UUUMがマーケティング部門を“分社化”した理由とは? 「マネジメントビジネス市場は成熟期に入ってきた」

UUUM株式会社は2025年10月1日、同社のマーケティング部門を分割し、UUUMマーケティング株式会社を設立した。
もとよりUUUMは国内屈指のマネジメント事務所機能に加え、マーケティング部門としてインフルエンサーマーケティングとキャスティングの両機能を所持していたが、このタイミングでマーケティング部門を分社化した理由とは。今回はUUUMマーケティング株式会社の代表取締役である鈴木 司氏と執行役員の宮﨑 航氏にインタビューを行い、その背景やUUUMが目指す未来のビジョンについて話を聞いた。(編集部)
全体予算の“1%”しかないインフルエンサーマーケティング市場を成長させるために
ーーこれまでUUUMの一部署であったマーケティング部門を分社化し、別会社として独立させた背景を聞かせてください。
宮﨑:背景として一番大きいのは「市場環境の変化」です。この1年間を見ても、市場がめまぐるしいスピードで変化しており、我々としてもそのスピード感を超えていかなければならないという危機感がありました。
そこで、同じ組織内にあったマネジメント部門とマーケティング部門のそれぞれで専門性を強化し、お互いのビジネスの成長にコミットできる体制を作る必要があると感じ、分社化したという流れです。
鈴木:もう少し細かい話をすると、インフルエンサーマーケティングの市場自体は現在も伸び続けているのですが、一方で我々の創業事業であるYouTubeのクリエイターサポート、いわゆるマネジメントビジネス自体は、市場としてかなり成熟期に入ってきているんです。
ーーその感覚はUUUMさん以外の同業他社を含め、業界全体を見ている自分としてもよくわかります。
鈴木:そうした状況下だと、成熟したマネジメント事業と成長著しいマーケティング事業とで追うべきKPIや運営の論理も異なってくるため、分社化してそれぞれの市場成長に乗っていけたほうがいいだろう、という経営判断ですね。

ーーとてもわかりやすいです。以前に宮﨑さんへ取材した際は、マネジメントとマーケティングが一体となっていることの良さ、いわゆる「製販一体」の良し悪しについてもお話しされていましたが、今回の分社化はそのデメリットを解消しつつ、グループとしてのシナジーは生み出し続けるというメリットを強化するための動き、と捉えることもできますよね。
鈴木:もちろん一体であることの良さもありましたが、今回は親会社であるフリークアウト・ホールディングスやグループ企業とのシナジーを起こすことも目的のひとつです。フリークアウトは元々アドテクノロジーやマーケティングを専門領域とする広告会社であり、その大きな傘の中にインフルエンサーマーケティングが存在しています。
フリークアウトが担う広告・メディア事業、そしてUUUMが担うクリエイターマネジメント事業。この二つの中間に位置し、両社と半分ずつ重なっているのが我々UUUMマーケティングです。
ーーそう考えるとメリットの大きさが目立ちます。
鈴木:インフルエンサーの経済活動を考えると、広告で収益を生むというのは引き続き市場全体でもメインの活動ですが、近年の流れとしては、広告だけに依存せず、ファンとクリエイターの間で経済活動を行うことが主流になりつつあります。例えばグッズ販売、イベント開催、投げ銭、メンバーシップなどです。
これら「ファンとクリエイターの間でのマネタイズや経済活動」は、引き続きUUUMがサポートしていきます。一方で、「インフルエンサーの経済活動全体の中における広告領域」については、我々UUUMマーケティングがフリークアウト側の知見も活かしながらサポートしていく形になります。
ーー冒頭で市場環境の変化を理由に挙げられていましたが、インフルエンサー・動画クリエイターの活動において、動画を通しての広告収益が業界全体として減少しているなかで、いち早く事業の多角化を行ってきたのがUUUM社だと思います。そのネクストフェーズとしての分社化だということがよくわかりました。数カ月が経過しましたが、実際に組織を動かしてみての手応えはいかがでしょうか。
宮﨑:10月1日のスタートに向けて、かなり前から構想を練り、綿密な準備をしてきました。自分たちが立ち返るべき原点はどこか、ビジネスとしてどこに集中すべきか。これを鈴木や他のメンバーと議論し、種を撒いてきました。その種が10月から一斉に芽吹き始めた感覚があります。タイミングも良かったとは思いますが、何より準備を徹底していたことが、好調の要因だと考えています。

ーー準備というのは?
