温泉博物館 名誉館長の 温泉ブログ

  温泉の科学や温泉現象について、わかりやすく解説します

「入浴者心得」に温泉の本質をみる

新年おめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

モール温泉を湛える鹿児島県「前田温泉」の浴室

鹿児島県川内高城温泉の共同浴場

昨年は、地元で愛される共同浴場にたくさん浸かることができ、改めて温泉のすばらしさを再認識することができました。多くの共同浴場には「入浴者心得」のような看板が掲げられ、高い所から入浴者を律していました。

宮崎県えびの市「亀沢共同浴場」の「入浴心得」

じっくり読むと、「みんなで愛すべき温泉を大事に大事に守りながら恩恵にあずかっていこう」という「本気」が伝わってきます。

「湯に入る時は不潔な洗い落とすこと」

そう、不潔な洗い落とすのです!

お湯は絶対に汲取らぬ事。但しお産の場合はその限りにあらず

すごいですね。それほど古い看板のようには見えませんが、自宅でお産をし、ここからお湯を汲んで行ったのでしょうか。重曹成分の強い真っ黒なモール温泉でしたが、この真っ黒な温泉の産湯に浸かったのでしょうか。

「浴場を子供の遊び場にしない。子供を持つ親はお互いに注意すること」

「お互いに注意し合える」共同浴場のような場でこそ地域の教育力が発揮されてきたのでしょう。こういったコミュニティーの中でのしつけは大切ですね。今の世の中で大きく欠けていることのような気がします。

鹿児島県「前田温泉」の「入浴者心得」

「十二才以上の男女は混浴しないこと」

混浴してはいけません!最近は子どもの異性の浴室での入浴が許可される年齢もだんだん低くなっているようですね。

「浴槽内にて石鹸、糠、洗粉等を使わないこと」

それにしても浴槽内で「糠(ぬか)」「洗粉(あらいこ)」を使わないって、今ではあまり想像がつきませんね。私は洗粉(あらいこ)という言葉をこの看板で初めて知りました。

「浴槽内にて義歯を洗はぬこと」

そんな輩がいらっしゃったから、このような注意が促されているのですね。

最後に、この看板、かなり古い物とは言え、「精神病者」が入浴お断りとなっているのはいたたまれません。

鹿児島県「菱刈温泉」の「入浴者心得」

ここは、混浴禁止が7才以上に引き下げられています。そして、この温泉もまた浴槽内にて石鹸、糠(ぬか)、洗粉(あらいこ)等を使用してはいけないと明記されていますね。糠とか洗粉というのはそんなにメジャーなものだったのでしょうか。

とにかく、共同浴場は本当に大切な場であったからこそ、みんなで大切に守ったのですね!

いつまでも温泉が庶民のものでありますように!

そして、富裕層のためのものになりませんように!

 

私も「入浴の心得」を遵守して温泉の恩恵にあずかる所存でございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

1杯20万円の「カニ」を見た!

海の温泉「皆生温泉」のこと

鳥取県の皆生(かいけ)温泉は「海の温泉」を代表する温泉の一つです。海底から自然湧出する温泉が発見され、紆余曲折を経て温泉開発が進められ、山陰地方最大級の温泉街が形成されるようになりました。目の前には美しい日本海が広がります。

日本温泉科学会監修『図説日本の温泉 170温泉のサイエンス』に、皆生温泉の砂浜の消長に関する興味深い内容が記載されていました。

江戸時代に、皆生温泉を河口とする日野川の上流域で、花崗岩中の砂鉄を取り出す「タタラ製鉄」が盛んに行われたそうで、そこから排出される膨大な量の砂が河口まで運ばれて、現在の皆生温泉の前の浜に堆積し続けました。そんな砂の流入によって海岸線が年間3mほど沖に前進し続けたといいます。ところが、大正時代にタタラ製鉄が中止になると砂の流入がなくなり、砂浜は反対に侵食されて小さくなっていきました。海岸線は結果的にトータルして150mほども後退し、温泉旅館に迫りました。そして海岸付近の泉源や旅館が破損するなどの影響が出始めました。そのため、海岸の侵食を止める対策(離岸堤や陸繋砂州の設置)がなされ、現在に至っています。下の写真は旅館の窓から日本海を撮ったものですが、砂浜の幅は狭く、海岸線が目の前に迫っていました。

