さちゅりこん2――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

悪口礼賛におけるプラス面とマイナス面

人の上言ふを腹立つ人こそ、いとわりなけれ。いかでか言はではあらむ。我が身をば差し置きて、さばかりもどかしく言はまほしきものやはある。されど、けしからぬやうにもあり、また、おのづから聞きつけて、恨みもぞする、あいなし。また、思ひ放つまじきあ…

人に思はれむばかり、めでたきことはあらじ

世の中に、なほいと心憂きものは、人ににくまれむことこそあるべけれ。誰てふもの狂ひか、我、人にさ思はれむ、とは思はむ。されど、自然に、宮仕へ所にも、親、はらからの中にても、思はるる、思はれぬがあるぞ、いとわびしきや。 よき人の御ことは、さらな…

物体の運動について

五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとたたざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などのあゆむに走り上がりたる、いとをかし。 左右にある垣にあ…

漢・清少納言

風は嵐。三月ばかりの夕暮れにゆるく吹きたる雨風。 八、九月ばかりに、雨にまじりて吹きたる風、いとあはれなり。雨の脚横さまに、騒がしう吹きたるに、夏とほしたる綿衣のかかりたるを、生絹の単衣重ねて着たるも、いとをかし。この生絹だに、いと所狭く暑…

nanimonasi

なにもなし

さと知りながらことさらに言ひたる

ふと心劣りとかするものは、男も女も、言葉の文字いやしう使ひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ。ただ文字一つに、あやしう、あてにもいやしうもなるは、いかなるにかあらむ。さるは、かう思ふ人、ことにすぐれてもあらじかし。いづれをよしあし…

病は、胸。もののけ。あしのけ。 はては、ただそこはかとなくて物食はれぬ心地。 十八九ばかりの人の、髪いとうるはしくてたけばかりに、裾いとふさやかなる、いとよう肥えていみじう色しろう顔愛敬づき、よしと見ゆるが、歯をいみじう病みて、額髪もしとど…

ものなど問はせ給ひ、のたまはするに、久しうなりぬれば、 「下りまほしうなりにたらむ。さらば、はや。夜さりは、とく。」 と仰せらる。 ゐざり帰るにや遅きと、上げちらしたるに、雪降りにけり。登華殿の御前は、立蔀近くてせばし。雪いとをかし。 ここで…

寝入りぬるこそ、をかしけれ

夜中、暁ともなく、門いと心かしこうももてなさず、何の宮、内裏わたり、殿ばらなる人々も出であひなどして、格子なども上げながら冬の夜を居明して、人の出でぬる後も見出したるこそ、をかしけれ。有明などはまして、いとめでたし。笛など吹きて出でぬる名…

享楽への抵抗

テレビを見ていたら、早★田の教育学部生が映像がないと授業は眠いとか自分を棚に上げたいつもの発言をかましていて、これに対してコメンテーターが、ホラー映画よりホラー小説の方が怖いのだ、といいことを言っていた。確かにネムイ授業というものはあるのだ…

遠くて近き――相即相入

近うて遠きもの。宮のべの祭。思はぬはらから、親族の中。鞍馬のつづらをりといふ道。 師走のつごもりの日、正月のついたちの日のほど。 これと次の段は続けて読むべきだ。 遠くて近きもの。極楽。舟の道。人の中。 近くて遠いものと遠くて近いものは、実際…

【アンチ】むつかしげなるもの【モラル】

むつかしげなるもの 繍物の裏。鼠の子の毛もまだ生ひぬを、巣の中よりまろばし出でたる。裏まだ付けぬ裘の縫目。猫の耳の中。殊に清げならぬ所の、暗き。 ことなる事なき人の、子などあまた持てあつかひたる。いと深うしも心ざしなき妻の、心地あしうして久…

はしたなさの超克

人ばへするもの、ことなることなき人の子の、さすがにかなしうしならはしたる。しはぶき。はづかしき人にもの言はむとするに、先に立つ。 あなたこなたに住む人の子の、四つ五つになるは、あやにくだちて、物とり散らしそこなふを、ひきはられ制せられて、心…

雪が降るらしい

数年前の雪

うつくしきもの――遠く離れて

うつくしきもの、瓜に書きたる児の顔。 雀の子の、ねず鳴きするにをどり来る。二つ三つばかりなる児の、急ぎてはひ来る道に、いと小さき塵のありけるを目ざとに見つけて、いとをかしげなる指にとらへて、大人などに見せたる、いとうつくし。 頭は尼そぎなる…