宮﨑:具体的にはクライアントと真摯に向き合うことです。今どのようなニーズがあり、どのような課題を抱えているのか。そして市場はどうなっているのか。これらを照らし合わせながら答え合わせをしていく作業に注力しました。その結果、スムーズに立ち上がることができたのではないでしょうか。
ーー意思決定のスピードも上がりましたか。
宮﨑:非常に早くなったと実感しています。マネジメントに必要な意思決定の要素と、マーケティング視点で必要な意思決定の要素は、やはり異なりますからね。グループとしての連携やシナジーは大前提ですが、自分たちの強みを伸ばすことにフォーカスできるようになったことで、判断も決定もスピード感が出てきたと感じています。
鈴木:混ぜていたKPIを分けることで、専門事業に特化して意思決定ができるようになった結果、組織全体のスピードは格段に上がったと言えます。
ーーちなみに「インフルエンサーマーケティングの市場自体は現在も伸び続けている」とのことですが、お二人は「市場の成長の先」にどんなものがあると考えますか?
鈴木:ビッグピクチャーとしては、トップクリエイターだけではなく、規模を問わずさまざまなクリエイターがクリエイション活動によって生活できる世界をより一般化させていきたいと考えています。
「1億総クリエイター時代」とまでは言いませんが、会社員としての選択肢だけでなく、クリエイターになるという選択肢がもっと当たり前になる未来があってほしい。すでに加速している部分もありますが、それがより一般化する未来が必ず来ると信じて、我々ができることをやっていくつもりです。
ーーその「我々ができること」について詳しく教えてもらえますか。
鈴木:ひとつは「クリエイターの経済活動の支援」。クリエイターの経済活動には「ファンの中で生まれるもの」と「企業(広告主)の中で生まれるもの」がありますが、この二つが大きくなればなるほど、フルタイムのクリエイターとして食べていける人口が増えていきます。
クリエイターひとりでは実現できない部分を、会社組織やチームとして支援することで、市場も広がり、我々が支援したかったクリエイターの成長や、クリエイター人口の増加に近づけると考えています。
そして、UUUMマーケティングの視点からすると、その目的の中で「広告主との間で行われるマーケティング活動」も、もっと伸びる余地があると考えています。
ーー具体的にはどの程度のポテンシャルがあるとお考えですか?
鈴木:企業のマーケティング予算全体の中で、インフルエンサーと一緒に活動しようという予算は、日本の市場全体で見てもまだ1%程度しかありません。テレビCMやイベント、OOH(屋外広告)など様々な選択肢がある中で、インフルエンサー施策はまだその程度なんです。
この1%が2%〜3%となる世界になれば「インフルエンサーと一緒に共創したマーケティング活動を行う」ということが、マーケティングのアジェンダの中でもっと上位に来る。そんな世の中にするためには、効果計測のあり方にも向き合う必要があります。どうやって効果を測るべきなのか、という問いに対して、我々自身が解を発明し、チャレンジしていかなければなりません。それができれば、UUUMグループ全体が成し遂げたかった「クリエイターがより大きくなる」「クリエイターの経済活動をより支援できる」ことに繋がると信じています。
ーー1%という数字は、裏を返せばそれだけ伸び代があるということですね。テレビとネットの比率が逆転したように、ネット広告の中でもインフルエンサーマーケティングの比率が上がっていく未来が見えていると。
鈴木:そうです。広告というのは、「何かを表現したい対象」と「それを受け取る対象」を媒介するために何をするか、ですからね。それがテレビ画面なのか、インターネットなのか、あるいは「人」なのかが違うだけで、これまでのテレビやネットは「枠」を買い、そこに出稿することが大きな予算を占めていましたが、これからは「人が媒介する」という活動がもっと増えてくるはずです。Instagramを見て憧れの人が身につけているものが欲しくなる、といった購買行動はすでに一般的になっていますが、そこに投下される予算の比率がまだ追いついていない。そこは今後の課題でもあり、機会ですね。
