AIを使っているのに、なぜか忙しい──「新しい知的疲労」を軽くする3つの方法

AI疲れのイメージ

AIを使えば、もっと仕事が楽になる。そう思って導入したはずなのに、なぜか以前より忙しくなった――。そんな感覚を抱いている人は多いはず。

文章も、資料も、コードもワンクリックで生成できる時代。それでも仕事が減らないのは、AIが「作業」を減らす一方で、判断・修正・確認といった"見えない仕事"を増やしたからです。

AIを使えば効率が上がる、というのは半分だけ本当。もう半分には、「新しい種類の忙しさ」が潜んでいます。その忙しさをどう扱うかが、これからの知的生活を左右します。

AIで仕事が増えるのは、あなたのせいではない

AIを使うと、確かに手を動かす時間は減ります。しかし同時に、「監督する」「選ぶ」「確認する」といった"判断の労働"が増えています

たとえばAIに文章を生成させれば、文体を整え、事実を確認し、語尾を調整する作業が発生します。ゼロから書くよりは早いかもしれない。けれど、思考の密度はむしろ高まり、頭の中は以前より忙しい。

海外のレポートでもいち早くその状況は指摘されています。

■ Microsoft Research

生成AIを使った知的労働者はタスク処理が速くなる一方で、見直しと確認にかかる時間が増える傾向が示されています。*1

■ UPWORK

UpworkResearchInstitute(2024)によれば、生成AIユーザーの77%が「業務量が増えた」と答えています。*2 また、生成AIで高い成果を挙げている人ほど「燃え尽き症候群」になりやすい傾向も。*3

つまり、「AIで仕事が増えた」と感じるのは錯覚ではありません。それは怠けではなく、AIを真剣に使っている人ほど陥る自然な構造なのです

筆者も、ライターや編集の仕事で生成AIを使用しています。特に「役に立つな」と思う反面、「疲れる」と感じるのは企画案を検討するとき。方向性や素材を指定して企画を雑に考えさせると、膨大な企画案が出力され、絞り込むのに時間が掛かってしまいます。

思考を整理しながら企画を考えることができるという面もありますが、認知資源が吸い取られている感覚にも陥ります。

AIが生んだ"新しい忙しさ"の正体

AIをモバイルしている様子

AIが便利であるほど、思考のリズムは乱れやすくなっています。原因は、大きく分けて三つあると考えられます。

① 出力の精査負担
AIの答えは"ほぼ正しい"が"完全ではない"のです。そのため、細部を確認し、必要に応じて修正する作業が発生しています。

② 選択肢の増加
AIは多くの案を提示してくれます。しかし、選ぶ行為そのものが新たな仕事になっています。「どれを使うか」「どこまで直すか」といった判断が増えているのです。

③ アウトプット圧力
「AIがあるなら、もっと速く、もっと多くできるはず」という期待が 職場や自分の中に生まれていませんか。クライアントからも求められる量が増加しているのでは。結果として、仕事の量は減らず、むしろ加速する傾向にあります。

この三つが重なって、"AIで効率化したはずなのに、疲れる"という現象が起きています。

AIが悪いわけではありません。問題は、AIとの関わり方がまだ人間のペースに合っていないということです。

これは、仕事でメールが使われるようになった初期のころを思い出させる現象かもしれません。ある記事は、1980年代以降、メール、ネット、さまざまなビジネスツールが普及したことで秘書やタイピストが削減され、その結果、専門性の高い社員が雑務に忙殺されるようになり、生産性が大幅に低下したことを示し、AIでも似たシナリオが起きる可能性があると指摘しています。*4

AIで増えた仕事を減らす、3つの習慣

では、AIによる新しい忙しさを軽くするにはどうしたら良いでしょうか。

それには、使うツールを増やすよりも、使い方の姿勢を整えることが大切です。次の3つを意識するだけで、知的な負荷は確実に減るはずです。

AIとの付き合い方を見直し、仕事の効率化を実感してパソコンの前で喜ぶ男女

① 目的を3秒で言語化する

AIを開く前に、「自分はいま何を確かめたいのか」を一文で書いてみる。これだけで、AIとのやり取りの方向性が明確になり、出力の修正や指示が減ります。

なんとなく使い始めてしまうと、出力修正・再指示が増え、結果的に"AIを使う仕事"が増えてしまいます。使う前の3秒が、あとで失う30分を救ってくれるのです。

② AIを評価しないこと

AIの出力を見た瞬間、「いい」「悪い」「正しい」「間違い」と判断したくなります。しかし、その瞬間に脳は"評価モード"に入り、AIのリズムに巻き込まれてしまいます。これが判断疲れを加速させることに。

AIは「評価すべき相手」ではなく、「考えるきっかけ」として扱いましょう。出力を見たら、まず3分だけ、判断を保留してみるのです。

  • 最初の3分は手を動かさない。
  • 印象に残った箇所にだけ★をつける。
  • 「なぜ気になったのか」を1行メモする。

AIの成果物を直すのではなく、AIが自分に何を考えさせたかを拾い上げる。それだけで、判断の負荷が大きく減ります。

③ AIを使う単位を分ける

大きなテーマを丸ごとAIに任せると、確認・修正・再指示などの"メタ仕事"が急増します。「AIに考えさせる」のではなく、「AIに部分的に手伝ってもらう」に切り替えましょう。

たとえば:

  • 「タイトル案を3つ出してもらう」
  • 「比喩表現だけ考えてもらう」
  • 「文章の構成案だけ相談する」

AIを小さな単位で使えば監督する負担が減り、AIを"使う人"のリズムを取り戻せます。

AIとの距離を整える

AIは、私たちから仕事を奪う存在ではなく、仕事の設計を見直すきっかけです。経営コンサルタントの大前研一氏は、AIが奪うのは「仕事」ではなく「作業」だと指摘しています。AIに作業をさせる際に生じる人間側の認知負荷をいかに軽減するか。それが肝心なところです。

目的を明確にし、評価を手放し、使う範囲を分ける。それだけで、AIに奪われた時間と集中力は静かに戻ってきます。

AIは、あなたの代わりに考えるためではなく、あなたが"どう考えるか"を整えるための道具だったはず。忙しさの中で、それをもう一度思い出しましょう。そうすれば、本来人間がやるべきクリエイティブな仕事に集中できるようになるはずです。

よくある質問(FAQ)

Q. 生成AIを使っているのに、仕事が減らない・忙しくなるのはなぜですか?
A. AIは作業を減らす一方で、「判断・修正・確認」という新しい労働を増やすからです。これを放置すると、かえって時間がかかったり精神的に疲弊したりします。
Q. AIを使うと疲れる「新しい忙しさ」の原因は何ですか?
A. 主に「出力の精査負担(修正作業)」「選択肢の増加(選ぶ疲れ)」「アウトプット圧力(もっと速くという期待)」の3つが原因で、思考のリズムが乱れるためです。
Q. AIによる「判断疲れ」を減らすコツはありますか?
A. 「目的を3秒で言語化する」「AIを評価せず保留する」「AIを使う単位を細かく分ける」の3つを意識することで、認知負荷を大きく減らせます。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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