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#7921 決算分析 : 東信電気株式会社 第83期決算 当期純利益 4百万円


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私たちが日常で触れるスマートフォン、便利な自動販売機、そして工場のラインを動かす制御機器。これら電気製品が当たり前のように動作する背景には、回路設計から製造までを一手に引き受ける「技術の職人集団」が存在します。
今回は、1950年の設立から70年以上にわたり、日本のエレクトロニクス産業を縁の下で支え続ける「東信電気株式会社」の決算を読み解きます。EMS(受託製造サービス)の老舗として知られる同社が、第83期(2025年3月期)において、記念事業への投資などを行いながらもしっかりと黒字を確保したその堅実な経営手腕と、盤石な財務基盤について分析します。

東信電気決算

【決算ハイライト(第83期)】
資産合計: 2,379百万円 (約23.8億円)
負債合計: 640百万円 (約6.4億円)
純資産合計: 1,739百万円 (約17.4億円)

当期純利益: 4百万円 (約0.04億円)
自己資本比率: 約73.1%
利益剰余金: 789百万円 (約7.9億円)

【ひとこと】
まず特筆すべきは、約73.1%という極めて高い自己資本比率です。これは製造業としてはトップクラスの安全性であり、長年の堅実経営の賜物と言えます。当期純利益は4百万円と小幅な黒字となりましたが、負債の部に「75周年記念事業引当金(10百万円)」が計上されていることから、将来や社員への還元に向けた戦略的な支出を行いつつ、最終的な収益をプラスで着地させた、コントロールされた決算であると読み取れます。

【企業概要】
企業名: 東信電気株式会社
設立: 1950年3月4日
事業内容: 電子機器の受託製造(EMS)、受託開発、信頼性試験等

www.toshin-et.co.jp


【事業構造の徹底解剖】
同社の事業は、単なる製造下請けにとどまらず、設計から試験までをワンストップで提供する「開発型EMS」に進化しています。主要な事業領域は以下の通りです。

✔EMS受託製造サービス
創業以来の主力事業です。部品調達から基板実装、組立、梱包までを一貫して行います。多品種少量生産を得意とし、1,000社以上の取引実績を持ちます。NECグループや三菱電機グループなど大手メーカーからの信頼も厚く、産業機器やインフラ関連機器の製造を支えています。

✔受託設計・開発サービス
ハードウェア(回路・基板)だけでなく、筐体設計や組み込みソフトウェアの開発まで手掛けています。IoT機器やロボット開発など、顧客のアイデアを具体的な製品に落とし込む技術力が強みです。原理試作やPoC(概念実証)開発にも対応し、スタートアップ企業のパートナーとしても機能しています。

✔信頼性試験サービス
製品が過酷な環境下でも正常に動作するかを確認する試験を受託しています。温度・湿度試験や振動試験など、自社工場の設備を活用し、製品品質の保証をサポートするニッチながら重要なサービスです。

✔自社製品・ソリューション販売
キッティングRPAツールや、独自開発した盗難・獣害対策システム「Miterus」などの販売を行っています。受託型ビジネスからの脱却を図る新たな挑戦領域です。


【財務状況等から見る経営戦略】
第83期の決算数値を基に、同社の置かれている状況と戦略を分析します。

✔外部環境
半導体や電子部品の供給不足は解消に向かいつつありますが、部材価格やエネルギーコストの高止まりは製造業全体の利益を圧迫しています。一方で、製造業の国内回帰や、スタートアップによるハードウェア開発の活発化は、同社のような柔軟なEMS企業にとって追い風です。

✔内部環境
当期純利益4百万円という数字は、一見すると利益率が低いように見えますが、これは「75周年記念事業」などへの先行投資的な費用計上が影響している可能性があります。本業のベースとなる利益剰余金は約7.9億円と厚く、経営の屋台骨は非常に太いと言えます。固定資産が約12.5億円あり、国内工場への設備投資も継続的に行っている様子が伺えます。

✔安全性分析
自己資本比率73%超、流動比率218%という数字は、盤石な財務体質を示しています。実質無借金経営に近く、金利上昇や急激な景気変動に対しても十分な耐性を持っています。この豊富な資金力は、最新の実装ライン導入や新規事業(自社製品開発)への投資余力となり、長期的な競争力を支えています。


SWOT分析で見る事業環境】
同社についてここまで見てきた内容を、SWOT分析にまとめて整理をします。

✔強み (Strengths)
「ワンストップ対応力」と「実績」です。設計から製造、試験まで一社で完結できるため、顧客は管理コストを削減できます。また、70年以上の歴史で培った大手企業との口座や、多品種少量生産のノウハウは、他社が一朝一夕には模倣できない資産です。

✔弱み (Weaknesses)
「受託ビジネスへの依存」です。顧客(メーカー)の生産計画や景気動向に業績が左右されやすい構造にあります。自社製品比率はまだ低く、収益の柱に育てるには時間がかかると予想されます。

✔機会 (Opportunities)
ファブレスメーカーの増加」と「IoT/AIの普及」です。工場を持たないベンチャー企業が増えており、開発パートナーとしてのEMS需要は高まっています。また、エッジAI端末やロボットなど、高度な実装技術を要する新製品の登場は、技術力のある同社にとって商機です。

✔脅威 (Threats)
「コスト競争の激化」と「人材不足」です。海外EMSとの価格競争や、国内における製造現場の人手不足は深刻な課題です。自動化の推進や高付加価値化で対抗する必要があります。


【今後の戦略として想像すること】
強固な財務基盤を持つ同社が、次なる成長に向けてどのような手を打つべきか考察します。

✔短期的戦略
「高付加価値案件へのシフト」です。単なる製造受託だけでなく、設計や評価試験を含めたパッケージ提案を強化し、案件あたりの利益率を高めるでしょう。また、75周年を機に社員のモチベーション向上や採用強化を図り、技術継承と体制強化を進めると考えられます。

✔中長期的戦略
中長期的には、「ODM(設計製造)メーカーへの進化」を目指すでしょう。顧客の仕様通りに作るだけでなく、企画段階から参画し、より付加価値の高い提案を行うモデルです。また、自社製品「Miterus」のようなニッチトップ製品を育成し、受託と自社製品のハイブリッド経営を確立することで、さらなる収益の安定化と拡大を図る戦略が予想されます。


【まとめ】
東信電気株式会社は、75周年という節目を迎えながらも、黒字経営と圧倒的な財務安全性を維持しています。約73%の自己資本比率は、変化の激しいエレクトロニクス業界を生き抜くための強力な武器です。これからも「創る・壊す(試験)・造る」の総合力を活かし、日本のモノづくりを支えるキープレイヤーとして存在感を発揮し続けることが期待されます。


【企業情報】
企業名: 東信電気株式会社
所在地: 神奈川県川崎市麻生区栗木2丁目6番4号
代表者: 代表取締役社長 遠藤 俊洋
設立: 1950年3月4日
資本金: 100百万円
事業内容: 電子機器の受託製造・開発、信頼性試験、カスタム製品販売

www.toshin-et.co.jp

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