1,000〜3,000文字くらいの短い物語をまとめています。
ショーケースに並ぶのは、白と黒のコントラスト。 祖父の代から続くこの店の棚には、梅、鮭、おかかといった定番の札が立っている。けれど、ガラスの向こう側からそれらを指差す客は、今日も一人もいない。 廃棄の山を見るのはもう沢山だった。どうせ捨てるなら、いっそ、 「遊んでしまえばいい」 私は商品名の付いた値札を取り払い、おむすびを無作為に並べ替え、壁に大きな張り紙を貼った。 『占いおむすび』 画用紙にマジックで『今日の運勢、食べればわかります』と付け加える。
「先生、いくらなんでもこれは……」 真っ赤なスパンコールの全身タイツ、鋭角的な飾りのついたフルフェイスのヘルメットを被った男が困惑している。 「いいから着たまえ。今回の切り札なのだ」 県議会議員・宇田川の考えた、起死回生の選挙対策であった。 三期目を目指すものの、支持率は低迷。地味な見た目と華のない演説。このままでは落選の可能性が高い。 「いいか、絶対に喋るなよ」 ヒーローは無言で親指を立てた。力強いサムズアップだ。 「私の演説に合わせて適当にポーズをと
「襟川くん、襟川くん」 なんですか博士。 「新たな発明品が完成したんだが」 今度はどんなガラクタを作ったんです? 「ガラクタとは失敬な」 反論は結果を出してから言ってください。 「これを見ても、まだそんなことが言えるかな?」 またどうせ、ヘンテコな『襟(えり)』なんでしょ。 「うむ、襟だ」 どうしてそんなに襟の発明ばかりにこだわるんですかねぇ。 「わし、エリートだから」 駄洒落かよ。……それで? どういった襟なんです? 「襟の最大の問題はな
「これなーに?」 どんど焼きの櫓(やぐら)だよ。 「どんど?」 地方によっては「どんと焼き」とも「鬼火焼き」とも言うらしいけど。いまからここでお焚き上げをするんだ。 「おたきあげ?」 焼くという意味だよ。 「キャンプファイヤーみたいなもの?」 見た目は似てるけど、意味はちょっと違うかなぁ。 「なにを焼くの?」 正月飾りや書き初めなんかが一般的だね。 「書き初め! ぼくもこの前やったよ」 そうかそうか。ならそれを持ってくるといい。燃やした火が高
フィクション以外のページをまとめています。
真っ白なテキスト入力画面を前に、地蔵のように固まる。 何度かキーボードを叩いては、「なにかが違う」とBackSpaceキーを連打する。二歩進んで三歩下がる。そんな苦悩の痕跡はどこにも残ることなく、目の前の画面は真っ白なまま。今日もまた、1行すら書くことができなかった。 これが、一週間前までのぼくだ。 noteへ最後に作品をアップしたのは、半年前の一度きり。それすらも一年半ぶりの投稿だった。これまでの怠惰な自分に別れを告げるべく、過去の投稿の一切を削除して(これも良くなか