日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

弾む気持ち

明け方にトイレに行く。カーテンを開けると外は明るい。あ、きたか。とうとう雪が降った。ちらちらと舞ってはいたが、そして数日前からは南アルプスや八ケ岳の峰々を覆い尽くしていたが、この高原もとうとう白一色になった。初雪だった。

朝の気温はマイナス三度。雪もそうだが凍結が怖い。しかし何故か心がうきうきするのだった。ふとコンビニの珈琲が飲みたくなった。自宅では導入しようと話しているだけでエスプレッソマシンをまだ買っていない。外出の良い言い訳となった。我が家の前の道路は南へ向かって下っている。あまり往来も多くないので雪面がそのまま残っていた。車に乗り込み床のレバーを後ろに倒した。すると四駆のマークが速度計の上に表示された。以前のモデルなら電気的なスイッチ一つだったのだが今のモデルはメカ式のレバーに遡った。初期のモデルはメカ式のレバーに加え車を降りて前輪のホイールをロックする必要があった。いずれにせよフルタイム四駆ではないので四輪駆動で走るには何らかの儀式が必要になる。前のモデルの電子ボタンは便利だったが少し呆気ない。これがメカ式のレバー操作に先祖返りしたのは嬉しいのだった。

自分が住む高原は北陸や新潟、東北日本海側のような雪国ではない。積雪を見ても根雪になるほどには積らない。数日で消えるように思う。しかし全てが凍るのだから困りものだ。自分が住んでいた横浜でも年に数度積雪を見た。冬タイヤなど履いていないのだからスタックがそこら中で起きる。そんな日に自分は用事もないのに車を出して、わざとタイヤ跡のない道路を選んで走るのだった。もちろん四駆スイッチを入れてから。車は安定して動く。ああ、嬉しいなと思う。今朝はタイヤ跡の残らなそうな別荘地の道路を走り回った。初めて自転車に乗れた子供の気持ちを思い出した。

四駆は頼もしい。小さな車なので狭い道でもお構いなく登る。念のために低速で急制動を試みた。ガガガとABSが働いた。安心感がここにもある。この車で初めて味わう積雪路だ。狭い道に入ったら対向車がやってきた。雪の深い路側帯に突っ込んで対向車と行違った。何と窓越しに見る対向車のドライバーはとても嬉しそうに笑っている。かつ興奮しているようだった。ああ、自分と一緒だな、そう思う。

自分も彼も同じ車だった。雪を悪路を楽しんている。子供のように。高原のこの地ではこの車に乗っている方がとても多い。昭和の半ばまで日本の大衆車といえばトヨタカローラか日産サニーだった。しかし山梨のこの高原での大衆車は660ccのこの車なのだった。小型軽量、高いロードクリアランスのお陰で林道の奥まで入れる。リアをフルフラットシートにすれば山仕事すらできる。農地のあぜ道も余裕だ。何よりも強力な四駆と頑丈なラダーフレームは安心感をくれる。街を走れば同じ車に出会う。そしてオーナーは悪路の走行が嬉しくて仕方がない。実際その安心感は半端ない。

彼の笑顔に対して自分も笑って返した。雪の外出も余り億劫でなくなる。小さいけど力持ち。スズキ・ジムニーは遊び心を刺激して未だに夢をくれる。JA71、JB23,そしてJB64と代を追って三モデル、二十年は乗ってきただろうか。アイドリングストップ、オートライトなど随分と現代的にはなったが無骨さは全く変わらぬ。過信は禁物だが自分の遊び心は刺激され気持ちは弾み続けるだろう。

弾む小径は雪をも溶かすのだろう