フィリピンで生活していると、誰もが一度は耳にするのが「バロット食べた?」という質問だ。多くの場合、ローカルスタッフや同僚がニコニコしながら勧めてくる。筆者も例外ではなく、「これを食べたら真のフィリピン通だ」と言われ、好奇心半分・怖さ半分で挑戦することになった。
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フィリピンで出会うローカルフード「バロット」とは
バロット(Balut)は、孵化途中のアヒルの卵をゆでた料理で、フィリピンの代表的なローカルフードだ。見た目のインパクトが強く、外国人には「フィリピンの納豆」とも言われる。つまり、味よりも“勇気”が試される食文化である。
筆者が食べることになったきっかけは、職場のローカルメンバーたちの勧めだった。彼らは筆者が挑戦することをとても喜び、「本当に食べるのか?」と笑いながら見守ってくれた。そんな彼ら自身も、実は好き嫌いがはっきり分かれている。おおよそ半分が「うまい」と言い、残りは「見た目が無理」と答える。中年層になるとコレステロールを気にしてあまり食べなくなるという。
値段・買える場所・孵化週数による味の違い
2025年現在、バロットは1個20〜30ペソ(約50〜80円)ほどで、マニラやセブの夜の屋台、ローカル市場などで販売されている。ほとんどの屋台が夜に営業しており、ビールのつまみとして人気だ。
孵化の進み具合によって味と食感が変わる:
- 16〜17日目:ヒナの形がまだはっきりせず、スープが濃厚でまろやか。初心者向け。
- 18〜19日目:ヒナの骨や羽の感触が少し出てくる。旨味が強く、最も人気のある時期。
- 20日以上:ヒナがほぼ形成され、見た目の抵抗感が強い。スープは苦みが出ることが多く、コアな愛好家向け。
実食レポ:味・食べ方・初心者が気をつけるポイント
筆者が初めて食べたのは18日目のバロット。殻の上部を少し割り、まず中のスープをすすった。鶏ガラスープのような滋味深い味で意外と飲みやすい。その後、中身を少しずつ取り出し、酢や塩をかけながら食べるのが定番だ。
見た目のハードルは高いが、味は悪くない。白身は固く、黄身は濃厚でコクがある。初めて食べる場合は、孵化16〜17日目のものを選ぶのが無難だ。照明の暗い店で食べると心理的負担が減り、酒が入っていると挑戦しやすい。
衛生面には注意が必要だ。人によっては、食後にお腹を壊して長引くケースもある。筆者の周囲では、1か月近く体調を崩した人もいた。原因はおそらく卵の殻表面の汚れや保管環境によるものと思われる。屋台で購入する場合は、殻を拭く・加熱直後に食べる・信頼できる売り手を選ぶなど、自己防衛が必要だ。
フィリピン人の“好き嫌い半々”事情と文化的背景
フィリピン人の間でも、バロットを好きな人と苦手な人はおおよそ半々。若い世代は「見た目が怖い」「SNS映えしない」と避ける傾向がある。一方で年配者は「スタミナがつく」「夜勤後に食べると元気になる」と語り、昔ながらの健康食として親しまれている。
バロットは単なる珍味ではなく、家族や仲間とのつながりを象徴する食べ物でもある。外国人が挑戦する姿を見て現地の人たちが笑顔になるのは、文化を共有する喜びがあるからだ。
外国人から見た人気と最近のトレンド
観光客や駐在員の間では、「一度は食べるべきフィリピン体験」として定番になっている。YouTubeやSNSでは“Balut Challenge”が広まり、勇気試し的な要素で人気を集めている。
一方で都市部では、衛生意識の高まりを受けて“クリーンバロット”の生産も進んでいる。伝統と衛生のバランスを取る動きが、現代フィリピンの食文化を象徴している。
まとめ:バロットは“文化理解の試金石”
バロットは、単なる珍味ではなく、フィリピンの文化や世代の違い、健康意識の変化を映す存在だ。日本で言えば納豆のように、食べることで文化の一面を理解できる食べ物といえる。
もし挑戦するなら、体調と衛生に気をつけながら、信頼できる場所で試してほしい。食べる勇気以上に、文化を尊重する姿勢が伝われば、現地の人たちは必ず喜んでくれるはずだ。