やさしい義眼のつくりかた How to make artificial eye and prosthesis

顎顔面補綴という仕事を通じて身につけた義眼やエピテーゼの製作技術やその背景をご紹介。 あまり広く認知されていない技術ですが、どこかで誰かの役に立てればいいですね。 フィギュアなどの趣味にも生かせるように、なるべく特殊な材料や 道具を使わない方法も お伝えできればと思います。 How to make artificial eye and prosthesis.

How to make artificial eye and prosthesis.

2018年04月

クリニックのアイドル

土曜日に我が家の犬の治療でアニマルクリニックにいってきました。

チェリーアイを手術してもらいましたが、手術室をガラス越しに見ることのできる待合室で待っている時、処置室もドアが開いていたので見ることができました。

ボーとみてると何やらその処置室でかけまわっている。

この処置室は結構広いので犬など駆け回ることもできます。

気にして見ていると今度は反対側から、また白いものが・・・

どうやら中型犬が行ったり来たりしているようです。
・・がまた駆け抜けるのを見ていると何となく違和感が・・・

よく見ると前脚が一本足りませんでした。

それを意識させないくらい軽快に、それこそひずめでもあればパカラッパカラッと音が聞こえてきそうな軽快感。

あまりの軽やかさに生まれつき足りないのかと思えば、なんともとは野良犬で、クリニックの近くで交通事故に遭い運び込まれてきたのだとか。

怪我した足は切断するしかなかったそうで、それ以来飼い主もいないのでクリニックに居ついているのだそうな。

ドクターのデスク下にベッドを置いてもらって、そこでのびのびと過ごしている。時々処置室の中をパカラッパカラッと走り回っているらしい。

私が入って行くとベッドに戻って飄々としている。

誰に書かれたか眉毛を描いてもらっているので余計飄々とした顔に見える。

人間だと深刻になりそうな状況なのに、犬のこういうところは見習いたいですね。

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眼窩のエピテーゼ 9 粘土ワックス

まだ眼窩のエピテーゼの症例は進行中です。


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やはり特に眼窩の場合は目を含むため、顔の表情に大いに影響を与えます。
必然的に色々と患者さんと周りの家族からの要望も高くなりがち。

当初は今の状態から少しでもましになって、外に出られる状態になれば、というところから始まりますが、エピテーゼの製作が進むにつれ、だんだんと要望が増えてきます。

「ここまでできるんだったら、あとここももう少し・・・」的な感じです。

こちらはだいたい一週間ごとのアポイントで患者さんをみているので、患部の変化や患者さん自身の変化を結構大きな変化としてみることができます。

一方患者さんやその家族にしてみれば、毎日みていることなのでその変化には気づきにくいようです。

エピテーゼの表情や大きさも、有無をも言わせぬ自然感があればいいのだろうとは思いますが、やはりこればっかりは最初から予想できる正解は無いようです。

エピテーゼでどの範囲までカバーするか、というのも毎回悩むことで、顔面など左右対称を考えるとどうしてもエピテーゼは大きくなってしまいます。

だいたいの場合はなるべく目立たないように、できるだけ小さく、と気がけているのですが、いざその大きさでエピテーゼを作って装着すると、最初は喜んでもらえるのですが、次に来た時には
「もう少しここをのばしてもらえれば、左右対称になるのだけれど・・・」というような要望が出て来ます。

自分の中ではやはりエピテーゼは何個か作りながら正解を見つけていくしか無いのかなと思っています。

写真の患者さんもそういう訳で、またワックス原型の試適をやっています。
今度はだいぶ大きくなりそうです。

フェイスブックでうちの奥さんと患者さんの奥さんが友達になったらしく、時々うちの奥さんがフェイスブック上の写真を見せてくれます。

もう70過ぎのご夫婦ですが、最初のエピテーゼができて以降、お二人でビーチに行かれたりしているよ様子。

何気にカップラーメンを一緒に食べている写真を見て、そういえばしばらく前まではエンシュアーという缶入りの流動食しか食べられないといってたっけ、と思い出しました。

眼窩のエピテーゼよりも、私にとっては顎義歯と呼ばれるオブチュレーター付きの義歯が課題でした。

エピテーゼは主に外見を回復するのが主な目的です。
ただしこの患者さんのように、眼球をとった部分から口腔までひとつながりに欠損してしまい、外気に粘膜が晒された状態ではそれを保護する役目もあります。

