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2026年冬ドラマ傾向と対策(1月スタート作プレビュー)

前クールの10月期ドラマは、三谷幸喜野木亜紀子岡田惠和ら大物脚本家を続々召還したわりには、蓋を開けてみればいずれも微妙な出来で、むしろそれ以外に良作が多いというある種の逆転現象が起こっていた。そういう意味では、とても興味深いシーズンであったとも言える。

そしてそこで弾を使い切ったということなのか、続く今期はこうして一覧にしてみると、わりと地味めなラインナップであるように見える。しかしそういうほうが良いこともあるというのはまさに直近で証明されているので、ここは逆に探し甲斐があると捉えるべきかもしれない。予想というのは外れるからこそ面白い。


【月曜日】
◆『ヤンドク!』(フジテレビ/月曜21時/橋本環奈主演/1月12日スタート)
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ついに医療界にまで元ヤンの風が――キャラクターに最大級の振れ幅を持たせる「元ヤンキー」からの「脳神経外科医」設定。

その時点で充分にフィクション度合いの強い漫画的な設定と言えるが、そのうえで演技が終始オーバーリアクション気味で漫画的な橋本環奈が主演となれば、問題はそこにドラマならではの確かなリアリティを感じられるかどうか。

しかし公式HPを見る限り、ロゴやイラストをはじめとしてむしろ漫画的な雰囲気を強く押しているように見える。一話目でこのノリについていけるのかどうか、判断を迫られることになりそう。


◆『夫に間違いありません』(関西テレビ・フジテレビ/月曜22時/松下奈緒主演/1月5日スタート)
www.ktv.jp

今期は本作をはじめ、とにかくヒューマンサスペンス系が濫立。これも間違いなく「考察」ブームの影響なのだろうが、そうなると「いかに視聴者をミスリードするか」にばかり作り手側の意識が集中してしまい、肝心の人間ドラマの部分が単なる道具立てになってしまう危険性もある。

桜井ユキ宮沢氷魚は去年『しあわせは食べて寝て待て』でも共演しており、この二人がいると作品のクオリティが一段階上がる印象。

あらすじによれば出だしにインパクトがありそうなので、その後の展開で緊張感を持続させられるかどうかが鍵を握るだろう。そこは公式HPに《ジェットコースターのように展開する、ヒューマンサスペンス》とあるので、二転三転する展開力に期待したい。

――と、ここまで書いたところでもう一話目の放送があったので観た。あらすじほど冒頭のインパクトはなく、期待していたほどの危機感はなかった。生き死にの話ではあるものの、夫の側の浮いた話がしばらくメインになりそうでやや展開が緩いような。


◆『キンパとおにぎり~恋するふたりは似ていてちがう~』(テレビ東京/月曜23時6分/赤楚衛二主演/1月12日スタート)
www.tv-tokyo.co.jp

タイトルが示しているとおり、脚本も演者も日韓混合編成で贈る純愛ストーリー。そのうえで食べ物が絡んでくるあたりは、いかにもテレ東テイスト。

王道ラブストーリーの中に、文字どおり異なる文化圏における「似ていてちがう」部分によって明確な差を生み出せるかどうか。


【火曜日】
◆『再会~Silent Truth~』(テレビ朝日/火曜21時/竹内涼真主演/1月13日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

「刑事と犯人もしくは容疑者との恋」というパターンは近年多い気がするうえに、タイムカプセルが絡んでくるというのも、前クールの『良いこと悪いこと』に続いてわりとよく観る展開ではある。

とはいえ、全体に湊かなえ系のTBS金曜ドラマ的な雰囲気を漂わせており、役者陣も安定感抜群の布陣。狙ってもなかなか到達できない名作『最愛』レベルにまで迫ることができるか?


◆『東京P.D. 警視庁広報2係』(フジテレビ/火曜21時/福士蒼汰主演/1月13日スタート)
www.fujitv.co.jp

刑事モノでありながら舞台を「広報課」に絞ってきたのは、あえて隙間を狙ったやや地味な設定であるようにも思われる。

だがどの視点から見ても起こっている事件の骨格自体は変わらないはずなので、様々な角度からひとつの事件を捉えたいという試みなのだろう。

脚本にわざわざ「ライターズルーム方式」と銘打っているのが興味深く、ひとつの作品に複数の脚本家が携わる状況はさほど珍しくはないが、ローテーションではなく合議制に近いということなのか。海外作品ではよく聞く話であるし、たとえば日本の漫画などでも編集部によってはそういうやりかたを採用しているところもあるようだが、その効果がどこらへんに出てくるものなのかは興味深い。

一般に集団で脚本を手がけた場合、全体の平均クオリティの向上と安定が望めるが、一方で合議制によって個人の尖った発想や飛躍したアイデアが削られる傾向にあるとも感じる。ゆえに議論の際に遠慮と忖度をしがちな日本人には意外と難しいと感じる部分もあるが、この形式が日本でも有機的に機能するものなのかどうかを確認したい。


◆『未来のムスコ』(TBS/火曜22時/志田未来主演/1月13日スタート)
www.tbs.co.jp

「未来から来た息子と出会う」という今さらなタイムスリップ設定には、さすがに「もうええでしょう」(微妙に古い)と言いたくなる。

枠が強いので一定のクオリティは出してくるはずだが、設定のベタさを乗り越えるよほどの魅力(キャラクターのチャームや台詞の精度など)がほかにないと、一話目で脱落してしまいそうな予感。


◆『テミスの不確かな法廷』(NHK総合/火曜22時/松山ケンイチ主演/1月6日スタート)
www.nhk.jp

ありがちな法廷ドラマかと思いきや、その奥にASD自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)という要素を持った原作を選んでくるのは、NHKならではの懐の深さ。

