
📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season2
Season1では、マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識までを体系的に解説しました。
Season2は、配属されてしばらく経ち、実務をこなしながらさまざまな「壁」にぶつかり始めた方に向けて、より実践的なテーマを掘り下げていきます。
まだSeason1を読んでいない方は、まずそちらからどうぞ。
▶ 新人さんのためのマーケティング講座 Season 1【全14回まとめ】 ——マーケティングの基礎知識を徹底解説!
金曜日の午後。あなたはGA4や広告の管理画面を開き、ひたすら数字をスプレッドシートにコピペしています。CTR、CVR、CPA……。3時間かけて作り上げた、色とりどりのグラフが並ぶ週次レポート。
それを月曜日の朝に上司へ提出すると、上司はわずか30秒だけ眺めて「あ、順調だね。お疲れ様」で終わり。
……虚しくないですか?
自分の貴重な時間の多くが、すでに終わった「過去の集計」に使われている。未来を作ることに、1ミリも使えていない。
もしあなたが「レポート作成=仕事」だと思っているなら、それは大きな勘違いです。その報告書は、現状では価値を発揮できていませんが、やり方次第で「埋蔵金」に変わります。
なぜ、あなたの報告書は30秒で無視されるのか
答えは簡単です。あなたの報告書が「健康診断の結果」で終わっているからです。
「先週よりPVが10%増えました」「CPAが50円下がりました」
これは単なる「事実の羅列」です。
上司が知りたいのは「事実」ではありません。「その事実は、わが社の利益(PL)にどう影響し、次に何をすべきか」という判断材料です。
事象の集計(何が起きたか)は、AIやツールが得意な領域です。人間であるあなたがやるべきことは、その数字の背後にある「顧客の心」を読み解くこと。
「何が起きたか」の報告が9割を占めるレポートは、プロの仕事とは言えません。それは単なる「書記」の作業です。

数字に「体温」を宿らせる
報告書を「武器」に変えるための第一歩は、数字と「生の声」を結びつけることです。
たとえば「解約率が上がった」というデータ。これをそのまま報告しても、誰も動きません。
ここでvol.11で学んだ「ユーザーインタビュー」の知見をぶつけるのです。
✕ 数字だけの報告
「解約率が2%上昇しました」
◯ 顧客の声と結びつけた報告
「解約率が2%上昇しました。インタビューで判明した『独学で挫折した経験がある層』が、サポート不足を感じ始めた兆候だと推測されます。フォローアップの強化を提案します」
数字という冷たいデータに、顧客の「痛み」や「文脈」という体温を宿らせる。すると、報告書は単なる記録から、組織を動かすための「提案書」へと進化します。
数字は「問い」であり、その「答え」は常に顧客の中にあります。
10/90ルール——作業を捨て、戦略を練れ
今日から、レポート作成の時間配分を変えてください。
集計作業は10%(あるいは自動化)。残りの90%は「次の一手」を考えるために使う。
プロのマーケターの報告書には、必ず「だから、次はこれをやる」という戦略がセットになっています。
「CVRが下がった。原因は○○だ。だから、来週はバナーのコンセプトを作り直す」「このセグメントの反応が良い。ここに予算を倍投すれば、LTVが最大化する。だから、予算配分の変更を承認してほしい」
上司に「頑張って」と言わせるのではなく、「それで行こう」という意思決定をさせる。
報告書とは、あなたが上司の意思決定を引き出し、自分の戦略を通すための「投資依頼書」なのです。

書記を卒業し、軍師として報告せよ
「報告書を作るのが仕事」だと思っている間は、あなたは一生、数字の奴隷です。
しかし、数字の羅列から「顧客の変化」を読み解き、未来のPLを書き換えるための提案を添えた瞬間、その報告書は組織を動かす「武器」になります。
管理画面の数字をコピペするのは、もうやめましょう。あなたが語るべきは「過去の正解」ではなく、「未来の勝利」です。
顧客の心に起きた微かな変化を見逃さず、それを組織を動かす力に変える。その時、あなたのマーケティングは、真のプロフェッショナルとしての第一歩を踏み出します。
【本記事のまとめ】
1. 報告書が30秒で無視される理由
「何が起きたか」の事実羅列で終わっているから。上司が欲しいのは「次に何をすべきか」の判断材料。
2. 数字に「体温」を宿らせる
数字と顧客の声を結びつけることで、報告書は「提案書」に進化する。
3. 10/90ルール
集計作業は10%、残り90%は「次の一手」を考えることに使う。
4. 報告書は「投資依頼書」
上司に「それで行こう」と意思決定させるための設計をする。
5. 書記ではなく軍師として報告する
過去の集計ではなく、未来のPLを書き換える提案を語る。
よくある質問(FAQ)
数字の集計も大事な仕事では?
集計自体は必要ですが、それは「仕事の前提」であって「仕事そのもの」ではありません。集計はツールや自動化に任せ、あなたの時間は「数字から何を読み取り、次に何をするか」に使ってください。
提案を入れたら上司に否定されそうで怖いです
否定されることは悪いことではありません。「それで行こう」か「違う、こうしよう」か、どちらにせよ意思決定が生まれます。何も提案しない報告書は、意思決定すら生みません。
顧客の声をどうやって集めればいいですか?
ユーザーインタビュー、カスタマーサポートへの問い合わせ内容、SNSの反応、解約時のアンケートなど、顧客の声が集まる場所は社内に必ずあります。まずは営業やサポートチームに話を聞いてみてください。
▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season2
配属されてしばらく経ち、実務で壁にぶつかり始めた方へ。より実践的なテーマを掘り下げます。
- 第1回:あなたの「ブランディング施策」が却下されるたったひとつの理由。
- 第2回:「企業SNS運用、どれに集中すべき?」ランチェスター戦略で導く"捨てる"判断基準
- 第3回:お客様はあなたの会社に「1ミリも興味がない」。マーケティングの全戦略は、この残酷な事実を認めることから始まる
- 第4回:広告費で負けているなら、広告で勝負するな。弱者のための「地上戦」マーケティング
- 第5回:「ググる」で見つけてもらえる時代は、終わりかけている——AI時代に、自社を顧客に届けるには。
- 第6回:「バズったのに売上が上がらない」と悩むあなたへ。SNS評価の3層構造とPL翻訳報告
- 第7回:B2Bこそ「情緒」で売れ。決裁者も結局は「人間」であるという当たり前の事実
- 第8回:ゴールを決めた選手だけが偉いのか? 広告評価の「アシスト問題」を理解せよ
- 第9回:その記事、誰の「痛み」を解決していますか? 読まれないコンテンツに共通する「自分語り」の病
- 第10回:恋愛に学ぶ「カテゴリー」の罠。顧客のベネフィットはカテゴリーを越える
- 第11回:インタビューは「おしゃべり」ではない。顧客の本音を引き出す技術
- 第12回:PDCAの限界——「改善」だけでは届かない成長がある
- 第13回:「新人だから遠慮」はNG。代理店が活躍するためには、あなたの情報が必要だ
- 第14回:リードが2倍になった。なのに営業から怒られる——マーケと営業の「分断」を埋める方法
- 第15回:3時間かけた報告書。なぜ上司は30秒で流し読みするのか?(本記事)
▶ Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで