sigh of relief

くたくたな1日を今日も生き延びて 冷たいシャンパンと 届いた本と手紙に気持ちが緩む、 感じ

一人フルコース

 

晦日だけど、関係ない話。

一人フレンチフルコースができるようになったのは去年くらい。

焼肉でも立ち飲みでもバーでも寿司でも一人でどこでも行けるけど、ちゃんとした店のフレンチフルコースは一人では行ったことなかった。

おひとりさまの予約は受け付けていない店も多いので、あれこれ探してるうちに星つきだけど明るく開放的な良いレストランを見つけて、最初は少し緊張しながら行って、それ以来時々行くようになりました。

年に1、2度の贅沢だけど、一人だとひたすら味わうのに集中するのでワインと料理にしっかり向き合えます。

人並み以上に食いしん坊な上、むやみに実験心があるので、料理とワインを味わい探り考えているだけでひとりでも全然退屈しない。

こういうレストランは積もる話のある久しぶりの友達とか、恋愛初期の話しても話しても足りないような時期の相手と来たらもったいないよねぇと思うようになった。だって人と一緒だと料理に100%向き合えないじゃないですか。

長く一緒にいて、特に会話がなくても落ち着いていられる関係の人と来るか、一人で来るか、あるいは同じくらい料理に興味と情熱のある人と来て楽しく感想戦をしまくるか、のどれかが良いと思う。笑

 

フルコースにワインペアリングで3時間くらいはかかるので、最初は一人だと間がもたないかと思ってたけど、ちょっとした隙間はスマホが埋めてくれるし、料理とお酒をじっくりゆっくり味わってると、結構あっという間です。

最近時々行くワイナリーのメーカーズディナーだと、外国のワイナリーの方(今回はアルゼンチン)のお話があったり、生演奏が入ったりすることもあるし、年に一度の贅沢としてとても楽しみ。

この日はアルゼンチンのワイナリーの夜で、生演奏のほかに、サプライズでタンゴのダンスまであった!アルゼンチンといえばタンゴだしね。アルゼンチンワインももっと飲もう。

一人で楽しめることが増えてくると、それはそれで人と楽しめることの方が疎かになったりもするなぁと、今日ふと思った。人と楽しむことの上手な人が周りに多くて、そういう人を見ていて思ったのでした。わたしはそれが下手なのです。場を作るのが苦手。コミュニケーションには良いものであってもいつも疲労がつきまとう。疲労以上の面白さがあるから頑張るけど。

どちらもいいバランスで楽しめるようになりたいなぁ。

「あおぞら」

 

今の新聞の連載は、柚月麻子の「あおぞら」

昭和の時代、若くて孤独な工場勤務のシングルマザーが、産後ボロボロなカラダで働いていたところから、商店街の人たちを巻き込んで保育園を実現させた話だけど、保育園が出来たあとの話もいい感じだ。
水爆実験で商売ができなくなった魚屋さんを支えたり、今度はスーパー保母さんの給料安すぎ問題を解決しようとしたり、頭でっかちのインテリお嬢さんが悩んだり。
署名をし講演をし寄付を募りという活動を水爆実験反対や保育園存続のためにするわけだけど、全然バリバリ活動してる感じではなく優しく柔軟な主人公が良い。

そしてその後は自分のしたいこともしていくのだろう。
小さな普通の女性が一つ一つ問題を解決して行くうちに大きなことをしている話は良いね。

 

柚月麻子は「BUTTER」が売れて、外国でもすごく評価されたけど、ある読者会に参加したらけちょんけちょんに酷評された。哲学や批評の畑の人たちからの批判はよくわかるけど、わたしは嫌いにはなれないな。

smallthings.hatenablog.com

まだ途中だけど、読みやすい話だし楽しく読んでいきますよ。

映画:世界一不運なお針子の人生最悪な1日

 
クリスマスマーケットの人混みの波に逆らって映画館に行き、見たのはこれ。
時間がもっと遅くなって世の中が盛り上がる前に脱出して家に帰れたけど、イブにスカイビルのテアトルに行くのは無謀だったか、帰りの電車も遅れてものすごい満員電車で汗だくだく…疲れた。。
(去年はクリスマスの日にテアトルに映画を見に行ってやはり同様に酷い目にあってたみたい… 学べ、わたし)
 
