僕は50代後半になって大学に行き直し、といっても一般教養の科目は免除され専門課程の2年間だけでしたが、日本史を学びました。
かつての専攻が経済学、このときが日本史だったので、卒論のテーマには幕末の貿易問題を選び、
幕末になって薩摩、長州が幕府に刃向かうことになった動機のひとつに貿易問題があること、すなわちペリー来航、開国のあと、薩摩も長州も欧米諸国との貿易を熱望したのに幕府がこれを許さず独占したことへの強い反感があったこと、
また、当時の攘夷論者、のみならず近代の日本の歴史学者の多くもアヘン戦争を根拠にイギリスが日本を植民地化しようとしていたと捉えたが、これは事実に反し、イギリスが幕末の日本に求めたものは自由貿易だったこと、
さらに、幕府vs反幕勢力への対応でイギリス、フランスは対照的なほど政策が分かれ、これを、ときのイギリス公使、フランス公使の個性から説明する説もあるが、そうではなく、この違いの背景にあったのは両国の貿易構造の違いだったこと、
という僕には『潮音』の描く薩摩の密貿易、富山藩の藩をあげての製薬・売薬業、この両者を結ぶ蝦夷~富山~薩摩~琉球~清国の物流ラインというのは実に興味ある内容ですが、
しかし例えば喜久恵が読んで、これを面白いと思うかどうか。
いや、まだ出だしで、物語の前提をなす経済的、歴史的説明が必要となり、これがしばらく続いているが、このあと、生きた人間たちが動きはじめればまた変わってくるのでしょうけど。
(写真は、卒論に取り組んでいたとき読んだ文献のひとつですが、大学図書館の、一般の書架にはないものが多かったので、許可を得て地下の倉庫を漁り、そこにもなくて卒論担当教授の研究室の、持ち出し禁止の本棚まで探ったりしました。また、それらは赤鉛筆で傍線を引いたり書き込みをしたりはできませんので、コピーして読みました。というコピーが、僕の部屋の押し入れにはいまも大量に残っています。懐かしーい。)