おだいりさまと おひなさま
ふたりならんで すましがお
およめにいらした ねえさまに
よくにたかんじょの しろいかお
こんな優しい詞を書いたサトウハチローは、旧制中学を中退し(何度も放校になり、転校を繰り返したあと)、浅草で酒、女、博打に明け暮れ、窃盗、恐喝、果ては交番に放火…。
というのも、父・佐藤紅緑は若い女優に子を産ませ、その女と結婚するためにハチローらの母である、極貧時代を支えた妻を離縁し…。
負い目からか、ハチローはじめ4人の子どもたちにふんだんにカネを与えつづけ…。
ハチローだけでなく3人の弟たちも、定職に就かず、酒、女、博打、詐欺、心中未遂…。
僕の本棚には、若いとき読んだサトウハチローの詩集『おかあさん』があります。
ちいさい ちいさい人でした
ほんとに ちいさい人でした
それより ちいさいボクでした
おっぱいのんでる ボクでした
かいぐり かいぐり とっとのめ
おつむてんてん いないないバア
きれいな声の人でした
よく歌をうたう 母でした
まねしてうたう ボクでした
片言まじりの ボクでした
ああ アニィローリー マイボニィ
それから ねんねんおころりよう
羊によくにた人でした
やさしい目をした 母でした
ころころこぶたのボクでした
おはなをならす ボクでした
すぐにおぼえた 午後三時
おちょうだいする くいしんぼう
毎晩祈る人でした
静かに つぶやく母でした
寝たふりしているボクでした
なんだか悲しい ボクでした
春はうるんだ お月さま
秋は まばたきしてる星
影絵を切りぬく人でした
うつしてみせる母でした
お手手をたたくボクでした
何度も せがむボクでした
外はこまかい 粉の雪
影絵のきそうな白い路
夜なべをしている人でした
よくつぎをあててる母でした
ときどきのぞく ボクでした
よくにらまれる ボクでした
こおろぎ みみずく 甘酒屋
遠い チャルメラ おいなりさーん
話のじょうずな人でした
たくさん知ってる母でした
ソエカヤ? というボクでした
なかなか寝ない ボクでした
エクトロ・マロー アンデルセン
かちかち山に かぐや姫
いま読み返せば、全然違った味わいが出てきそうです。