2025年の旅とブログを振り返る|「移動」と「回復」の狭間で

年末の駅で走り去る電車の写真に「2025→2026 旅とブログを振り返る」と文字入れしたアイキャッチ

年末の駅には、独特の雰囲気がある。
車内は年始の広告に切り替わり、
相変わらずせわしなさは残っていて、キャリーケースを持つ人の流れは速い。
けれど、空気が少しだけ緩んでいる気がする。
寒さによるストレスや、年末のイライラが抜けたのだろうか。

大宮駅のホームで、人の流れを少し脇に避けてベンチに腰かける。
NewDaysで買ったホットコーヒーで、手のひらを温める。

今年はよく移動した一年だった。
けれど移動を続けるうちに、それは遠くへ行くための冒険から、
自分自身を回復するための「処方箋」に変わっていった気がする。

年内最後の更新になりそうなので、今年一年の旅とブログを棚卸ししてみたい。


今年の旅、3つのキーワード

今年の自分の動きを振り返ると、無意識のうちに選んでいたテーマが見えてくる。
派手な観光地ではなく、地味だが確かな手触りのある場所。
そんな今年の旅を3語で表すなら、こうなる。

「近場」「電車」「回復」

遠くへ行くこともあったが、主戦場はむしろ都心の延長線上だった。
電車に乗る時間そのものが旅で、降りる駅を変えるだけで気分が変わることに気づく。
そして、旅は冒険のような「攻め」ではなく日常からの「回復」になった。
体力が余っている人の娯楽ではなく、私のように体力が足りない人の生活技術としての旅、みたいなもの。
それがこのブログの輪郭になっていった。


印象に残った旅3選

先日まとめた「日帰り旅7選」には入れなかったが、自分の中に残った旅が3つある。

1. 小田原の風と、東海道線グリーン車

まず思い出すのは、熱海へ向かった日のことだ。
目的地に一直線に向かうと、移動が作業っぽくなる。
でも途中下車すると、日常からのグラデーションを感じるような「発見」になる。
途中で降りて、歩いて、食べて、また乗る。
目的地に着いたことよりも、途中立ち寄りや移動そのものが楽しかった。
都心のビル群が少しずつ低くなり、やがて窓の向こうに相模湾が広がった瞬間の開放感。
「安く行く」という実用的なテーマで動いた旅だったが、何よりも記憶に残ったのは、 小田原駅で食べた小鯵押寿司のおいしさや、根府川駅を過ぎるあたりで見える海の景色。
そして、「これでいいんだよ」という肯定感だった。

2. 父に任された長野、栗ご飯の湯気

ブログのデータを見返すと、意外にも読まれていたのが長野への家族旅行の話だ。
一人旅の気楽さとは対極にある、家族のアテンドというミッション。
正直なところ気疲れもしたが、その分、食べた栗ご飯の湯気や、スーパーで買った刺し身の味が、妙に鮮明に記憶に残っていた。
そんなふうに、いつまでも記憶に残る旅がある。
旅は旅情だ。そう思えたのは収穫だった。

3. 東京から富山へ日帰り

日帰りは、節約のイメージが強い。
でも富山への日帰りは、節約よりも、旅の「密度」の高さが印象深かった。
行って、見て、食べて、帰る。日帰りだとやることが絞られる。
それでも、帰り道の電車で「もう一泊しても、情報は増えるけど幸福は増えないかも」と思った。

旅の価値は、滞在時間に比例しない。
むしろ、長くいるほど、後から振り返ると、どうでもいい出費が増える。
それを自覚した。


ブログを書いて分かったこと

今年はブログを通じても、いくつかの気づきがあった。

① 「困りごと」の共有は強い

年末にかけて書いたカーシェアの料金改定や仕組みについての記事が、想像以上に多くの人に読んでいただけた。
旅の記事を書くつもりで始めたブログが、意外なところで検索に拾われ驚いた。
私も含めてみんな、生活の中のちょっとした変化や「損をしたくない」という気持ちに敏感なのだと思う。
私の小さな疑問や計算が、誰かの役に立ったのなら嬉しい。
綺麗な景色よりも、切実な「生活の知恵」こそが、今求められているのかもしれない。

② プロセス自体がコンテンツになる

「どこへ行ったか」よりも「どうやって行ったか」を書いた記事の方が、読んでもらえることが多かった。
絶景写真よりも、そこに至るまでのルート選びや、失敗も含めた過程を楽しんでもらえたのだろうか。
おそらく、そういったところに人間味が出るのだろう。
来年も、綺麗な上澄みだけでなく、移動の過程を楽しみながら大切にしたい。

③ 文章の「温度」は伝わる

実用的な記事が伸びる一方で、ふと漏らしたコラムのような記事を読んでもらえることもあった。
効率化の時代だからこそ、旅の後味など役に立たないけれど共感できる「体温」のある内容も求められている。
そう信じて書き続けたい。


来年に向けた、小さな宣言

さて、2026年はどう動こうか。大げさな目標を立てると足がすくむので、小さな宣言を3つだけ置いておく。

「移動×体験」の実験を続ける

いかに価値を考えて満足度を上げるか。
このゲーム性はやはり楽しい。来年も「お得な切符」や「意外なルート」を試し、その実験結果を報告したい。

実用と情緒のバランス

役に立つ「HOWTO」と、役に立ちにくい「コラム」。
旅の温度感だけだと、読み手の手元に残りにくいし、
実用だけだと、自分が飽きてしまう。
だから、この2つを両輪のように回していきたい。
まずは「生活の現実」を、淡々と面白がっていきたい。大げさに批判せず、でも流されずに。
そのうえで体験の空気感を残しつつ、「何が不安を減らしたか」「どこが心地よかったか」をもう一段だけ具体化する。

無理なく、止まらない

週一更新を軸にするが、義務感で書くブログはつまらないと信じる。
自分の足で歩き、自分の目で見たものだけを、自分の言葉で書く。
そこは忘れずにいたい。


終わりに

ホットコーヒーも飲み終わったところで。
今年も一年、このブログを訪れてくださり、ありがとうございました。
検索でたまたま辿り着いた方も、定期的に読みに来てくださる方も、画面の向こうにいる「あなた」の存在が、今年初めたての私が更新を続ける励みになりました。

年末年始、もし時間が空いて「どこか行きたいな」と思ったら、過去の記事を少し掘り返してみてください。
それでは、よいお年を。
また来年、このブログでお会いしましょう。


【関連記事:年末年始の読み物に】

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【東京近郊】公共交通機関で行ける!首都圏発“ちょっとマニアックな日帰り旅”まとめ

日帰り旅(東京近郊)目的別7選|電車+徒歩OKのまとめアイキャッチ 「日帰りでどこか行きたい」けど、観光地は人が多くて疲れる。 そんな日にちょうどいいのは、“都心の延長線上にある小旅行”だ。

ここでは、これまでに紹介したお出かけ記事の中から、 埼玉・東京近郊から行ける日帰りネタを「目的別」にまとめた。

※一部、日帰りで行ける範囲の北関東(笠間)も混ぜている。


まずは一覧(迷ったらここから)

目的 行き先 移動難度 ひとこと
温泉 蒲田温泉(黒湯) 新幹線いらずの温泉旅
グルメ 山形肉そば 河北や ★★ ローカルバスのtocoバスで“旅っぽさ”を演出
カフェ reimei cafe(久喜) 竹林ビューに落ち着く
体験 イマーシブ・フォート東京(THE SHERLOCK ★★ “観る”じゃなく“参加する”劇
絶景 石切山脈(笠間) ★★★ 迫力ある"湖のような採石場”へ
花(夏) 権現堂公園 ★★ 入園無料で四季を感じる
定食 加須「あまがさ」 ★★ 満腹定食→道の駅で“地元”を感じる

※移動難度:★=軽い/★★=ちょい旅/★★★=日帰りで旅行感


「今の気分」で選ぶなら

  • 回復したい蒲田温泉
  • 移動も含めて旅にしたい → 河北や(+tocoバス)
  • 元気がない。でも外に出たい → reimei cafe
  • 気分を切り替えたい → イマーシブ・フォート東京
  • 景色に圧倒されたい → 石切山脈
  • 自然で四季を味わいたい → 権現堂公園(ひまわり)
  • 安くて満腹+郊外ドライブ → あまがさ+道の駅
    • ※ここだけバス難易度高め(修行)なので車推奨

① 温泉で回復したい:蒲田温泉(黒湯)

蒲田温泉

日帰り温泉=遠い」に疲れた人へ。 品川から約20分で、温泉旅のスイッチが入る近さが強み。

項目 目安
アクセス JR蒲田駅 東口 → 京急バス六郷橋行)で約6分「蒲田本町」下車 → 徒歩1分
料金 入浴料 550円(都内銭湯の共通料金)
メモ 料金や営業時間は変わることがあるので、行く前に公式も軽く確認推奨

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② グルメ×ローカル感で満たす:山形肉そば 河北や(戸田)

山形肉そば 「ただ食べに行く」じゃなく、移動も含めて“旅にしたい”人向け。 tocoバス(100円)が、旅情を誘ってくる。

項目 目安
アクセス(推奨) 戸田公園駅 → tocoバス(喜沢・川岸循環/100円)→「喜沢記念会館」下車 → 徒歩数10秒
徒歩ルート 西川口駅から徒歩15〜20分
実食例 肉そば(冷)ダブル 950円+大盛り 200円
注意 券売機・現金のみ/席数少なめ(15席くらい)/営業情報は公式X確認がおすすめ

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③ 近場で“竹林に癒される”:reimei cafe(久喜)

reimei cafe 旅に行く元気はない。でもどこかに行って気分は変えたい人向け。 出かけ先で回復するタイプの小さな外出だ。

項目 目安
席・雰囲気 竹林ビューの古民家/20席ほどのこぢんまり感
支払い 現金・PayPay
アクセス 久喜駅から徒歩20〜30分目安(市内循環バスで「市民グラウンド」降車がラク)
注意 Wi-Fi/電源なし/駐車4台+道幅が細い区間あり(車は慎重に)

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④ “観光”じゃなく“体験”で遊ぶ:イマーシブ・フォート東京(THE SHERLOCK

イマーシブ・フォート東京(THE SHERLOCK) 正直これは、日帰り旅というより日帰りイベント。 でも「気分が切り替わる」という一点で、旅と同じ価値がある。

項目 目安
アクセス ゆりかもめ青海駅」直結/りんかい線東京テレポート駅」徒歩3分
ざっくり内容 観客が歩き回って物語に入り込む没入型(2部構成)
注意 途中参加不可/開始15分前集合/歩くので靴と荷物は軽めがおすすめ

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⑤ “静けさ+迫力”の絶景:石切山脈(笠間)

石切山脈 ここは「近郊」と言い張るには、ちょっと遠い。 だが、そのぶん日帰りで“旅行した感”が出る。そして圧倒的な景色に魅了される。

項目 目安
入場料 300円(中学生以下無料)
ツアー プレミアムツアー 1,000円(自由見学30分/ツアー60分目安)
アクセス JR水戸線稲田駅」→ 徒歩約20分弱(都心から乗り継ぎで約2時間半目安)
注意 道中に店が少ない。飲み物は駅で確保が安心

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⑥ (来年の予定を先に仕込む)季節を取りに行く:権現堂公園(ひまわり)

権現堂公園(ひまわり) 12月にひまわりの話をするのは、ちょっと季節外れかもしれない。
でも権現堂は、桜や曼殊沙華などもあり、四季が楽しめる場所だ。

項目 2025年の記録(参考)
ひまわり祭り 8月上旬(開花で変動あり)
持ち帰り自由 お盆の時期に実施
入園料 無料
混雑回避 夕方(18時頃)が空きやすい

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⑦ 郊外のローカル飯で満腹:あまがさ+道の駅かぞわたらせ(加須)

加須 あまがさ 旅先でふらっと入った「地元の定食屋」で当たりを引くと嬉しい。 ここは安い・量が多い・落ち着くの三拍子が揃っており、さらに地元の道の駅までセットで組める。

項目 目安
アクセス 最寄りは加須駅(駅から車で15分ほど)※バスもあるが本数少なめ
定食の例 チキンカツセット 800円/もつ煮セット 900円/牡蠣フライセット 980円
その後 道の駅かぞわたらせで“地元の空気”を感じて帰るのが気持ちいい

