2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧
「あの、すみません。駅の入り口はどちらでしょうか?」もうそこは駅を構成するビル群の一つなのだが肝心の改札が分からない。ビルは出来たてでその周りには幾つもの真新しい高層ビルと大型クレーンが空に向かって伸びていくのだ。これから仙台に帰るので東…
ビル・エヴァンスは好きだ。時にしっとりと聞く。かのマイルス・ディヴィスもジョン・コルトレインも数枚しか聞いたことが無い。ジャズには余りのめり込めなかった自分だがピアノトリオは好きだ。マッコイ・タイナー、ドン・フリードマンなどミニマムな楽器…
宅急便が届いた。少し待ちかねていた。頼んだものにくらべて大きな箱。壊れ物ではないけれど慎重に扱った方が良いのは確かだった。 10ホールハモニカ。穴が十個の手のひらサイズのハモニカがある。ブルースハープとも呼ばれる。もともと一人での山歩きでテ…
自分は全くの文系人間。ロジカルよりもエモーショナル。難解な方程式を解いて喜ぶよりも本を開き夢想の世界に遊び、話に涙するほうが好きだった。しかし電子工作には小学生から、アマチュア無線には中学生から興味を持った。確かに自然科学に神秘を感じてい…
仕事のない日はだらけてしまう。朝8時迄寝ることも多い。疲れがたまっているのかいくらでも寝られてしまう。毎晩21時には散歩して犬のフクちゃんは排泄をする。我慢は苦痛に思うが彼は翌朝やはり9時ごろまでは排泄をしない。ドッグフードの朝食を終えると大…
図書館で楽しそうな本が借りられた。そしてCD欄には興味をそそるものがあった。ニコラス・アーノンクールそしてトン・コープマン。共にモーツァルトのシンフォニー。若き頃の作品は珍しい。そして後期三部作か。古楽器でのピリオド奏法の解釈のモーツァル…
●1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター 五十嵐貴久 双葉社2007年 本を読んで泣く事など忘れていた。しかしやられた。涙が止まらなかった。 高校受験に失敗した中学浪人の息子をもつ主婦。男運がなく離婚を繰り返しマルチに引っかかり借金を抱える独身女。…
ゴーグルの向こうに壁が近づいてくる。自分は今迄この辺りで息が苦しくなり、また足がつって立ってしまったのだ。しかし今日は少しリラックスして体を動かしてきた。するとここまで来られた。壁が見えた時に考えた。あと三回息継ぎをすればよいだけだと。再…
個展と言う言葉には憧れる。まずはこれが頭に浮かぶ。 ♪拝啓 いまはどんな絵 仕上げていますか 個展の案内が 嬉しかったの 美術学校の学生時代を振り返ったであろう松任谷由実はそう唄っていたっけ。青春の苦さを書いたであろうやや切ないメロディが浮かんで…
●光の台地 辻邦生 毎日新聞社 1996年 本について何かを語る時にはやはり自分の好きな作家が冒頭に来る。これだけは仕方がない。それだけ多くのことを、そして本と言う広い海を旅することを教えてくれたのだから。自分の好きな作家を挙げるならばやはり北杜夫…
そこは高速道路のインターを降りてすぐのコンビニだった。キャンディレッドの世田谷ナンバーの大きなバイクが停まっていた。お、素敵なメカだ。僕はオーナーと話したくて仕方なかったが彼は店の中だった。トイレを済ましコーヒーを買った。コンビニのコーヒ…
都会の駅だった。僕はあとニ分後にやってくる快速南浦和行きを捕まえるべく階段を慌てて降りていた。転がり落ちぬようもちろんしっかり手すりをつかんで。階段で行き交ったお母さんに小学生が話していた。「そんなのチャットGPTを使えば?」と。 とうとう来…
何も新しい話でもないのだがここのところほぼ三日に一日はやってくる。あたかも離島にやってくる定期便の船や旅客機の様だ。 そこはパプアニューギニアのニューブリテン島。東の端にラバウルと言う街がある。西には大きなニューギニア島。その南にはポート・…
春、と題のついた曲は何だろう。小学生の時に覚えた曲がある。メンデルスゾーンの作った無言歌集にある優美なメロディだろう。確か下校時間にかかっていた。優しいのに憂鬱さがあり、脆い旋律にははかなさを感じる曲だ。バイオリンの独奏もあればピアノもあ…
寒冷地にはサイクリストをまず見ないはずだ。なんといっても降雪の後が凍るから。しかし高校生とはある意味怖れ知らずでブロックタイヤのマウンテンバイクで通学している。それしか交通手段がないともいえるかもしれないが、それにしても転ばぬかはたで見て…