公式HPによれば、《やがて、安堂の特性からくる“こだわり”が、誰も気づかなかった事件の矛盾をあぶり出す。
しかし同時に、彼は自身の衝動とも格闘しながら公判に挑まなければならない》と。

そのような特性を持つ主人公を、松山ケンイチがどのように演じるのかは気になるところ。


◆『略奪奪婚』(テレビ東京/火曜24時30分/内田理央主演/1月6日スタート)
www.tv-tokyo.co.jp

すっかりテレ東深夜のお家芸となっている恋愛復讐劇。

もはや定番化したジャンルではあるが、今回は《登場人物全員ヒール》とのことで、さらに容赦ない展開が予想される。一話目のテンションについていけるかが勝負(誰との?)か。


◆『マトリと狂犬』(MBS・TBS/火曜25時28分(TBS)/西畑大吾主演/1月20日スタート)
www.mbs.jp

いかにも青年漫画的な裏社会絡みの設定だが、主演ではなく脇に向井理、監督に品川ヒロシといったあたりはやはり気になる要素。

芸人であり元コウテイの九条ジョーの、役者としての存在感も確認しておきたいところ。


【水曜日】
◆『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ/水曜22時/杉咲花主演/1月14日スタート)
www.ntv.co.jp

公式HPに掲げられている《考えすぎてしまう人のためのラブストーリー》という言葉が、しみじみと強い。

そのうえ主演が杉咲花で、さらに岡山天音細田佳央太といった「この人たちが出ていれば間違いない」と言える演技派が脇を固めているとなれば、もはや繊細な物語が紡がれるのは間違いないだろう。

いまどき珍しく特にこれといった目立つ設定がつけ加えられていないのも、むしろ主軸となるキャラクターとストーリーに対する確固たる信頼を感じさせる。

ラブストーリーは気持ちの揺れ動きを繊細に描けるのならば、設定がプレーンであればあるほど強い。逆にそれができなければ、ありがちで簡単に埋もれてしまうというリスクもある。脚本の力が試される作品になるだろう。


◆『ラムネモンキー』(フジテレビ/水曜22時/反町隆史大森南朋津田健次郎主演/1月14日スタート)
www.fujitv.co.jp

近ごろ妙に中年の友情復活系というか、「青春を取り戻せ」的な作品が増えてきているような気がする(やはり前クールの「良いこと悪いこと」が比較対象になってくる)が、これは夢破れた時代の要請なのか。《1988青春回収ヒューマンコメディ》と銘打った本作も、明らかにその流れの中にあるように見える。

脚本は『リーガルハイ』『コンフィデンスマンJP』の古沢良太。そうなれば会話劇の充実は間違いのないところだが、果たして思春期と現代をどう絡めてくるのか。曖昧な過去の「記憶」を軸に置くことで考察を盛り上げたいとの狙いも見えるが、現在を過去で答えあわせしていく構造に嵌まり込みすぎると興醒めする危険性も。

むしろ過去よりも現在をどう魅力的に描くかが鍵を握るかもしれない。


◆『令和に官能小説作ってます』(テレビ大阪/水曜24時/徳井義実チュートリアル)、桃月なしこ主演/1月7日スタート)
www.tv-osaka.co.jp

作っているものはほとんど真逆と言えるかもしれないが、「言葉への強いこだわり」という意味では辞書編集部を描いた『舟を編む』を思わせる設定。やたらと「言語化」を求められる昨今だからこそ、生きてくるタイミングではある。

主役にチュートリアル徳井を持ってくるあたりも、妙にドンピシャすぎて面白い。あとは単なるコメディに仕上げるか、その先にエロを超えた何かが垣間見えるところまで行けるか。


◆『こちら予備自衛英雄補?!』(日本テレビ/水曜24時24分/菊池風磨主演/1月7日スタート)
www.ctv.co.jp

なんだか妙にマーベルっぽい設定であまりリアリティがなさそうだな、と思ってスルーしかけたが、《原作・脚本・監督/加藤浩次》の文字に目を疑った。今期は品川作もあり、やはりバカリズムが芸人主導ドラマの風穴を開けたということなのか。

とりあえず題名の読みにくさ言いにくさでだいぶ損している感もあるが、あの加藤浩次がどんなドラマを作るのかはやはり気になる。


【木曜日】
◆『おコメの女-国税局資料調査課・雑国室-』(テレビ朝日/木曜21時/松嶋菜々子主演/1月8日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

刑事ドラマや医療ドラマといった王道路線に活路を見出してきたこの枠に、今回は「国税調査官」を持ってきた。

そこへ『ドクターX』の米倉涼子、『緊急取調室』の天海祐希と肩を並べる主役としての松嶋菜々子

そうなると企画書的にはほぼ完璧な要素を揃えているように見える。あとは「徴税」による勧善懲悪によって、視聴者に刑事ドラマ並みのカタルシスをもたらすことができるかどうか。


◆『プロフェッショナル保険調査員・天音蓮』(フジテレビ/木曜22時/玉木宏主演/1月8日スタート)
プロフェッショナル 保険調査員・天音蓮 - フジテレビ

どこの局もニッチな設定探しの旅が続いている中で、こちらは保険金詐欺を追及する「保険調査員」。

やること自体は探偵ものに近いように思われるが、個別の事件内容でどれくらい新鮮味を出すことができるのか。

そして渡部篤郎小手伸也あたりのくせ者を、いかに配置してチームワークを見せてくれるのか。


◆『身代金は誘拐です』(読売テレビ日本テレビ/木曜23時59分/勝地涼瀧本美織主演/1月8日スタート)
www.ytv.co.jp

近ごろ現実のニュースでは見かけないにもかかわらず、なぜかドラマ界では増えてきている誘拐もの。

犯人の要求が身代金ではなく「別の子供の誘拐」であるという、やや間接的で行間のある設定が考察を誘う形になっている。とはいえこれだけだとさほど複雑な話にはならないようにも思えるが、《ノンストップ考察ミステリー》と銘打っているからには、そのスピーディーな展開力が試される。