疫病・幽霊

胸つぶるるもの 競馬見る。元結よる。親などの、心地あしとて、例ならぬけしきなる。まして、世の中など騒がしと聞ゆるころは、よろづの事おぼえず。 親などが気分が悪いと普通でない様子の時、まして、世の中に疫病がはやっているときには何も手に付かない。…

謝恩会2020

太った人の前と後

式部の丞の笏。黒き髪の筋わろき。布屏風の新しき。古り黒みたるは、さる言ふかひなき物にて、なかなかなにとも見えず。新しうしたてて、桜の花多く咲かせて、胡粉、朱砂など彩どりたる絵ども描きたる。遣戸厨子。法師のふとりたる。まことの出雲筵の畳。 お…

「恐ろしげなるもの」対策

恐ろしげなるもの 橡のかさ。焼けたる所。水ふふき。菱。髪多かる男の、頭洗ひてほすほど。 考えてみると、ドングリの傘、焼き芋、オニバス、菱の実などが、なぜ恐ろしく感じるのか不思議である。フロイトなら、それはすでに髪の毛が多い男が髪を乾かすよう…

白い繭

ふと私は自分の脳に何か暗い影が横切るやうな気持だつたが、恰度そこへSが帰つて来た。それで話はすぐ他の話題に移つて行つた。が、暫くすると、Sもやはり脳のなかにある白い繭のことから余程シヨツクをうけてゐるらしく、不安な顔つきで奇怪な病気のこと…

「言はで思うぞ」と「言うな!」

紙には、物も書かせ給はず、山吹の花びらただ一重を包ませたまへり。 それに、「言はで思ふぞ」と書かせ給へる、いみじう、日ごろの絶え間嘆かれつる、皆慰めて嬉しきに、長女も、打ちまもりて、「御前には、いかが、物のをりごとに思し出で聞えさせ給ふなる…

つれづれの後始末

つれづれなぐさむもの。碁、双六、物語。三つ四つのちごの、ものをかしういふ。まだいとちひさきちごの、物語し、たかへなどいふわざしたる。くだもの。男などのうちさるがひ、ものよくいふがきたるを、物忌なれど入れつかし。 國分功一郎氏が暇について本を…

逢坂の関をめぐって

夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ 心かしこき関守侍り」と聞ゆ。また立ち返り、 逢坂は 人越えやすき 関なれば 鳥鳴かぬにも あけて待つとか 一晩中鶏の声色で函谷関の関守を騙すとしても、男女が会うところの逢坂の関は許しませ…

いと高きところに習合あれ

三浦常夫(尾高根太郎)の「いと高きところに栄光神あれ」は小文であるが、なかなかのもんで、「るしふえる」の堕落を持たざるを得ない基督教を西田哲学風の理屈を軽妙に使って大乗仏教を持ち上げておる。勢い余って「阿呍阿教」とか例の「生長の家」の教義…

テューモスと戦うことは難しい

九月ばかり、夜一夜降り明かしつる雨の、今朝はやみて、朝日いとけざやかにさしいでたるに、前栽の露、こぼるばかり置きわたりたるも、いとをかし。透垣の羅文、軒の上に、かいたる蜘蛛の巣のこぼれ残りたるに、雨のかかりたるが、白き玉を貫きたるやうなる…

我ぞとてさし出でたる

はしたなきもの。異人を呼ぶに、我ぞとてさし出でたる。物など取らする折は、いとど。おのづから人の上などうち言ひそしりたるに、幼き子どもの聞き取りて、その人のあるに言ひ出でたる。 あはれなることなど、人の言ひ出で、うち泣きなどするに、げに、いと…

盆栽

この飛び石のすぐわきに、もとは細長い楠の木が一本あった。それはどこかの山から取って来た熊笹だか藪柑子だかといっしょに偶然くっついて運ばれて来た小さな芽ばえがだんだんに自然に生長したものである。はじめはほんの一二寸であったものが、一二尺にな…

心と心理

むとくなるもの 潮干の潟にをる大船。大きなる木の、風に吹き倒されて根をささげて横たはれ伏せる。えせ者の、従者かうがへたる。人の妻などの、すずろなるもの怨じなどして隠れたらむを、かならず尋ね騒がむものぞと思ひたるに、さしもあらず、ねたげにもて…

「ひそひそ話」の哲学

はづかしきもの 男の心のうち。いざとき夜居の僧。みそか盗人のさるべき隈に隠れ居て見るらむを、誰かは知らむ。暗きまざれに、偲びて物引き取る人もあらむかし。そはしも、同じ心にをかしとや思ふらむ。 夜居の僧は、いとはづかしきものなり。若き人の集り…