
見え消し・溶け込みの意味とは
「見え消し」「溶け込み」という言葉を初めて聞いたとき、多くの若いビジネスパーソンが戸惑います。なんかこの人、言葉の学習が特異なのでは??、そのように訝るくらいに違和感のあるこの聞きなれない言葉。
特に官公庁や法務部門とやり取りする際に、契約書や公文書の修正作業で頻繁に登場するこの用語です。実は、文書管理において非常に重要な概念なのです。
契約書関連の業務で官公庁の方とやり取りしていると、「見え消し、溶け込み」と題されたメールが送られてくることがあります。最初は何かの変換ミスではないかと思うかもしれませんが、これらは正式な文書校正用語なのです。
見え消しとは
見え消し(みえけし)とは、契約書や公文書などの重要文書を訂正する際に、削除した部分や修正した箇所を分かるように、元の文章を残したまま取り消し線を引く手法のことです。
修正前後を比較できるようにすることで、どこがどのように変更されたのかを明確に示すことができます。「見え消し線」「訂正線」とも呼ばれ、透明性の高い文書管理を実現します。
見え消しの特徴
- 元の文章が見える状態で取り消し線を引く
- 修正履歴が一目で分かる
- 変更箇所の透明性を確保
- 契約書、公文書、法令文書で頻繁に使用される
- Wordでは左側に赤い縦線(変更履歴)を付けることもある
溶け込みとは
溶け込み(とけこみ)とは、見え消しで示した修正内容を反映させた最終形の清書版のことです。
見え消しが修正履歴を示す「途中経過」であるのに対し、溶け込みは修正後の「完成版」。訂正内容が文章に自然に溶け込んだ状態で、体裁が整った最終版文書を指します。読んで字のごとく、溶け込ませているのです。
溶け込みの特徴
- 修正後の最終形を表示
- 取り消し線がなく、読みやすい
- 修正箇所は赤字などで色分けすることもある
- 正式な提出版・保管版として使用
見え消しと溶け込みの関係性
官公庁や企業間の契約書修正では、通常「見え消し版」と「溶け込み版」の両方を作成します。
- 見え消し版:修正内容を確認・協議するための資料
- 溶け込み版:修正を反映した最終版・正式版
この2つをセットで提出することで、変更内容の透明性と最終文書の品質を両立させています。ここを直しましたよ、とわざわざ指し示すあたりは日本人の誠実さが滲んでおり、また、それを清書して(溶け込み、溶け込ませる)相手に指し示すサービス精神。これこそが日本のビジネス文書における「おもてなしの精神」と言えるでしょう。
見え消し・溶け込みはどこで使われる?
官公庁の文書管理
総務省、厚生労働省などの中央官庁や地方自治体では、公文書の管理・改正において見え消しと溶け込みが標準的な手法として採用されています。
主な使用場面:
- 法令の改正文書
- 公文書の修正・訂正
- 仕様書の変更
- ガイドラインの改定
- 契約書の修正
ビジネス文書での活用
民間企業でも、重要な文書管理において広く使われています。
活用例:
- 契約書の修正・変更契約
- 社内規程の改定
- 業務マニュアルの更新
- 提案書の修正版作成
- 法務文書のレビュー
霞ヶ関用語としての認知度
「見え消し」「溶け込み」は、いわゆる霞ヶ関用語の一つとして知られています。官公庁に勤める公務員にとっては日常用語ですが、民間企業では馴染みが薄いため、初めて耳にすると戸惑う方も多いでしょう。
ビジネス文書でもあまり聞かないこの言葉、独特ですが、厳か(おごそか)で、気を引く魅力のある言葉だと思います。侘びさび、に似た響きのある奥深い印象のある言葉です。何とも格調を感じさせるニュアンスです。
しかし、この用語を知っておくことで、官公庁との円滑なコミュニケーションが可能になり、ビジネスの場面でも信頼性が高まります。
Wordで見え消し・溶け込みを作成する方法
Microsoft Wordには、見え消しと溶け込みを効率的に作成できる変更履歴機能が備わっています。
Word変更履歴の基本操作
ステップ1:変更履歴の記録をオンにする
- 「校閲」タブをクリック
- 「変更履歴の記録」ボタンをクリック(グレー表示になればオン)
- この状態で文書を編集すると、すべての変更が記録される
ステップ2:文書を編集する
変更履歴がオンの状態で以下の操作を行うと、自動的に記録されます:
- 削除:文字に取り消し線が表示される(見え消し)
- 追加:新しい文字に下線が表示される
- 修正:削除と追加が同時に記録される
ステップ3:見え消し版を表示する
「校閲」タブ → 「変更履歴とコメントの表示」 → 「すべての変更履歴/コメント」を選択
これで修正箇所がすべて表示される「見え消し版」が完成します。
ステップ4:溶け込み版を作成する
方法1:変更をすべて承諾する
- 「校閲」タブ → 「承諾」 → 「すべての変更を反映し、変更の記録を停止」
- これで溶け込み版(最終版)が完成
方法2:表示モードを変更する
- 「変更履歴とコメントの表示」 → 「変更履歴/コメントなし」を選択
- 見た目上は溶け込み版として表示される(変更履歴自体は残る)
Word取り消し線の手動設定方法
変更履歴を使わず、手動で取り消し線を引く方法もあります。
方法1:リボンから設定
- 取り消し線を引きたい文字を選択
- 「ホーム」タブ → フォントグループ → 「取り消し線」ボタンをクリック
方法2:ショートカットキー(アクセスキー)
