親魏倭王のお部屋

noteで活動中の元学芸員・親魏倭王の雑記帳。広報も兼ねています。

遺跡保全とAIの活用について

最近、目覚ましく発展を遂げているAIですが、一方でAIそのものにも、それを使う側にも問題がいろいろ生じています。我々の側の問題としては、AI提供者による著作権侵害問題(AIの学習に海賊版の刊行物を利用したなど)、AI利用者による悪用問題(フェイク画像の生成&拡散など)があり、法整備などを急ぐ必要がありますが、その前段階で悪用が進んだため、規制のありようによっては健全なクリエイト活動にも影響がありそうです。

そんな中、少し興味深い試みがあったので紹介します。以下は、2025年9月6日にTwitterへ投稿した内容の転載です。

遺跡保全とAIの活用についてのひとつの試み

南米アマゾンに潜む未知の遺跡を大量の衛星写真やセンサーデータから探す「OpenAI to Z Challenge」コンテストが開催され、優勝したチームは、歴史的に価値ある遺跡が含まれると考えられる2km四方の場所を67カ所特定した。

かねてから「広大なアマゾンの密林の奧深くには、無数の考古学遺跡が隠されているかもしれない」と言われているが、アマゾンは9つの国にまたがり、数百という先住民族が暮らす。実地調査で遺跡を探すにはあまりに広すぎるため、人工知能(AI)や機械学習などの新技術が研究者に注目されているという。

ナショナル・ジオグラフィック誌に記事が出ているが、現在、海面上昇、植生の変化、人間による開発や移住などが進むなか、世界中で多くの遺跡が消滅の危機に直面している。コロラド州立大学の考古学者フィッシャー氏は「時間はかなり限られています。根本的に変わってしまう前に、現在の地球とそこにあるものすべてを記録しなければなりません」とコメントしていて、失われゆく遺跡の記録保存が喫緊の課題であることは考古学界でも広く認識されているといえそうだ。

その点、この手法は有益と言えるが、対象地域の周辺に住む先住民との協議が行われていないことに対する批判がある。僕らも開発に先立って必ず事前協議を行うが、現状認識と展望の擦り合わせは重要で、僅かな齟齬が相互不信を生む。特に、我々と伝統的な暮らしを続ける先住民では生きている世界観自体が違うので、常識も異なる。

しかし、優勝チームは、精度の向上のために考古学者や地質学者と成果を共有することは考えているものの、実際に67カ所を訪れる予定はないとしていて、今回のこれはあくまでも新技術を用いたひとつの実験の成果というもの以上ではないという認識でいるのがよさそうだ。

ただ、こうした「研究者の良心」が通用するのはおそらく学界の中だけで(それも疑わしいが)、場合によってはトレジャーハント的な「荒らし行為」が起きないとも限らず、難しいところである。

今回はこの辺で。