◆『人は見た目じゃないと思ってた。』(テレビ東京/木曜24時30分/菅生新樹主演/1月8日スタート)
www.tv-tokyo.co.jp

見た目の良さが当たり前であるファッション誌設定の中に「ルッキズム」が絡んでいるのがいまどきで興味深いが、それにしても深夜ドラマで予算が限られているとはいえ、この公式HPの貧相さはどうにかならないものか……。

そしてここにも元コウテイの九条ジョーがキャスティングされている。いよいよ俳優業に本腰を入れはじめたということか。


【金曜日】
◆『元科捜研の主婦』(テレビ東京/金曜21時/松本まりか主演/1月16日スタート)
www.tv-tokyo.co.jp

「科捜研」という言葉ほど、特定の俳優と結びつけて認識されている言葉もないように思う。

本作はあえてそこに挑むということなのか、あるいはこうやって科捜研ドラマを新たに積み重ねていくうちに、イメージが希釈されて設定が普遍化されていくという算段なのか。

まあ刑事ドラマといえば誰、というイメージはもはやないのだから、科捜研設定も数が増えていけば誰のものでもなくなってはいくのだろうが。

ちなみに主人公は正確には科捜研職員ではなく、元科捜研ではあるが現在は「専業主婦」であるという微妙なひねりが利いている設定。といってもやることは科捜研と変わらないのだろうが、主婦としての側面にも重きを置いたホームドラマになっている模様。


◆『DREAM STAGE』(TBS/金曜22時/中村倫也主演/1月16日スタート)
www.tbs.co.jp

近ごろ深夜ドラマで増加傾向にあったアイドルグループ育成ドラマ。

そういえばかつて同じくTBSで、本田翼がボーイズグループの寮母を務める『君の花になる』という作品もあったが、本作はより本格的にその育成過程と向きあう内容らしく、もはや「スポ根」を謳っている。

いわゆるオーディション番組を経てアイドルが誕生する、という現実における昨今の成功パターンを受けての設定であると思われるが、そうなるとフィクションに勝ち目はあるのだろうか、という疑問がどうしても拭えない。一方でドキュメンタリーの側には、「結果としてリアルなスターが誕生する」という圧倒的現実があるだけに。


◆『探偵さん、リュック開いてますよ』(テレビ朝日/金曜23時15分/松田龍平主演/1月9日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

まず一行でキャラクターを伝える題名が秀逸。作品の方向性も自ずとイメージされてくる言葉の喚起力。

本作は企画段階から主演の松田龍平が関わっているとのことで、舞台が田舎の温泉街であるとか、主人公が探偵兼発明家であるとか、聴くだけでワクワクする要素が並んでいる。

それこそ彼の父親である松田優作の『探偵物語』における工藤探偵事務所がそうであったように、かつてのドラマにおける探偵事務所というのはつい訪ねたくなるような妙に魅力的な場所であった。本作ではそこに探偵本人が手がけた手作りの発明品が並んでいると考えるだけで、もうストーリーが動き出しそうな気配がある。

考察至上主義が進んでいくドラマ界にあって、謎解きそのものではなく独自の世界観で勝負してくるそのスタンスが頼もしい。世界観がゆるすぎて、探偵ものとしての軸がなさすぎる可能性もあるにはあるが、個人的には期待が大きい。


【土曜日】
◆『パンダより恋が苦手な私たち』(日本テレビ/土曜21時/上白石萌歌生田斗真主演/1月10日スタート)
www.ntv.co.jp

メインの登場人物は雑誌編集者と動物学者という一見交わらなさそうな二人だが、名作『俺の話は長い』で発揮された生田斗真の雄弁な屁理屈キャラに「動物学者」という肩書きがエビデンスを与える形になると考えると、面白くなりそうな予感はある。

動物の求愛行動をヒントに人間の問題を解決する動物学者の話にどの程度の説得力と独自性があるのか、その台詞の精度が作品の質を決定する肝になってくるか。


◆『ぜんぶ、あなたのためだから』(テレビ朝日/土曜23時/藤井流星主演/1月10日スタート)
www.tv-asahi.co.jp

こちらもまた頻出科目のラブサスペンスであるうえに、公式HPにある《登場人物全員、容疑者》というキラーフレーズが、テレ東『略奪奪婚』の《登場人物全員ヒール》とほとんどかぶっているという、どうにも既視感強めなレッドオーシャン設定。

やはり考察前提で観ることになるのだろうが、ここまで来ると数多いラブサスペンス勢の中で、どれが視聴者の脳を最も使わせることができるのかという、脳みその領域争奪戦になってくる。


◆『横浜ネイバーズ Season1』(東海テレビ・フジテレビ/土曜23時40分/大西流星(なにわ男子)、原嘉孝(timelesz)主演/1月10日スタート)
www.yokohama-neighbors.com

この東海テレビ土ドラ枠は、突発的に『おいハンサム!!』や『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』といった独自路線の傑作を生み出すことがあるだけに侮れないのだが、今期はWOWOWとの共同制作というのが足枷になっているのか、かなり保守的な探偵/刑事ものであるように見える。

