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抜け殻エッセイ「そこまでは、覚えている。」【最終夜】早朝ミーティング

抜け殻エッセイ「そこまでは、覚えている。」【最終夜】早朝ミーティング

真夏の夜。いつもの飲み仲間とヤキトリをやっつけ、何軒目かの場末の居酒屋で焼酎をグイグイ飲んでいると猛烈な眠気がやって来た。そこまでは覚えている。

土の匂いがした。騒がしい鳥の鳴き声も聞こえた。目を覚ますとオレは土の上に横たわっていた。向こうに校舎らしき建物が見える。どうやら小学校のグラウンドらしい。まだ早朝だろう、空の色もまだほんのり桃色だった。

それにしても猛烈に頭が痛い。そして水が飲みたいと思った。だが動けなかった。ここ数年で最高レベルの二日酔いだった。眼をつぶるとすぐにでもコールタールのような睡魔の餌食になりそうだった。

どこだろうと思った。ここまでどうやって来たのか。一緒だった友人はどうしたのか。なぜ外で寝てるのか。ケータイはあるのか。矢継ぎ早に疑問が浮かび、その後、毎度お馴染みの嫌悪感、罪悪感、自責や堕罪や後悔やらがドッと押し寄せ、しばらくじっと耐えていた。

ふと鳥の鳴き声がけたたましくなった。頭痛が激しい。なので眼球だけであたりをぐるりと見渡して息を呑んだ。ぞわわ。声の主はカラスだった。三羽ほどのカラスがオレの頭のすぐそばまでやって来て、微動だにしないオレを、覗き込んでいたのだ。ぞわわわわわわ

死んでるとでも思ったのだろうか。生きてるカー、死にかけてるカー、食べれのるカー、ちょっとつついてみるカーと、オレを囲みながら早朝ミーティングをしていたのだ。

目を見開くオレ。カラスは動かない。黒い羽の中の真っ黒い目がこちらを見ている。一瞬の沈黙のあと「&%$@&#◎##$!!!」発狂した。体験したことのない恐怖と悪寒。叫ばずにはいられなかった。ガバッと飛び起き、そこから一目散に走った。走って走って走りまくった。身の毛がよだつ。虫唾が爆走する。ぞぞぞぞわわわわわわわわわわわわわわ

カラスが追いかけてくる恐怖に苛まれながら、グラウンドの端まで走った。汗と涙と何だか分からない体液でぐしゃぐしゃだった。おそるおそる振り返る。嘘のような青い空。その下にカラスの姿はもうなかった。ただ全身の体毛はしばらく直立したままだった。


比較的短い文章なので抜け殻エッセイシリーズ一気読みもオススメです。
※第三夜:「帰れない夜
※第二夜:「ステージ本能
※第一夜:「円山公園のジャイケル


── 目覚めたらカラスに囲まれていた。酔いと恐怖が交錯する、早朝の地獄。
再掲元:note「抜け殻エッセイ『そこまでは、覚えている。』【最終夜】早朝ミーティング」
テキスト:有限会社シーズ Y / ヘッダーイラスト:有限会社シーズ W