ちょいのすけ日記:ミニマルに生きる旅・生活・ガジェット記録

モノは少なく、体験は多く。ミニマリスト「ちょいのすけ」が、身軽な旅、快適な暮らし、選び抜いたガジェットについて試行錯誤した記録を綴ります。「なるほど」と思える発見を、あなたにも。

不妊治療、体外受精への挑戦記~その2~

体外受精への挑戦。治療開始日初日。妻の検査結果に、私たちは奇跡を見た

これは、先日公開した「私たち夫婦の不妊治療、その記録」の続きです。

妻からの連絡をきっかけに、私たちの体外受精への挑戦は正式に始まりました。そして決断の翌日、私たちは早速、夫婦二人でクリニックの門をくぐりました。

そこで告げられた妻の検査結果に、私たちは言葉を失います。それは、この長く不安な道のりの中で、一条の光のような、信じられない報告でした。

この記事は、体外受精周期の初日、まさに運命が動き出したその一日の記録です。そして、その奇跡を目の当たりにした私が、夫として、チームの一員として、自らに課した「徹底した自己管理」の誓いの記録でもあります。

決断の翌日、クリニックにて

昨日の朝、「今周期、体外受精に進もう」という私たちの意思は固まりました。しかし、それはまだ、スマートフォン越しの文字のやりとりに過ぎませんでした。

ですが今朝、食卓で向かい合って「今日の午後、一緒に行ける?」と話した瞬間から、全てが急に現実味を帯びてきました。これまで「いつかそうなるかもしれない」と話していた未来が、「今日、そうなる」という確定した予定に変わったのです。幸い、お互いの仕事を調整し、夫婦でクリニックへ向かう時間を確保することができました。

クリニックへ向かう車中、いつもより口数が少なかったかもしれません。緊張、不安、そしてほんの少しの期待。様々な感情が入り混じり、言葉にするのが難しい、独特の空気が流れていました。

クリニックに到着し、受付を済ませて待合室の椅子に並んで座る。これはもう、「夫の検査」でも「妻の診察」でもない。「私たち夫婦の治療」なのだと、背筋が伸びる思いでした。

やがて名前を呼ばれ、二人で診察室に入ります。医師は私たちの顔を順に見て、そして穏やかに、しかしはっきりとこう言いました。

「では、今周期から、体外受精を始めていきましょう」

妻の検査結果:絶望の淵からV字回復したAMH

その日、まず共有されたのは、先日行った妻の血液検査の結果でした。特に、私たちの運命を左右すると言っても過言ではないのが、AMH(抗ミュラー管ホルモン)の数値です。

AMHは、卵巣の中にどれくらい卵子の元が残っているかを示す目安で、「卵巣年齢」とも呼ばれます。この数値と卵子そのものの質は無関係とされていますが、卵巣の予備能力を知るための重要な指標です。そして、この数値は年齢と共に減少し、一度減ったら二度と増えることはない、というのが医学的な常識でした。

だからこそ、私たちはこの数値に絶望しかけていたのです。

  • 約2年前(2023年頃):妻のAMHは 1.8 ng/mL でした。
  • 約1年前(2024年8月):人間ドックで再検査したところ、数値は 1.2 ng/mL へと、さらに減少していました。

この「1.2」という数値は、30代後半から40代前半に相当します。妻の実年齢は35歳。彼女の卵巣の時間は、実年齢より速く進んでいる。そして、その時間はもう巻き戻せない。この事実が、私たちに「急がなければ」と重くのしかかり、ステップアップを決意させた最大の理由でした。

そして今回、医師から告げられた最新のAMHの数値。それは、信じられないものでした。

2.29 ng/mL

一瞬、耳を疑いました。1.2まで落ち込んでいた数値が、2.29へ。卵巣年齢で言えば、「36〜38歳未満程度」にまで若返っている。医学の常識ではありえない、奇跡的なV字回復でした。

診察室で、妻が息を呑むのがわかりました。彼女自身、この結果に大きく驚き、そして静かに喜びを噛み締めているようでした。この一年、食事や運動、睡眠など、地道な努力を続けてきたことが、こんな形で報われるなんて。もちろん、AMHは測定誤差もあると言います。でも、私たちにとってこの結果は、暗闇の中で見つけた、眩しいほどの希望の光でした。

そして、この驚くべき結果は、私たちの決断をさらに後押ししました。 「卵巣の状態が、これ以上ないほど良い今だからこそ、最も確率の高い治療に挑戦すべきだ」と。

幸い、感染症の検査や、その日のホルモン値(E2, LH, FSH)には問題がなく、無事に今周期から治療を開始できることが確定しました。

渡されたスケジュール表:これからの日常

次に、私たちの目の前に、一枚の紙が置かれました。「卵巣刺激スケジュール」と書かれたその紙は、これから約3週間の、私たちの生活そのものでした。

日付 DAY 飲み薬(レトロゾール) 注射(HMG/FSH 150単位) 予定
(先日) 1 生理開始
(本日) 2 夕食後 1錠 1回
(明日) 3 夕食後 1錠 1回
(4日後) 4 夕食後 1錠
(5日後) 5 夕食後 1錠 1回
(6日後) 6 夕食後 1錠
(7日後) 7 1回
(9日後) 9 採血・超音波検査

