人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ローマ暮らしのあれこれ


by soonik
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

笑顔がもどった

笑顔がもどった_c0385426_22191157.jpeg

玄関のベルがジリリッと鳴った。
夏の家に訪ねてくるのは、たいがい近くに住む相方の従姉妹なので、彼女だろうと三階の窓から下を覗くと、
従姉妹の二番目の娘ちゃんがサイクリストのユニフォームを着てこちらを見上げて笑っていた。
塀の外にはボーイフレンドも自転車に寄りかかってこっちを見ていた。

つい先月、この二人がボーイフレンドの大学の授業の関係でローマに来たとき、旅費の節約になるからと、家に泊めてあげたのだ。
彼女は、もうすぐ18歳になる。
金髪の長身で美人だけれど、人見知りが結構はげしいと彼女のお母さんになる相方の従姉妹がよく言っていた。
小学校から始めた水泳でまずまずの成績を残すことから、本格的な水泳選手養成のための特訓を受けるようになった。
長距離の水泳選手に抜擢され、一日数時間泳いで帰宅すると、食事をするのが精一杯で学校の勉強までは疲れで手が回らなかった。
遊ぶのは、スイミングスクールの裕福な友達とだけになった。
ほとんどの週末は、どこかの市で開催されている競技会に出るために、両親と一緒に休みを返上して泳ぎに行っていた。
ところが、大会になるとタイムが出ないと、従姉妹や彼女の旦那さんが言っていた。
それでも水泳を続け、ある時、タイムがぐんと上がり、とうとうローマで開催される全国大会に出場が決まった年に、コロナのロックダウンになり、大会は中止。
彼女はそれを機に水泳をやめてしまった。
水泳と入れ替わって現れたのは、同じ学校の上の学年に通っていた彼氏。
下戸で栄養学に興味のある彼の影響で、しばらく続いていたディスコ通いや裕福なスイミングスクールの友達とも遊ぶのをピタッとやめ、ジムに通って運動したり、自転車に乗ったりして体を鍛え、将来は他のヨーロッパの大学で勉強したいからと、机に向かうようになり、学校の成績も上がってきた。

ローマの我が家に滞在中は、泊まっている部屋にこもりっきりなるのかと思っていたら、台所に立つ私のところに来ては、「何か手伝おうか?」と尋ねてくれたり、特にすることがなくても、ちょっとおしゃべりしながら、台所の椅子に座っていた。
お寿司やラーメンが好きだというから、ちょうど日本から持ってきたばかりのカレールーを使ってビーフカレーを作ると、彼氏と二人で大喜びでお鍋を空っぽんしてくれた。
朝は、ローマ名物のマリトッツォ屋さんに行ったら、マリトッツォを美味しそうに頬張っていた。
観光客に人気のあるアヴェンティーノの丘にあるマルタ騎士団の館にある鍵穴を覗いた後、バスを待つ間に、相方が、「また泳ぎたくならない?」と尋ねると、「トレーニング抜きで普通に泳ぎたいなって思うこともあるけど、前に比べたら今の方が幸せだよ」と答えた。
習い事と学校の両立は、私が想像する以上に大変だったんだな、と静かに答えた彼女の表情を見て思ったのだった。
未来の水泳選手を夢見て、たくさんの事を犠牲にしてきたんだ。

笑顔がもどった_c0385426_23193053.jpeg
先日、従姉妹と一緒にピッツァを食べに行くと、「普段は何も話してくれないのに、あなた達の家で食べたカレーの話や、ローマで行った場所の話をたくさんしてくれたのよ」と話してくれた。
違う環境で過ごした数日間が楽しかったのだろう、今までは相方と私が夏の家に来ても、自分からわざわざ出向いてくることがなかったのに、今年はこうやって笑顔で挨拶に来てくれた。

笑顔がもどった_c0385426_00234685.jpeg









名前
URL
削除用パスワード
by soonik | 2023-07-02 23:27 | 夏の家 | Comments(0)