やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2022年09月

眼球のカーブ

 今回は自分の備忘録です。

先週顔面のエピテーゼはお渡しした患者さん。
上顎の入れ歯は少し調整が必要でしたので、今日のお渡しになりました。

 今日は入れ歯の話ではなく、顔面のエピテーゼの方で気になったことがあって。

それは目の輝き・・・

一番最初にワックスで試適したときには感じなかったのですが、最終のエピテーゼを顔につけたときに患者さん自身の左目に比べてエピテーゼ側が死んでるように感じました。

そのせいで余計に不気味の谷を超えられていないなと感じたんですね。

 最初のワックスの時には概形を見るため、手元に余っていた義眼を仮につけて位置出しをしていました。

 目尻と目頭の表現が義眼のかたちそのままだとカーブが強すぎてちょっとやりにくい。

そのため顔面、眼窩のエピテーゼ用に眼球の形をあたらしくアレンジして作りました。

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目尻と目頭付近をフラットに伸ばしています。

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この写真はその改良型の眼球を使ってワックスアップしている途中です。
一見良さげなんですが・・・・

出来上がったエピテーゼも特に眼球に不備があるようには思わなかったのが、つけてみるとやはりなんか違う・・・死んでる。

左右で輝きが違うことに気づきました。

最初はその場の光の加減かと思いましたが、違うようですね。

患者さんはもともと目がぱっちりと大きい方です。
眼球もある程度のカーブがないと光の反射が弱くなるようです。

・・・と、いまだにこんなことで右往左往しています。

目汁と目頭はそのままにカーブをもう少し強くしてもう一個眼球作ります。


 

中空のエピテーゼ

 前にもこのタイトルで書いたような気がします。

顔面のエピテーゼで大きく欠損している場合は、エピテーゼも当然大きくなります。

顔表面だけ、つまりお面みたいなエピテーゼはわたし自身イヤなので、欠損部もある程度塞ぐ形でエピテーゼを作ります。

欠損部は通常粘膜剥き出しですので、そこに接する材料も当然対応した材料と作り方でなければいけません。

 お面のような形で作りたくないわけは、この欠損部の問題もありますが、お面のような形状だと材質がある程度硬いものでないといけません。
そうでないと腰砕けになってしまうか、そうならない厚みを確保すると、重いエピテーゼになってしまいます。

 そんなこんなで考え出したのが中空のエピテーゼで柔らかいシリコンを使うもの、粘膜面側は別の衛生的で耐水性のある材料のハイブリッドになります。

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写真奥に2つプロトタイプが写っています。
基本的にこの3つは全て同じ中空の構造になっていますが、シリコンの硬さを変えています。

一番最初のものは指などに使う硬いシリコンを使ってみました。

結果やはりゴワゴワ感があって没。
硬いぶん薄くはできるのですが、あまり薄くすると裏側の色が透けて見えたりでムラになるのも痛いところ。 

2つ目のプロトタイプは1つ目の改良版で、耳などに使う柔らかいシリコンに変更し、形状も部分的に改良したものです。

柔らかさや基本的な形状は試適の結果良かったので、後は小さいところを改良し3つ目で完成でした。


またショート動画を貼り付けてみました。
開くことができればいいのですが・・・

柔らかいシリコンで中空構造にしたので腰砕けにならず、頬の柔らかさもなんとか表現できたと思います。

 でもまだ、改良の余地がありそうな気がしてます・・・・ 

不気味の谷

 なんかおどろおどろしいタイトルですが、アンドロイドとか人間に似せて作る場合に、ある一定のレベルを超えるまでは不自然さがつきまとう。

人間っぽいんだけれどもなんか違う、というのが不気味に感じられるのでこうよばれているんだと思います。

眼球を含む眼窩とか顔面のエピテーゼでは、この不気味の谷をいかに超えるかをいつも意識してしまいます。 


Screen Shot 2022-09-04 at 9.52.44 AM

Screen Shot 2022-09-04 at 9.52.55 AM
 
しばらく前にこの写真は掲載したと思うのですが、今日やっと完成したエピテーゼを患者さんにお渡しすることができました。

もう一つ大きな症例があったので、そのせいもあってしばらくブログも更新していませんでした。

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奥に見えるとおり、プロトタイプ2つを経て、3つ目でようやく完成です。

上の写真はステインがほぼ終わった状態で、この後コーティングと艶消し、それから苦手な作業のまつ毛と眉毛の植毛が待っています。

写真では大体の眉毛の位置を記すためにステインで少し描いていますが、この後一本いっぽん植毛しないといけません。
こういった地味な作業が苦手なので、なんとか効率よく綺麗にかつ自然にできないかいまだ考察中。

 大体こういった作業は夜遅くにいろんな邪魔がなくなってからやるのですが、やはり目があるものは時々視野に入るとギョッとする時があります。

別の意味で不気味ではありますね。

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植毛が終わった状態ですが、まだ不気味の谷はぎりぎり超えられていないように思います・・・・

・・・・難しいですね。

 この患者さんは顔面の回復もそうなのですが、上顎の口蓋が前方半分以上切除されています。

顔のカバーがない状態だとそのまま鼻からの気道がポッカリ見えますし、下の歯と舌がそのまま剥き出しになっています。

もちろん発音も不明瞭ですし、普段の生活でも飲食が困難なのは想像できますよね。

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上に4本臼歯が残っているので、ちょっとガチガチにクラスプで固定できる入れ歯を作ってみました。