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おまけ:さらに“軽い”寄り道


まとめ:日帰り旅は「目的」から逆算すると外れない

あわただしい日常で「どこかに行きたいけど人混みが...」という日がある。
そんな時は「目的」から逆算するといいかもしれない。
ぜひ、今回の記事を参考に、ゆるやかに回復してもらえれば。


【埼玉県さいたま市】肉骨茶(バクテー)そばには乱切りが合う|富士そば 大宮東口店

名代富士そばの肉骨茶(バクテー)そばの写真に、「名代 富士そば」「肉骨茶(バクテー)そば」「乱切り蕎麦と相性抜群」の文字を重ねたアイキャッチ画像 12月になり、いよいよ年末感が増してきた。
仕事に忘年会と忙しい。しかも寒い。

そんな疲れた、冷えた身体に、ニンニクとコショウのWパンチを食らわせて元気を出すのはどうだろう。

今回は立ち食いそばでおなじみの富士そばの期間限定メニュー、「肉骨茶(バクテー)そば」を紹介する。
しかも今回は、通常の富士そばとは異なる、肉骨茶(バクテー)の強い味に負けない「乱切りそば」の店で食べてきた。


肉骨茶(バクテー)そばとは

肉骨茶(バクテー)とは、シンガポールやマレーシアで親しまれている、豚のスペアリブなど骨付き肉を漢方やスパイスと一緒に煮込んだ薬膳スープである。
これを富士そば風にアレンジし、そばを合わせたものが今回紹介するメニューだ。

ちなみに肉骨茶(バクテー)には、ニンニクと胡椒の風味が際立った塩味の「シンガポール風」と、漢方寄りで醤油っぽい「マレーシア風」があり、どちらが本場かは論争があるらしい。
富士そばシンガポール風である。


富士そばの乱切りそばとは

今回は富士そば 大宮東口店に来た。

なぜわざわざこの店舗に来たかというと、乱切りそばという特別な麺を扱っているからである。

乱切りそばは、麺の太さ(幅)が均一ではなく、平たい箇所や太い箇所が混ざっている。
見た目と食べ応えで「いつもの麺と違う」と分かるタイプだ。

富士そば大宮東口店の乱切りそば。麺の太さが不揃いで、わかめとねぎ、わさびが添えられている。
乱切りそば。麺の太さが不揃いで、見た目でも違いが分かる。

実際、店内で食べていたお婆さんが店員さんにこう言っていた。

「大宮のお店は麺が違うのね。美味しかったわ。」

一番の特徴はその歯ごたえ。もちっ、もちっとしていて、どこか東北の田舎そばを彷彿させる。

たまに「富士そばの麺は系統が2種類ある」みたいな話を聞くが、正直、見た目だけではよく分からない。
しかし乱切りそばは話が別である。見た目と食べ応えですぐ分かる。


肉骨茶(バクテー)そば実食

富士そばの肉骨茶(バクテー)そば。白濁スープにねぎと揚げニンニクなどの具材が乗る。
肉骨茶(バクテー)そば
肉骨茶(バクテー)そばのスープは白濁していて、いかにも強そうだ。
豚肉が入り、ねぎが乗り、そして揚げニンニクが香る。

食べてみると、ガツンとしたコショウの力強さを感じる。
塩味でここまでスパイス感が前に出るのは、立ち食いそばとしては珍しいのではないか。
辛味が苦手なら注意が必要だ。

そして乱切りそばが合う。
乱切りは太さが一定じゃない。だから同じ一杯の中でも、噛む場所によって食感が変わる。
そこに肉骨茶(バクテー)の強いスープが絡むので、“強いスープ”に麺が負けていない。

ついスープを飲み干した。
気づけば、コショウの影響だろうか、じんわり汗をかいていた。


終わりに

疲れているときは、なぜか刺激を欲しがる。
肉骨茶(バクテー)そばは期間限定なので、気になった人はぜひ行ってみてほしい。

・販売期間:2025年12月予定(12月1日〜31日) ・展開店舗:全104店舗(※秋葉原電気街店、品川店除く)

乱切りそばは(少なくとも自分の知る限り)通年で食べられる。取扱店は埼玉に多い。
fujisoba.co.jp

肉骨茶(バクテー)そばを逃しても、例えば新幹線待ちで小一時間空いたときなどに、乱切りそば目的で寄ってみてほしい。
あのもちもちの歯ごたえだけでも、来た甲斐がある。


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【具体例で比較】タイムズカー料金改定で、あなたのいつもの使い方はいくら変わる?

車内の写真に文字「タイムズカー料金改定で結局いくら変わる?」を載せたアイキャッチ 2025年12月1日から、タイムズカーの料金体系が変わった。 share.timescar.jp

1本目の記事では、料金改定の全体像と所感(改悪かどうか)をまとめた。
okiven.hatenablog.com

今回はその続編として、

  • 「いつもの使い方だと いくら変わるのか
  • 「まだタイムズカーでいいのか/他手段も視野に入れるべきか」

を、具体的な計算例 でざっくり掴める実務記事にしたい。

先に結論だけ書くと、
6時間以内で20kmを超える使い方は、値上がりしやすい。
逆に、6時間を超える利用は(走行距離がある程度あれば)旧ルールより20km分おトクになりやすい。


この記事でわかること

この記事を読めば、ざっと次のことが把握できるようにしている。

  • 近所の日常利用/半日ドライブ/日帰りレジャー/1泊旅行で
    料金がどのくらい変わるのか
  • 自分のよくある利用パターン(◯時間・◯km)が、
    どのケースに近いか
  • 「このラインを超えたらレンタカーや他社も一応比較したほうがいい」という目安

1. 料金改定の内容をおさらい

細かい話は1本目の記事にまとめたので、ここでは「この後の計算に必要な分だけ」整理する。

距離料金のルール(時間料金で利用した場合)

区分 改定前 改定後
距離料金がかかる条件 利用時間が6時間を超えた場合 走行距離が20kmを超えた場合
課金対象 利用開始時からの全走行距離 20kmを超えた走行距離
単価 20円/km 20円/km

