「とにかく話せ」が間違っている理由—第二言語習得研究が示すインプット重視の学習法

スマートフォンを使って勉強している女性

「毎日オンライン英会話をやっているのに、全然上達しない……」

「もっとたくさん話さないとダメなのかな?」

ちょっと待ってください。もしかして、あなたは努力の方向を間違えているかもしれません。

第二言語習得研究が明らかにした驚くべき事実があります。

効果的な英語学習には「大量のインプットと少量のアウトプット」が重要だとされており、その最適な比率はインプット7:アウトプット3程度だという説があるのです。

私たちが思っているよりもずっと、アウトプット(話す・書く)の比率は少なくていい。むしろ大部分の時間をインプット(読む・聞く)に集中したほうが、結果的に早く話せるようになるというわけです。

「え、そんなに少なくていいの? 話さないと話せるようにならないんじゃ……?」

そう思いますよね。でも、これには科学的な根拠があります。そして多くの日本人学習者が、この事実を知らずに遠回りをしているのです。

なぜ「7:3」なのか? 日本の英語学習環境の特殊性

まず理解すべきは、私たちが置かれている学習環境の特殊性です。

言語習得研究では、学習環境を2つに分けています。

 
 
  • ESL環境 英語圏で英語を学ぶ環境
  • EFL環境 日本のように、日常生活で英語を使わない環境

ESL環境では、1日中英語に囲まれています。買い物をするのも、友達と話すのも、テレビを見るのも全部英語。自然と大量のインプットを浴び続けているのです。

一方、私たちのEFL環境では、英語に触れるのは「勉強している時間だけ」。語彙や表現を増やすには、意識的にインプット学習をする必要があります。それなのに「とにかく話そう!」といきなり英会話から始めてしまう人が多いのです。

これはまだ食材をあまり買い揃えていない状態で、いきなり料理を作ろうとするようなもの。材料(語彙・文法・表現)が不足していては、どんなに調理技術(会話スキル)を磨いても、美味しい料理(流暢な英語)は作れません。

積み重なった本と開いて置かれた本

「読めるけど話せない」のはなぜ?

さらに重要なのは、私たちの言語能力の構造です。

あなたも経験があるはずです。英語の文章を読んで「ああ、これはこういう意味ね」と理解できるのに、いざ自分で話そうとすると「えーっと、何て言うんだっけ?」となってしまう。

これは当たり前のことです。理解できる英語と、実際に使える英語は違うからです。使える英語は、理解できる英語のほんの一部でしかありません。

言語学では、これを二重構造と呼んでいます。理解できる範囲(受容知識)の内側に、実際に使える範囲(産出知識)があるという構造です。

だから、まずはインプットで使える素材(語彙・表現・文法パターン)を増やすことが最優先。素材が豊富になればなるほど、話すときに引き出せる選択肢も増えていくのです。これが「7:3の法則」でインプットを重視する理由なのです。

ノートとパソコンと本が置かれている

アウトプットの真の価値 「気づき」を生む羅針盤

「じゃあ、英会話は意味がないの?」

「『大量のインプットと少量のアウトプット』と聞くと、アウトプットは重要じゃないってこと?」

そんなことはありません。「少量のアウトプット」と言っているのには理由があります。大量は必要ないけれど、少量は確実に必要だということなのです。むしろ、その少量のアウトプットには、学習効率を劇的に高める特別な機能があります。

研究者のメリル・スウェイン氏が提唱した「アウトプット仮説」によると、アウトプットには3つの機能があります。

 
 
  1. 「あ、これが言えない!」という弱点への気づき(気づき機能)
  2. 覚えた英語が実際に相手に伝わるかのテスト(仮説検証機能)
  3. 英語について深く考える力を高める(メタ言語機能)

たとえば、英会話で「昨日映画を見た」と言おうとして、

Yesterday I... um... watch movie
 

となってしまったとします。この瞬間、あなたは気づくのです。

あ、過去形が出てこない! あれ、冠詞って必要だっけ?
 
