インデックス投資のネガティブキャンペーンが開催される要因は何なのか
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いまGoogleに「インデックス投資」と入力してニュースを表示させると、軒並みネガティブな記事が出てきます。
ザイ・オンライン、東洋経済オンライン、トウシル……。まるでインデックス投資へのネガティブキャンペーンが開催されているようです。なぜこんなことになってしまったのでしょうか。
インデックス投資は、良くも悪くも市場平均を狙う平均的な投資法です。世界中に分散した株式や債券のインデックスファンドをつみたて投資して長期保有する。GPIFなど世界最大級の機関投資家たちも採用しているこのシンプルで王道の投資方法について、ことさら悪くけなす要素はいったいどこにあるのか。
Google検索上位の記事をいくつか見てみましょう。
結論をまとめますと、世界に投資の目線を広げるべきです。グローバルにいい事業を展開していて、割安な会社を買うべきです。たまたまマクロ状況が良くない国にいるだけのグローバル企業を投資対象から外すべきではないと思います。
内需系銘柄などに投資するときについては「国」という目線で物事を考える必要があるものの、大切なことは、個人投資家でも「国」とインデックス投資の縛りから自分を解放して、資産運用することではないかと考えます。
(インデックス投資に問題点あり! それはなぜか?国という括りにとらわれず、世界に投資の目線を広げるべき!|成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)|ザイ・オンラインより)
この記事ではインデックス投資=自国のインデックスのみに投資することであるというホームカントリーバイアス満点の前提が置かれているように見えます。だから、結論は「国という括りにとらわれず、世界に投資の目線を広げるべき」というごく平々凡々なものになっています。インデックス投資の話どこいった?
著者は米国人のようですので、米国のインデックス(たとえばS&P500)のみに投資するインデックス投資家が多いことが前提なのはわかります。しかし、ここは日本であり、日本のインデックス(たとえばTOPIX)のみに投資するインデックス投資家など聞いたことがありません。
本件に限らず、インデックス投資批判の際に、TOPIXに100%投資するという非現実的な前提を否定することでインデックス投資全般を批判した気になるというパターンは、昔から枚挙にいとまがありません。
途中、本筋ではないのですが、「インデックス投資では、なぜ精度の高い投資ができなくなってしまうのか?それは小型株、内需株、規制産業などに投資する時です」という頓珍漢な指摘もありました。セクター投資はアクティブ運用でしょうが。
タイトルで「インデックス投資に問題点あり!」といいながら、結論はグローバルに分散投資するべきというインデックス投資の基本をなぞっているにすぎないという自己矛盾した論理展開になっており、目が点になりました。
次の記事です。少々長い記事なので、要点としてタイトルと見出しを抜粋し、便宜的に項番をふらせていただきました。
タイトル:インデックス投資への「妄信」がなんとも危険な訳
①20年で2倍に満たないことも十分ありうる
②10年の運用金額では、まだまだ心もとない
③「通貨」の弱体化
④「元本がマイナスでも現金化」は誰でも起こりうる
(インデックス投資への「妄信」がなんとも危険な訳 | 家計・貯金 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュースより抜粋)
もうこれだけで既に的はずれなインデックス投資批判であることがうっすら見えますが、ひとつひとつ見てみましょう。
まずタイトル。どんな正論にも「盲信」を付けさえすれば批判記事に仕立てることが可能です。たとえば、「早寝早起きの盲信がなんとも危険」「水を飲むことの盲信がなんとも危険」「読書の盲信がなんとも危険」「散歩の盲信がなんとも危険」「勉強の盲信がなんとも危険」……もういいでしょう。
どんなによいものでも過ぎたるは及ばざるがごとしなのは、何もインデックス投資に限った話ではなく、世の中全般に幅広く言えることです。
①のリターン水準が不確定であるという指摘は、株式や債券などリスク性資産への投資であれば、インデックス投資に限らずアクティブ投資でもまったく同じで投資全般に言える当たり前のこと。
②の投資資金が小さいとリターンも小さいという指摘も、インデックス投資に限らずアクティブ投資でもまったく同じで投資全般に言える当たり前のこと。
③の「通貨」の弱体化(記事では円安の懸念を指している)の懸念に至っては、国際分散投資を基本とするインデックス投資をしていれば円安はむしろリターンが向上する話であり、批判にすらなっていないというありさま。ここでもインデックス投資=TOPIXに100%投資することという非現実的な前提になっているようです。
④の「元本がマイナスでも現金化」は誰でも起こりうるという指摘は、(もう書くのも飽きてきましたが)インデックス投資に限らずアクティブ投資でもまったく同じで投資全般に言える当たり前のこと。
投資全般にあてはまる当たり前のリスクをなぞっているだけでインデックス投資批判になっておらず、目が点になりました。
次の記事も長いので、要点としてタイトルと見出しを抜粋し、便宜的に項番をふらせていただきました。
タイトル:やってはいけないインデックス投資!資産形成やNISAでこそ要注意
①インデックス投資がおすすめと聞いたが何がいいの?
②インデックス投資が初心者におすすめされる理由とは?