※ナイトパック利用時は距離料金の考え方が別なので、この記事では対象外にしている。

ベーシッククラスの時間料金(個人)

この記事では、いちばん使う人が多そうな ベーシッククラス(個人) を前提に整理する。

項目 金額(税込) メモ
時間料金 220円 / 15分 15分単位課金
最大時間料金(6時間まで) 4,290円 ここまで上限
最大時間料金(12時間まで) 5,500円 ここまで上限
最大時間料金(24時間まで) 6,600円 ここまで上限

(36時間以降もあるが、この記事ではいったん使わない。)


2. 代表ケースを決める

具体的なパターンで比較してみよう。
よくありそうな使い方を、ざっくり5つに分けてみた。

近所の日常利用

ケース 内容 利用時間 走行距離
A 近所のスーパー往復 1時間 5km
B 郊外ショッピングモール 3時間 20km

半日ドライブ

ケース 内容 利用時間 走行距離
C ちょっと遠めのショッピング+寄り道 6時間 60km

日帰りレジャー

ケース 内容 利用時間 走行距離
D 都内→郊外の温泉など 12時間 100km

1泊旅行

ケース 内容 利用時間 走行距離
E 駅から観光地+周辺 24時間 150km

自分の利用履歴を眺めると、だいたいこのどれかに近いパターンが1〜2個は出てくるのではないかと思う。


3. ベーシッククラスの時間料金だけを出しておく

距離料金の話に行く前に、時間料金を整理しよう。
(改定前後で時間料金は変わっていない。)

ケース 利用時間 時間料金の計算イメージ 時間料金(税込)
A 1時間 220円×4(15分×4) 880円
B 3時間 220円×12 2,640円
C 6時間 最大時間料金上限 4,290円
D 12時間 最大時間料金上限 5,500円
E 24時間 最大時間料金上限 6,600円

ここまでは「改定の影響を受けない部分」である。
違いが出るのは、このあと紹介する 距離料金 だ。


4. 距離料金の「ビフォー/アフター」をケース別に見る(ステージ1・2想定)

では本題の距離料金。
先に結論を書くと、影響が出やすいのは「6時間以内で20kmを超える使い方」である。

まずはステージ特典をいったん無視して、
ステージ1・2(距離料金割引なし) の場合を比べてみる。

4-1. 距離料金だけを比較

計算式のおさらい:

改定前: - 6時間以内 → 距離料金 0円
- 6時間超 → 全走行距離 × 20円/km

改定後: - 利用時間に関係なく → (走行距離 − 20km) × 20円/km(20km以下は0円)

公式の例:走行距離50kmなら、距離料金は600円(21〜50kmが課金対象)。

これをケースごとに当てはめると、次のようになる。

ケース 利用時間 走行距離 改定前の距離料金 改定後の距離料金
A 1時間 5km 0円 0円
B 3時間 20km 0円 0円
C 6時間 60km 0円(6時間ちょうど) 800円((60−20)×20)
D 12時間 100km 2,000円(100×20) 1,600円((100−20)×20)
E 24時間 150km 3,000円(150×20) 2,600円((150−20)×20)

4-2. 合計金額と差額(ステージ1・2)

時間料金+距離料金の合計を並べると、こうなる。

ケース 内容 改定前の合計(時間+距離) 改定後の合計(時間+距離) 差額
A 近所スーパー(1h・5km) 880円 880円 ±0円
B 郊外モール(3h・20km) 2,640円 2,640円 ±0円
C 半日ドライブ(6h・60km) 4,290円 5,090円 +800円(約+19%)
D 日帰り温泉(12h・100km) 7,500円 7,100円 −400円(約−5%)
E 1泊旅行(24h・150km) 9,600円 9,200円 −400円(約−4%)

ざっくり整理すると、

  • 20km以内の近所での日常利用(A・B)
    → 料金は変わらない。体感もほぼ同じだと思う。
  • 6時間・60kmあたりの半日ドライブ(C)
    → ステージ1・2だと、距離料金ぶんがじわっと乗ってくる
  • 12時間・100km以上の長時間利用(D・E)
    → 「20km分の距離料金免除」が効いて、むしろ少し安くなる。

自分としては、この「Cだけ割高になる感じ」が、改定後いちばん気になったところである。


4-3. 時間×距離で「得/損/影響なし」を判定(距離料金だけ)

「結局、自分の使い方はどこに入る?」を一発で見たい人向けに、
横軸=走行距離、縦軸=利用時間 の表も用意した。

この表で言う 得/損/影響なし は、あくまで 距離料金 の比較である。
(時間料金は改定で基本変わらない前提。ナイトパックは別ルールなので対象外。)

  • ◎=得:改定後のほうが距離料金が安い
  • ○=影響なし:改定前後で距離料金が同じ
  • ×=損:改定後のほうが距離料金が高い

※距離レンジは右端を含む(〜35kmは35kmまで)。

ステージ1・2(距離料金割引なし)

利用時間\走行距離 〜20km 20〜35km 35〜70km 70〜100km 100km〜
〜6時間 × × × ×
6時間超

読み方(ステージ1・2) - 6時間以内は、20kmを超えた瞬間から「損」(前は距離料金0円だったのが発生する) - 6時間超は、旧ルールより距離料金が最大400円ぶん(20km分)軽くなるので、少なくとも「損」にはならない(走行距離が20km未満なら、その距離×20円ぶんだけ軽くなる)。

ステージ3(距離料金 最大300円割引)

利用時間\走行距離 〜20km 20〜35km 35〜70km 70〜100km 100km〜
〜6時間 × × ×
6時間超

読み方(ステージ3) - 6時間以内でも35kmまでは「影響なし」(距離料金が割引で相殺されやすい) - 6時間超は常に「得」(走行距離が十分あるとき、距離料金は旧ルール比で最大700円ぶん軽くなる)

ステージ4(距離料金 最大1,000円割引)

利用時間\走行距離 〜20km 20〜35km 35〜70km 70〜100km 100km〜
〜6時間 × ×
6時間超

読み方(ステージ4) - 6時間以内でも70kmまでは「影響なし」(距離料金が割引でほぼ消える) - 6時間超は常に「得」。改定による差分としては、距離料金が最大400円ぶん(20km分)安くなり、さらにステージ4は距離料金が最大1,000円割引なので、走行距離次第では距離料金が実質0円になりやすい。