この枠はWOWOWが絡まないほうが面白い。


【日曜日】
◆『リブート』(TBS/日曜21時/鈴木亮平主演/1月18日スタート)
www.tbs.co.jp

今期は日曜劇場までサスペンス。とはいえ『マイファミリー』や『危険なビーナス』、そして怪作『僕のヤバイ妻』を手がけてきた黒岩勉脚本となれば、そのクオリティに間違いはないだろう。おそらくはその他のサスペンス系ドラマが安っぽく見えてしまうはず。

主題歌にミスチルを引っ張ってくるあたりも、まさに枠の強さを証明する横綱相撲といった様相。


◆『50分間の恋人』(ABCテレビテレビ朝日/日曜22時15分/伊野尾慧、松本穂香主演/1月18日スタート)
www.asahi.co.jp

当初は良質なドラマが続いていたこのABC「日10」枠も、徐々に安っぽくなってきているような。

公式HPを見る限りありがちなラブコメといった印象で、特に見どころが見当たらない。強いて言えば昼休みの「50分間だけの関係」というところがアピールポイントになるだろうが、その距離感を繊細に描き切って自然な恋愛へと進展させるのはなかなか難しいように思われる。


◆『パンチドランク・ウーマン-脱獄まであと××日-』(日本テレビ/日曜22時30分/篠原涼子主演/1月11日スタート)
www.ntv.co.jp

女刑務官が道を踏みはずしていくという、なんともハードコアな設定。同枠の前クール作『ぼくたちん家』のゆるさからの振れ幅が半端ない。

そして本作もまたラブサスペンスであるようだ。今期は本当に愛と殺人がてんこ盛りである。


◆『嘘が嘘で嘘は嘘だ』(フジテレビ/日曜23時15分/菊地凛子主演/1月11日スタート)
www.fujitv.co.jp

『silent』で一世を風靡した生方美久脚本。毎度繊細なテーマを持ってくる彼女が、今回は「嘘」をその中心に置いてきたのがまず面白い。

狭いようで広い、浅いようで深いその「嘘」というテーマに、いったいどのような台詞と物語で迫っていくのか。

FODで先行公開された一話三十分×全四話の短い作品だが、題名とテーマを把握した時点ですでに興味を惹かれるものがある。


【今季の個人的注目作】

◎『冬のなんかさ、春のなんかね』
余計な味つけのないプレーンなラブコメ設定に〈考えすぎてしまう人のためのラブストーリー〉という繊細なテーマ。そして充実の役者陣。

○『探偵さん、リュック開いてますよ』
 主人公のキャラクターを生かす遊び心あふれる世界観。

△『嘘が嘘で嘘は嘘だ』
 短い作品だが、生方美久脚本ゆえにその台詞の濃密さは約束されているはず。


『M-1グランプリ2025』決勝感想~ツッコまずに泳がせて自由に溺れさせる「関係性」の妙~

個々の人間の持つ不可解な面白さと、それらをかけ算したときの人間関係の面白さ。二人以上の人間が集まっておこなう「会話」のベースには、それら「個」と「関係性」という二種類の面白さがあって、だからこそ人は会話を求めるのだろう。そしてその面白さを最大化するシステムこそが「漫才」という形式であるのかもしれない。そんなことを改めて感じさせられる大会だった。

単純に面白い人間を二人並べればさらに面白くなりそうなものだが、そうとも限らないことを我々は知っている。いやむしろ二人の「関係性」のほうが重要なのかもしれないぞと、今年は大会を観ながらそんなことを考えていた。ここで言う「関係性」とは、人と人との「距離感」のことでもあるし、人間同士のあいだに存在する目に見えない「ルール」のことでもある。

結果として、赤木という強烈な「個」を持ったたくろうが優勝したのは真逆の事象であるように思われるかもしれない。だが彼の「個」がここでブレイクを果たしたのは、ようやくそれを最大化することのできるふさわしい「関係性」を、ネタの中に構築できたからなのではないか。

そういう意味では、どんなに魅力的な「個」があったとしても、「関係性」によってはその「個」がまったく生かされず、むしろ殺されてしまうこともある。「クラスではつまらないけど、塾では面白い奴」みたいなケースもけっして珍しくはないわけで、そういう「関係性」の力というのはなかなか自力で見出すのが難しく、そこに面白さとつまらなさの原因があるということに、本人は気づきにくいのではないかと思う。

さや香のようにボケとツッコミを入れ替えて成功する、という極端な例もあるが、そこまで明確なシフトでなくとも、ちょっとした「関係性」を見直すことによってネタが劇的に面白くなったり、わかりやすくなったりすることはあるのだろうな、と考えさせられた。

その「キャラクター」と「関係性」がすっかり認知された状態で迎えた最終決戦に関しては、正直たくろうの圧勝でだったと思う。

それでは以下、登場順に。


ヤーレンズ
「そろそろ結婚したい」という軸はいちおうあるものの、実質的には彼ららしい小ボケの連射&乱射。

だが序盤の「既婚者トーマス」というフレーズが、たしかに言いたくなるラインではあるがややありがちであったため、彼らの言語センスに信頼してついていくというよりは、そこでややガードを上げて半身に構えてしまった。

最終盤、胸ぐらを掴んで「アンガーマネジメント」!と叫んだところでピークを迎えるという尻上がりの構成。だがそこに至るフリや流れが特に準備されていたわけではないので、ややもったいなくも感じた。前半で結婚できない理由として怒りに関する問題設定があれば、このフレーズはもっと効いたはず。

そういう意味では設定の縛りが緩すぎるというか、もはやあってないようなものなので、もっと軸を守ったほうが爆発力につながる予感はある。しかしそうなると彼ら特有の「乱れ打ち感」が弱まる可能性が高く、その散らかり具合、ボケの無駄遣いっぷりこそが彼らの個性であると考えると、むしろ虻蜂取らずになる可能性もあるか。


