公的年金の運用実績報告に対する各メディアの取り上げ方の違いには雲泥の差が!
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先日、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法)が、2018年第3四半期の運用状況報告を公開しました。
年金積立金管理運用独立行政法人のWebサイトです。当法人の運用状況、運用方針、運用委員会等に関する情報を掲載しています。
◆2018年度第3四半期
期間収益率 -9.06%
収益額 -14兆8,039億円
◆市場運用開始以降(2001年度~2018年度第3四半期)
年率収益率 +2.73%
累積収益額 +56兆6,745億円
◆運用資産額 150兆6,630億円
簡単に言えば、直近の四半期は金額で-14兆円とそこそこマイナスになってしまったものの、運用総額は150兆円と巨額であり、損失率でいうとたった-9%で、株や債券に投資していればよくあるレベルの下落に過ぎず、市場運用開始以降からの累積収益額は+56兆円もあり、損益率も+2.7%でプラスで推移しているというのが全体像です。
それを受けて、マスコミ各社が報道する内容が、いつものことながら、それはもうもう酷いのなんの。
例えば、テレビ朝日の報道ステーションでは、短期間の損失額だけ「公的年金が14兆円の巨額損失!」と鬼の首を取ったように騒ぎ立てています。
【報ステ】GPIF年金運用 赤字14.8兆円(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
公的年金を運用するGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人が1日、去年10~12月の運用 - Yahoo!ニュース(テレビ朝日系(ANN))
短期的な損失額14兆円という金額だけ見たら、一見、とりかえしのつかないような巨額損失に見えますが、本当は運用総額の方が150兆円とそれ以上にはるかに超・巨額なのです。運用総額全体で年間9%の変動は、株式や債券に投資していれば、ふつうに発生するめずらしくもなんともない変動の水準です。
視聴者にとって比較対象がないなかで、ただ「14兆円の損失」という損失金額の大きさだけを全面に出して、不安を煽る報道内容になっています。
一方で、比較的まともな報道をしているところもあります。
GPIF 去年10~12月の運用で過去最大の赤字 株価下落が要因 | NHKニュース
公的年金の積立金を運用しているGPIF=年金積立金管理運用独立行政法人は、去年10月から12月の運用実績について、世界経…
GPIFが運用実績発表した各要素をきちんと報道しています。
ツイッターでも取り上げたところ、かなりの反響がありました。
比較的まともな報道内容。年金が損失を出すと、運用総額を書かずに損失金額だけ書いて「年金が○○兆円の損失!」と鬼の首を取ったように騒ぎ立てるメディアが多いなか、損失金額に加えて運用総額、損益率、過去からの累積損益も並記して運用の全体像がわかるようになっている。 https://t.co/14fAAQ5Uu1
— 水瀬ケンイチ (@minasek) 2019年2月1日
ただ、今回の報道だけで比較すると、まるでテレ朝がダメでNHKが優良みたいに見えますが、過去から度々マスコミ各社のGPIF運用実績報道の状況を追っている身としては、その時々で報道の内容・品質はまちまちであり、ベストの報道要素を押さえているメディアは、時とともに移ろってきたことを知っています。
過去の報道状況も加味して、現在のメディアのGPIF運用実績に対する報道内容を冷静に見たいところです。
公的年金の2016年10-12月期は過去最大の運用益。でもマスコミ各社は……
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2016年10-12月期の運用実績を発表しました。運用益は10兆4973億円、運用利回りがプラス7.98%、累積収益は53兆617億円と、過去最大の運用益が出ています。今までブログで取り上げてきたように、マスコミ各社は年金運用がマイナスになった時は、その損失金額を取り上げて鬼の首を取ったように大騒ぎする一方、プラスの時には報道しない(あるいはごく小さな扱い...
公的年金の2013年度の運用は大幅プラス。でもマスコミ各社は……
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2013年度の運用実績を発表しました。10兆2207億円の黒字、運用利回りがプラス8.64%であり、これは目標利回りのプラス3.2%を大きく上回っています。今までブログで取り上げてきたように、マスコミ各社は年金運用がマイナスになった時は鬼の首を取ったように大騒ぎする一方、プラスの時には報道しない(あるいはごく小さな扱い)という傾向がありました。過去2番...
公的年金の12年度10-12月期の運用は大幅プラス。でもマスコミ各社は……
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2012年度10-12月期の運用が5兆1352億円の黒字、運用利回りがプラス4.83%になったと発表しました。これは目標利回りのプラス3.2%を大きく上回っています。今までブログで取り上げてきたように、マスコミ各社は年金運用がマイナスになった時は鬼の首を取ったように大騒ぎする一方、プラスの時には報道しない(あるいはごく小さな扱い)という傾向がありました。...
少し前ですが、公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2012年度7-9月期の運用が5,287億円の黒字、運用利回りがプラス0.49%になったと発表しました。今まで、マスコミ各社は年金運用がマイナスになった時は鬼の首を取ったように大騒ぎしてきました。ちょうど1年前は3.7兆円の赤字、運用利回りマイナス3.32%でしたが、その時のマスコミの反応はこうでした。2011/12/04 恒例のマスコミによる公的年金叩...
恒例のマスコミによる公的年金叩きですが、よく見ると各社で違うぞ…
公的年金資金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2011年度7-9月期の運用利回りがマイナス3.32%になったと発表しました。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF) 最新の運用状況ハイライト平成23年度第2四半期運用状況恒例のことですが、公的年金の運用実績がマイナスになった時には、マスコミは大きく取り上げます。2011年7-9月は欧州債務危機が直撃し、世界の投資家の多くは大きなダメージを受けました(も...
公的年金の運用実績を、NHKがいつもパーフェクトに報道してきたわけではない事がわかると思います。
公的年金に関しては、人口増加を前提とした制度設計であることや、未納問題、マクロスライド方式の不徹底等、課題を抱えていることは事実です。しかし一方で、資産運用については真面目に行われており、情報公開も進んでいるというのが、運用をウォッチしている私の認識です。
そして、個人としては、移ろいやすいマスコミ報道で、ワーワーと踊らされるのではなく、GPIFが毎四半期、わかりやすく公表しているWEBサイトで、他人のフィルターを介さない「一次情報」にあたり、冷静に判断するのがベターだと思います。
年金は国民の最大級の関心事です。マスコミ各社は煽る方向にばかり張り切るのではなく、良いことも悪いことも含め、きちんと「事実」を伝えてほしいと思います。
追伸
日本経済新聞社編集委員兼紙面解説委員で、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)でもある田村正之氏が、マスコミが加担して悪いイメージを付けてしまい消費者に誤解されている公的年金について、「懺悔の気持ち」をもって(と私には見えます)、その真の価値を消費者が知ってフル活用することが、最大の老後対策になることを消費者に伝えたかったという良心的な年金本です。
公的年金の運用と活用方法について、必読の書だと思います。当ブログの書評記事はこちら。
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