5. 利用パターン別に「結局どうする?」を考える

ここからは、先ほどの距離料金の比較をもとに考えた実務的な線引きの話である。

5-1. 近所での日常利用ユーザー

よくあるパターン - 1〜3時間・20km以内 - 近所のスーパー、ドラッグストア、実家の往復など

結論: - このゾーンだけを見るなら、正直 まだタイムズカーでいい と感じる。 - 改定前後で金額はほぼ変わらないので、
「改定で一気に高くなった」という感覚は出にくいはずである。

気にしておきたいのは、「ついでに寄り道して 20km を超えていないか」くらい。
そこを超えなければ、今まで通り安心して使っていいはずだ。


5-2. 週末ドライブ/日帰りレジャー派

よくあるパターン - 6〜12時間・60〜100km前後
- 郊外のアウトレットや温泉地、観光地へのドライブ

結論: - 6時間以内で距離を伸ばす(20km超)と、「損」になりやすい。
特に 6時間・60km(ケースC) は、ステージ1・2だと+800円くらいの値上げ。 - 一方、12時間・100km(ケースD) まで伸びると、
20km免除ぶんが効いて、トータルは少し安くなる。

ここまで来ると、 - 「レンタカーの12時間プラン」
- 「タイムズカー(ベーシック+距離料金)」 を、一度ざっくり比較しておくと安心だと思う。

平日はほとんど乗らず週末ドライブだけなら、
レンタカー+電車 という選択肢も十分ありだ。


5-3. 旅行の足として使う人

よくあるパターン - 24時間・150km前後(ケースE)
- 「新幹線で現地入り → 駅からタイムズカーで観光」のような使い方

結論: - 改定後は、このゾーンは少し安くなる方向である。 - とはいえ、距離が伸びれば伸びるほど、
レンタカーとの料金差はシビア になってくるので、比較は必須だ。

前回の記事でも書いたが、おすすめなのはやはり、 - 自宅〜現地まで:電車や新幹線
- 現地〜観光地まで:カーシェア(またはレンタカー) という分業スタイルである。

実際、自分の使い方を振り返ると、現地だけカーシェアに切り替えたほうが楽だし、結果的に安いなと思う場面が多いのでおすすめ。


6. 自分の過去利用を「3パターン」にざっくり分類する

この記事の計算例を生かすには、
一度だけでいいので 自分の過去利用をざっくり棚卸し しておくと楽になる。

手順

  1. タイムズカーのマイページにログイン
  2. 直近半年〜1年くらいの利用履歴をざっと一覧で見る
  3. 各利用について、ざっくりでいいので
    • 利用時間(何時間くらいか)
    • 走行距離(おおよそ何kmか)
      をメモする

「よくある3パターン」を決める

全部を真面目に集計する必要はなくて、
見ているうちに「だいたいこの形が多いな」というパターンが見えてくるはずだ。

例: - パターン1:1〜2時間・10km前後(近所の買い物)
- パターン2:4〜6時間・40〜60km(週末の買い物+寄り道)
- パターン3:24時間・150km前後(旅行の足)

メモした3パターンを、4-3の表のどこに入るか当てはめればOKである。


7. 関連記事への導線と、これから

最後に、タイムズカーまわりの記事を並べておく。

  • 改定の全体像やスタンスを知りたい人向け
    okiven.hatenablog.com

  • 具体的なお出かけのイメージを膨らませたい人向け
    → 今後、「電車+タイムズカーで行く日帰りモデルコース」をまとめる予定。
    自宅から長距離を運転せずに、現地だけ車を使うパターンを整理したい。


料金改定そのものは「好き・嫌い」の話になりがちだが、
いちど数字でざっと把握してしまえば、

  • どこまではタイムズカーで粘るか
  • どこからはレンタカーや他社も比較するか

の線引きが、だいぶしやすくなると思う。

この記事が、そのための参考として役立てればうれしい。


【富山県高岡市/氷見市】東京から日帰りで絶景へ。雨晴海岸と氷見の食を楽しむJTBお得旅

東京発富山日帰り 雨晴海岸と富山湾グルメ 3連休の中日。激務な平日だったので初日は休息、でも3日目は用事……。
「中日だけポッカリ空いたこの1日、どう過ごそう?」

そう考えた結果、東京から日帰りで富山の雨晴海岸と氷見へ行ってきた。
天候にも恵まれ、立山連峰の絶景と美味しい魚、そして少しノスタルジックな鉄道旅を満喫できたので、旅の記録と「これから行く人のための注意点」を紹介する。

www.info-toyama.com

今回の旅のプランと費用(JTBが安い)

今回利用したのは JTB のパックツアー。
普通に北陸新幹線の切符を買うと往復で 26,320 円かかるところ、このパックなら 20,700 円。

なんと 5,620 円もお得になった。日帰りでサクッと行くにはちょうどいい。

JTB: JR・新幹線+宿泊セットプラン(日帰りプランあり)
https://www.jtb.co.jp/kokunai/jr/route/tokyo-toyama/

06:16 東京発:北陸の海へ

車内から見えた日本海の車窓(雲ひとつない快晴+海)
車内から見えた日本海
早朝の東京駅。北陸新幹線「かがやき 501 号」に乗車。
3 連休ということもあり指定席は満席だった。
朝早いので、揺れの少ない車両中央・通路側の席を確保して仮眠タイムにあてる。

8 時過ぎ、ふとデッキに出ると窓の外には日本海
雲ひとつない快晴。進行方向には富山湾能登半島が見え、一気に旅のワクワク感が高まってきた。

08:23 富山着:乗り換えの「3つの注意点」

富山駅に到着後、「あいの風とやま鉄道」と「氷見線」を乗り継いで目的地を目指す。

あいの風とやま鉄道
あいの風とやま鉄道
ここで、これから行く人に絶対に伝えておきたい注意点が 3 つある。

氷見線は IC カード不可(現金必須)