【めぞん】
小さいほうが卑屈視点から喋りまくるウエストランド型――と思いきや、中盤「逃げろ!」のひとことをきっかけに、状況が反転するという劇的展開。前半のすべては強がりであったことが判明する。

審査員のあいだでも話題になっていた後半の歌唱パートに関しては、やや逃げたように感じられた。たしかに有名曲を引用することにより、構成の完成度は上がったように感じるが、そのぶんだけボケるチャンスと時間が削られてしまっていた。

ここで笑いの数よりも完成度のほうを選び取るのもまた個性だとは思うが、その方法はこの大会向きではないかもしれない。


【カナメストーン(敗者復活枠)】
「ダーツの旅」で村人と仲良くなる自信がないという、お笑い好きというよりはテレビ好きに向けたややニッチな設定。

お馴染みの音楽の使いどころを間違っていたり、ワイプの所さんが共演者に服をあげていたり、『時をかける少女』の走りかたで馬鹿にしてくるあたりは面白かったが、それぞれ単発で大爆発には至らなかった。


【エバース】
一本目はドライブデート。ありがちな設定かと思いきや、「町田に車をやってほしい」との無茶振りが発動する。「町田は人間の中では車っぽいほう」と言われてなぜか少しだけ腑に落ちる不思議。

基本的には佐々木が妄想を勝手に展開させて、町田がそれにひたすらつきあわされるというブラックマヨネーズもしくはチュートリアル型に見えるが、途中で町田が「思われねぇよ実際は!」と我に返るところで二人の関係性が急激に揺らぐ。

全体を通して、佐々木が町田を泳がせるその手綱さばきの押し引きが絶妙で、二人の距離が近づいてくるとちょっと手を離してみる、というような繊細な操作を終始巧みにやっている。

中盤からはピークが続くためひとつひとつのボケがホームランには見えにくいが、実際にはずっと長打が続いている状態。そのうちにどっちが狂ってるのかもわからなくなってきて、もしかしたら人間も世界も、そもそも世の中全員が狂ってるのかもしれないと思えてくるところに、芯を食った純文学的な面白さがある。

そして一位通過で迎えた二本目は、一本目に比べると正直やや弱かった。そもそもトップ通過でありながらラスト出順を選ばなかったのも、なんだか弱気な選択に映った。

エバースらしい面白さはあったが、町田に腹話術の人形をやらせるという設定は、一本目の自動車に比べると無理が少なく、飛躍の度合いが小さいと感じてしまった。ルンバ四台に手足を乗せてうまい棒の破片を吸い取りながら走っている絵に比べると、普通に人型であるぶんだけ想像上のインパクトは弱まる。

しかしだからといってこちらを一本目にやっていたら、果たして最終決戦に残れたかどうか。昨年の高レベルなネタで二本目に残れなかったことを考えると、強いほうを一本目に持ってきたくなる気持ちはわかる。

逆に言えば今回の一本目と同レベルのネタを二本揃えれば、むろん相手にもよるが優勝の可能性はかなり高まるということが証明されたとも言える。

今年のたくろうの二本目のハマり具合を考えると、一本目と同レベルであってもクオリティというよりはタイプ的に厳しかったかもしれないが、引き続き優勝候補の筆頭であることは間違いないだろう。


真空ジェシカ
エバースと同じく優勝候補であり、クオリティは安定しているが、逆に見慣れてしまっている感もあり。

ところどころ単発の時事や芸能ネタが入ってくるのは彼ららしくもあるが、どうも世界観の邪魔になっているような気がしてきた。

基本的に単発の大喜利回答を連打する形になるため要素を縦に積み上げていく感覚が乏しく、どうしても物語の縦軸が強いネタと勝負すると不利になるというのは例年どおり。

もっと構成のしっかりしたネタをやってほしいという観客のニーズをひしひしと感じるが、そこにおもねらずに自らのスタンスを貫いてほしいという気持ちもなくはない。


【ヨネダ2000】
「百万円目指してバスケットボールをドリブルせよ」という悪夢のような謎設定。ルールもよくわからないままゲームはスタートする。

そこへなぜか松浦亜弥が邪魔しにきて、高音が出るかどうか、という別軸もいつのまにか加わってくる。するとむしろこの別軸のほうが気になってきて、最終的には達成感まで感じさせてくれるというねじれた構図。

歌も含めて繰り返しの要素が多いので、全体に無駄が多いとも言える。めぞんのネタと同様、曲を使用することに関しては、やはりオリジナルのボケが減るというデメリットのほうが大きいかもしれない。


【たくろう】
一本目は「リングアナをやってみたい」というひとことから、説明不足のまま設定に巻き込まれていく。明確な許可を得ないうやむやな混乱状態のまま、なし崩し的に無限大喜利状態へと突入してゆくプロセスがまず面白い。

言い出しっぺのきむらバンドのほうがいかにもツッコみそうな雰囲気を出してはいるが、実際にはツッコまずに赤木を泳がせ続ける。そして溺れ続けている赤木に助け船を出すことなく、自らの船をグイグイと前に進めていく。

しかしきむらが相方を無視しているのかといえば、どうやらそういうわけでもない。彼が赤木のリクエストに応じなることはないが、いちおう会話はそれなりに成立して前に進んでいる。しかしそれは通じている風だというだけで、実際に通じているわけではない。その振りまわし、振りまわされながらつきあっていく距離感が、かなり独特かつ絶妙であると感じた。