皆生温泉のホテルの窓の真下に迫る海岸線

海の温泉旅で「カニ」に驚く

皆生温泉からほど近い境港の市場にはカニがいっぱい並んでいました。

その一角にあった水槽の中を覗くと、一匹の生きたカニが存在感を示していました。値札を見て「2万円か、高いなあ」と思ったら、よく見ると一桁違っていました。20万円でした。

一匹20万円の最高級ブランド松葉ガニ「五輝星」

「五輝星(いつきぼし)」とは松葉ガニズワイガニ)の最高級ブランドだそうで、これ以上の値段で取引されることもあるそうです。

甲羅には黒い「カニビルの卵」がいっぱいついていますあえてはがさないのは「脱皮してから時間が経っていて身入りがいいよ」というアピールのためです

境港は何と言っても庶民の味方「紅ズワイガニ」の水揚げが日本一です。昔は安かった紅ズワイも、最近は結構な値段がついています。

市場に並ぶ真っ赤な「紅ズワイガニ

今から35年ほど前に、2年間新潟県に住んでいたのですが、その時、飲み屋で出会ったかつて漁師をやっていたというご老人から「紅ズワイなんてまずくて食べないので、畑に蒔いて肥やしとして使っていた」「それでわしらは〔肥やしガニ〕と呼んでいた」という話を聞きました。「それを道端で売ったら、売れたので、みんなが売り出した」そうです。あくまでも聞いたお話です。酔った勢いで少々かっこつけて話されたのかもしれませんね。名誉のために言っておきますが、紅ズワイもおいしいですよ。

2年ほど前に「やっかい者」の「オオズワイガニ」が大量に網に入るようになって駆除に困っている」というニュースをやっていましたが、今ではしっかり「激安のカニ」として市場に出回っています。庶民の「カニへのあこがれ」の賜物です。それっぽい形をして「カニ」と名前がついていれば、それでいいのです!

皆生温泉の旅館のバイキングにあったカニ

その晩のホテルの夕食のバイキング、案の定、ゆでた山盛りのカニが鎮座していました。「本日のカニは ズワイガニ」とありました。「オオズワイガニ」の日もあるようです。翌日の出雲のホテルでも山盛りのカニがありました。名前は「トゲズワイガニ」と書かれていました。トゲズワイ君とは人生で初めての出会いでした!どちらかというと紅ズワイっぽい味に感じました。

江島大橋の「ベタ踏み坂」

地図を見ていて偶然、テレビCMに登場して有名になった「ベタ踏み坂」が境港の近くにあるということを知ったので行ってみました。写真の撮り方によっては急坂に見えないことはありませんが、普通にアクセルを踏めば普通に登れる普通の坂でした。写真は、少しでも急坂に見えるように遠くから撮ったものをトリミングして拡大してあります。

通称「ベタ踏み坂」の写真をスマホで撮ってみました

下の写真は「ベタ踏み坂」のチラシです。さすが、プロは「すごい坂」みたいに撮るもんですね。これを見て少々ビビッて「行くのを躊躇した」人もいるかもしれませんね。

もはや観光名所「ベタ踏み坂」のチラシ

熊本県「湯の鶴温泉」のこと

昭和の面影を残す「湯の鶴温泉」

「湯の鶴温泉」は、熊本県水俣市の市街地から海とは逆方向の山中に、ひっそりとたたずむ素朴な温泉地です。もう少しで鹿児島県との県境です。今でも「ツルの飛来地」として知られる鹿児島県出水市は目と鼻の先で、「平家の落人が鶴が湯あみをしているのを見つけて発見した」という、湯の鶴温泉の発見伝説もまんざらではないように思います。