Suica などの IC カードは使えない。
現地のバスも同様なので、小銭と現金は必須である。

富山駅で「目的地までの切符」を買う

あいの風とやま鉄道と氷見線は会社が違うが、乗り換え駅の高岡では改札内でつながっている。
高岡駅で改札を出る必要がないよう、富山駅出発時点で最終目的地(雨晴駅など)までの切符を買っておくのがおすすめだ。

③ 現地に着いたら「帰りの切符」も買っておく

現地の駅に着いたら、すぐに帰りの切符も買っておくと安心である。
IC カードに慣れている観光客が多く、券売機が混雑しがちだからだ。

富山駅は、金沢など近隣の宿泊費高騰を避けた旅行者で賑わっていた。
確かにここを拠点にすれば、金沢、岐阜、長野方面とどこへでも行けるので、拠点としてのバランスが良い。

09:00 高岡着:キハ40と絶景シートの確保

少し早めに高岡駅に到着した。これには理由がある。
9:43 発の氷見線で「海が見える席」を確保したかったからだ。

おすすめのポジションは車両の進行方向(富山方面を正面に見て)右側。 かつ、ボックス席で進行方向後ろ向き。

こうすると、海と一緒に立山連峰を望むことができる。

ホームに入線してきたのは、国鉄気動車「キハ 40」。
薄暗いホームに佇む重厚感と、独特のエンジン音。鉄道ファンでなくともグッとくるものがある。

高岡駅のホームに佇むJR氷見線(キハ40)の外観
JR氷見線
氷見線車内のボックス席
氷見線車内のボックス席

10:00 雨晴駅:絶景と道の駅

氷見線に揺られ、越中国分駅を過ぎると目の前に日本海が広がる。
越中国分駅を過ぎた後に見える日本海 雨晴駅に到着。 雨晴駅 ホームからは雨晴海岸、能登半島、そして海越しの立山連峰が見える。まさに絶景である。

駅から徒歩 6 分ほどで「道の駅 雨晴」へ。
2 階のカフェで「雨晴サンデー」を購入した。富山の海洋深層水の塩が効いていて、甘さの中にほどよいしょっぱさがあって美味しい。 雨晴サンデー 3 階の展望デッキは撮影スポットとして最高だ。
タイミングよく観光列車「べるもんた」が走っていくのも見えた。
道の駅 雨晴の展望デッキから見える 「海+義経岩+立山連峰+線路」が一望できた写真

氷見へ:混雑回避のランチ術

再び氷見線に乗り、終点の氷見駅へ。そこからバスで「ひみ番屋街」を目指す。 himi-banya.jp ひみ番屋街の外観

3 連休中の番屋街はとにかく混んでいた。海鮮丼のお店は 20 組待ち。
このまま並ぶこともできたが、今回はランチ方針を切り替えることにした。

ここで裏技(?)。レストランは諦めて、「西の番屋」でテイクアウトのお刺身やお寿司を購入した。
天気が良ければ外のベンチで食べるのが正解だ。待ち時間ゼロで、むしろ海鮮丼より割安に楽しめる。ぶりの刺身と、魚の味噌汁「かぶす汁」が特に印象に残った。

富山湾産のお寿司
富山湾産のお寿司
氷見港のぶりの刺身
氷見港のぶりの刺身
かぶす汁
かぶす汁

夕暮れの雨晴海岸と帰路

帰りにもう一度、雨晴海岸へ立ち寄った。
夕方になると立山連峰の稜線がくっきりと浮かび上がり、昼間とは違う美しさがある。
雨晴海岸

「日本の渚 100 選」に選ばれるのも納得の、まるで絵画のような風景だった。

再び通り過ぎた「べるもんた」に手を振ると、中の板前さんが手を振り返してくれた。
いつか乗って、あの車内で握ってもらいたいものである。 雨晴海岸からみえたべるもんた

☞ べるもんたの乗車には予約が必要。また、中でお寿司などの食事ができるのだが、それも別途予約が必要。いつか乗りたい! www.jr-odekake.net toyama.visit-town.com

旅の終わりに

17 時頃に富山駅に戻り、お土産を購入。
帰りの新幹線では「白エビ亭」のテイクアウトを堪能した。

白エビ天丼:タレに負けないエビの甘み
白エビ天丼:タレに負けないエビの甘み
白エビ刺身丼:値段は張るが、一度は食べるべきとろける旨さ
白エビ刺身丼:値段は張るが、一度は食べるべきとろける旨さ

東京着は 20:30 頃。

氷見線は 2029 年を目処にあいの風とやま鉄道への経営移管が決まっており、キハ 40 も引退が近づいている。
一方で、2026 年 3 月からは IC カードが導入されるなど、便利にもなっていく。

失われゆく旅情と、新しくなる快適さ。
そのちょうど狭間にいる今の氷見線の空気を味わえた、大満足の日帰り旅だった。

JR東日本の新サービス『teppay』の見据える先は? Suicaユーザーが感じた違和感

JR東日本の自動改札機が並ぶ駅構内の写真に、「teppay」「JRが狙う『経済圏』の行方」という文字を重ねたアイキャッチ画像。

先日、JR東日本から新しい発表があった。
新・金融サービス「teppay(テッペイ)」のリリースである。
www.teppay.jp

Suica20周年あたりからずっと言われていた「Suica次の一手」が、ようやく形になってきた、といえば聞こえはいい。
ただ、このニュースを見て私が感じたのは、JR東日本のなりふり構わぬ「焦り」と、ユーザー視点との「乖離」だった。

もちろん、公式リリースを読むと、言いたいことは分かる。
キャッシュレスが増えすぎてみんな疲れているから、Suicaの中にまとめてあげますよ、という理屈だ。
それでもなお、いちユーザーとしては、何かが噛み合っていない感じが残る。
なぜそう感じるのか、自分なりに整理してみた。


もともとSuicaは「強迫的な便利さ」で広がった

まず、原点の話をしておきたい。
そもそも、なぜSuica(やPASMO)がここまで普及したのか。
それは、「持っていなければ改札を通れない」という、半分脅しみたいな空気があったからだと思っている。

厳密なことを言えば、Suicaがなくても紙のきっぷを買えば改札は通れる。
それでも、首都圏で毎日電車に乗っていると、「Suicaがないと生活がままならない」という感覚になる。
朝のラッシュで券売機に並んで、紙のきっぷを買っていたら、とてもじゃないが会社にたどり着けない。
チャージさえしておけば、改札はタッチ一発で終わる。
定期券も同じカードに入る。

