褒めているのに嫌われる。部下の信頼を失う “よくない褒め方” の特徴

窓際に立っている男性ビジネスパーソン

「今日のプレゼン、お疲れさまでした! 素晴らしかったです!」

会議後、部下にそう声をかけたあなた。でも、相手の反応はなんだかぎこちない。「ありがとうございます」と言いながらも、心なしか困ったような表情を浮かべている——。

このように、チームマネジメントにおいて「部下の褒め方」に悩む管理職は少なくありません。 「褒めて育てる」ことの大切さは理解していても、いざ実践してみると「本当にこれで良いのだろうか」と不安になることはありませんか?

じつは、その違和感は正しい直感かもしれません。善意のフィードバックが、かえって部下との信頼関係を損ねてしまう——そんな落とし穴が、日常のマネジメント現場には潜んでいるのです。

本記事では、多くのビジネスパーソンが陥りがちな「よくない褒め方」の特徴と、本当にメンバーの心に響く効果的なフィードバック方法について解説します。

「素晴らしい!」「さすが〇〇さん!」だけでは危うい理由

チームメンバーは褒めて育てよう……
 
 

 

考えている女性

この考え方は広く浸透し、特にマネージャーの立場にある人ほど、ポジティブなフィードバックを意識的に活用しているのではないでしょうか。

もちろん、褒めること自体は悪いことではありません。適切なフィードバックはモチベーションを高め、成長を後押しします。しかし、「とりあえず褒めておけばいい」という姿勢や、表面的で過剰な褒め方は逆効果になってしまうのです。

公認心理師の大美賀直子氏は、よくない褒め方として以下の3つを挙げています。

 

 
 
 
  1. ささいなことを「えらい」「すごい」とほめている
  2. ほめることで、何かをやらせようとしている
  3. 表面的なことだけを見て、ほめている *1

たとえば、残業を頼みたいときだけ「いつも頼りにしてます」と持ち上げたり、プレゼン資料の見た目だけを見て「きれいな資料ですね」と評価したり……。

この3点に共通するのは、「自分の都合で相手をコントロールしようとしている」と受け取られてしまう危険性があること。褒める側は善意のつもりでも、受け取る側にとっては「操作されている」と感じられ、むしろ信頼関係を損ねてしまうのです。

チームメンバーの士気を高め、働きやすい環境に整えるために褒めていたはずなのに、こうなってしまっては本末転倒。

頭を抱えているビジネスパーソン

では、どうすれば本来の目的である「チームメンバーの士気を高め、職場を働きやすくする」ことを達成できるのでしょうか。ポイントは、「自分の保身や操作欲」ではなく、「相手やチームの利益を中心に考えること」です。

そもそもフィードバックとは、「行動や成果に対する評価内容を伝え、より良い結果へ導くための手法」であり、「部下の成長を促すこと」が最大の目的です。*2

つまり、「いま、この場を取り繕いたい」「相手を思い通りに動かしたい」という短期的な思惑ではなく、「この人が成長するためには何が必要か」「チーム全体のパフォーマンスを向上させるには何を伝えるべきか」という長期的な視点に立つことが重要なのです。

本質に立ち返り、相手やチームのためになるフィードバックを行なうことを心がけることで、メンバーの士気を高め、働きやすい環境をつくることにつながります。

談笑している四人の従業員

相手やチームのためになるフィードバックのポイント

1.  褒める基準をもつ

「とりあえずここは褒めておいて、雰囲気をよくしておこう」など、なんとなく褒めることを繰り返すのはNG。自分のなかに明確な「褒める基準」をもち、それを目安に評価するようにしましょう。

人材育成メソッド「ほめ育」を開発するなど、褒めることに詳しい株式会社スパイラルアップの原邦雄氏も「ほめる基準をつくり、その基準を満たしていればほめる、満たしていなければほめない」ことを薦めています。*3

褒める基準例
「データに基づいて仮説を立て、施策に反映した」
「前回レビューで指摘された改善点を、次のコードに反映している」
「社外からの問い合わせに、事実確認をしたうえで丁寧に対応した」

また、原氏は「『ほめる基準』から外れたことをした場合は注意して、正しい道へと導くこと」も重要だと指摘します。*3

業務で求められる基準をクリアしていたら褒め、そうでなければ次からできるように指導する——このようにわかりやすい「褒める基準」があると、チームメンバーも納得でき、信頼されるようになります。

2. 褒める基準に達していないメンバーは「承認する」

具体的な成果を出しているメンバーは、「褒める基準」に則って評価すればOK。

しかし、特にこれといった成果を出していないメンバーはスルーしていいというわけではありませんよね。新人や異動したばかりのメンバー、困難なプロジェクトに取り組んでいる最中のメンバーなど、まだ目に見える成果が出せない状況は誰にでもあります。リーダーとして、やる気を引き出すようなフィードバックをするのが望ましいもの。

エグゼクティブ・コーチとしてビジネスリーダーにコーチングを行なう林健太郎氏によると、このような場合は、相手を褒めるのではなく「承認する」ことが効果的。*4

NG例:褒める

「〇〇をやっていて、すごいね」→評価をしている
 

OK例:承認する

「〇〇を進めているね」→現状を認めている
 

「すごいね」という評価は、受け手にとって「本当にすごいのだろうか」という疑問や違和感を生む可能性があります。一方、「進めているね」という承認は、事実をそのまま伝えているため、相手は素直に受け取ることができるのです。

褒めなくても、承認することで「あなたがしていることをちゃんと見ている」「あなたの努力を認識している」というメッセージを届けることができます。具体的な成果を出していないメンバーに対しては、無理に褒めずに「着実に進んでいるね」「その調子だよ」など、相手の現状や努力を承認する言葉をかけることを意識してみましょう。

***

やみくもに褒めるのは逆効果。どんなときに褒めるのか明確な基準をもつことと、むやみに褒めるのではなく「承認する」という手法を取り入れること。これで、チームメンバーと信頼関係を築きながら働きやすい環境をつくることができます。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

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