新宿シネマカリテが2026年1月12日で閉館すると聞いて思い出した。
私が東京で初めて行った映画館はミニシアターだった。
2001年『アメリ』が公開されたときに、高校の同級生から誘われて見に行った。『アメリ』は地元にはまだ来ていなかったから、電車に乗ってはるばる東京まで行った。
私の記憶が正しければ、銀座1丁目にあった銀座テアトルシネマ(2013年に閉館)。
大人気で、朝の回は満席だったから、次の回のチケットを買い、大勢で階段に並び始まるのを待った。
あれから多くのミニシアターで映画を見てきたが、今はない場所もある。
この記事では、現存する都内のミニシアターの思い出を書き留めておく。
- ヒューマントラストシネマ有楽町
- 新宿武蔵野館
- 新宿シネマカリテ
- シネマート新宿
- キノシネマ新宿
- 新宿テアトル
- 下高井戸シネマ
- ル・シネマ渋谷宮下
- 恵比寿ガーデンシネマ
- ヒューマントラストシネマ渋谷
- シアター・イメージ・フォーラム
- ユーロスペース
- ポレポレ東中野
- シネ・リーブル池袋
- アップリンク吉祥寺
- 終わりに
ヒューマントラストシネマ有楽町
2020年、香港の映画監督ウォン・カーウァイの代表作5作品が4Kレストアされた。その後しばらくの間、全国でリバイバル上映した中で、2023年4月に『若き仕立て屋の恋』を見た。
1960年代の香港を舞台に、美しい高級娼婦と彼女に恋する仕立て屋の人間模様を描いた作品だ。これを見たときは、コン・リーって、どうしようもない悪女の役ばかりやらされちゃって……と冷めた感想だったが、今思えば、60年代の香港で娼婦をしていた女性が、好きでそんな仕事についたわけがなく、やむにやまれぬ事情があったんだろう。
とにかく、どんなに美化しようとしても美化しきれない社会の醜さみたいなものがプンプンに匂ってきて、今の時代にウォン・カーウァイを見たとき、私はそんなに浸れないんじゃないかという気がした。
ヒューマントラストシネマ有楽町は「イトシア」の中にあり、有楽町駅のどん前のマルイが作ったきらきらしいビルである。そうした舞台設定と映画のものがなしさがミスマッチで、ズーンと重く感じた。
新宿武蔵野館
2023年4月、ダリオ・アルジェントの新作『ダークグラス』と5月に『ソフト/クワイエット』を続けて見た。『ダークグラス』は見たことも忘れていたぐらいの作品だが、一方で『ソフト/クワイエット』には忘れられないインパクトがあった。
女性たちを主人公に白人中心主義の人種差別を描いたサスペンス映画で、強烈に胸糞が悪い。女性にもここまで残虐なことができるのか……とあっけに取られているうちに終わった。
シネマカリテがなくなってしまうのは残念だが、新宿武蔵野館には末長くがんばってほしい。
「もう少し余裕ができたら、株主になって優待券をもらいたい」と思うぐらい、思い入れのある映画館だ。
新宿シネマカリテ


2024年は5月『胸騒ぎ』7月『Shirleyシャーリイ』『めくらやなぎと眠る女』を、2025年8月『サタンがおまえを待っている』を見た。新宿東口からのアクセスがいいのと、上映作品が好みに合っているので、ミニシアターの中では一番よく行った場所だ。
赤いシートがふかふかで気持ちがよく、睡眠不足のときに行くと映画を見ながら意識が飛んでいることがある。
最近見た中では『Shirleyシャーリイ』が一番良かった。アメリカが誇る偉大なホラー小説家で、48歳で亡くなったシャーリィ・ジャクソンの伝記映画だ。彼女の作風に合わせて映画も幻想まじりで描かれ、普通の伝記映画ではないところがよかった。
シネマート新宿

2023年6月にウォン・カーウァイの『ブエノスアイレス』レストア版を見た。2本見て思ったけど、たぶんウォン・カーウァイは、私向きじゃないな!
2020年には『アングスト/不安』を見た。


1983年に制作されたオーストラリア映画で、1980年に起きた実際の猟奇殺人事件に題材を取っている。あまりにもリアリティを追求しすぎたため、本国では1週間で上映中止、ヨーロッパで上映禁止、VHSも発売禁止になったりしたことがスキャンダラスに取り上げられ、この監督は商業映画はこれ1作だけ作って転身したらしい。日本でもビデオスルーになっていたものを、なぜ突然公開したのかはわからない。本物の殺人を目撃したかのような胸糞悪さをおぼえる、不快な映画だった。
でも、どんなものだか知りたかったから、見てよかった。
当時は同じ建物に「EJアニメシアター新宿」が入っていて1階はPLSTだった。
キノシネマ新宿

