山形県の米沢駅と新潟県の坂町駅を結ぶJR米坂線は、2022年8月に大雨の被害を受け、途中の今泉駅と坂町駅の間が代行バスでの運行となっています。
被災した区間に小国駅という駅があり、このあたりは山形県西置賜郡小国町の中心地となっています。
代行バスがあるとはいえ、鉄道が来なくなってしまった過疎の町の終末アトモスフィアのご報告となります。

1,生きている小国駅
今泉駅で10人ほどの乗客を乗せた代行バスは小国駅の駅前に到着。
乗車前の今泉駅では、地元のオバチャンが「小国まで行かないといけない。もう米坂線は復旧しない。」とため息まじりに話していて、乗車前から終末感が漂っていた米坂線。
到着した小国駅では乗車するお客さんの改札も兼ねて駅員さんが出てきてビックリ!
列車は来ませんが、有人駅である小国駅はちゃんと駅員さんが勤務してくれているのです。
ホームには入れませんが、駅の中に入ることができて、切符を買ったり、待合室で休憩することもできます。
駅の中には、小国駅のキャラクター「クマ駅長おぐたん」がへっぴり腰で迎えてくれました。
小国町のあたりはマタギの文化もあるなどの経緯だそうですが、その分いま話題のリアルクマの出没で地鶏が大量に食べられるという被害も発生していて、マジで笑えないとコチラもへっぴり腰になってしまいました。
ちなみに、熊本県小国町のゆるキャラにも「おぐたん」がおり、もう腰が抜けそうです。
ともあれ、もともと本数の少ない米坂線ですので、この光景だけ見ると、列車が来ないなんて想像できない感じがしました。


2,雑草に覆われる線路
しかし、駅舎を出ると一気に運休の実感を全身で味わうことになります。
被災から3年経った線路はすっかり雑草に覆われて、どこがレールなのかわからない場所もあります。
踏切の警報器や信号機も立っていますが、スンとしています。
米坂線の復旧費用は約86億円と言われていますが、時の経過とともに雑草の繁茂やメンテナンスしないことによる設備の劣化が進むので、人々の心と反比例して心理的なものも含めた復旧費用は日ごとに増していくような感じがします。


3,たくさんあるはずの飲食店が全滅
GooglaMapで検索すると、小国駅の周辺にはたくさんの飲食店があります。
地方都市では、鉄道駅の周辺よりも国道沿いの方が発展していることが多いですが、ここではすぐ近くに国道113号線が通ていることもあり、街の機能が集積しているようです。
しかし、実際に訪問してみると、10数件あった飲食店がすべてクローズ。
お店が開いていたのは、お菓子屋さん2店舗だけで、お昼ご飯にありつくことができませんでした。(後から知ったのですが、国道113号沿いになぜかGoogleMapの検索に引っかからないファミマがあったそうです。)
これらの飲食店は、潰れたわけではありません。平日はちゃんとやっているのです。
と、いうのは、小国駅の周辺には、日本重化学工業などの工場や事業所が多くあり、従業員の皆さんのお昼のオアシスとして、たくさんの飲食店が立ち並んでいるのです。
私が訪問した休日にお店が閉まっているのは至極もっともな話。
しかし、裏を返せば、周辺住民の日々の消費活動はほとんど行われておらず、工場の皆さんで経済がなんとか成立していることになります。
もしも、工場や事業所の閉鎖や移転がなされたらどうなってしまうでしょうか?
少子高齢化が進む中で、いくつかの企業の意思決定に依存した地方経済は、大きなリスクを抱えていると言えます。

