辻仁成氏の「海峡の光」と田中慎弥氏の「共喰い」を偶然同時に読んだ。
アタシは同時期に数冊同時進行で読む癖があるのである。
「海峡の光」は偶然市民図書館で目に入ったから読んだ。
「共喰い」は過去に映画化されていたのを最近知りびっくりして
(絶対映画化は無理と思っていた)
家にあった文芸春秋を取り出してきて以前読んだけどもう一度読んでみた。
両方とも、救いようのない最低な男が多く登場する。
「海峡の光」は、刑務所の看守となった主人公の前に、
小学生のころ自分を陰湿にいじめた男が受刑者として現れるお話だ。
いじめることで自分を確立していくいじめ男は最低だ。
「一人の犠牲者の誕生は同時に残りの者たちにエリート意識を生み出し」ていくのだ。
アタシは小学生の頃に少しだけいじめられたことがある。あれは恐ろしい行為だ。
その後、職場内のいじめと思われることも見たことがアル。
あれは、いじめることで、自分は違うんだ、自分は正当な人間だと自分の中で確認し、
また、仲間と認めた周りとも同調することで安心するのだ。
だが、主人公の看守も、なかなかの最低なヤツと思う。
自分に恋する女に、うまく気をもたせるようにしてみたり、冷たくしてみたりする。
その女の友達とつきあったりする。
また、結婚してからは、自分の母の面倒を妻に任せながら、酒場の女と寝る。
「照明に浮かび上がる歯並びのいい前歯は、健康的だった。その歯と周辺の薄い唇との
輝きによって欲望が仄かに起こったが、想像が頭骨の奥を焦がしたに過ぎない。」
だって。
アタシは嫌いだ、この男。
作者は、主人公が女性読者から嫌われるのをわかっている気がする。
わかっていて、やっている。気がする。
何でだ?
「共喰い」は、自分の快楽のために女を殴る父親とその息子、母親のお話だ。
女を腕力で痛めつける・・・・もう、これで終わっている。
息子にもその性癖が現れてきている。つきあっている彼女の首を絞めてしまう・・・・。
ただ違うのは、父親がその行為を肯定しているのに対し、息子は
「もうやらん」と彼女に言うところだ。
息子の性癖は、治るだろうか。
この小説は、明るく終わっているが、レインボウの経験上は、なんだか不安感が残る感じ。
もしかしたら、治らないかもしれない。極端な形ではないかもしれないが。
だが、この「共喰い」に登場する女性たちは、非常に強く明るい。
息子の父親に乱暴された息子の彼女は
「もう立てんのかって思うとったけど、案外、立てるもんやね」
と立つのだ。
報復に、息子の母親は息子の父親を義手をつかって殺す。
強い。
がんばれっオンナ!
パリで元アイドル歌手の妻と暮らすわけではなく、
地方で母親と引きこもりがちに暮らし、
カレンダーの裏に小説の下書きをする田中氏の
女性の強さを描くときの優しさというか包容力というか、
そんなのにほれぼれした。
最低なオトコばっかり出てくる小説読んだ後で、
救われる感じ。
両方とも、昭和63年ころという時代設定である。
確かに、昭和くさいお話だった。
長くなりました。すみません。
最後に言いますが、あんましオススメしません。暗くなります。
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