一つ前に貼った写真と同じ画角。
新宿三丁目、シネマートと同じ建物にある。現在、1階はユニクロだ。
この場所は、角川シネマ新宿→EJアニメシアター新宿→キノシネマ(2023年11月)と変遷をたどっている。
2025年3月『アプレンティス ドナルド・トランプの創り方』と4月『教皇選挙』を見た。どちらも、今年見た中で5本の指に入る優れた作品で、社会派の映画でありながらエンターテイメントとしても十分におもしろかった。」
新宿テアトル

一番最近行ったミニシアター。新宿伊勢丹の裏手にある。
ミニシアターとしてはめずらしくU-NEXTのポイント利用ができるのでありがたい。
2025年8月(終戦記念日)に『この世界の片隅に』を見た。

お盆期間だから混むんじゃないかと思ってチケット引き換えに行ったら、ちょうど、全国の映画館にファンアートを描いてまわっている水口さんがいて、黒板アートに手を入れているところだった。(このときはそういう活動をしていることを知らなかったから、「テアトルの人かな? すごい絵がうまいな」と思っただけだった)
『この世界の片隅に』は初見だったが、オールタイムベストに入るぐらいの名作だ。映画館で見られてよかった!
下高井戸シネマ

2022年6月『ジギー・スターダスト』を見た。
1973年、デヴィッド・ボウイの伝説的なコンサートの模様を収録したドキュメンタリー映画で、1979年に公開された作品の4Kレストアだ。

そもそもの映像が粗く見づらかった。仕事帰りに無理やり駆け込んだのと、睡眠不足でちょっとうとうとしてしまったこともあって、あんまりよくわかんなかったな。
ディヴィッド・ボウイは人気があり、ドキュメンタリーが複数制作されている。初見なんだから、もっとわかりやすい作品を見ればよかった。
下高井戸シネマは思いっきり、雑居ビルの中にある。昔ながらの古〜い映画館だ。
ル・シネマ渋谷宮下
bunkamuraは東急百貨店の建て替えに伴い、取り壊しされて、オーチャードホールだけが残っていると聞く。ル・シネマとミュージアムには年1で行っていたが、いまは跡形もないんじゃないかな。(新装開業は2027年の予定)
ル・シネマは駅の近くに移転し、仮店舗として営業中だ。特に建物の印象はないが、ビックカメラが入っているビルの上(7階、9階)にあって、看板を見つけるのに苦労した。

2024年5月に『ピクニックatハンギング・ロック』を見に行った。

映画は1975年、オーストラリアを舞台にした小説を映画化したもので、これも4Kレストアだ。岩山にピクニックに行った女子生徒3名と教師1名が失踪し、1人は戻ってきたが、あとの3人は戻らなかった。雰囲気ありげにいろいろと不可解な出来事が起こるが、謎解きがないまま終わり、モヤっとした。今で言う考察系映画みたいなもんかな。
ル・シネマは海外の一風変わった映画をやっていることが多く、今後も行く機会がありそう。
恵比寿ガーデンシネマ
2018年『プロヴァンス物語 マルセルの夏』がデジタルリマスターされたときに見に行った。この頃はデジタルリマスターと言っていたが、その後みんな4Kになった。
本来なら、続編の『マルセルの城』もいっしょに見てこその作品だ。
この2作は30年前、テレビで見て、こどもながらに感動した作品だ。やっぱり続編も見ればよかったな。
恵比寿ガーデンプレイスって、広い敷地内にホテルや商業ビルが点在して、要は六本木ヒルズみたいな街づくりだ。あの形式のなにがいいのか全然わからない。たぶん、金持ちが車で乗り付けて、全部一箇所で済むから都合がいいのかな。私としては場違いで、居心地がよくなかった。(すっげー悪口書いちゃった)映画館としてはよかったんだけどね……。
ヒューマントラストシネマ渋谷


有楽町同様、大きい商業施設の上にあり、果たしてミニシアターと言えるのか調べたら、全部で3スクリーン、一番大きいところが200席だから範疇に入るみたいだ。
2019年10月『ボーダー 二つの世界』というダークファンタジー映画を見たときに、通路についている非常灯がめちゃくちゃまぶしくて、通路際の席を取ったことを後悔した。
2023年7月、ジャパニーズホラーの『ヒッチハイク』を見た。あれは中高生のお子様向け、出オチで終わった感がある。川崎麻世のジョージはすごく良かったし、ところどころに好きなところもあるけど、主人公側の若い役者の演技がいまいちで安っぽくなってしまった。
シアター・イメージ・フォーラム