そしていざ無限大喜利状態に入ると、おどおどしながらも「BBQウインナー係」「KSD京都産業大学」等の強いワードを連発してくる赤木。実際には台本があって言うことは決まっているはずなのに、何が飛び出してくるかわからないガチャ的なスリルが終始漂っている。そうなると笑いに加えて「スリル」という別要素まで加勢してきて、スリルもまた笑いの一要素であったのかと気づかされる。

二本目も「ビバリーヒルズに住んでみたい」というきむらの願望に赤木が巻き込まれる形。最初はいやいやながら、途中からちょっと調子に乗って生き生きしてきて、よくわからない「ビバリーヒルズあるある大喜利」へ。

観ているうちに、むしろきむらのほうが頭がおかしく見えてくるというあべこべな構造にもなっている。ツッコまずに相手の力を利用してグイグイ話を進めていく、あえて対話を成立させずに欲しいところだけもらうその距離の取りかたが見事。

ちなみに赤木は元和牛の水田と松尾スズキに、きむらは南こうせつに似ていると思った。二本目の開始時点ですでに彼らの空気が完全にできあがっていた。圧巻の優勝。


【ドンデコルテ】
一本目はデジタルデトックスの有用性を説きながら、突如自らの弱さを認めて「私はこんな自分と向きあうのが怖いんです」と言い出す早めの急展開。

こんなに早くピークを持ってきて大丈夫かと不安になったが、以降むしろその屁理屈男の独壇場に。怪しげな自己啓発セミナーめいたその「全裸監督」を思わせる流暢な口ぶりは、嘘くさい一方である種の正論でもあり。不思議と惹きつけられるものがあった。

二本目になると、今度は町の名物おじさんのデビュー直前の状態であると言い出す。といってもなんだかわからないが、なにやら光って走ることにしたと。

そこからはやはり彼の独壇場で、しょせんは名物おじさんの話と思って聴いていたところへ、突如政治的要素を投入してブチ切れてみたり。

表情も感情も口調もくるくると切り替わる変幻自在の演説で、くだらなすぎて真面目なんだか、真面目すぎてくだらないんだか、ほかとは違う唯一無二の空気感を放っていた。


【豪快キャプテン】
「小さい鞄が欲しい」という願望から「小さいのよりは大きいのが欲しい」と展開し、その結果「ポケットパンパン」というフレーズを押してくる情報量少なめの漫才。

一点突破にしてはややフレーズが弱く、逆によくこれだけの素材で最後まで持っていったなとある種の腕力を感じた。


【ママタルト】
番組がつけたキャッチコピー〈じゃあ、あんたが太ってみろよ〉が秀逸で、そればかり気になってしまった。

ツッコミは良いのだが、ツッコミのためにボケが用意されているような印象。先にツッコミから作っているのだろうか?

ボケがツッコミの範囲内からはみ出さない感じが物足りず、ツッコミの声量に見合う地点までボケが飛躍してほしいと感じた。


radiotv.hatenablog.com

『キングオブコント2025』感想~「多様性」と「笑い」の狭間で~

今年は決勝ラインナップのバラエティを重視したのか、かなり突飛な設定や切り口のコントが多かった。おかげで例年より設定のかぶりが気になることはなく、飽きにくい番組の構成になっていたように思う。

しかし一方ではフィクション度の高い振りかぶった設定に対して、ディテールや後半の展開が物足りなく感じられるネタも見られた。この点は、ある程度トレードオフの関係にあるのかもしれない。

結果的に、パンチのある設定が多かった割には、一本で他を圧倒するほどの飛び抜けたネタはなかったように思われ、そうなればこれまでコンスタントに結果を出してきた実力者が優勝するのも納得がいく。

それと今回改めて気になったのは、ご時世的にだんだんと「強者の笑い」が難しくなってきているという点。それは多くの場合、「ハラスメント」的構造を前提としているがゆえに、「弱者」の立場に一瞬でも観る側の思いが至ると、たちまち笑いよりもうしろめたい気持ちのほうが水を差してしまうというリスクを孕んでいる。

日常に潜むこの「ハラスメント」的構造をなんの疑問もなしに前提として採用してしまうと、いくらその上に乗っかったネタが面白い展開を見せたとしても、視聴者の中には常にそれが根底としている価値観の部分に疑問が生じ続けることになり、「これは本当に笑ってて良いのだろうか?」としばしば笑いを躊躇させる事態になってしまう。

そうなると笑える構造を作るためには、その場に「強者」と「弱者」がいたとして、その外側にフラットな視点を用意して両者のズレを客観的に描き出すか、あるいはむしろ「弱者」側に攻撃の主導権を委ねるか、ということになってくる。

多様性を前提とする社会、に実際なっているとまでは言わないが、少なくとも常にそれを意識するような状況になっている以上、もはや逆サイドの立場にいる人間の存在を無視することも軽視することもできない。

そうなると笑いの基盤となる条件設定がかなり難しくなり、演者と視聴者のあいだでなんとなく共有していると思っていた感覚が、実のところ全然共有できていなかったりということも頻繁に起こる。

それはそれで不自由で窮屈な状況だとも思うし、より自由な発言や笑いを求める気持ちは常にあるが、しかしそのような多様性を皆がすでに知ってしまった以上、他者の価値観について気にしないことはもはや不可能であるというのも事実。

こうなってくると、作り手の側としては視聴者にどうやって笑いに集中してもらう状況を設定するのか、そして笑いを躊躇させる要素に対してどのように取り組み、中和し、あわよくば取り込んでいくのかというのが、これからさらに必要になってくる「笑いの基本姿勢」であるのかもしれない。