顎義歯は通常口蓋が切除された方のためですので、これがうまくできていないと発音も咀嚼も困難になります。

幸い今回は苦労した甲斐もあってか、顎義歯はかなりよく機能してくれているようです。

流動食だったのが普通の固形食を摂れるようになったとのこと、これは今の所課題をクリアしたというところです。

エピテーゼの方はまたワックス原型から始めますが、今回は前回使った粘土を改良してみました。

前回のものは彫刻性はいいのですが、辺縁の薄くなった部分が体温で変形しやすく、またすぐにちぎれてしまいます。

今回は粘土というよりよりワックスに近い特性にしてみました、また次回写真を掲載します。

12年越しの患者さん

フィリピンで手がけた二人目の患者さん。
乳児期の火傷で、上唇から頭頂部近くまでダメージがあり、鼻も大部分が欠損した状態。

最初に医師からの紹介で私のところに来た時のことを今も覚えています。

道の向こう側にお母さんと思われる人に手を引かれた女の子。

やはり鼻は顔面の中央にあり顔の印象に大いに影響を持っているため、遠目に見てすぐにその紹介で来た患者さんだとわかりました。

まぶたも引きつれが残っているため、かなりきつい印象を受ける。

どちらかと言わずとも、裕福じゃない家庭らしく、お母さんが一生懸命費用の交渉をしてくる。

型取りに始まり、ワックス原型の試適、シリコンのステイニングと、会うたびに値切られてほとんど材料代のみになってしまった。

それでもやはり小さな女の子、当時12歳でこれだけのハンデは辛かろうと受けたのでした。

それから12年。自宅がうちの近所ということもあり、色のリタッチや修理と時々自宅に直接来るようになりました。

日曜日の朝から来て、作業しながら待ち時間うちの家族共々ランチを食べたり、作業後一緒に映画を見に行ったりするようにもなりました。

最初は熱心に自分の鼻のエピテーゼがリタッチされたり、新しく作られたりという作業を熱心に見ていたのですが、そのうち自分でリタッチしてみたいと言い出しました。

火傷した顔面の皮膚も色が違い、正直どの部分の皮膚の色に合わせればいいのかも迷うところ。

オリジナルの皮膚の色に合わせると、鼻の周りの火傷で濃くなった皮膚の色から浮いてしまうし、濃くなった部分に合わせてしまうとやたら色の黒い鼻になってしまいます。

ほかの患者さんにもいえることですが、私が良かれと思うことが必ずしも患者さんの希望と一致するとは限りません。

周りから浮き上がってもやはりオリジナルの皮膚の色にこだわる、ということも往々にしてあります。

そういう面でも患者さん自身でエピテーゼを作れるのが理想だと思いますし、この女の子の場合、自分で色の微調整はやってみたいということでしたので、ステインの小さなセットを作って渡しました。

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昨日の日曜日、朝から来たその女の子。
すでに24歳で会計士の資格をとって外資系の会社で働いています。

インスタグラムもやっていて私とも繋がっているのですが、最近の彼女のアップした写真は、会社の慰安旅行があったみたいで、綺麗なビーチで職場の友達と撮った写真。

やはり写真を見ると私が作った鼻が気になるのですが、南国の強い日差しのもと色も浮いているし、鼻の穴の形状が今ならもっと上手く作れそう。

そういうことで今回また一から作り直すことにしました。無料で・・・

写真はワックス彫刻の途中と例のステインキット。

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蓋の裏をパレットがわりに使っているので、10年ほどの間に塗装も剥げてこんな状態。

彼女のヒストリーを感じるので、私の手元に置いておきたくなり、新しいセットを作って渡しました。


今もらっている給料の額を聞いてびっくり、外資系というのもあるのか一般的な給料よりもかなり大きい。

こちらの技工士さんならスーパーバイザーがチーフクラスにならないともらえないような額。

今は兄弟の学費も彼女がまかなっているらしい。

今となってみるとあまり出来の良くないエピテーゼだったのだけれど、それでも彼女の人生に少なからぬ影響を与えたみたい。

顔面補綴の仕事は患者さんとの付き合いが長くなりますし、特に若い患者さんなどはその成長と変化を目の当たりにするので、時に技術者冥利につきるようなこともあります。




クリアボタン金型 その後

暇を見てクリアボタンを作りためています。

実験も含めて都合3つ作った金型も、2つは日本から来られた新しい友人にそれぞれもらわれていき、手元に残っているのは一個。

ちょっと思いついて・・・というのは金型の場合アクリルの収縮がどっかに出てしまうのが気になっていました。

アクリルは重合するときに収縮しますが、金型だとその収縮を補填することが難しいのです。

重合中も常に圧をかけ続けられればこれは解決するのがわかっていますが、金型はたわまないため、クランプで挟んだまま重合させても圧が十分ではないようです。

今回の思いつきは、以前は金属の板を使っていたクリアボタン平面側、金型の蓋にあたる部分をシリコンパテにすればいいのではなかろうか?というものです。


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こういう感じで金型の上下をパテで塞いで重合させてみました。


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いつものアラビアコーヒーの入れ物とアルコールストーブで重合。


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重合が終わって開いたところです。裏側の穴の部分も余剰なバリはごくごく薄く、取り出しも以前と比べて楽々です。

裏側の穴から金属の棒で押してやると外れました。

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目論見は正解だったようで平面側が少し凹面になっていますが、バリは手でポロポロ取れるレベルでそのほかの部分には収縮による凹みが見られません。

なんちゃって旋盤に装着して平面部分だけカッターナイフの刃で平面を出します。

完成までの研磨時間は5分ほど。


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ボタンの裏側から見た所です。
ほとんど艶出し研磨はしていませんが透明感もあり合格ですね。


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ちょっと改良してパテの部分をもう少し大きくし、クランプに挟むときに位置決めがしっかりできるようにしました。

クランプに挟む力もごく軽くですみます。

多分金型はこれで最終形かな?

動画 テスト

長らく気づきませんでしたが、Youtubeにアップロードされた動画は記事にはれるようです。

ちょっとまだ試しにやってみている状態ですので、お見苦しい点は平にご容赦。

先日の虹彩を描いているところの動画です。

とりあえずダイジェスト版としてタイムラプスのような動画です。




このダイジェスト版は3つの部分を繋いで早送りにしています。

最初の部分がこれですが、以下の3つの動画は環境音が入っていますので音声はOFFでお願いします。

虹彩を書くためのハンドルのようなものにブラックディスクを貼り付けている部分です。



続いて虹彩を描いているところ、5分ほどの長さです。




最後が描いた虹彩の上に水を垂らしてクリアボタンをのせるところ。




どうかな?うまくいけば今後使っていきたいと思います。

やはり動画の方が説明しやすい場合が多いので・・・
顔面補綴マニュアル  やさしい義眼の作り方 How to make artificial eye
How to make Ear Prosthesis 英語版
エピテーゼのつくりかた 耳
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村井 さむ

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日本でのプレッシャーを逃れフィリピンに移住してはや10年、まだ生きてます。やさしい義眼の作り方

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