頭石川沿いに旅館がならぶ温泉街。

頭石川の両岸に旅館などの建物が立ち並んで趣ある温泉街を形成しています。現在使われていない建物も合わせると、その昔は相当の数の旅館があったことがうかがえますが、『みなまた観光情報サイト』によりますと、現在営業しているのは5軒ほどのようです。頭石川(「いしあたま」ではない)の川岸には、四角くコンクリートで固められた泉源が点在していて「温泉地らしさ」を演出しています。

昭和の面影しかない湯の鶴温泉街

頭石川沿いの旅館街のようす

世間でインバウンドがどうのだの、中国から日本への渡航自粛がどうだのと騒がれる中で、失礼な言い方ですが、そういったものとはまったく無関係にしか思えないような、昭和初期の面影がそのまま残る素敵な温泉地(湯治場)なのです。「消毒臭」とか「循環」といった言葉がここほど似つかわしくない所はないでしょう。

共同浴場「きくの湯」の素朴な風情

私が実際に入浴したのは「きくの湯」という共同浴場です。思わず心の中で「これぞ素朴の極りではないか」と唸ってしまいました。無人ですので料金箱にお金を入れて入らせていただきます。はっきりとした硫化水素臭を有する無色透明の「アルカリ性単純温泉」のきれいなお湯が、いっぱいかけ流されていました。やや温めの適温で、他にお客さんもいなくて、気持ちが良すぎて浴槽からなかなか出られずに困りました!モザイクタイルが敷き詰められた浴槽もとっても粋でした。浴室内も浴槽内も大変きれいに清掃されています。

モザイクタイルが敷き詰められた「きくの湯」の浴槽

素朴な記載内容が温泉のすばらしさを物語る

最近、全国的に宿泊料金が高騰していて、私などの場合、簡単に宿泊できるような温泉旅館が本当に少なくなってきました。インバウンドや国内外の富裕層をターゲットにする旅館が増えてきた中で、この湯の鶴温泉はそういう事も関係ないので。料金設定も昔ながらにやさしい温泉地です。ここは「国民保養温泉地」に指定されていますが、料金も含め、本当に湯治や保養ができるこういう温泉地こそ本物の保養温泉地だと思います。

素朴であることの価値

いろいろと「手を加えたりして繕って生きることを余儀なくされている」今の世の中。熊本や鹿児島の温泉を巡っているうちに「素朴である」ことの尊さをしみじみと実感するようになりました。飾り立てたり、隠したり、手を加えたりする必然性がないからこそ、「素朴」でいられるのだと思います。刺身が「カルパッチョ」として出されると悲しい私です!

 

こういう本が欲しかった!『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』

鈴木浩大著『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』

今日お薦めするのは、絶景温泉探検家・鈴木浩大さんのご著書『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』です。この本は鈴木さんの海外温泉本の待望の第二弾です。

鈴木浩大著『さあ、海外旅行で温泉へ行こう』

第一弾の『世界の絶景温泉』はすでに本ブログでも紹介させていただきました。本屋さんの棚にあった『世界の絶景温泉』を手に取ってページをめくってみて衝撃がはしりました。「世界にはこんなすごい温泉があるのか」という驚きです。そして、写真に納まっているのが観光ガイド的な「表の顔」ではなく、まさに私が一番魅力を感じている自然の産物としての温泉の姿でした。大自然と一体化した泉源や、そこから二次的に生み出されるスケールの大きな析出物による造形などが主役として納められていました。著者の「眼」が、しっかりと温泉の本質を見極め、それが本屋さんで立ち読みをしている私にまで伝わってきました。「私が欲しかった情報はこれだ!」と。