それでは以下、登場順に感想を。


ロングコートダディ
昨年の準優勝コンビで優勝候補の筆頭。

一本目は少年と地底人モグドンの交流を描く『E.T.』的設定。序盤に暗転が続くことで流れが細切れになり、平坦な前フリの時間が続く。

そこへあらゆる会話に「いや」「でも」といった否定的な言葉から入ってくるモグドンの癖を少年が指摘するところで、一気に物語の核=テーマが見えてくるという巧みな構造。ここに共感の入口が言葉によって作られる。

言葉に対する感覚の鋭さは流石だが、序盤をもう少しスムーズに、終盤にもうひと盛り上がりほしいと感じた。最後にもうひとひねりして、モグドンの否定形が反転して大きなプラスに作用するか、あるいは行くところまで行って収拾がつかなくなるラストまで行ったらもう一段面白くなりそうだが、そうなると尺が足りなくなるか。

二本目はベンチで泣いている警官と「言語化」が口癖の女。

こちらもかなりスロースタートなネタで、後半に女が「ほら、これ、なにかしらの罪でしょう?」と言って下着姿になったところで明確に展開のスイッチが入る。

そこから衝撃的な発砲で終わるという、終盤にインパクトを持ってきた劇的展開。まさに最終決戦のラストにスパートをかけて締めくくるために作られたような後ろ重心のネタで、鮮やかに勝ちきった。

個人的には一本目と同様、フリのために笑いが犠牲になっている序盤の冗長さがやや気になった。

ここでもっと警官が言語化できない状況を丁寧に作って、観ている側が「それちゃんと言語化しろよ」と警官に自然とツッコみたくなるようにしたうえで、女が警官の言いたくて言えないことを鮮やかに言語化してみせる、という技を前半に見せておくと、オチ台詞の「言語化できない」がより効いてきたのではないか。

彼らに関しては、あとはいつ勝ちきるかというだけの状況であったので、足りなかったのは二本目の終盤にピークを持ってくるというその些細な戦略だけであったのか、と腑に落ちる思い。


【や団】
一本目では町中華に金に物を言わせる客が現れ、最後の一品となった餃子がたちまちオークション状態に。や団は相変わらず、日常的風景になに食わぬ顔した狂気を紛れ込ませる配置センスが際立っている。

異様にビジネスライクな駆け引きの上手い男があれよあれよという間にただ食いの権利を手に入れ、拾い食いまでする展開にグイグイと巻き込まれていく楽しみ。

そのスピーディーな展開の先に、「ただ食いして得する」以上の何かを期待したが、そこまでの展開はなかった。それまでの行為がすべて裏目に出て男になにかしら罰が当たるとか、あるいはこの男には実は別の狙いがあったことが明らかになる、などの奥行きがあれば頭ひとつ抜け出ていたような気も。そこも時間との相談にはなると思うのだが。

二本目は居酒屋の常連客と口の悪い大将。

しかし予想に反して、大将は口が悪いだけでその言葉に愛も人情味もないという意外性。

そうなると後半、実はいい人であることが判明するという展開もあり得たが、むしろ悪さをさらにエスカレートさせる方向へ。ならばその度あいがもっと取り返しがつかないほど行ききってしまうか、もしくは大将の辛口の裏にある背景が明らかになるといった展開が欲しいような気もするが、それにしても彼らは毎度絶妙な設定を持ってくる。


ファイヤーサンダー
毎度安定して質の高いネタを用意してくる彼ら。

今回は謹慎明けのタレントが復帰一発目の法律バラエティ番組に出演するという設定。序盤のフリが丹念で長めなのもいつも通りの感触。

中盤でタレントが殺人犯だと明らかになるが、本人はスキャンダル明けのテンションで来ているという致命的なズレが発覚。ラストには「殺すぞ!」というフレーズが文字通りの説得力を持ち、パネラーであるプロレスラーの伏線までをも巧みに回収しつつ、しっかりとまとめてきた印象。

これまでの彼らの作品同様、良くできたネタではあるのだが、状況が芸能界の内輪的であるがゆえに、共感要素がやや弱いように感じた。観る側が同じ芸能人であるかそれ以外かで、そこは大きく変わってくるところかもしれない。

あとはやはり審査員の山内が言っていたように、このブラックな内容をはたして笑って良いものかという疑問がどうしても浮かんでしまった。

実際のところ「罪を償った者の社会復帰(の難しさ)」というのもひとつの大きな議論のテーマであり、もちろんだからといってそれに笑いのネタで真面目に回答しろとまではまったく思わないが、しかしこういうテーマを取り扱った際には、観る側に少なからずその点に関して立ち止まって考える余地が生まれるというのは想定しておくべきであるのかもしれない。

ひと昔前であればたしかに、「こんな奴復帰できるわけないだろ」という価値観が皆の前提として大雑把に共有されていただろうし、いまだって実際に復帰できるとは思えないのも事実だが、しかし一方ではそれで本当に良いのかという議論もあるのはたしかで、テレビドラマやドキュメンタリーではそういったテーマを扱っているものも増えてきている。

そうなると、そこにひとつも疑問も抱かないほうがむしろ不自然ということになってしまうから、扱うからにはなにかしらのエクスキューズがどうしても必要になってくる。少なくとも、どちらかが正しくて、どちらかが間違っているという前提でざっくりと話を進めてしまうのは、ちょっと無理があるということになってしまう。

ここは難しいところだが、同じテレビでもドラマ界ではすでにそれは前提になっているように見える。観る側がそれについて考えることをやめない以上、やはり作り手も考える必要があるということになるだろう。


