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ゲルマニア(Germania):ドイツ世界そのもの。民と国土の声
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イレーネ(Irene):平和の女神
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マルス(Mars):戦争の神
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メルクリウス(Mercurius):神の使者・吉報の伝達者
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ファートゥム(Fatum):運命・天命
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フランクフルト市:現実世界を代表する都市的視点
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合唱:民衆・共同体の声



今晩は、Chandosレーベルから2026年1月2日にリリースされた、エドワード・ガードナー指揮、ベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏による、ヨハネス・ブラームス作曲の交響曲第2番、交響曲第4番を収めたアルバムを聴きます。
収録曲は以下の通り。
ヨハネス・ブラームス
交響曲 第2番 ニ長調 作品73
第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ
第2楽章:アダージョ・ノン・トロッポ(同じテンポで、しかし優美に)
第3楽章:アレグレット・グラツィオーソ(ほとんどアンダンティーノ)― プレスト・マ・ノン・アッサイ ― テンポI
第4楽章:アレグロ・コン・スピリート ― トランクィッロ ― ますます静かに
交響曲 第4番 ホ短調 作品98
第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ
第2楽章:アンダンテ・モデラート
第3楽章:アレグロ・ジョコーソ ― ポコ・メノ・プレスト ― テンポI
第4楽章:アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショナート ― ピウ・アレグロ
演奏はベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮はエドワード・ガードナー。ベルゲン・フィルは、つい先日、デヤン・ラチッチのピアノとデ・フリエントの指揮で聴いたばかり。
柔らかさと芯の強さを併せ持つ弦楽器群、木管の個性がはっきりと聴き取れる透明な音色が特徴のオーケストラです。ガードナーはこのオケの首席指揮者。この楽団の音を知り尽くした存在。そしてこのコンビではすでにブラームスの1番、3番の組み合わせのアルバムが同じシャンドスから出ているので、これでブラームス交響曲全集が揃いました。
まずは録音はとてもナチュラル。誇張がなくて、それで弦楽器も木管も美しい。
オーディオの機器をまたちょっと足して、Gustard C16 というマスタークロックを入れてみたんですが、そうすると定位がものすごく良くなって、音の滲みが取れて、今までこういうナチュラル系の録音は埋もれがちだった音が強調されないのに自然に響いてきます。
さて、ブラームスの2番、大好きな曲です。柔らかく自然でブラームスのちょっと堅苦しいところもなくて。このガードナーの第1楽章は、一般に想像されがちな「のどかで明るいブラームス」に留まりません。冒頭の低弦による静かな動きとホルンの穏やかな呼びかけは、自然に流れるようでいて、実は細部まで精密にコントロールされているように聞こえます。。ガードナーはテンポを決して急がず、主題が育っていく過程を丁寧に描き出します。弦のレガートは厚みがありながら濁らず、木管の合いの手も控えめながら意味深く、牧歌的な表情の裏にある緊張感が常に感じられます。展開部では構造が明確に浮かび上がり、終結に向かう流れも誇張なく自然です。
第2楽章では、この演奏の美点が特に際立ちます。鮮やかすぎない録音、弦の深い呼吸、内省的なフレージング、そして音量を抑えながらも張りつめた緊張感。感情を前面に押し出すのではなく、音楽が内側から語り始めるようなアプローチで、ブラームス特有の「重く沈み込む哀感」が丁寧に掘り下げられています。中間部での表情の変化も自然で、全体として非常に格調の高いアダージョです。