③「インデックス投資=最良の選択肢」とは限らない
④インデックス投資は使い方次第で最良の投資になる
(やってはいけないインデックス投資!資産形成やNISAでこそ要注意 | トウシル 楽天証券の投資情報メディアより抜粋)
タイトルでインデックス投資を批判していると見せかけて、①②③④と読み進めていくと、インデックス投資は最良の投資になるという結論になっています。特に③の段落では、「強みと弱みを理解してね」「投資先や分散方法を考えてね」「損失がでることも想定してね」と良心的なアドバイスが山盛りのインデックス投資おすすめ記事となっています。
タイトルと記事内容がアンマッチです。これはなんでしょうか。常識的な内容にあえて正反対のタイトルを付けることで注目を集めようとする、いわゆる「釣りタイトル」です。
釣りタイトルが成立するためには、もととなる記事内容が、世間に浸透して常識化していることが必要です。だからこそ、常識とは正反対のタイトルで「お?」と多くの人の興味を引くことができるわけです。そう考えると、20年前は超マイナーだったインデックス投資が、だいぶ世の中に浸透してきた証拠ともいえそうです。

さて、まるでインデックス投資へのネガティブキャンペーンのようなニュース記事を、Google検索上位からいくつか見てきたわけですが、内容が的外れかつ論理矛盾しているようなお粗末なものばかりでした。
こうした「無理やりにでもとにかくインデックス投資のことをネガティブに言いたい」というインセンティブはいったい何なのでしょうか。少し考えてみました。
ひとつは、トウシルの記事のところで述べたように、インデックス投資が社会に浸透してきたということがあげられると思います。NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった非課税制度が投資家の背中を押して、「長期・分散・低コスト」という基本知識とともにインデックス投資も投資家の間で浸透してきました。
まだまだ国民の常識とまではなっていませんが、少なくとも、メディアがネガティブに取り上げればPVが集まりそうだと画策する程度には浸透しているのでしょう。
常識的な正論には必ず「アンチ」が出現します。世の中の常識といわれるものにはとにかく反対したい天邪鬼(あまのじゃく)な人は一定数存在します。変わったことを言って注目されたいという承認欲求に突き動かされているので、止めることはできません。
都合が悪いことに、メディアでは変わった主張を掲載するとPVが上がり利益が出るという困った事情もあり、こちらも止めることはできません。
もうひとつは、こちらがおそらく本音なのだと思いますが、インデックスファンドの運用コスト競争が進みすぎて、金融機関(証券会社・銀行・運用会社など)がインデックスファンドではほとんど儲からなくなってしまったことがあると思われます。
たとえば、インデックス投資家に大人気の超・低コストインデックスファンド「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の運用コストは、どんどん値下げされて今や年率0.1%台です。100億円の純資産残高があっても毎年の収入は1000万円程度しかありません。まあオルカンの場合は、投資家の支持を集めて純資産残高1兆円以上となっており、それなりの定期収入となっているはずですが。
インデックスファンドにおいては、各資産クラスでトップ3以下の銘柄は、ほとんど儲からない形になってきており、今もどんどん進行しています。現在米国がそうなっているように、日本でもインデックス型の商品はシェア上位3社程度による寡占化の傾向が見られます。
金融機関はインデックスファンドだけを取り扱っているわけではないので、その他の商品・サービスで儲けていくことになるわけですが、それにしても儲からないインデックスファンドがあまりにも大きくなりすぎると、高コストな他の自社商品とカニバリゼーション(共食い)を起こしてしまします。
金融機関からの広告収入が頼りの経済系メディアや、金融機関そのものであるオウンドメディアが、低コストなインデックスファンドをジャブのように批判しつつ(上記のように批判になっていないものが大半ですが)、高コストなアクティブファンドや売買のたびに手数料が取れる個別株投資をすすめたがるのは、金融機関側の事情を鑑みると切実な必然性があるのだと考えます。
翻って、個人投資家の立場で考えると、金融機関側の事情を無用に慮る必要はないと思います。
「長期・分散・低コスト」という投資の基本に則った資産運用をするために最適な金融商品を、投資家が自己責任で選択している限り、悪いことをしているかのようなものの言われ方をされる筋合いはありません。
世の中には様々な投資法が存在しており、すべてがインデックスファンドに置き換わることなどありえない。むしろ、インデックスファンドばかりになると市場の歪み(放置された裁定機会など)が大きくなり、アクティブ運用で大きなリターンをあげるチャンスが生まれます。それこそプロのアクティブ運用の腕の見せ所ではないでしょうか。
アクティブ運用で恒常的にインデックスを上回ることは非常に難しいことが、洋の東西を問わず確認されています。
そんななかでインデックスを上回る可能性が高まるのであれば、運用のプロたちが放っておく理由がありませんし、インデックスを恒常的に上回る希少なアクティブファンドは、たとえ運用コストが高くても世界中から資金が集まることでしょう。
平均的なリターンでいいやという投資家が選ぶインデックスファンドは生活必需品として低コスト化が進み、平均以上のリターンを求める投資家が選ぶアクティブファンドは高コストでも実力次第で大きな資金が世界中から集まる。すみ分けができるはずです。
要するに、大した運用力も投資家の支持もないような金融機関が、インデックスファンドの拡大をことさら敵視して、メディアを使って(メディアが忖度して)、ネガティブキャンペーンのようなことをやる。そういうインセンティブが働いているという構図に私には見えます。
個人投資家としては、公平で中立的な情報(たとえば投資の古典的名著など)で金融知識を身につけたうえで、業界都合の批判など受け流しながら、堂々と自分の資産形成にインデックスファンドを活用していけばよいと私は思います。
<ご参考>
「ウォール街のランダムウォーカー」(バートン・マルキール著)はインデックス投資のバイブルと言われている古典的名著ですが、原著第12版のエピローグには、市場参加者全員がインデックス投資をしたらどうなるのか?市場の機能が失われるのではないか?というインデックス投資への批判について、バートン・マルキール氏の明確な見解が記載されています。この手のインデックス投資批判に対しては、もうこれが公式ファイナル・アンサーだと思います。

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