青色1号
注目の三人組。ネタの設定は、オフィスの休憩スペースで繰り広げられる部長の不倫スキャンダルの話題。

いかにも陽キャな感じの先輩に、リアクションが悪すぎる後輩と、逆に上手いこと食いつきすぎるもう一人の後輩。

「先輩が後輩二人にそれぞれ話をして二人のリアクションの差を見せる」という構造になっているため、必然的に同じ内容の説明を繰り返すことになり、その部分に時間を消費してしまっていたのがもったいないと感じた。本来ならば審査員の小峠が言っていたように、もっと三人のグルーヴが生まれるところまで行ってほしいところだが、時間的に難しかったのだろう。

そしてここには明確に、「強者」と「弱者」の構図がある。ゴシップに興味のない後輩のほうが自然と「弱者」として扱われているように見えるが、そこには共感できないという者も少なくないだろう。

昔の体育会系や、あるいはいまの芸人界にもそういう部分が残っているのかもしれないが、いまどきの一般社会の基準に当てはめてみると、これは「ハラスメント」の構図になっているようにも見える。実際のところ、仕事以外の会話につきあう必要などないといえばないし、社内ゴシップに疎くても仕事ができる奴はいくらでもいるわけで、会社的にはそちらのほうが優秀な人材として評価されているかもしれない。

なんてことを言うといかにも窮屈で、面倒なこと言うなよと思われるかもしれないが、実際のところそのくらいのところまでは、みな他者の立場を当たり前のように考えるようになってきているのも事実。視聴者の側もただ無邪気に受け身で笑っているわけではなく、けっこういろんな角度からものを考えながら観ているのだということを、改めて演者側も認識しておく必要があるだろう。


【レインボー】
一本目は、合コンの相手が女芸人であった場合。それもツッコミ過多でまわすのが上手すぎる関西女性芸人であったなら。

短い時間に会話の展開を凝縮した密度の高いドラマといった感じで、そこにはいろんな種類の面白さがあるのだが、純粋に笑いだけで評価するのが難しい。

設定が関西芸人というある種極端な世界なので、あるあるがやや一般の共感を呼びづらい面も。

二本目はヒルズ系社長とギャンブル系グラビアアイドル。二人のあいだで交通費を巡る駆け引きが延々とおこなわれる。

BGMでデスゲーム的な雰囲気を出してくるが、その漫画的設定に乗れるかどうかが、このネタの評価の分かれ目になったように思われる。

個人的には漫画ではもはやありがちな設定であるがゆえに、いまいち乗ることができなかった。そうなると、リアリティを感じるのが難しい。


【元祖いちごちゃん】
スーパーの試飲でいきなり漂白剤を飲まされる、という衝撃的なスタート。

それでいて「なんで飲んだの?」と店員のほうが訊いてくるなど、明らかに不条理な展開。

異様に会話の間を取ってみたり、途中で「指示役」という物騒な言葉を使ってみたりと、いろんなところに常識とのズレを生み出していて、どこまでついて来られるか視聴者を試しているようでもある。

見た目のバランスも含めて「スリムクラブ東京ダイナマイト」のような印象を受けたが、正直「シソンヌ」みたいな小洒落たコンビ名であったなら、もっとウケていたような気もしないでもない。


うるとらブギーズ
大学を辞めてミュージシャンになると言い出した息子と、それに反対する父親の会話。

まもなく互いに言い間違えを連発してゆくことになるのだが、冒頭で父親のほうが甘く噛んでしまったため、わざと噛んでいるのかどうかが序盤はしばらくわからなかった。

言い間違えかたのルールがなさすぎるのも混乱を招く一因で、そのせいで「なんでもあり」な状況になってしまい、何が面白くて何が面白くないのかの基準が見えないまま話が進んでしまった。せめて後半にかけて、なにかしら法則性が見えてきてほしかった。

発想は面白いのだが、さすがに技巧的すぎたか。


【しずる】
長すぎるイントロでお馴染みのB’zLOVE PHANTOM」に合わせてベタなヤクザ映画をただひたすら展開するという荒技。『千鳥のクセスゴ!』というネタ番組で観たときには衝撃を受けたものだが、そのフルバージョンということになるのか。

コントというよりは秀逸な「企画」という感じで、一本取られた感は凄いのだが、一曲まるまるとなるとさすがに間延び感は拭えず。

そもそも歌詞で選曲しているわけでもなさそうだが、歌詞とストーリーがぴったり一致する瞬間がいくつか欲しいと思ってしまったのは事実。

しかしここにこの革新的なネタを当ててくるその挑戦的なスタンスは実にしずるらしく、点数とは無関係に彼らへの信頼度は確実に増した。


【トム・ブラウン】
犬の尻にできた人面おできが喋るという、いかにも彼ららしい突拍子もない設定。

その見た目のインパクトが強いぶんだけ出オチ感が強く、設定を使い切れていない印象が残った。

おできが犬本体を乗っ取っていくその手順が、緻密に描かれていくとより面白くなるような気がした。というか漫才であれば、彼らはそういったところまで徹底して突き詰めるのではないか。トム・ブラウンの本質とは、見た目に反してその粘り強く緻密な計算にこそあると思っている。

そもそもアクションが多いコンビであるにもかかわらず、やはり漫才のほうが彼らの主戦場であると改めて感じた。


【ベルナルド】
カメラと一体化している「カメラマン」。人間とカメラのハーフだという。

しかしわりとリアルな作りに見えたせいか、「カメラマン」の姿にそこまでの驚きはなく。「映画泥棒」の広告でそういう姿を見慣れているせいかもしれない。ここはあえて、もっと手作り感あふれる雑な作りのほうが良かったか。

後半は三脚に内臓と仕込み刀が詰まっているなど、意外と奥の手が多く驚きがあったが、前半「カメラマン」のルックスに頼りすぎたことが、最後まで足を引っぱってしまったように感じた。


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