度は「削る」作業に移ります。
具体的には――
無駄や重複している内容は線で消す。矛盾している考えは、どちらかを選ぶ。もちろん両方を疑うのもあり。そして、「当たり前」だと思っていた前提も、あえていったん疑ってみます。
そうして削れば削るほど思考は軽くなり、本質が浮かび上がってくるはずです。逆に削らなければ大切なことが埋もれてしまい、結果として無駄にしてしまいます。

ステップ3:迷うものを移す
もし「消すのはもったいない」「どうしたらいいのかな?」と悩む要素があれば、別のページに移しておきましょう。
別のページに移した内容を改めて眺めてみると、新しい視点から見ることができ、別の発見があるかもしれません。

この3ステップを踏むことで、思考のホコリが払われ、いまこの瞬間に向き合うべきことが明確になるでしょう。次の一手も見えてくるはず。
もちろん、まとまらなかった考えも整理されるに違いありません。
削ることから生まれる発想力
この「原点回帰ノート」は、すべて書き出す・不要なものを削る・迷うものを移すの3工程で、頭をスッキリさせるノート術です。続けていくうちに、あなたの思考に少しずつ変化が生まれます。
その変化とは、「足し算で考える癖」から「引き算で整える思考」へのシフトです。
何か問題に直面したとき無意識に「もっと情報を集めよう」「もっと考えよう」「もっと工夫しよう」と、足し算で考えてしまうことが多々あります。
でも実際には、「何を削るか」を考えたほうが発想はクリアになるはず。
つまり、思考のホコリを払うことは単なる整理術ではなく、創造的なアウトプットの第一歩なのです。
週に一度でも、月に一度でも、3か月に一度でも構いません。定期的にこのノートを開き、自分の思考をリセットする時間をもちましょう。
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考えがまとまらないときは、矛盾や思い込みを削ることをおすすめします。その際には、今回紹介した「原点回帰ノート」というシンプルなノート術が役立ちます。
ものすごくザックリ書くだけでも効果があるので、ぜひ一度試してみてくださいね。
*1 脳の学校|第245号 脳の整理整頓~頭のゴチャゴチャを整理しよう~
*2 Educational Psychology Review|The Cognitive Architecture of Digital Externalization
STUDY HACKER 編集部
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