Wordには取り消し線の直接ショートカットはありませんが、アクセスキーを使用できます:
Alt → H → 4(順番に押す)
方法3:フォントダイアログから設定
- 取り消し線を引きたい文字を選択
- Ctrl + D(フォントダイアログを開く)
- 「取り消し線」にチェック → OK
Word取り消し線の色を変更する方法
Wordの標準機能では取り消し線だけの色を変えることはできません。文字色と取り消し線の色は連動します。
赤字で見え消しする方法
- 文字を選択
- フォントの色を赤に変更
- 取り消し線を設定
取り消し線だけを赤くする方法(応用)
- 「挿入」タブ → 「図形」 → 「線」を選択
- 文字の上に手動で線を引く
- 線の色を赤に設定
- 線の太さを調整
この方法は手間がかかりますが、取り消し線だけを赤くすることができます。
Excelで見え消し・溶け込みを作成する方法
Excelでも見え消し(取り消し線)の設定が可能です。契約書の一覧表や修正履歴の管理に活用できます。
Excel取り消し線の基本操作
方法1:ショートカットキー(最速)
Windows:Ctrl + 5
Mac:Command + Shift + X
対象のセルを選択して上記のキーを押すと、即座に取り消し線が引けます。もう一度押すと解除されます。
方法2:セルの書式設定
- 取り消し線を引きたいセルを選択
- Ctrl + 1(セルの書式設定を開く)
- 「フォント」タブを選択
- 「取り消し線」にチェック → OK
方法3:右クリックメニュー
- セルを右クリック
- 「セルの書式設定」を選択
- 「フォント」タブ → 「取り消し線」にチェック
Excelでセル内の一部だけ見え消しする方法
セル全体ではなく、セル内の特定の文字だけに取り消し線を引くことも可能です。
- セルをダブルクリックして編集モードに入る(またはF2キーを押す)
- 取り消し線を引きたい文字を選択(Shift + 矢印キー)
- Ctrl + 5を押す
Excel溶け込み版の作成方法
Excelで溶け込み箇所を明示する場合は、修正した箇所を赤字にするのが一般的です。
手順:
- 修正後のセルを選択
- 「ホーム」タブ → フォントの色 → 赤を選択
または、セルの背景色を黄色などにして強調表示する方法もあります。
Excel取り消し線の色変更(応用編)
Wordと同様、Excelでも取り消し線の色だけを変更することはできません。ただし、以下の方法で赤い取り消し線を実現できます。
方法1:文字ごと赤色にする
- セルを選択
- フォントの色を赤に変更
- 取り消し線を設定(Ctrl + 5)
方法2:図形の線を使う(手動)
- 「挿入」タブ → 「図形」 → 「線」
- 文字の上に線を引く
- 線を右クリック → 「図形の書式設定」
- 線の色を赤に設定
この方法は複数セルに適用する場合、手間がかかりますが、取り消し線だけを赤くできます。なお、見え消し線だけの色を変えることはできません(文字と一緒の色になります)。そのため、見え消し線だけの色を変えたい場合は、オートシェイプの図形から線を手で引き、その色を変えることが必要になります。
見え消し・溶け込みのビジネス活用例
契約書の修正
契約書の一部条項を変更する場合:
- 見え消し版で変更箇所を先方に提示
- 双方で内容を確認・合意
- 溶け込み版で最終契約書を作成
規程・マニュアルの改定
社内規程や業務マニュアルの更新時:
- 改定箇所を見え消しで明示
- 関係部署で内容を確認
- 承認後、溶け込み版を正式版として運用
官公庁への提出書類
入札関連書類や補助金申請書の修正:
- 指摘事項に基づき見え消し版を作成
- 修正内容を確認・協議
- 溶け込み版を正式提出
見え消し・溶け込みのルールと注意点
見え消しのルール
- 元の文章を完全に消さない:取り消し線で何が書かれていたか分かるようにする
- 修正箇所は明確に:二重線や赤字で目立たせる
- 訂正印が必要な場合も:紙の契約書では訂正印を押印
溶け込みのルール
- 修正後の最終形:取り消し線のない完成版
- 読みやすさ重視:文書として自然な仕上がり
- 必要に応じて色分け:赤字で修正箇所を示すこともある
朱書き・見え消しの違い
朱書きは赤い二重線で訂正すること。見え消しはその一種で、元の文字が見える状態での訂正を指します。
まとめ:見え消し・溶け込みをマスターして業務効率化
「見え消し」「溶け込み」は、官公庁や企業の文書管理において標準的な用語です。WordやExcelの機能を活用することで、効率的に見え消し版と溶け込み版を作成できます。
重要ポイント
- 見え消し=修正履歴が分かる途中版(取り消し線あり)
- 溶け込み=修正を反映した最終版(取り消し線なし)
- Wordの変更履歴機能が最も効率的
- ExcelはショートカットCtrl+5が便利
- 官公庁との文書のやり取りでは両方セットで提出
この用語と操作方法をマスターすることで、契約書管理や公文書対応がスムーズになり、ビジネスの信頼性も向上します。ぜひ日々の業務に活用してください。
伝統的に使われてきた言葉、見え消し、溶け込み。この独特な表現は、日本のビジネス文化における透明性と相手への配慮を象徴する言葉と言えるでしょう。












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