第3楽章は軽快さと落ち着きのバランスが絶妙です。速く弾いて表面的な可愛らしさを強調することはせず、舞曲的な性格の中にある陰影をしっかりと保っています。プレスト部分ではリズムが引き締まり、コントラストが明確。再びテンポが戻った際にも、流れが断ち切られることなく、全体がひとつの有機体として進行します。
終楽章では、明るさと推進力が前面に出ますが、決して祝祭的に騒がしくなることはありません。弦のアンサンブルは力強く、金管もよく統制され、エネルギーは内側から湧き上がるように積み重ねられていきます。終盤はテンポを上げて盛り上げますが、決して節度を失わず、「陽気な交響曲」という通俗的イメージを超えた、成熟した喜びが感じられます。
続く交響曲第4番。こちらは第1楽章冒頭からやはり柔らかい響き。ガードナーはこの楽章を極端に感情的に煽ることなく、構造を冷静に提示しています。ただこのオーケストラと録音がとても暖かい音色のために、構造的な厳しさよりも柔らかさ、しなやかさが感じられますね。主題の性格をきちんと捉えてそれに合わせてテンポを変化させつつ、常に知的にコントロールされて、フレーズの終止が曖昧に流されることはなく、常に次の展開を予感させる緊張が保たれています。終盤の盛り上げ方も上手いですね。
第2楽章は古風な性格を帯びた音楽として、非常に落ち着いたテンポで進められます。ホルンの響きには温かみがあり、クラリネットを中心とした木管群も柔らかい響き。弦は透明で暖かい美しさと深く沈み込むような音色を保ちます。感情過多にならず滋味に溢れた雰囲気。常に暖かさを意識しているように感じます。
第3楽章は、響きとリズムは軽やか。分厚いドイツの響きというよりは柔らかで澄んだ音色。リズムは明確で推進力がありますが、常にコントロールされており、鋭さと品が両立しています。バランス的にはホルンを抑えてファゴットを出させてハーモニー感を出しているのが印象的。ホルンを木管として扱っていますね。変なアクセントや分厚く音を重ねるようなことがありません。極めてナチュラルな響きですが、後半には熱量が増していくのも聴きどころ。
この作品の核心とも言える終楽章のパッサカリア。テンポは極めてノーマル。主題が提示されて以降、変奏が一つ一つ積み重ねられていく過程が極めて緻密で明瞭、また第3変奏では弦をたっぷりと歌わせます。対位法的書法が音楽的必然として響きます。ロマン的な物語を語るのではなく、古典的な形式の枠の中でバランスを重視しながら作り上げている感じ。フルートのソロは澄んでいて感情過多にならないタイプ。トロンボーンのコラールも木管とバランスを取って全体の響きの溶け合いを重視していますね。重厚でありながら響きは濁らず、終結に向かって徐々に音楽を誠実に積み上げることによってクライマックスを作り上げているという感じでしょうか。
ということで、このアルバムは、ブラームスを「情緒的ロマン派」としてではなく、「構築の作曲家」として捉え直す演奏だと感じました。ベルゲン・フィルの透明度の高い暖かい響きと、ガードナーの冷静かつ深い解釈が結びつき、交響曲第2番と第4番という対照的な作品が、一本の思想で結ばれています。派手さはありませんが、繰り返し聴くほどに味わいが増す、非常に密度の高い一枚だと感じました。



ジムノペディ 第1番〈ゆっくりと、苦悩をこめて〉ジムノペディ 第2番〈ゆっくりと、悲しげに〉ジムノペディ 第3番〈ゆっくりと、重々しく〉単純化されたグノシエンヌ様式による小品眠りを誘う姿勢 第1番眠りを誘う姿勢 第2番眠りを誘う姿勢 第3番逃げ出したくなる旋律 第1曲逃げ出したくなる旋律 第2曲眠りを誘う姿勢「愛撫」冷たい小品 第1番冷たい小品 第2番冷たい小品 第3番グラーヴェ、コラール断片(補筆)不機嫌な囚人無題の小品 第1番無題の小品 第2番(補筆)無題の小品 第3番(補筆)短いコラール 第1番短いコラール 第2番短いコラール 第3番犬のための前奏曲 第1番(補筆)犬の前奏曲色あせた溜息(補筆)色あせた思い出 第1番「落書き」(補筆)色あせた思い出 第2番「毛」(補筆)色あせた思い出 第3番「再燃」夜想曲 第6番(補筆)夜想曲 第7番(補筆)夜想曲 第8番〈きわめて遅く〉(補筆)夜想曲第9番のためのメモ(第1)(補筆)夜想曲のためのスケッチ 第1番(補筆)夜想曲のためのスケッチ 第2番(補筆)夜想曲のためのスケッチ 第3番(補筆)夜想曲 第4番(補筆)夜想曲 第1番(補筆)夜想曲 第2番(補筆)夜想曲 第3番(補筆)題名のないメヌエット夜想曲第9番のためのメモ(第2)(補筆)フーガ(補筆)子どものための小品「ロビンソン・クルーソー」子どものための小品 第2番子どものための小品 第3番その他の子どものための小品 第1番その他の子どものための小品 第2番その他の子どものための小品 第3番その他の子どものための小品 第4番小さなカノン(補筆)カノンの主題
演奏は、イタリアのピアニスト、アレッサンドロ・シモネット。