 

 

この気づきを得た状態で過去形や冠詞について学習し直すと、ただ漫然と文法書を読むよりもはるかに効率的に知識が定着します。

言うなれば、英会話は「練習試合」のようなもの。練習試合は基礎体力や技術を向上させる場ではなく、現在の実力を測り、弱点を発見し、次の練習メニューを決めるヒントを得る場です。実際の能力向上は、その後の基礎練習で起こります。

つまり、英会話自体が直接的に英語力を伸ばすわけではありません。英語力を鍛える場は別に必要なのです。

なお、明確に比率が実証されているわけではありませんが、研究者のなかには上級者でも「インプット7:アウトプット3」程度ではないかと言っている人もいます。初心者の場合、インプットの比率はさらに高くなると考えられています。

電球を持った手

「インプット7:アウトプット3」を実践する具体的なサイクル

では、この「インプット7:アウトプット3」の比率を、具体的にどう実践すればよいのでしょうか? 効果的な学習サイクルをご紹介します。

📚 【インプット期】比率の7割程度
💡 語彙学習(毎日20-30分)
1 50語を1セットとして、発音しながら意味を確認
2 英語を見た瞬間に意味が浮かぶかテスト
3 覚えるまで繰り返し
4 翌日は復習+新しい単語
🔍 リーディング強化(毎日15-20分)
チャンクリーディング

意味のまとまりごとに理解する練習

例 Our team / is working on / a comprehensive project plan, / which involves / defining objectives.
サイトトランスレーション

チャンクごとに瞬時に日本語化

🎧 リスニング強化(毎日15-20分)
音声変化ルールの学習
ディクテーション

聞こえた音をすべて書き取り

オーバーラッピング

音声に重ねて発音

🗣️ 【アウトプット期】比率の3割程度

オンライン英会話や英語日記で、インプットした内容を使ってみます。

⚡ 戦略的アウトプットのポイント
具体的目標を設定(「今日は関係代名詞を3回使う」「新単語を5個使う」など)
言えなかった表現を必ずメモ
「楽しかった」で終わらせない
🔄 【気づきの活用】即座に次のインプットへ

アウトプットで発見した弱点を、すぐに次のインプット学習に反映させます。

言えなかった文法事項→文法書で確認
知らなかった単語→単語帳に追加
発音できなかった音→集中練習

このサイクルを回すことで、アウトプットがインプットの効率を劇的に高めるのです。

つまり、この学習法の構造はこうなっています。

 
 
 
  • インプットで使える語彙やフレーズを増やし、聞いたり読んだりするスキルを磨く「基礎練習」を重視する。
  • そして、アウトプット「練習試合」として活用し、そこで得た気づきをまた基礎練習に活かすサイクルを回していく。

基礎がしっかりしているからこそ、練習試合が意味のあるものになり、練習試合で見つかった課題を基礎練習で改善できる。これが科学的根拠に基づいた効率的な英語学習法なのです。

電球の中の脳

インプット重視が変える、あなたの英語学習

でも、話す練習を減らすなんて不安……
 
 

 

その気持ち、よくわかります。でも考えてみてください。

毎日練習試合ばかりやって、基礎練習をしない部活なんてありますか? どんなスポーツでも、大部分の時間を基礎体力作りや技術練習に費やし、たまに練習試合で実力を確認します。そして練習試合で見つかった課題を、また基礎練習で改善していく。

英語学習も全く同じです。毎日英会話をするのは、毎日練習試合をするようなもの。基礎が身についていない状態でいくら試合をしても、同じミスを繰り返すだけで上達は望めません。

まずはインプットという「基礎練習」で土台を固め、週に数回のアウトプットという「練習試合」で実力を確認し、見つかった弱点をまた基礎練習で克服する。

これが最も効率的な上達法なのです。

実際に、このインプット重視のアプローチで学習した方々からは、こんな報告が届いています。

 

「英文を読むスピードが倍になった」 

「ネイティブの話が聞き取れるようになった」

「言いたいことがスラスラ英語で出てくるようになった」

多くの学習者が「なかなか上達しない」と感じるのは、外側の輪(理解力)を十分に広げないまま、内側の輪(産出力)だけを大きくしようとしているからです。

今日からできる「インプット重視革命」

あなたが既にオンライン英会話を続けているなら、それは素晴らしいスタートです。でも、そこに科学的なアプローチを加えることで、努力が正しい方向に向かいます。

 

 
 

今日からできること

  • 週のスケジュールを見直し、インプット時間を確保する
  • 次の英会話レッスンで使いたい表現を3つ事前に練習
  • レッスン中に言えなかった表現を必ずメモし、その日のうちに調べる
  • インプット時間とアウトプット時間を記録してみる

インプット重視の学習法を意識するだけで、今まで感じていた「頑張っているのに上達しない」というもどかしさから解放されるはずです。

科学が示したこの法則を使って、効率的に英語力を向上させていきましょう。あなたの努力が、必ず結果につながる日は近いはずです。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト