覚醒剤をやめたいと心から思う瞬間は、何度もあった。
しかし、実際にやめることは容易ではなかった。その理由は、単純な意志の問題ではなく、依存症の複雑さにあった。
まず、覚醒剤は脳に強く作用し、「また欲しい」と思わせる強い欲求を生み出す。
これが、脳内の報酬系を狂わせ、やめたい気持ちと欲求の間で引き裂かれる状態になるらしい。
また、心理的な側面も大きい。覚醒剤を使っていた期間は、自分の感情やストレスを麻痺させていた。
やめると、その麻痺が解け、感情の波が激しくなり、耐え難い不安や恐怖が押し寄せる。
そうした感情を乗り越える自信が持てないことも、多くの人がやめられない理由の一つだ。
さらに、人間関係の変化もある。薬物に依存している間は、周囲との関係が歪み、信頼を失っていく。
断薬を決意しても、孤独感や罪悪感が邪魔をし、再び手を伸ばしてしまうこともある。
そして、身体的な依存も見逃せない。長期的な使用によって体が薬を求め続け、離脱症状が非常に辛くなる。
こうした身体的な苦痛が、やめたい気持ちを打ち消してしまうこともあるのだ。
このように、やめたいと思う気持ちと、やめられない現実の間には、多くの複雑な要因が絡み合っている。だからこそ、支援や理解が必要不可欠なのだ。