~ 追憶 オリヴィア メアリー 氷鷹 ~

わたしは天井を見ていた。
それが少し遠のいて、
身体に衝撃。
予想していなかったことが重なり、
受け身が取れずに腰から落ちた……。
教室の床は硬く、
思っていた以上に冷たかった。
少年は、わたしを見て笑っている……。
投げるつもりも、折るつもりもなかった。
わたしは唯、
この少年の手首をキメて、
少し痛い目に遭わせてやったあと、
わたしの授業中に眠っていたことを
謝らせたかっただけだった……。
何が起こった?
わたしは今、
何故床からこの少年を見上げているんだ?
「お前……、その手首、どうなってんだ?」
わたしは少年の動きに注意し、
ゆっくりと立ち上がりながらそう言った。
床に打ちつけた腰よりも強い痛みが、
わたしの左足首に走った。
「ハ?」
あれで手首がキマらないわけがない。
この少年の手首、
可動域が普通じゃない……。
「わたしの授業で寝ていたことを謝りなさい」
「先生が謝ってよ」
「何故わたしが謝る必要がある?」
「僕が折角久し振りに眠っていたのを邪魔した」
なんなんだこの少年……。
「足払い」
「え?」
ドンッ
「ぐっ」
少年が「足払い」と言って放った左のローキックが、
わたしの右脚大腿外側広筋を捉えた。
少年が「足払い」と言って、
少しの間を空けてから膝を持ち上げたとき、
わたしを蹴ろうとしたのは解ったのに、
全く反応出来なかった。
しかもこの少年の脛……、
鉄筋入りか?
タイ人の選手みたいだ……。
「足払い」
ドンッ
「ぐっ」
く……、そ、なんなんだこいつ……、
キックの軌道が全く読めない……。
「足払い足払い足払い」
ドッドッドンッ
わたしは五発目のローキックで、立っていられなくなった。
わたしがダウン?
嘘でしょ?
しかもこんな子供に?
わたしが倒れたあとも、
少年の蹴りは止まらない。
ダメだ……、全然ガード出来ない……、
屈辱的だが耐えきれず、
わたしは亀になる……。
けれどそれでも無駄だった。
少年は、亀になったわたしの、
ガードの隙間を丁寧且つ的確に狙い、
しかも一発一発がしっかり重い蹴りを、
休まずに連続で打ち込んでくる……。
そんな馬鹿な……、
本当になんなんだ……、
なんなんだこの少年は……。
「ねえ先生、謝らないと、蹴るの止めてあげないよ?」
「ふっ……、ふざけるな……」
「…………、
OK武仲ガムテープ取って」
「え?おっ、おう……。ほら……」
「サンキュ」
少年がわたしの手首をキメながら
ガムテープを巻き付ける……。
このキメかた……、
シロウトのものじゃない……、
手首をキメながら、
肘、そして肩まで、
しかもここまでしっかりと効かせられるのは……、
有段者の中でも、
上位の者だけだ……。
わたしは無様に床に押しつけられた自分の顔を、
動かすことすら出来なかった……。
気付けば足も、
合蹠の状態で固定されていた。
「ねえ先生?
もう謝ったら?
誠心誠意、泣きながら謝ったら、
もしかしたら赦してもらえるかも知れないよ?」
「…………」
少年がわたしのブラウスに手を掛け、ボタンをはずし始めた……。
嘘でしょ?
「ちょっ……、まっ、待って、ヤメテ……」
「ん?急にどうしたの?先生、
やっと少しはマシな喋り方が出来るようになったみたいだけど?」
少年が、わたしのブラウスのボタンをはずす手を、
一旦止めて、
そう言った……。
でも……、
「でも残念、
遅かったぁ…ハハ、
もう止めてあげられないよ?
タイムオーバー」
「え?ちょっと、
ちょっと待ってよ、
お願い......、
ちょっと待っって!!」
TO BE COMUGIKO

☆THE MUSEIGEKI☆

Don’t Think. Feel !!(・∀・)♡






TO BE COMUGIKO










