世界の絶景温泉

世界の見知らぬ温泉を探して旅しています

A41 中国の世界遺産、世界最大級の「元陽棚田」と周辺の温泉


【世界最大の棚田を見たい】

前回に続き、行きたかった世界遺産を訪ねたついでに回ってみたローカル温泉の紹介です。筆者は棚田が好きで、日本でも各地の棚田を訪ねましたが、中国にはケタ違いに広大な棚田があります。南西部の雲南省南部にある紅河ハニ族イ族自治州元陽県の棚田です。少数民族のハニ族が千年以上に渡って築き上げてきた棚田の総面積は何と5400ヘクタール。東京都の足立区全体と同じくらいの広さです。以前は単に「元陽棚田」と呼ばれていましたが、「紅河ハニ棚田群の文化的景観」という名称で2013年に世界遺産登録されました。田んぼに水が張られた田植え前の時期がとても美しいというので、3月に訪ねてみました。省都の昆明で日本語を話せるドライバー付の専用車をチャーターして3日間の旅に出発です。

  棚田(中国語では梯田)は元陽の各地に点在しているため、数日かけてもまわりきれません。天候や時間帯によって、時々刻々と光の加減や美しさも変化します。代表的な展望スポットを何か所か訪ねましたが、まさに壮大な規模で感動しました。ただ、このブログの目的は温泉なので、棚田についての説明や感想は省略し、周辺の温泉について紹介します。

左:田植えが近づき苗代が準備されている
右:平地が少ないので新街鎮の町も斜面に発達した

棚田のある元陽県の温泉はかなりキレイ】

① 南沙温泉(紅河州元陽県南沙鎮千沖村)

棚田観光の中心地から40キロほど北の南沙鎮にある温泉です。最後の10キロほどは未舗装の悪路でした。南沙温泉は別名南沙熱水塘と呼ばれ、源泉温度は52℃。露天の温泉プールのほか、個室風呂、貸切の露天風呂が数多く並んでいます。ベトナムまで直線距離で50キロもない南国なので、周辺にはバナナの木が茂っています。聞けばこの土地の名産とのこと。無色透明の温泉ですが、露天のプールは藻が繁殖していて緑色の濁り湯になっています。これは遠慮して、貸切の露天風呂を利用しました。利用の都度、湯を入れ替えてくれるので、しばらく待ちます。入れ替えたばかりの湯はきれいで、散った椿の花が湯面を漂い、バナナの木々を見上げながらの入浴を楽しみました。

ただ、3月でも気温が30℃以上と暑く、しかも温泉は40℃以上あるので、長湯はできません。ずっと加水したままで、浴槽から入ったり出たりを繰り返しました。

 左:バナナの木に囲まれて浸かる露天プール
右:貸切り露天風呂の湯はその都度入れ替える

② 紅葉温泉(紅河州元陽県南沙鎮菱角塘村)

  南沙温泉から25キロほど東。南沙鎮の中心近くにある温泉施設で宿泊もできます。緩やかな下り坂を進んだ先の菱角塘村の最奥に温泉がありました。背の高いサボテンのような木々がたくさん植わっています。個室風呂とひょうたん型の露天プールがありますが、どちらもとても清潔な感じです。湯は無色透明、無味無臭で36~37℃。個室風呂はその都度、湯を入れ替えるため、露天プールに浸かって待っているお客さんが多いようでした。あまり特徴のない温泉でしたが、棚田観光の拠点として温泉ホテルに宿泊したい場合は利用価値が大きいと思います。ただし、中国語以外は通じません。

左:簡体字の「叶」は「葉」の意味
右:ぬるめの温泉プールはとても清潔だ

建水県の田舎には素朴な温泉が多い】

  雲南省の省都昆明から南の元陽までは約380キロ。飛行機を使うほど遠くないので、車で5時間かけて移動するツアーが一般的です。高速道路を利用せず、建水県を経由するとさらに時間がかかりますが、インパクトのあるローカル温泉が多いようなので、片道はこの経路を利用しました。元陽が棚田で有名になったのと対照的に、昔ながらの風情の温泉が多く残っていました。中でも特に印象的だったのが温塘温泉(別名:温塘村熱水塘)です。

 

③ 温塘温泉(紅河州建水県李浩寨郷温塘村)

  昆明への道を北上し、李浩寨郷の中心から温塘村への脇道に入ると、いきなり土壁の小集落の中を行く狭い未舗装路が続きます。水が少ない土地らしく、すっかり乾燥した道路からは砂埃が常に舞い上がっています。6キロ走ってようやく温塘村に到着。緩やかな段々畑の先の小さな村では、水牛をあちこちでみかけます。田植えに先立つ田おこしのために水牛が今でも活躍しているのです。丘の中腹に開けた村の正面に小高い山がみえますが、温泉はその小山の向こうにあるとのこと。車では行けず、あぜ道を15分歩いていく必要があります。途中、農耕用の水牛を連れた家族連れと何度もすれ違いました。

 

左:田んぼに水牛を連れて行く少年
右:農作業用の機械はなく、今でも水牛が重要な担い手だ
左:レンガで壁を作っただけの露天風呂
右:壁の中の温泉はこんな感じ

丘の向こうにはレンガを積み重ねて壁を作っただけの素朴な露天風呂がありました。中央の壁で2区画に仕切られており、右手が男性用、左手が女性用です。40℃弱のちょうどよい温度ですが、浴槽の底が滑りやすいので注意が必要です。足を動かすと、石畳の隙間から温泉が絶え間なく湧きだしています。まさにお湯が湧きだす場所を壁で囲っただけの「足元湧出湯」で感動します。

まもなく学校帰りの中学生くらいの子どもたちが三人やってきました。最初は温泉の脇の沼地でカエルを捕まえて遊んでいましたが、やがて汚れた服のまま温泉プールに飛び込みました。服の洗濯も兼ねていると笑います。日本に比べて驚くほど子どもっぽく、屈託のない笑顔でした。夕方になると村人が順番に入浴にやってくるとのこと。他ではなかなか得られない温泉体験に大満足でした。

左:学校帰りの子供たちがやってきた
右:しばらくは温泉脇の沼地でカエルを捕まえるのに夢中

 

左:足元湧出温泉の湯量は豊富で、湯は短時間で入れ替わっていく
右:このあたりの集落には独特な形状の住居が並んでいる