さて、映画は針と糸で戦う?お裁縫クライムサスペンス!笑
スイスの山中にある小さな町でお針子をしているバーバラは、唯一の肉親だった母を亡くし、譲り受けた“喋る刺繍”のお店は倒産寸前。相談できる友人も恋人もいない。ある日、常連客との約束に遅刻した上、ミスをして激怒させてしまう。店に戻る途中、麻薬取引の現場に遭遇する。売人の男たちは血まみれで倒れ、道には破れた白い粉入りの紙袋、拳銃そして大金の入ったトランク。<完全犯罪(横取り)><通報><見て見ぬふり>の運命の三択がバーバラの頭をよぎる。果たして、お店を守るために彼女が選ぶ未来とは?
(公式サイトより)
わたしはサスペンスもホラーの次に苦手なので疲れたけどこれは面白かった。
3つの選択の結果を順番に見せていくのだけど、それって選ばなかった選択を見せているのか、実際に選んだのはどれなのかはあやふやなまま進みます。あやふやというか、説明的なところがないんですよ、この映画。ヒロインもほとんど喋らないし、ヒロインの状況や母への思いなどはセリフでは一切出てこない。そこがとても上手くて良い。
 
針と糸で犯罪に立ち向かう(というか、加わる?)なんて、一見漫画っぽい設定なんだけど、映画には漫画的なところは見えず、ちゃんととても映画らしい映画になってます。漫画を下に見ているわけではないけど、最近の小説も映画も、あー、これ漫画原作だなぁ、とすぐにわかるようなものが多くて、わたしはもう食傷気味。漫画原作でもいいものもあるけど、漫画には漫画にしかできない良さを、映画には映画ならではの良さを見せてほしいのよね…
だからこの映画が、こんな設定なのにとても映画的なのはうれしかった。
 
そしてヒロインの状況が、一見巻き込まれ型のように見えるけど、彼女自身、特に善良でもなく(というか、結構悪いです。モラルほとんどありません笑)、さらにちょいとサイコ味のある性格で、全面的には感情移入できないところがまた良いです。良い距離感で見ることができる。
 
オフビートというのではなく、でもどこかダークなユーモアが不思議と明るく清潔で澄んだ画面にずっとただよっているこの映画のこの感じ、何かに似てると思って、あ!「ファーゴ」だ!と気づいたんだけど、あとで調べたらこのまだ20代の監督、最初に作った短編映画をコーエン兄弟に認められてこれになったと。やっぱり!納得!
 
主人公のお店も車もめっちゃかわいいし、ほとんど笑顔のない仏頂面の主人公の顔や雰囲気もかわいいし、スイスの田舎の風景も素敵だし、登場人物が村の人も悪役もみんないい味出てて、この村でまた事件を起こして続編を作ってほしい!
ガーリーな主人公とかわいい街の「ファーゴ」っぽい物語って、最高。そういうところで、わたしは名作「ファーゴ」より好きかも。
そもそも、刺繍や縫い物のお針子の映画が好きなのです。
お針子映画としては、秘密を抱えた孤独な少女がプロの刺繍の世界に触れ心を柔らかくしていく映画「クレールの刺繍」のオートクチュールドレスの刺繍の美しさ、
80代のマルタが夢だったランジェリーショップを開こうとする「マルタの優しい刺繍」、
半年ほど前(2025年夏頃)見たばかりの「美しい夏」などをぱっと思い浮かべるけど、どれも好きだった。とにかく繊細で美しい刺繍や裁縫仕事を映画で見るのがとても好きです。
 
あと「喋る刺繍店」ってなんだろうと思ってたら、刺繍の後ろ?に仕込んであるスピーカーから声が出る仕掛けになっているものが、この店の売りの商品なのでした。主人公は母親が彼女に話しかける声を、母と自分の顔の刺繍作品にして、家の中に張りめぐらした糸に止めつけ、毎日母の声を聞きながら生活しているようで、これも亡き母親(自殺したといわれてる)への愛情というよりは、どこか異常なものを感じさせて、サスペンス味がありますね。
 
ちなみに元になった短編映画はこれらしい。監督が19歳で撮ったもの。
 
映画は、最後まで見たら後味は悪くなくてよかった。
この映画の前に見て、うーん、と思った荒井晴彦監督作品の口直しになって良かった笑