宮﨑:トップクリエイターだけでなく、マイクロインフルエンサーと呼ばれる方々の活躍の場も広げていかなければ、市場は広がっていきません。より安心安全で、もっと楽しいと思ってもらえる環境を作り、クリエイターを支えていく。その先に僕たちがいるんじゃないかなと思っています。
「マーケティングスキルがある方でも、クリエイター愛が強い方でも、入口はどちらでもいい」
ーーそのビジョンを実現するために、組織体制や採用についても変化させていくのでしょうか。
鈴木:組織作りにおいては「誰がいるか」ではなく「どんな機能が必要か」という視点に切り替えました。
以前は「この人がいるからこういう組織にしよう」という属人的な部分もありましたが、今は我々がマーケットの成長をキャプチャーするために、どのような組織であるべきか、どんなチームが必要かというベースで考えています。
例えば、エンジニアリング組織を作ったり、新規事業開発を行う専任チームを作ったりしています。また、特定の領域に強いバーティカルな組織を作り、ショート動画系に強いクリエイターとビジネスをするチームを組成したりもしています。
我々が見ている3〜4年という時間軸の中で、このタイミングでこういうことをやっていかないとマーケットの成長に追いつけない、リードできないという課題感のもと、チーム作りを行っています。
ーー採用に関しても、これまでの「総合職採用」から変化があるのでしょうか。
鈴木:はい。これまでは「総合職」として入社していただき、適性を見て配属を決めるというやり方が多かったのですが、現在は「ジョブ型」に近い採用を行っています。
UUUMマーケティングには明確なペルソナがあり、それに合う人を採用しています。例えば、BtoCとBtoBでは求められる能力や、持っている「筋肉」が全く違います。
ーー「筋肉」ですか。
鈴木:インフルエンサー・動画クリエイターの市場において、これまではUUUMがマーケットをリードしてきましたが、それにあぐらをかくことなく、自分たちの能力自体を最大化させていかなければなりません。そのためには、自分たちにない「専門性」という筋肉を持った人材が必要です。
キャリア採用も新卒採用も、基本的にはポジションごとのジョブディスクリプションを作成し、それにコミットできる方を採用するという方針に切り替えています。
宮﨑:現在UUUMマーケティングでは社内で「貢献目標」というものを定めています。これは鈴木の発案なのですが、自分の個人のミッションと、会社のミッションをどう擦り合わせるかという観点です。
会社組織として貢献できる人、そして自分のやりたいことが会社のミッションと重なる人。そういった方に来ていただきたいですね。
ーー具体的にはどのようなマインドセットを持った方を求めていらっしゃいますか?
鈴木:クリエイタードリブンなマーケティング、つまり「クリエイターを起点としたマーケティング」をやりたい人にとっては、UUUMマーケティングが一番の環境だと自負しています。
世の中には優れたマーケターがたくさんいますが、既存のマーケティング手法に限界を感じていたり、もっと「人」の熱量やファンのエンゲージメントを活かしたマーケティングがしたいと考えている方には、ぜひ来ていただきたいですね。
宮﨑:マーケティングスキルがある方でも、クリエイター愛が強い方でも、入口はどちらでもいい。ただ、両方の視点は必ずどこかで必要になります。
マーケティングの論理だけで動いても、クリエイターのことを理解していないと良い提案はできません。逆に、クリエイターが好きなだけでも、マーケティングの視点がないとビジネスとして成立しません。
その両方を持ち合わせている、あるいはこれから身につけたいと思っている方にとって、非常にチャレンジングで面白い環境だと思います。
























