悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2026©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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ペンギン・レッスン

少しネタバレしていますが、ネタバレ云々という映画ではないでしょう。

新宿ピカデリーにて鑑賞

 ジム・ジャームッシュ監督の映画『コーヒー&シガレッツ』にも出演しているスティーブ・クーガン(とペンギン)が主演。

 『コーヒー&シガレッツ』の感想でも書いたのですが、『コーヒー&シガレッツ』の鑑賞前に本作の予告編が流れていたことから同じ人が出てるわーっとなってかなり印象に残ったのと、生まれ変わったらペンギンになってもいいかなとも思っているので、そうなるとペンギンが出てくる映画に突撃するしかないでしょうということで観てきました。

映画『コーヒー&シガレッツ』の感想はこちら

 実話を基にしたトム・ミッチェル(本作の主人公でもあります)著の回顧録『人生を変えてくれたペンギン 海辺で君を見つけた日』を題材としたフィクション映画で、原作は未読です。原作では主人公はまだ若く新米教師だったようですが、本作では還暦手前の年齢(50代半ば過ぎ)でベテランの教師という形となっています。

 舞台は1976年、軍事政権下のアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、生徒のほとんどが富裕層の子息である寄宿学校やその近辺の街が主な舞台となります(ブエノスアイレスの郊外なのかな)。

 美人好きな英国人の主人公はアルゼンチンにある学校の住み込み英語教師になり、ウルグアイの浜辺で重油塗れのペンギンを助けたが故に懐かれ、住み込み先に連れ帰ることになり共同生活を始め、主人公の意識が少しずつ変化していく、という、よくある展開です。

 全体としては落ち着いたトーンで、表面的にはほのぼのっぽい印象を纏まった映画ではあるのですが、先述のとおり軍事政権下のアルゼンチンが舞台で、主人公を含めた登場人物の生活には否応なしに大きな影響があり、それが劇中にもチラチラ顔を覗かせてきます。

 映画としてはコミカルタッチな部分があったり、不穏な空気感があったりはするのですが、それらがしっかりと混ざり合っているわけでもなく、また重ねられているわけでもなく、なんとなく部分部分にそういう風味があるよっていう形で、小説とかならそれでいいのかなと思いつつ、映画としては掴み辛い雰囲気だけを残してしまっているように思えて残念だなと思いました。

 主演のスティーブ・クーガンの演技は素晴らしく、軍政に反対している人を拉致っているのを生業にしているおっさん(警察?軍人?)に対して知り合いを解放してほしいと茶店のテラスで言う場面の、勇気を持ちつつ言いたいことを言わないといけないという想いと、でも自身の保身も脳裏に過ぎりながらという気持ちが揺れる感じを、素晴らしい表情と声でしっかりと感情を抑制しつつ演じている様は、叫んだりしてエキセントリックに感情を露わにするのが素晴らしい演技なんだと思い込んでいる演出家や俳優に、違うよ、これだよ、これが教科書だよって提示したいくらいです。(叫ぶのがいけないとかいう意味ではなくてね。)

 悪い映画ではありませんが、観る人をかなり選ぶというか、商業映画としてどういう層をターゲットとしているのかがあやふやで、制作側も何を軸にしようとしているのか手探りのまま終わったんとちゃうかなと思うくらいに、軸がありそうに見えてなかったなっていう映画だったように思います。と書きながら、映画の演出に興味のある人や、俳優の演技についつい魅入っちゃうような人には勉強、参考になる映画ではないかなとも思います。

 私は英語話者ではありませんが、本作の英語は音とか速度とかの面で凄く聞きやすく、英会話の勉強にもなるんじゃないかなと思ったり。主人公は英語教師で、アルゼンチンという異国の地で教えるという設定だったからというのもあるかもしれません(アルゼンチンの公用語スペイン語)。

 映画に登場するペンギンは、実物とCGを織り交ぜているようです。分からんかったっす。本作本編の最後に原作者であり主人公のモデルとなったトム・ミッチェル氏が実際に撮影したペンギンの模様が少しだけ流れます。