月夜の物語 ~三国志異聞~ 第一章:桃園の誓い、月下の語らい
涿県の、とある屋敷の裏手。季節外れの桃の花が、月光を浴びて狂い咲いていた。甘く、そしてどこか人を惑わすような、濃密な香りが立ち込める。
劉備、関羽、張飛。三人の男たちは、その幻想的な桃の木の下で、酒を酌み交わしていた。
張飛が持ってきた、甕ごと抱えるほどの濁り酒。その力強い穀物の香りと、喉を焼く熱さが、男たちの魂を高揚させる。
「俺は、漢室の末裔。だが今は、ただの蓆売りに過ぎん。この乱れた世を憂い、民を救いたい。その思いだけは、誰にも負けん」
劉備の言葉は静かだが、彼の「仁」