この「Suicaがないとやってられない」という状況は、ちょっとした“強迫的な便利さ”だったと思う。
技術に苦手意識のある高齢者でさえ、「毎回きっぷを買うくらいならICカードを作った方がマシだ」と感じざるを得なかったはずだ。

そして一度「持っていて当たり前」になってしまえば話は早い。
改札で使っているSuicaを、そのまま駅ナカ、コンビニ、自販機の支払いにも流用できる。
わざわざ新しい決済手段を覚えたつもりはないのに、気がつけばSuica払いが生活のベースになっていた。
交通ICがここまで広がった背景には、この「持たざるを得ないインフラ」としての強制力があった、という前提は、やっぱり無視できない。

今回のteppayは、その“続き”であるように見えて、実は少し違う。
モバイルSuica(やモバイルPASMO)のアプリをアップデートすると、そこにQRコード決済や送金、オンライン決済などの機能が乗っかる。
説明だけ聞けば、「Suicaに財布機能がくっついた」と言ってしまっていいだろう。

さらに、決済の操作性だけを切り取ると、話はさらにシンプルだ。
teppayのQR決済は、スマホを出してアプリを立ち上げ、画面を開いてコードを見せる(もしくは読む)。
やっていることは、PayPayや楽天ペイ、d払いとほとんど変わらない。

Suicaのタッチ決済は今後も残るので、「速さを捨ててしまった」とまでは言えない。
それでも、同じスマホの中で「タッチ一発」と「QR表示」の二つを使い分けることになる。
すでに他社のQR決済を使い慣れている状況で、さらにJR版のQRを使おうとする人が、どれくらいいるのか。
ここに、最初の違和感がある。


電車以外のユーザー層との壁

​電子決済の最大の弱点は、使える場所の断片化だと思う。
「ここはPayPayのみ」「ここは楽天ペイのみ」といった状況にうんざりしている人も多いはずだ。
地方のローカルな店に入ると、そもそも現金のみというところもまだまだ多い。

teppayも、表面的には「QR決済ブランドがまたひとつ増える」という見え方になる。
実際にはJCBの仕組み(Smart Code)と紐づけて、全国の加盟店で広く使えるようにするらしいので、「使える店舗の数」だけ見れば、かなり多いのだと思う。
とはいえ、レジ前でロゴが増えれば増えるほど、「この店では何が使えるんだっけ」と確認する負担が増えるのも事実だ。

もしJRが本気でユーザーを増やしたいなら、すでにキャッシュレスを使い倒している首都圏の人たちだけではなく、まだ電子決済が浸透していない層にもリーチしたいはずだ。
ただ、その層の多くは、そもそも鉄道会社のアプリに全く用事がない人たちでもある。

典型的なのは、「車社会」で暮らしている人たちだろう。
日常の移動はほとんどマイカー。ローカル線は減便や廃線が進み、「たまに出かけるときに乗るかどうか」という存在になっている。
そういう生活をしている人が、わざわざ「鉄道会社が作った決済アプリ」をスマホに入れ、銀行口座と紐づけて、チャージ設定までしてくれるかというと、かなり疑わしい。

現実的に考えると、teppayのメインターゲットは、最初から首都圏の通勤・通学圏だと思う。
すでにモバイルSuicaやモバイルPASMOを使っていて、JRE POINTもなんとなく貯まっている。
そういう人たちの、決済シェアをもう一段取りにいこうとしているのだろう。
それ自体は自然な戦略だが、「電子決済が広がっていない層を新しく開拓する」という意味での伸びしろは、そこまで大きくないようにも見える。


「経済圏」の上塗りに見える理由

ここ数年のキャッシュレスを見ていると、強いのはやはり経済圏を持っているプレイヤーだ。

PayPayは、Yahoo!ショッピングソフトバンク・ヤフー系のサービスとつながっている。 楽天ペイは、楽天市場楽天カード楽天銀行と一体になって、ポイントが循環する前提で設計されている。 「どこで払っても、とりあえず同じポイントが貯まる」「ECとリアル店舗、金融まで一つのIDにまとまっている」。
この安心感によってユーザーを取り囲んでいるのだ。

JR東日本にも、それっぽいピースはそろってきた。
JRE POINTがあり、JRE MALLという通販サイトがあり、JRE BANKという銀行サービスもできた。
口座数もそれなりに伸びているらしい。
ただ、日常的なネットショッピングで「まずJRE MALLを開く」という人は、正直、かなり少数派ではないだろうか。

自分の感覚で言えば、JRの世界はまだ「鉄道と駅ナカの上に、ネットと銀行がちょこんと乗っている」くらいのバランスだ。
楽天やPayPayのように、「生活全体がその経済圏の中で完結している」感じには、まだ遠い。

こうした前提で今回のteppayを見ると、「巨大な鉄道利用者の母集団の上に、無理やり経済圏を上塗りしようとしている」ようにも見える。
Suicaという生活インフラはすでに握っている。
だから、そこから先の決済も、銀行も、オンラインショッピングも、できれば全部自社のテリトリーにしたい。
その欲望が、いよいよ露骨な形で出てきたのが今回なのではないか、と思ってしまう。

象徴的なのが、「Suicaペンギン卒業」のニュースだ。
2026年度末で、長年愛されてきたSuicaのペンギンは卒業し、新しいキャラクターに変わるという。
ペンギンは、チャージ上限2万円のICカードという、いわば“古いSuicaの顔”となる存在だ。

公式の説明を見ると、「Suicaが新しい次元へ進化することに合わせて」と書かれていて、「Suicaからの決別」とは書かれていない。
それでも、teppayやJRE BANK、Suicaルネッサンスという最近の動向を見るに、「鉄道のプリペイドカード」から「金融を含めたプラットフォーム」へと看板を掛け替えたい、そのためにペンギンにも退場してもらう――そんな物語が透けて見える。