第一弾の『世界の絶景温泉』

今回ご紹介する第二弾は少し視点が違います。国内で旅行に行く際に「せっかくなら温泉旅館に泊まりたい」と思うのと同じように、温泉好きな方が海外旅行に行くなら「外国の温泉も行ってみたい」と思われるのではないかと思います。しかし、私もそうなのですが、多くの皆さんは「海外旅行で温泉」というと、情報量の少なさや治安面での不安、語学力の自信のなさなど、ネガティーブな要素ばかりが自分を責め立て、ついついハードルの高さを上げてしまいがちです。しかし、そんなハードルをうんと下げてくれて、「海外の温泉へ行けそうだ」と思わせてくれるのが本書です。「海外旅行+α(温泉)」を望んでいらっしゃる温泉ファンの皆さんの救世主です。

本書もさすが鈴木さんで、「世界の温泉を楽しむ視点」が明確で、温泉や温泉地のすばらしさが際立つ内容となっています。「析出物」「歴史と伝統」「景観」の視点から構成され、見ているだけでまるで「紙上博物館」のようで、わかりやすい構成になっています。そして、何と言っても「海外の温泉へ行ってみようかな」という気分に誘われていきます。

私のような者が書くつたない文章ではなく、本屋さんで一度手に取ってご覧になってみてください。「百聞は一見に如かず」です。そして、さらに外国の温泉へと思いを馳せ、海外温泉入浴を実現させてみてはいかがでしょうか。「百見は一体験に如かず」ですね!

フェアモント温泉(カナダ)とヒンダート温泉(タイ)

本書に掲載されていた温泉地のうち、私が行ったことがある所が二か所だけありました。

カナダのフェアモント温泉の温泉滝と石灰華と私

フェアモント温泉の石灰華をくり抜いた浴槽と私

タイのヒンダート温泉と私

富山県の「湯谷温泉」と「神代温泉」のこと

きらびやかなロビーに迎えられる豪華絢爛な温泉ホテル。さっそうと浴室へ向かうものの、すでにそこに充満する強烈な塩素臭に全てを打ちひしがれ、むなしさと敗北感を味わうことがあります‥‥。その対極にあるのが、素朴で歴史的にはほぼ限界に達しているようなたたずまいの温泉宿。廊下を恐る恐る歩いて向かった先の浴室のドアを開けた瞬間、「感動」が全身の細胞中に行き渡ります。

私にとって、後者を代表する温泉が、例えば富山県の場合でいうと、砺波市の「湯谷(ゆだに)温泉」や氷見市の「神代(こうじろ)温泉」であったりします。

両温泉とも今となってはSNSをはじめさまざまな場で取り上げられるようになり、温泉好きな皆さんにとってはかなり知られた存在になっていますが、神代温泉は70年以上前から、湯谷温泉に至っては130年以上前から存在している歴史のある温泉です。

砺波市「湯谷(ゆだに)温泉」

砺波市にある庄川温泉郷は、「船でしか行けない秘境の温泉」である大牧温泉がよく知られていますが、それより庄川(しょうがわ)の少し下流に一軒宿の「湯谷温泉」があります。

一軒宿の湯谷温泉のたたずまい

歴史を感じさせる凛としたたたずまいを残す旅館の廊下を奥へと進み、長い階段を下ると、庄川沿いに湯小屋があります。

湯小屋へは長い階段を下ります

庄川の小牧ダムの下にある湯小屋

この温泉の名物で愛好家らから「バズーカ」と呼ばれる湯口から温泉が勢いよく噴き出し、湯があふれて浴槽は水没し、さらに洗い場までもが水没している様は壮観の一言で、一見の価値があります。もちろん一浴の価値は言うまでもありません!言葉では壮観さが伝わらないと思いますので、写真を見てください。