四月は瞬く間に通り過ぎた。我が家に来るホトトギスは今よ盛りと良く啼いている。それはそうだろう、暦は五月になったのだから。それもすでに黄金連休も終わってしまった。会社によっては十日を越える休みがあったのかもしれない。だれもが皆会社生活に戻っ…
居酒屋などせわしい駅前にゴマンとあった。しかし勤めを終えて帰宅するのだからそこで足止めを食らうこともなかった。時には勤務先の駅の周りで呑んでもう出来上がっていることもあった。が駅前の呑み屋には何度か娘と二人で行ったことがある。こんなとこも…
腕時計には思い出がある。高校生の時にデザインに憧れて親にねだったセイコーのデジタル。勤務二十五年の会社からの記念贈答品であるセイコー。死んだ叔父の葬儀返礼品のシチズン。ヨーロッパでの七年間の勤務を終え帰国の際に記念にとパリのラファイエット…
システム手帳というものが世に出たのは自分が新入社員の頃だったか。いやその前からあったかもしれない。銀座の伊東屋あたりで見かけたのかもしれない。 同期入社の理系の男だった。A5サイズの革製の手帳を彼は持っていた。会社員になると予定が増える。来客…
社会科で習ったように思う。確か日本神話に書かれていたのだろうか。皇室に伝わる三つの宝物を三種の神器と言うと。鏡、まが玉、剣だ。日本三景を初めとして日本には「三つの何某」が多いがその謂れはこれか。戦後史ではこう習う。洗濯機、冷蔵庫、掃除機が…
今はそんな人は見ないだろう。首からお守りをぶら下げた姿など。映画・男はつらいよの寅さんくらいだろうか。が、これがロザリオとなると話は違うだろう。カトリック教徒ならば誰もが首から下げている。住んでいた横浜の街に数棟の大きな公団住宅があった。…
仕事をしていた。お客様と一緒に工場見学のツアーだった。すると同僚が言うのだった。「お友達が来ているよ」と。誰だろうか?と頭を捻った。自分がこの職場で働いていることを知っている人は多くない。ましてやフットワークよくここに来るとは?横浜時代の…
5月連休がやってきた。高速道路から国道、県道、市道そして脇道までも他県ナンバーで溢れるのだった。さすがに農道には来ないだろうが。 高原はこの何日か知らない街になった。ホームセンターには知人が働いているが前掛けをつけた彼女は汗をぬぐいながら言…
・鍋倉山 長野県飯山市・新潟県妙高市 1289m わずか海抜にして1289メートルの山だ。関東甲州人にとりわかりやすく書けばそれは丹沢で言えば鍋割山と、奥多摩で言えば大岳山と、富士山エリアでいえば山中湖北岸の大平山と、道志・笹子エリアならば大月市北の…
ああ、自分も中年になったな。そう思ったのは四十歳の誕生日だった。少しばかり寂しくややショックでもあった。四十歳などすべてくたびれてしまい、腹が出て息が臭い。そんなただのオヤジだと思っていたのだ。口臭には気を使い仕事中はガムをかんだり息清涼…
都心から西に向かう列車に乗った。都心から西に向かう列車とは私鉄以外は東海道線か東海道新幹線か中央線しかない。山梨に住む自分が乗るのは中央線だった。 西日が傾く。それを追うように西に向かう。しかしそれなりの速度で走っていても落ちる太陽に追いつ…
車に乗るときはいつも音楽を聴く。クラシックの時も70年代迄のブラックミュージック・ソウルの時もある。今日はロックのフォルダをプレイした。するとあのがむしゃらで直線的で、しかしなぜかノレるスリーピースの音が聞こえてきたのだ。それはギター一本…
「影のない女」、そんなタイトルを目にした時に何を自分は思ったのだろうか。一体どんな女性だろうかと。きっと美しいのだろうと。美しすぎて光を集め、そこに影はないのだろう。しかしこうも解釈できる。まるでヴェールを被ったように彼女の存在は誰にも気…
何事もそうだろう。若い頃は集中度が高い。勉強にせよ恋愛にせよ驚くべきパワーで燃焼する。燃焼、緊張、弛緩。そんなサイクルを人間は経る。 バンドの練習は月に1回。ひと月は短くもあるが随分と久しぶりに思えた。練習曲の数は十曲か。親しんできたソウル…
自分には姪っ子達がいる。姉の娘達だ。その姉は難病にかかり七年前に六十歳を待たずして他界した。今存命ならば自分の母親も今と違う老後を過ごしていたかもしれぬ。それはきっと母にとっては良い事だっただろう。そんな姉が初めの子を産んでからしばらくし…