表:私たちの卵巣刺激スケジュール(一部)

医師の説明によると、私たちのプランは以下の通りです。

  • 飲み薬と注射の併用 質の良い卵子を複数育てるため、5日間の飲み薬(レトロゾール)と、4日間の自己注射(HMG/FSH)を併用して、卵巣を刺激していく。

  • 今後のスケジュール まず一週間後に再度通院し、採血と超音波で卵胞の育ち具合を確認する。その結果を見て、採卵日を決めていく。早ければ、初診から11日後くらいに採卵になる可能性がある。

  • 移植について このクリニックでは、初回の体外受精では、採卵した周期にそのまま胚を移植する「新鮮胚移植」を基本方針としている。

  • 結果判定 移植してから、約10日後に妊娠判定を行う。

怒涛のように説明されるスケジュールを、必死にメモを取りながら聞きました。採卵日、移植日、そして判定日。これまで漠然としていた未来が、具体的な日付として、カレンダーの上に浮かび上がってきました。

夫である私に、できること:徹底した自己管理の誓い

妻のAMHの奇跡的な回復。それは、彼女の日々の努力の賜物です。その姿を目の当たりにして、私は改めて思いました。妻がこれだけの覚悟と努力で臨んでいるのだから、夫である私にできることは何か。

私の精液検査の結果は良好でした。しかし、それは「スタートライン」に過ぎません。「問題ない」から何もしなくていい、ということでは断じてない。妻が日々、体に針を刺し、ホルモンの変化に耐えるのであれば、私もまた、自分にできる最高のコンディションで採卵の日を迎えなければならない。それが、チームの一員としての最低限の責任です。

そこで私は、自分自身にいくつかのルールを課すことにしました。

1. 飲み会との付き合い方:「バランス系ストイック」を目指す

私はお酒が好きで、仕事上の付き合いも少なくありません。しかし、アルコールの過剰摂取が精子の質に悪影響を与える可能性があることは、言うまでもありません。かといって、全ての付き合いを断ち、ストイックになりすぎるのも、逆にストレスが溜まりそうです。

そこで、自分の中でルールを決めました。 - 飲み会は、本当に必要なものに絞り、回数を減らす。 - 参加したとしても、飲む量は節度を持つ。二次会には行かない。 - 家では飲まない。 もともと家で飲む習慣はありませんでしたが、念のため、冷蔵庫の奥にあったチューハイを、棚の見えないところに隠しました。自分の視界からアルコールを消す、という小さな決意表明です。

2. 食生活の再構築:ChatGPTも活用

これまでの鉄分・亜鉛補給に加え、さらに食生活を改善することにしました。具体的には、ビタミンCビタミンDといった、抗酸化作用や生殖機能に関わる栄養素を意識的に多く摂るようにします。

とはいえ、毎日栄養バランスの取れた献立を考えるのは大変です。そこで、私はChatGPTに相談してみました。「亜鉛、鉄分、ビタミンC、Dが豊富で、男性妊活におすすめのレシピを教えて」と。すると、驚くほどたくさんの、具体的なレシピ案が提示されました。サーモンのきのこホイル焼き、豚肉とパプリカの炒め物など、実践的なものばかりです。現代のテクノロジーも活用しながら、楽しみながら食生活を改善していこうと思います。

3. 適度な運動と、何よりも睡眠

精子の質を高めるには、血流を良くし、ホルモンバランスを整えることが重要です。そのために、適度な運動を日々の生活に取り入れます。激しいトレーニングではなく、少し汗ばむ程度のウォーキングやジョギングを、週に数回行うことを目標にします。

そして、何よりも睡眠です。精子は、私たちが眠っている間に作られます。単に睡眠時間を確保するだけでなく、睡眠の質にもこだわることにしました。寝る前のスマートフォンの使用を控え、部屋を真っ暗にして、心身ともに深く休息する。これが、私ができる、最も根源的で重要な妊活だと考えています。

まとめ:航海図を手にした、旅の始まり

体外受精を決断した、その翌日。私たちは夫婦でクリニックへ行き、妻の検査結果という「希望に満ちた現在地」を確認し、そして、これから進むべき道のりを示した「スケジュール表」という最初の航海図を手にしました。

そして私は、夫として、この航海に最高の状態で臨むための、「自己管理」という個人的な誓いを立てました。

昨日までの漠然とした不安や迷いは、今日、具体的な日付と、日々のタスクへと変わりました。それは、ある意味で恐ろしく、しかし、それ以上に希望に満ちた変化です。

まだ、この旅がどこへ続くのか、どんな困難が待っているのか、私たちにはわかりません。しかし、二人で一つの船に乗り込み、羅針盤の示す方角へ、共に漕ぎ出したことだけは、確かです。

この記録が、私たちの歩みを見失わないための、道標になることを願っています。

追伸:参考になった漫画

体外受精を決断し、夫婦でスケジュール調整をしたり、治療の負担について話し合ったりする今、駒井千紘さんの『妊活夫婦』が、以前にも増してリアルに感じられます。作中で描かれる夫婦のすれ違いや協力体制は、まさに今の私たち自身の物語のようです。改めて、この漫画に出会えてよかったと感じています。

『妊活夫婦』(comico) Kindle