外は猛吹雪。視界はすべて白の世界。草木も凍り付いている。見ているだけで震えちゃう。
「今日はわたし、冬眠しまーす」
どこにも行かずに、暖房の部屋で毛布にくるまっているの。
電話も出ないし、インターフォンも無視するわ。だって冬眠だもん。
ポットとお茶とコーヒーとお菓子、リモコン、ティッシュ、ごみ箱。
手の届くところに全てそろえて、さあ、冬ごもり。
ところがしばらくして、ドアを叩く音がした。
ドンドンドンってしつこく叩く。無視していたら、今度は窓ガラスを叩き始めた。
「何なのよ、もう」
上着を羽織って窓を開けたら、クマがいた。
「きゃあ」
「こんにちは。ご心配なく。ちょっとお邪魔します」
「えっ、何なの?」
クマが部屋に入ってきた。
「寒いから窓閉めましょう。何しろ大寒波ですから」
「言われなくても閉めるわよ。それで、クマが何の用?」
「はい、実はですね、あなたが冬眠すると宣言なさったので、冬眠届を出していただきたいのです」
「冬眠届?」
「はい、私たち動物や爬虫類は、みんな届を出してから冬眠しています。人間だけ例外というわけにもいきませんからね」
クマが書類を出してきた。
「ちょっと待って。冬眠とは言ったけど、本当に冬眠するわけじゃないのよ。今日だけ家にこもるって話よ。だって大寒波ですもの」
「えー、1日だけ冬眠なんてシステムあったかな」
クマが、ぶつぶつ言いながら、鞄からカードを出した。
『ただいま冬眠中』と書いてあるカードだ。
「なにこれ?」
「とりあえず冬眠するときは、このカードを玄関ドアに貼ってください」
「えー、玄関に出るのも寒くて嫌なんだけど」
「人間はわがままですね。とにかく、必ず貼ってくださいよ。これは応急処置ですからね。まったくいい迷惑ですよ。せっかく寝てたのに呼び出されて」
「わかった、わかった。貼ればいいのね」
「はい、お願いします。では私も、ねぐらに帰ります」
クマは「おお寒い」と身を縮めて帰って行った。
何だったの、あれ? まあいいわ。この大寒波で、世界がおかしくなっているのよ。
さあ、昼寝しよう。
あっ、その前に「冬眠中」カードを貼らなきゃ。また来られたら困るわ。
わたしは、玄関ドアに『ただいま冬眠中』のカードを貼って寝た。
目覚めたら、朝だった。ちょっと寝すぎたかな。
まあいいか。今日も仕事休みだし、また冬眠しようかな。
だけど、冬眠にしては暖かすぎない? 大寒波、おわった?
雪が解けている。花が咲いてる。鳥が鳴いている。ん? ホーホケキョ?
なんかおかしい。とりあえずテレビをつけた。
「おはようございます。今日は3月15日です。冬眠中の動物も目覚めてきそうなポカポカ陽気ですね」
さ、3月? 昨日まで1月だったよね。ポカポカ陽気? 大寒波だったよね。
やだ、わたし、本当に冬眠してたっぽい。
会社にわたしの席ってまだあるかな。
まあ、いっか。とりあえず、何か食べよう。
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