1階スクリーン64席、地下スクリーン98席のごく小さな映画館。待合スペースなし、売店は狭苦しいし、設備も古いけど、社会派ドキュメンタリーが見られるのは貴重だから、がんばってほしい。
2024年8月『マミー』、2023年12月『プリズン・サークル』を見た。
『マミー』は死刑囚・林真須美の長男・夫を中心にしたドキュメンタリーだ。支援者らは今でも林真須美の無実を訴え、活動しているそうだが、いかんせん、保険金詐欺などの過去の事実を正確に伝えることによってダーティなイメージが拭えず、疑惑は去らなかった。本来は確たる証拠もないのに死刑にするなんておかしい。再審を求める主張は正当だと言いたいところだが……。映画を見て、私は林真須美を応援したいという気持ちにはならなかった。でも、見てよかった。
『プリズン・サークル』は印象に残るよい映画だった。刑務所でのセラピーは予算を割いて、もっと広く実施したほうがいいと思ったし、刑務所の中のことに関心を持つきっかけになった映画だ。

ユーロスペース
渋谷のユーロスペースでは2001年にフランソワ・オゾン監督の『焼け石に水』を見た。その後なんか見ているかもしれないが、記録がなく、Twitterで検索したところによると2010年に『ボローニャの夕暮れ』というイタリア映画を見たらしい。
第二次世界大戦下のイタリアを舞台に、学校で起きた殺人事件の疑惑と少女と家族愛をテーマにした人間ドラマだ。少女の名前がジョヴァンナで、映画の原題は『ジョヴァンナの父』だった。父の愛に焦点をあてたハートウォーミングストーリーなんだろうけど、私にはむしろ、母親への胸糞感情だけが残っている……。なんでこれを見たいと思ったんだっけ?
どこかに書き留めておかなければ、映画体験は簡単に消えてしまうものなんだなと気づいたので、今こうして書き記している。
ポレポレ東中野
ポレポレ東中野は居心地のいいカフェが併設されていて好きなんだけど、タイミングが合わず1度しか見に行けていない。
『アレクセイと泉』は2002年に公開されたドキュメンタリー映画だ。東日本大震災の後でリバイバル上映をしていて、田口ランディが新聞にコラムを書いているのを見て、見に行ったように記憶している。
チェルノブイリ原発事故で立ち入り禁止となり、住民が避難した後、老人だけが戻ってきたベラルーシの村に取材したドキュメンタリーだ。
当時はチェルノブイリの事故についてよく知らないで見たので、ふーんという感じだったが、最近になってHBO制作のドラマ『チェルノブイリ』を見て、避難地域は今どうなっているんだろうとか、もっと詳しく知りたいという気持ちになっている。
東中野は新宿から2駅で、アクセスもいいので、今後もっと利用したいと思う映画館だ。
シネ・リーブル池袋

シネ・リーブルは巨大商業施設の中に入っているテアトル系のミニシアターだ。
2025年4月に『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』を見に行った。

パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区マサーフェル・ヤッタでイスラエルがあとから法律を作って「軍用地だ」と主張し、ブルドーザーで住居を破壊、時には住民を殺して人々を追い出そうとしている。現状をパレスチナの青年が自分のスマホで撮影し、SNSなどに投稿して世界に伝える。パレスチナ人とイスラエル人、双方から4人の監督が協力して、イスラエルの非道を伝えたドキュメンタリー。
ガザ地区の大虐殺ほどの凄惨な映像(肉塊になった人々の破片とか損壊された遺体とか)はないけれども、カメラの前で人が殺されもするし、心の痛みは避けられない。
ユダヤ人虐殺をテーマにした作品って好まれるのか、しょっちゅう上映されるけれども、そういうものを1つ見たなら、パレスチナの映画も1つ見なければならない。そう思って見た。
アップリンク吉祥寺




アップリンクは吉祥寺のパルコの地下2階にあり、建物の特徴がない代わりに、内装が凝っていて楽しい映画館だ。
2024年3月『落下の解剖学』を見た。ミステリー、クライム・サスペンスなんだけど、延々と夫婦がケンカしているシーンが長くて、私としては楽しくなかった。そもそも殺人ミステリーが好きじゃないことに後から気づいた。(ホラー映画は大好きだから、たんに好みの問題だ)
終わりに
渋谷のミニシアターについてnoteに書いている人がいて、おもしろかった。
映画むりくり短歌#08「秋が来るとき」|えねむし(長谷機械児・機の長谷雄)
2001年『リリイ・シュシュのすべて』は私も見た。生涯忘れえぬ映画だ。スペイン坂のシネマライズ。私も、たぶんここで見たと思う。
渋谷のアップリンクでは『ヨコハマ・メリー』という昔横浜にいた老いた娼婦をめぐるドキュメンタリーを見た。この2か所は、もうない。
今後も新宿〜渋谷エリアのミニシアターにはなるべく足を運ぶと共に、できるだけ、Twitterやブログを使って記録として書き残していきたい。