もちろん、これは完全に私の妄想だ。
JRの中の人に聞いたら、「そんな意図はありません」と言われるかもしれない。
ただ、「Suicaペンギン卒業」のタイミングと、「経済圏としてのSuicaを再定義したい」という流れが重なっているように見えるのは確かだ。


teppayの見据える先は何か

公式リリースでは、teppayは「キャッシュレスの多様化や複雑化によるユーザーの“疲れ”を解消する」存在であるかのように語られている。
モバイルSuicaやモバイルPASMOの中で決済をまとめられ、チャージや定期券購入、オンライン決済、送金までひとつの残高で扱える。
Suicaに親しんできた人にとっては、たしかにそれなりに魅力的な構想ではある。

一方で、すでに他社のQR決済やクレジットカードに慣れきっている人にとっては、さらに別のブランドを覚える必要が出てくるだけかもしれない。
車社会で鉄道とは縁遠い生活をしている人には、そもそもアプリを入れる必然性がない。
鉄道は日常的に使うけれど、「改札でタッチできればそれでいい」という人にとっては、銀行やQR決済まで含めてJRに囲い込まれることに、むしろ違和感を覚える可能性もある。

JR東日本が目指しているのは、単なる鉄道会社からの脱却なのだろう。
リアルな線路と駅だけではなく、ユーザーの決済履歴や金融取引まで含めた「データ」を握りたい。
その結果として、Suicaペンギンさえ卒業させてしまう覚悟を見せた――そんな風にも見える。

この「ユーザーに一手間を強いてでも、自前の経済圏を築きたい」という賭けが、吉と出るのか凶と出るのか。
サービスが本格始動する2026年秋まで、その行方を眺めていきたいと思う。


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電車で見かけた「紙のGoogleマップ」と、情報の主導権について

電車内で印刷した地図とガラケーを手にした二人の女性の手元に、「情報に振り回されない距離感」という文字を重ねたアイキャッチ画像

電車に揺られていると、向かい側の席にいた女性二人組がGoogleマップを広げて経路を確かめ合っていた。
二人が眺めているのはスマホの画面ではなく、A4のコピー用紙。連絡にはガラケーを使っている。

しかも、いかにも「地図に慣れたベテラン世代」という感じでもない。ぱっと見た限り、そこまで年配には見えないのだ。

その光景を見て、なんとなく懐かしい気持ちになった。
学生の頃、スマホを持つ前は、家で印刷した紙を持って出かけていた。その感覚がふっとよみがえったのだ。
これで十分なんだよな。

同時に、この「これで十分」という私の感覚に対して、もう一つ考えた。
「これで事足りる」という精神は大事だし、無駄なお金を使わずに済む。
しかし、最新の情報をあえて遮断してしまうのも、どこかもったいないのではないか――そんなモヤモヤである。

紙のGoogleマップを眺めながら、その二つのバランスについて考えていた。


「これで事足りる」精神の良さ

印刷した地図だけでも目的地には到着できる。地図上のどこにいるのかさえ把握できれば、スマホなしでもたどり着ける。

それから、紙の地図はシンプルだ。
広告もレコメンドも表示されない。「もっと便利な道具」「きらびやかな商品」「お得情報」といったメッセージが勝手に押し寄せてくることもない。
目の前に続く道と、自分の足だけが頼りになる。そのぶん、余計な選択肢に引きずられにくい。

過剰な情報から距離をとると、身の回りの小さな変化や手がかりに、自然と敏感になる。

紙の地図を手に歩いているとき、人は周囲の看板や建物の形、遠くに見えるランドマークを探す。
「目的地に着くために仕方なくやっている動作」のようでいて、実際にはその街を観察する行為でもある。

そう考えると、「これで事足りる」と言える道具を持つことには、無駄な出費を抑えられること、自分の感覚や注意力を鈍らせないこと。
この二つの効果が確かにあるように思える。


それでも、最新ツールの強みは無視できない

一方で、今の生活でスマホの地図を完全に手放すのも現実的ではない。

現在地がわかるだけで、移動の不安はかなり減る。
「今、自分はどこにいるのか」がはっきりしていると、多少道を間違えてもすぐに気づいて立て直せる。

周辺の情報も、スマホのほうが圧倒的に早い。
トイレやコンビニ、カフェ、バス停。紙の地図にはまず載っていない細かなポイントを、地図アプリはすぐに教えてくれる。 鉄道の遅延や運休といった突発的なトラブルに対しても、リアルタイム情報を扱えるスマホは強い。

時間に余裕のない出張や、慣れない土地での移動を考えると、最新の情報を持っていること自体が一種の「保険」になっている面は否定できない。


問題は「道具」ではなく、「何のために使うのか」

結局のところ、一番の問題は紙かスマホかではない。

大事なのは、「自分は今、何のためにそのツールを使うのか」という主導権を握っておくことだ。

地図アプリを開くとき、遅延情報をチェックするとき、新しいサービスを調べるとき。
そのスタート地点にあるのは本来、「◯◯へ行くため」「トラブルを避けるため」「今日はこういう旅をしたいから」といった目的のはずだ。

ところが、目的をあいまいにしたままツールを開くと、必要以上に情報を集め続けて疲れてしまったり。本当はいらなかったはずの有料サービスに手を出してしまったり。

そういう「情報に振り回される側」に回りやすい。

だからこそ、

これは何をするためのツールなのか。
自分は今、何を決めるために情報を見ようとしているのか。

その一点だけは、自分の側で握っておく必要があるのだと思う。


紙のGoogleマップを眺めながら

あのとき紙のGoogleマップを広げていた女性二人組が、なぜそれを印刷してきたのかはわからない。
通信量を節約したかったのかもしれないし、紙のほうが安心するタイプなのかもしれない。

しかし、その姿を見かけたときは、「これで事足りる」と言える道具を自分で選んでいるようにも見えた。

一方で、自分はスマホの便利さも手放したくない。
遅延情報も、細かな店の場所も、やはり役に立つ場面が多い。

だから、めざしたいのはシンプルな姿勢だ。

最新の情報は取り入れる。
ただし、その情報を何のために使うのかは、自分で決める。

それくらいが、情報とつき合ううえでちょうどいい距離感なのではないかと感じている。

紙の地図とスマホの地図。
みなさんなら、どのあたりに自分なりの折り合いをつけるだろうか。


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