4,生き殺しの廃墟「ショッピングセンターアスモ」
それを象徴するのが、小国駅から3分という最高の立地のショッピングセンターアスモです。
3階建てのショッピングセンターですが、すでにテナントは撤退しており、内部も一部が消灯されているため、まるでグールの巣窟のようです。
ショッピングセンターの機能は失っていますが、一部で公共施設的なものが入居しているようです。
施設内には、ミニスーパーがオープンする予告のチラシが貼ってありましたが、オープン日以降にも関わらず誰一人として出店していませんでした。
さらに不気味なのが、そのような半分廃墟にも関わらず子どもたちの声が聞こえることです。
これは、もともと書店だった区画が、無人図書館のような読書スペースになっていて、ここで地元の小学生たちが駄弁っているからでした。
ミライある子供たちの姿が見えてことはよかったですが、この町で暮らすことに希望を見出せるはずもなく、1日も早く都会に出たいと思っているのだろうなと思うと悲しい気持ちになってしまいました。


ショッピングセンターアスモの1階と3階を運営していた「協同組合小国ショッピングセンター」は、2025年4月に自己破産申請の準備に入ったと報道されていて、負債総額は約5億円と言われています。(テレビユー山形ニュースより)
地元の11の商店の出資で設立された協同組合でしたが、出資者数は最終的に3まで減少し、2024年10月に100円ショップも撤退してしまい、とどめを刺されてしまったということです。
また、1階の立体駐車場と3階のコミュニティホールの運営を行っていた第3セクター「株式会社小国いきいき街づくり公社」も第三セクター等経営健全化方針が出され、空きスペースを活用した再建策を模索しているところです。
しかし、ショッピングセンター運営は非常にシビアはビジネスで、どんなに良いコンテンツが入っても、館全体の世界観やブランディングの醸成がなければ、そもそも集客が実現しません。
地元の既得権益で成り立っている組織では難易度の高いプロパティマネジメントはむずかしいだろうと感じます。


5,リアル廃墟「ショッピングモールエコー」
息も絶え絶えに存続しているショッピングセンターアスモに対して、すでにこと切れているのが「ショッピングモールエコー」こちらは、2019年に閉店し、リアル廃墟となっています。
中を覗くと、レジや什器がそのままになっていて、エコーだけに断末魔がエコーしてくるのではないかと恐怖に慄くほどです。
このショッピングモールエコーは、実店舗だけでなく、中山間地域への移動販売も行っていたそうです。
いわゆる買い物難民の皆さんの生活インフラが機能を失ってしまったことは、街にとって大きな痛手に違いありませんし、負のスパイラルも計り知れないことでしょう。
報告書によると、ショッピングモールエコーは、地元の大企業コバレントマテリアルの傘下にあったと書いてあります。
コバレントマテリアルは、現在のクアーズテック合同会社で、日本重化学工業と並んで小国町でも活躍するセラミック系の企業です。
駅の近くに小国事業所があり、従業員は先ほどの飲食店にもよく足を運ぶことでしょう。
地元密着で生活インフラを支えてくれていましたが、力が及ばなかったのかもしれません。


6,鉄道より代行バスの方が快適
JR米坂線は、JR東日本と地元自治体などで引き続き復旧の方法に関する協議が続いています。
しかし、どのような復旧スキームであったとしても、これまで通り数時間に1本のキハ110系気動車がやってくるだけの鉄路では何かが変わるとは思えません。
むしろ、新潟交通の観光バス型の車両はとても快適で、座席もゆったり、ハイデッカーで景色も良いです。
米沢駅から今泉駅まで乗車したキハ110形は、ロングシートで(一部クロスシート)イスは固く、他のお客さんとの距離も近いので、「運ばれているだけ」という感覚は拭えません。

7,米坂線は復活のさせ方が9割
したがって、「地元の足を守る」ためという理由では、約86億円かけて普及させるには無駄な投資と言えますし、沿線自治体がその負担を継続的にできないことは、その街を見れば明らかです。
むしろ、議論すべきは、普及後の米坂線の在り方でしょう。
普及後、地元住民だけでなく、どのような人たちにどのような目的で乗ってもらうのか、そのためにはどのような街の資源をフックとして、どのような打ち出し方やブランディングを行っていくのか、マーケティングをきっちりをやっていくべきです。
それを実現させるためのベストな保有・運営・負担のスキームは自然と決まってくるはずなので、路線としての経営戦略を考えていきたいです。(残念ながら、乗り通してみて訪れたい理由は1つも見つかりませんでした・・・。)
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