下はほぼ全て歯が残っているので、咬合圧の負担が心配ですがせめて発音や飲食の助けになればと。

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まだ、上下の噛み合わせとか正中線、咬合平面など修正が必要ですが、それでも口蓋ができたことで明らかに発音は改善されました。

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エピテーゼとの位置関係もあるので、入れ歯はもう一回調整するということで、エピテーゼだけ今日はお渡ししました。

帰り際に患者さんにあるものをいただいてしまい・・・

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ロザリオというのかな?クリスチャンのお守りのような感じで手首につけるものです。

ご自身の方が大変な状態なのに、人のことまで気にかけてくれることにあらためて感謝しかないですね。

 いまだ不気味の谷も越えられない未熟者は身が縮むばかりです。


 

バチがあたらないフラスコ つづき

 そう言えばこのブログの貴重な数少ない読者様からLineをいただいたんでした。

義眼つくりのマニュアルもご購入いただいたみたいなんですが、あのマニュアルは今にして見返すとたくさん不足してるところがあったりします。

なるべくやさしく、道具や材料もなるべく苦労せず用意できるもので、というのが根底にありました。

でも、歯科技工士さんとかそういう使用材料や技術が近しい方ならいいのですが、そうでない方にとっては結構盲点的なものもあるかと思います。

バチあたりなフラスコとか、最近のバチがあたらないフラスコも、なかなか入手するのに苦労する義眼用のフラスコを何かで流用できないか、というものです。

 いただいたLineの質問とかで改めてわたし自身も気付かされることがありました。

フラスコの底に穴を開ける加工をするのですが、これがなんのためかという説明がされてなかったですね。

歯科のフラスコとか使われたり、実際入れ歯とか作られている方にとっては理由はわかるかと思います。

あとあと、石膏をフラスコから取り外すときとか、上側を埋没する時にはこの穴から石膏を流し込みます。

また義眼の場合はクリアボタンの軸の頭を出さないといけないとか、いくつか理由があります。

んで、開けた穴をクランプとかでプレスする時にはその部分に金属の蓋をしないといけません。

そのまま石膏面をクランプで挟むと、石膏が割れたり十分圧をかけられなかったりします。

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わたしはこういう金属の板を探してきて蓋にしています。

フラスコの穴より大きい方がいいですね。

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挟むとこんな感じ。

穴の大きさはなるべく大きい方が石膏を流し込むのに都合がいいです。

 という案内だけでした。

疑問質問ありましたら気軽にコメントなりLineでお知らせください。

 

週末の仕事

 月曜から金曜は大体歯科技工所で仕事しています。
ときどきクリニックや病院に出張に行きますが、基本ウィークデイは技工所。

土曜日曜は技工所に行きませんが、これはオーナーに請われて復帰する時の条件として週休二日にしてもらったもの。
目的は自分の仕事としてのエピテーゼの仕事は土日にするというためでした。

フィリピンでは週休二日というのはあまりなく、そういえば自分自身日本で仕事していた頃も週1日休みが基本だったっけ。

自分で技工所やってた頃は週休0日というのも零細技工所経営 あるあるですね。
今はどうなんだろう?

 現在その技工所休みの土日はエピテーゼの仕事にあてています。

とくにエピテーゼを業として宣伝したりしているわけでもないので、毎週土日も仕事という感じではなかった・・・そう以前はそこまで詰めて仕事していなかったんです。

 ところが現在は患者さんに待っていただく状況。
どうかすると収入ベースで行けば技工所の仕事と逆転しかねない感じ。

なんだかんだいってやはり継続はなんとやらなのか、お医者さんからの紹介で患者さんが来たり、直接コンタクトとって来られる人も多い。

おまけに国外からも問い合わせがあったりで、やはり需要がある割に技術者がまだまだ少ない世界なんだと思い知らされます。

 先日日本への一時帰国で約一月仕事ができなかったため、長くお待ちいただいた患者さんたちをこなすのに忙しいこの頃です。

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現在手がけているのがちょっと大きい症例2例。
少し先が予想しにくい仕事なので、この2症例の目鼻がつくまでは次の予約は入れずに集中してます。

上の写真の症例は文字通り目鼻がつき始めているところですが、もう一例が

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しばらく前に写真を上げたかもしれませんが、下顎の右半分を切除しているケース。

Screen Shot 2022-07-25 at 9.11.13 PM

当初の予定では切除した骨の部分を純チタンで3Dプリントして移植、という予定でした。

おもに外科の先生方の仕事で、わたしがやっていたのはCTスキャンから3Dプリントモデルに置き換えて手術や治療計画のお手伝いだけ。

その後骨をプリントするところまでだったのですが、いろいろと事情があったのでしょう。
チタンの骨の移植はなしで、入れ歯的なもので噛み合わせの回復をすることにしよう。となったようです。

 それまでも顎の位置を正常の位置に戻すためのデバイスみたいなものを作ったり、色々やっていたのですが、結局なんかわたしのところに丸投げ的な状態・・・・・

IMG_1197

この写真一見正中もあってるように見えますが、下の顎の正中は一番左の歯の部分になります。

Screen Shot 2022-07-29 at 10.04.35 AM


つまり下の歯左から左下の中切歯、側切歯、犬歯なんです。
それだけ患者さんから見ると右側に下顎がシフトしていて、当然関節も正常な位置にありません。

まあこの辺のことを書き出すと色々と差し障りもあるので、この辺りで・・・

 もう古い歌になってしまいましたが、浜田省吾さんの ”もう一つの土曜日” だったかな?

ただ週末のわずかな彼との時をつなぎ合わせて君は生きてる ♪ というフレーズが頭の中でこだまする日々です。
 
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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