浴槽も洗い場までもが温泉で水没しています

写真のコンクリートの部分が本来の洗い場の部分です。ですが、大量のお湯に埋め尽くされていますので、洗えません。「かけ湯」をするスペースもありませんね。

「バズーカ」と呼ばれている有名な湯口

私が入浴した時には、給湯口からお湯が浴槽に注ぎこまれる辺りが白濁していました。白濁域が拡がることもありませんでしたので、多分ですが、温泉が勢いよく落下することによって発生するマイクロバブルに起因するものではないかと思います。

マイクロバブルが発生して?お湯が白濁している様子

富山県源泉一覧表によると、入浴適温の39.4℃の温泉が毎分244L自然に湧出し続けるもので、泉質は「ナトリウム・カルシウム―塩化物泉」です。

話は変わりますが、庄川の源流の中央分水嶺(特に日本海と太平洋を分ける分水嶺を中央分水嶺と呼びます)付近の岐阜県高山市荘川町」は「しょうかわ」と読みますが、そこから流れ出す川は「庄川」で「しょうがわ」と濁って発音します。

ちなみに、富山県には南砺市にも「湯谷温泉」という名称の温泉がありますので、間違えないように気をつけないといけません。そういう私も、カーナビで「湯谷温泉」と設定してしばらく運転していたのですが、どうも方向がおかしいのに気がついて、慌てて設定し直しました!

氷見市「神代(こうじろ)温泉」

氷見市の「神代温泉」は、石油の掘削を試みた結果、石油ではなく温泉が湧き出したもので、『温泉科学』29巻に掲載された深井(1978)「富山県の温泉と地質」には「背斜層の油田の掘削中に湧出した油田塩水に相当する」と記載されています。新潟県の新津温泉など、全国に分布している「油田塩水起源」と考えられている温泉は石油臭を伴ったり油分を含んだりすることが多いのですが、この神代温泉の場合はそういった臭いも成分も特には感じませんでした。浴槽には常に入浴適温の温泉がかけ流され、浴槽はまっ茶色に呈色しています。水酸化鉄などの析出成分が浴槽の底に沈殿していて、かき混ぜることにより一層茶色が濃くなります。富山県源泉一覧表によると、「ナトリウム―塩化物強塩泉」で、含有成分は何と18977mg/kgということです。約19g/kgなんです!

氷見市にある一軒宿の「神代温泉

神代温泉の男性用浴槽

親切な女将さんの話によれば、昨年宿泊をやめ、今は入浴だけ何とか続けているそうです。今でも全国から温泉ファンがやって来るとのことでした。

入浴適温で濃い温泉が自然に湧き続ける自噴泉は日本の宝。少しでも長く続けていただきたいと願うばかりです。

 

富山県の温泉情報公開がすばらしいです

富山県の温泉

富山県の温泉」というと、トロッコで行く黒部川流域の温泉や、立山黒部アルペンルートへと向かう立山周辺の温泉などがすぐに頭に浮かびます。観光と温泉とが見事にタイアップして、よく知られる存在になっています。

ところがです、意外と言っては失礼なのですが、富山県は実は全県的に温泉が存在していて、中には、単純に大深度掘削のメカニズムだけでは説明がつかないような高温の温泉も結構あるんです。氷見周辺や庄川流域などには「知る人ぞ知る」名物温泉も少なくありません。そうなんです、富山県は温泉県なんです!

富山県の源泉(泉源)の情報公開

富山県の公式ホームページには「富山県の温泉の状況」というページが設けられていて、温泉を管轄する富山県厚生部生活衛生課が発行した『富山県の温泉(令和7年度)』が掲載されています。

富山県厚生部生活衛生課発行『富山の温泉』

特筆すべきは、この中に富山県の温泉台帳とも言える『富山県源泉一覧表』が掲載されていて、登録されている県内のすべての源泉(泉源)について、「温泉地名」「湧出地点の住所」「自然湧出か掘削自噴か掘削動力揚湯の区分と湧出量」「掘削深度」「泉温」「pH」「溶存物質量」「療養泉の泉質名」「最終温泉分析年月日」「採取許可・確認の別」「利用許可施設数」「利用許可施設の名称」等の情報が記載されています。

丁寧に作成された『富山県温泉源泉地図』

また、他にも『富山県温泉源泉地図』も掲載されており、「源泉一覧表」に記載されているすべての源泉(泉源)の位置が地図上にプロットされています。これらの資料を見れば、富山県の温泉の概要がよくわかります!

富山県源泉一覧表』に掲載されている氷見市「神代(こうじろ)温泉」

こうした基本情報がきちんと公開されている富山県はすごいと思います。温泉利用者にとって、このような公的な立場からの情報は非常に貴重であり、これらから様々な状況を読み取ることができます。例えば、掘削深度からその土地の地温勾配が概観できますし、法律で定められた「10年に一度の温泉分析」がきちんと行われているかどうかといったことも一目瞭然ですね。

 

超貴重!温泉の自然湧出が見える岐阜県「白狐温泉」

自然湧出し続ける岐阜県瑞浪市の「白狐温泉」

火山地帯の地獄谷のような所は別として、火山のない平野部や盆地のような場所では、温泉が自然に湧く様子を観察するのは至難の業です。

私の岐阜県も同様なのですが、実は、火山のない岐阜県の東農地方の盆地において、昔から温泉が自然に湧き続き、その様子を目の当たりにできる温泉地があります。岐阜県瑞浪市の「白狐(びゃっこ)温泉」です。

JR中央本線瑞浪駅釜戸駅の間にある温泉で、往時は4~5軒の旅館が存在していたそうですが、現在は旅館「今井屋」一件のみの、ひっそりとした素朴な温泉地です。今井屋さんは、地域の「宴会場所」の拠点としての地位を確立し続けるとともに、リニューアルによって今風の機能を充実させながら元気に頑張っていらっしゃいます。

白狐温泉の泉源である「神明水」

「大きな石の下を掘って温泉が湧き出た」との伝説が残る神明水泉源

温泉街?の中心部には、白狐による温泉発見伝説の残る神明水という小さな池があり、池の底からブクブクと絶え間なく泡を伴いながら温泉が湧き続けています。火山とは無縁の地において、「温泉が自然に湧き続ける様子を観察することができる」貴重な存在となっています。また、池の周りに近づくだけで、ゆで卵の匂いのような硫化水素臭が漂い、池から湧き出しているのが「温泉である」ことを実感させてくれます(私のFacebookに「温泉がブクブクと湧き出す動画」を載せてあります)。『温泉ブログ 古田』で検索していただければ出てくると思います。

白狐温泉の発見伝説が書かれた看板

Wikipedia(2025年11月5日閲覧)によると、泉温25℃の療養泉で、泉質名が「放射能泉」と記載されていますが、この源泉を使用している今井屋さんによる2020年の分析結果では、泉温は22.4℃で療養泉の規定には当てはまらず、「温泉法第二条該当の温泉(フッ化物イオンおよびラドンで該当)」となっています。療養泉にこそ該当していませんが、硫化水素臭のある濁りのない美しいお湯はとても魅力的です。

白狐温泉の泉源はヒトツバタゴの自生地でもある

神水のヒトツバタゴ自生地は国の天然記念物

神水のほとりには、ヒトツバタゴ(別名 : なんじゃもんじゃ)の大きな木が自生しており、岐阜県が輩出した有名な植物学者である三好学博士のご尽力によって大正12年に国の天然記念物に「ヒトツバタゴの自生地」として指定されました。温泉の臭が漂う神秘な明神水と、まるで雪化粧をしたような大きなヒトツバタゴのコラボは圧巻に違いありません!

現在、白狐温泉唯一の旅館「今井屋」さん

往時を偲ばせるかつての今井屋の風情ある温泉建築。温泉マークが「粋」ですね。

「傾いた温泉マーク入り建物」は白狐温泉のランドマーク